5 / 9
.誕生の瞬間
しおりを挟む
※暴力的な表現を含みます。
苦手な方はこの話の最後の部分だけお読みください。
「おい、3267番!飯だ。食わなかったらお仕置だからな。」
格子の前にころりと落ちた何か。
数粒のそれを指で拾って食べる。噛むとすごく苦いから、そのまま飲み込んだ。何回も連続では飲み込めないから、数個しかないごはんでも時間がかかった。
あと1個というところであの人が帰ってきてしまった。手を伸ばしたがそれは踏み潰されてしまい、屈んだあの人と目が合う。
「仕置きだ。」
「あ、あ……!ごめんなさい!もっと早くたべるから……!ごめんなさい!ごめんなさい!」
縋って謝っても意味は無い。わかってるはずなのに涙が溢れて足が震えた。
「こいつ、いつもキャンキャンうるせえんだよな」
「そろそろ売りたいし、印刻むぞ。」
「そいつあ良い!色も不吉だし、従順にさせないと売れないだろ!」
おしおき……何をされたかは思い出せない。ただ頭からつま先まで濡れた体と、叫びすぎて痛い喉の感触だけが残っていた。
近くからも遠くからも聞こえるみんなの叫び声と泣き声、鼻水を吸う時の音……。遠くから聞こえる怒った大きな声がこわくて、どうか見つからないようにと隅で膝を抱える日々。さむかった。
いつの間にか、声も出なくなってた。あの人たちに謝ることもできない。
いくつか飲み込んで食べていたごはんも、いつの間にか食べられなくなっていた。常に体は重く、手を引かれても上手く歩けなかった。
また、おしおきされて……。
また、動けなくなって……。
それでまたおしおきされる……。
何も考えたくなかった。
気づいたら高い台の上にいた。
動けなくて、あの人たちが何か話していた。
「こいつの契約してた客、飛んだらしいぞ。実物見て次の日だったから、やっぱ見目がなあ。」
「はぁ……もう俺たちで使うしか使い道ないんじゃねーか?」
「ギャハハ!馬鹿言え!何のためにこんなことしてんだよ!」
「少しくらい憂さ晴らししたって良いだろ?」
「んー、まぁこいつなら良いか!痕が消えたらまた売りに出そう!」
僕は何かしてしまったのでしょうか。
もう、なにも、しないから……なにも、しないでほしい。
「おい」
「おいってば」
いつものように隅にいたと思ったが、背中に触れられた。いつもは腕をつよく引かれるのに。
顔を上げると、そこは全然知らない場所で、知らない人がいた。
この人は まほうつかい らしい。俺はすごいとか言っていたけど、よくわからなかった。
たまにあの人たちみたいな言葉を使うけれど、手はずっと優しかった。上手く食べられなくても怒らないし、ごはんも捨てられなかった。おしおきもしない。
寝る時にあったかい。
この人は、僕のことを何も知らないようだった。お前とは呼ぶけど、さん……なんとかばんって呼ばない。
床でごはんを待ってても、床で寝そべって目を瞑っても、よっこらしょと僕を持ち上げてイスやベッドに座らせた。
あと、絶対に僕を1人にしなかった。
僕はこの人に買われたんだと思った。
だから、あの印を消されたら捨てられると思ったんだ。
苦手な方はこの話の最後の部分だけお読みください。
「おい、3267番!飯だ。食わなかったらお仕置だからな。」
格子の前にころりと落ちた何か。
数粒のそれを指で拾って食べる。噛むとすごく苦いから、そのまま飲み込んだ。何回も連続では飲み込めないから、数個しかないごはんでも時間がかかった。
あと1個というところであの人が帰ってきてしまった。手を伸ばしたがそれは踏み潰されてしまい、屈んだあの人と目が合う。
「仕置きだ。」
「あ、あ……!ごめんなさい!もっと早くたべるから……!ごめんなさい!ごめんなさい!」
縋って謝っても意味は無い。わかってるはずなのに涙が溢れて足が震えた。
「こいつ、いつもキャンキャンうるせえんだよな」
「そろそろ売りたいし、印刻むぞ。」
「そいつあ良い!色も不吉だし、従順にさせないと売れないだろ!」
おしおき……何をされたかは思い出せない。ただ頭からつま先まで濡れた体と、叫びすぎて痛い喉の感触だけが残っていた。
近くからも遠くからも聞こえるみんなの叫び声と泣き声、鼻水を吸う時の音……。遠くから聞こえる怒った大きな声がこわくて、どうか見つからないようにと隅で膝を抱える日々。さむかった。
いつの間にか、声も出なくなってた。あの人たちに謝ることもできない。
いくつか飲み込んで食べていたごはんも、いつの間にか食べられなくなっていた。常に体は重く、手を引かれても上手く歩けなかった。
また、おしおきされて……。
また、動けなくなって……。
それでまたおしおきされる……。
何も考えたくなかった。
気づいたら高い台の上にいた。
動けなくて、あの人たちが何か話していた。
「こいつの契約してた客、飛んだらしいぞ。実物見て次の日だったから、やっぱ見目がなあ。」
「はぁ……もう俺たちで使うしか使い道ないんじゃねーか?」
「ギャハハ!馬鹿言え!何のためにこんなことしてんだよ!」
「少しくらい憂さ晴らししたって良いだろ?」
「んー、まぁこいつなら良いか!痕が消えたらまた売りに出そう!」
僕は何かしてしまったのでしょうか。
もう、なにも、しないから……なにも、しないでほしい。
「おい」
「おいってば」
いつものように隅にいたと思ったが、背中に触れられた。いつもは腕をつよく引かれるのに。
顔を上げると、そこは全然知らない場所で、知らない人がいた。
この人は まほうつかい らしい。俺はすごいとか言っていたけど、よくわからなかった。
たまにあの人たちみたいな言葉を使うけれど、手はずっと優しかった。上手く食べられなくても怒らないし、ごはんも捨てられなかった。おしおきもしない。
寝る時にあったかい。
この人は、僕のことを何も知らないようだった。お前とは呼ぶけど、さん……なんとかばんって呼ばない。
床でごはんを待ってても、床で寝そべって目を瞑っても、よっこらしょと僕を持ち上げてイスやベッドに座らせた。
あと、絶対に僕を1人にしなかった。
僕はこの人に買われたんだと思った。
だから、あの印を消されたら捨てられると思ったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
拝啓、親愛なる王子、魔族に求婚されて元従者は花嫁と相成りそうです
石月煤子
BL
「――迎えにきたぞ、ロザ――」
とある国の王子に仕える従者のロザ。
過保護な余り、単独必須の武者修行へ赴く王子をこっそり尾行し、魔獣が巣食う「暁の森」へとやってきた。
そこでロザは出会う。
ウルヴァスという名の不敵な魔族に。
「俺の花嫁に相応しい」
(は? 今、何て言った?)
■表紙イラスト(フリー素材)はお借りしています■
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません
ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。
全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる