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騎士になるまで
第3話 騎士になりたぁい!!…です
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正直言って辛かった。皆様がとても似合うとか男っぽくて反対に良いとか褒め言葉であろう発言を言ってくる事が。皆様は、私を励まそうと短髪である事を受け入れる事を催したりしてたけど、私にはどうしても長髪の頃の綺麗な自分に戻りたかった。
でも、どんなに悲しんでも何も起こらない事は明らかだった。
もう、人からの評価は忘れよう。そう思うとどうしても次に思い浮かべてしまうのはあの憎むべきあの王太子、メリタオス様だった。
人の髪を許可無く切るし、婚約破棄を自分が申し出た相手に対して自分の欲任せに激しい接吻はするし散々だ。でも今思えば、接吻をしたのは髪を切っていた事がバレない様に接吻に、注意を引かせたかった為からかもしれない。だとしても、あんなに激しい接吻をする必要性はあるのだろうか?それにあんな接吻をされて勘違いをしてしまう女はこの世に少なくはない。
でも、矢張り髪を切った訳がよくわからない。勿論、私への罰だという事は理解出来る。だけど、散髪じゃなくてももっと他にも罰という罰に相応しいものが他にも沢山あったはず、それなのにメリタオス様は散髪という数々の選択肢の中から、誰もが想定外の罰を瞬時に選んだ。本当に不思議だ。
〔お嬢様っ〕
ル〔!?はっ、はい!〕
ドアくらい軽く叩いてから声をかければいいのに、と口出すところだったがメイドに何故か悪い気がして躊躇ってしまい、気付けばメイドに対して考えていたこととは全く違う返事をしてしまっていた。
〔父上がお呼びです〕
ル〔行きたくありませ〔お嬢様っ!〕
ル〔…はい〕
メイドに口で負けてしまう私は、どれだけ気弱いのだろうかと考えながらも父上に呼び出された理由を考えた。
それにしても私は髪が短くなった今、何が出来るのであろうか。お茶会などは正直言って暫くの間は行きたくない。寧ろこの事を理由付けにして私にしつこく会おうとしてくる諦めの悪い男伯爵や公爵達に会わなくて済むのではないだろうか。
確かに、悪い事ばかりではない。だけど私の得意なバイオリンが披露出来る演奏会にいけない事は誠に残念だ。でも、演奏会は自分から行きたくないと思っているのに残念がるのは少しおかしい事かもしれない。
〔…!ルイーゼ…?〕
ル〔えっ…あっ、はい?〕
聞き覚えのある声なのに、どうしても名前と顔が思い出せない。でも、思い出す必要なんてない。私が今声の聞こえた方向である背後を振り返ればいいのだから。
〔矢張り…ルイーゼじゃないか!目見得にかかって光栄だ。久しぶりだな〕
私は彼の顔を見てやっと思い出した。彼は確か名前はウィカルド。私の幼馴染で長身でメリタオス様にも匹敵する端麗で美しい顔の持ち主だ。この顔でこんな甘い声で話しかけられたら、いくら慣れている私でもクラっとくる事がある。
でも、何故私が名前を忘れかけていたのかはよくわからない。だけどきっと2、3年前から直接会っていないからであろう。
ル〔ウィ、ウィカルド…久しぶりね!…こんなお昼時に来て…騎士のお仕事はどうされたの?〕
確か、彼は実際の騎士のお仕事をしながらも騎士団の中での名誉と信義の為に名誉騎士としても活動している。
彼の活躍は華々しく、此処最近では望んでいなくても彼の話をちょこちょこ聞く様になった。幼馴染としては嬉しいのだが、忙しさのあまり私と会う機会をだんだんと減らしていた事は、正直言って悲しかったし寂しかった。
ウ〔今日は休暇をとったんだよ、親戚同士のちょっとした会議があってね〕
ウ〔そして、お前に会おうと思って来てみたらビンゴだったって訳だ〕
彼の嬉しそうな笑顔に、私の固くなっていた表情が久しぶりに柔らかくなった様な気がする。そう、彼と一緒にいると自然と笑顔が溢れてくる。だから彼と一緒に居る時間は私にとっては大好きな時間なのだ。
ル〔…ふふっ、それにしてもよく私だってわかったわね?〕
今の私は、髪が長かった頃のまだ美しかった方の私ではない。なのに、後ろ姿だけで私だと判断出来るなんて勘が良過ぎる。
ウ〔そりゃあ、雰囲気でわかるよ〕
