実験体×魔術師

如月

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.誕生の瞬間

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※暴力的な表現を含みます。
苦手な方はこの話の最後の部分だけお読みください。






「おい、3267番!飯だ。食わなかったらお仕置だからな。」



格子の前にころりと落ちた何か。
数粒のそれを指で拾って食べる。噛むとすごく苦いから、そのまま飲み込んだ。何回も連続では飲み込めないから、数個しかないごはんでも時間がかかった。

あと1個というところであの人が帰ってきてしまった。手を伸ばしたがそれは踏み潰されてしまい、屈んだあの人と目が合う。
「仕置きだ。」

「あ、あ……!ごめんなさい!もっと早くたべるから……!ごめんなさい!ごめんなさい!」

縋って謝っても意味は無い。わかってるはずなのに涙が溢れて足が震えた。

「こいつ、いつもキャンキャンうるせえんだよな」
「そろそろ売りたいし、印刻むぞ。」
「そいつあ良い!色も不吉だし、従順にさせないと売れないだろ!」

おしおき……何をされたかは思い出せない。ただ頭からつま先まで濡れた体と、叫びすぎて痛い喉の感触だけが残っていた。



近くからも遠くからも聞こえるみんなの叫び声と泣き声、鼻水を吸う時の音……。遠くから聞こえる怒った大きな声がこわくて、どうか見つからないようにと隅で膝を抱える日々。さむかった。
いつの間にか、声も出なくなってた。あの人たちに謝ることもできない。

いくつか飲み込んで食べていたごはんも、いつの間にか食べられなくなっていた。常に体は重く、手を引かれても上手く歩けなかった。

また、おしおきされて……。
また、動けなくなって……。
それでまたおしおきされる……。



何も考えたくなかった。



気づいたら高い台の上にいた。
動けなくて、あの人たちが何か話していた。

「こいつの契約してた客、飛んだらしいぞ。実物見て次の日だったから、やっぱ見目がなあ。」
「はぁ……もう俺たちで使うしか使い道ないんじゃねーか?」
「ギャハハ!馬鹿言え!何のためにこんなことしてんだよ!」
「少しくらい憂さ晴らししたって良いだろ?」
「んー、まぁこいつなら良いか!痕が消えたらまた売りに出そう!」



僕は何かしてしまったのでしょうか。

もう、なにも、しないから……なにも、しないでほしい。
















「おい」

「おいってば」
いつものように隅にいたと思ったが、背中に触れられた。いつもは腕をつよく引かれるのに。

顔を上げると、そこは全然知らない場所で、知らない人がいた。


この人は まほうつかい らしい。俺はすごいとか言っていたけど、よくわからなかった。

たまにあの人たちみたいな言葉を使うけれど、手はずっと優しかった。上手く食べられなくても怒らないし、ごはんも捨てられなかった。おしおきもしない。

寝る時にあったかい。

この人は、僕のことを何も知らないようだった。お前とは呼ぶけど、さん……なんとかばんって呼ばない。

床でごはんを待ってても、床で寝そべって目を瞑っても、よっこらしょと僕を持ち上げてイスやベッドに座らせた。

あと、絶対に僕を1人にしなかった。


僕はこの人に買われたんだと思った。
だから、あの印を消されたら捨てられると思ったんだ。
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