ウィカルドらしい答えだった。そう言ってくれるだけでも私は嬉しかった。そうか、私は髪が短くなっても変わらないんだ。でもこういう風に思えたのも一瞬で、私の心の奥の何かが、そう思う事を邪魔した。
〔お嬢様、そろそろ…〕
ル〔あっ、ごめんなさい!ウィカルド、ちょっと待っていてね〕
こんな時間が、もっと長く続けば私は幸せだと思えるだろう。だけど、矢張りそれは何かが邪魔に入ったりするせいで現実的に無理だった。でも、もし叶うのならウィカルドの隣でずっと一緒に居たいしウィカルドどずっと話していたい。この願いを叶える為にはどうすればいいのだろうか?自問するとある一つの自答が返ってきた。
ル〔…よっ、よし!〕
〔あっ!お嬢様、廊下で走っては危険ですわーー…〕
ごめんなさいメイドさん。そう私は小さく呟きながら得意の走行競技を廊下でたった1人で繰り広げた。他のメイド達も私の走りに呆気にとられている。
長い廊下を走った突き当たりの方に、父上の執務室が見えて来た。恐らく父上は執務室内にいるはず。
ル〔父上!失礼しますわっ〕
〔ちょっ、ルイーゼ今は…〕
バタン!父上の止めを聞き入れずに勝手に執務室へとなだれ込む様に入室する。
流石の私も、あの長い廊下を全速力にちかい力を出して走ってしまい、息が荒くなってしまった。
父上は、メイド達や使用人等と同じ様に呆気にとられた表情をしていた。こんな表情をするのは無理もないだろう。娘が目の前でゼェゼェと息を荒げながら勢い良くドアを開けて執務室内に勝手に入って来たのだから。
父〔どっ、どうしたんだ…陛下等が兵をあげたくらいの緊急事態でも起こったのか?〕
ル〔ちっ、父上…私…私…〕
ル〔騎士になりたぁい!!〕
父〔はぁぁぁ!?おぉうう!?〕
ル〔…です〕
私が最後の言葉を言う前に、父上は執務室を越えて執務室外の廊下まで響く大声で叫んだ。これが世に言う雄叫びとでも言うのだろうか。いや、父上の雄叫びは全然勇ましくないし意味が違う。矢張り雄叫びという表現は撤去だ。
そして、やっと父上の叫び声が終わった時に、乱雑に閉められたドアから声すらかけずに誰かが入って来た。
私は、その2人と目が合った途端今まで感じた事がないくらいの寒気がした。このまま失神して、その人と会った事実を私の記憶から消し去りたいと本気で思う程だった。
私が嫌忌な重苦しい雰囲気だ。さて、この状況、私はどう乗り切れば良いのだろうか?
でも、どんなに悲しんでも何も起こらない事は明らかだった。
もう、人からの評価は忘れよう。そう思うとどうしても次に思い浮かべてしまうのはあの憎むべきあの王太子、メリタオス様だった。
人の髪を許可無く切るし、婚約破棄を自分が申し出た相手に対して自分の欲任せに激しい接吻はするし散々だ。でも今思えば、接吻をしたのは髪を切っていた事がバレない様に接吻に、注意を引かせたかった為からかもしれない。だとしても、あんなに激しい接吻をする必要性はあるのだろうか?それにあんな接吻をされて勘違いをしてしまう女はこの世に少なくはない。
でも、矢張り髪を切った訳がよくわからない。勿論、私への罰だという事は理解出来る。だけど、散髪じゃなくてももっと他にも罰という罰に相応しいものが他にも沢山あったはず、それなのにメリタオス様は散髪という数々の選択肢の中から、誰もが想定外の罰を瞬時に選んだ。本当に不思議だ。
〔お嬢様っ〕
ル〔!?はっ、はい!〕
ドアくらい軽く叩いてから声をかければいいのに、と口出すところだったがメイドに何故か悪い気がして躊躇ってしまい、気付けばメイドに対して考えていたこととは全く違う返事をしてしまっていた。
〔父上がお呼びです〕
ル〔行きたくありませ〔お嬢様っ!〕
ル〔…はい〕
メイドに口で負けてしまう私は、どれだけ気弱いのだろうかと考えながらも父上に呼び出された理由を考えた。
それにしても私は髪が短くなった今、何が出来るのであろうか。お茶会などは正直言って暫くの間は行きたくない。寧ろこの事を理由付けにして私にしつこく会おうとしてくる諦めの悪い男伯爵や公爵達に会わなくて済むのではないだろうか。
確かに、悪い事ばかりではない。だけど私の得意なバイオリンが披露出来る演奏会にいけない事は誠に残念だ。でも、演奏会は自分から行きたくないと思っているのに残念がるのは少しおかしい事かもしれない。
〔…!ルイーゼ…?〕
ル〔えっ…あっ、はい?〕
聞き覚えのある声なのに、どうしても名前と顔が思い出せない。でも、思い出す必要なんてない。私が今声の聞こえた方向である背後を振り返ればいいのだから。
〔矢張り…ルイーゼじゃないか!目見得にかかって光栄だ。久しぶりだな〕
私は彼の顔を見てやっと思い出した。彼は確か名前はウィカルド。私の幼馴染で長身でメリタオス様にも匹敵する端麗で美しい顔の持ち主だ。この顔でこんな甘い声で話しかけられたら、いくら慣れている私でもクラっとくる事がある。
でも、何故私が名前を忘れかけていたのかはよくわからない。だけどきっと2、3年前から直接会っていないからであろう。
ル〔ウィ、ウィカルド…久しぶりね!…こんなお昼時に来て…騎士のお仕事はどうされたの?〕
確か、彼は実際の騎士のお仕事をしながらも騎士団の中での名誉と信義の為に名誉騎士としても活動している。
彼の活躍は華々しく、此処最近では望んでいなくても彼の話をちょこちょこ聞く様になった。幼馴染としては嬉しいのだが、忙しさのあまり私と会う機会をだんだんと減らしていた事は、正直言って悲しかったし寂しかった。
ウ〔今日は休暇をとったんだよ、親戚同士のちょっとした会議があってね〕
ウ〔そして、お前に会おうと思って来てみたらビンゴだったって訳だ〕
彼の嬉しそうな笑顔に、私の固くなっていた表情が久しぶりに柔らかくなった様な気がする。そう、彼と一緒にいると自然と笑顔が溢れてくる。だから彼と一緒に居る時間は私にとっては大好きな時間なのだ。
ル〔…ふふっ、それにしてもよく私だってわかったわね?〕
今の私は、髪が長かった頃のまだ美しかった方の私ではない。なのに、後ろ姿だけで私だと判断出来るなんて勘が良過ぎる。
ウ〔そりゃあ、雰囲気でわかるよ〕
ウィカルドらしい答えだった。そう言ってくれるだけでも私は嬉しかった。そうか、私は髪が短くなっても変わらないんだ。でもこういう風に思えたのも一瞬で、私の心の奥の何かが、そう思う事を邪魔した。
〔お嬢様、そろそろ…〕
ル〔あっ、ごめんなさい!ウィカルド、ちょっと待っていてね〕
こんな時間が、もっと長く続けば私は幸せだと思えるだろう。だけど、矢張りそれは何かが邪魔に入ったりするせいで現実的に無理だった。でも、もし叶うのならウィカルドの隣でずっと一緒に居たいしウィカルドどずっと話していたい。この願いを叶える為にはどうすればいいのだろうか?自問するとある一つの自答が返ってきた。
ル〔…よっ、よし!〕
〔あっ!お嬢様、廊下で走っては危険ですわーー…〕
ごめんなさいメイドさん。そう私は小さく呟きながら得意の走行競技を廊下でたった1人で繰り広げた。他のメイド達も私の走りに呆気にとられている。
長い廊下を走った突き当たりの方に、父上の執務室が見えて来た。恐らく父上は執務室内にいるはず。
ル〔父上!失礼しますわっ〕
〔ちょっ、ルイーゼ今は…〕
バタン!父上の止めを聞き入れずに勝手に執務室へとなだれ込む様に入室する。
流石の私も、あの長い廊下を全速力にちかい力を出して走ってしまい、息が荒くなってしまった。
父上は、メイド達や使用人等と同じ様に呆気にとられた表情をしていた。こんな表情をするのは無理もないだろう。娘が目の前でゼェゼェと息を荒げながら勢い良くドアを開けて執務室内に勝手に入って来たのだから。
父〔どっ、どうしたんだ…陛下等が兵をあげたくらいの緊急事態でも起こったのか?〕
ル〔ちっ、父上…私…私…〕
ル〔騎士になりたぁい!!〕
父〔はぁぁぁ!?おぉうう!?〕
ル〔…です〕
私が最後の言葉を言う前に、父上は執務室を越えて執務室外の廊下まで響く大声で叫んだ。これが世に言う雄叫びとでも言うのだろうか。いや、父上の雄叫びは全然勇ましくないし意味が違う。矢張り雄叫びという表現は撤去だ。
そして、やっと父上の叫び声が終わった時に、乱雑に閉められたドアから声すらかけずに誰かが入って来た。
私は、その2人と目が合った途端今まで感じた事がないくらいの寒気がした。このまま失神して、その人と会った事実を私の記憶から消し去りたいと本気で思う程だった。
私が嫌忌な重苦しい雰囲気だ。さて、この状況、私はどう乗り切れば良いのだろうか?
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