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魔法使いの選択
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光と闇がぶつかり合い、遺跡の空間がきしんだ。リリィとアリスが放った魔法は、影の主の分身体に深く食い込み、その形を一瞬にして崩した。
だが、それはほんの前哨に過ぎなかった。
地響きのような音と共に、遺跡の奥――封印陣の中央に黒い亀裂が走る。そこから、異様な魔力が溢れ出していた。
「……やっぱり、本体がまだ残ってた」
アリスは冷静に言い、リリィの前に立った。
「リリィ。ここからは、私ひとりで――」
「嫌です!」
リリィの叫びが響く。
「先生はいつも、自分だけで全部抱えようとする。でも、私はもう子どもじゃありません。魔法も、想いも……先生と一緒に学んできた!」
アリスの目が、少しだけ驚いたように見開かれた。
「私も、一緒に戦います。だって……私は先生の弟子だから!」
アリスは少しだけ沈黙し、それからふっと笑った。
「――そうね。あなたは、もう立派な魔法使いの卵だわ」
ふたりは並んで、封印の中心に向き直った。
そこに立つ“影の主”は、かつて人であったことを感じさせる姿をしていた。鋭い目、悲しみを湛えた表情、そして――どこかアリスと似た雰囲気。
アリスは静かに言った。
「……あなたの名は?」
影の主は答えなかった。ただ、闇の中に浮かぶその姿が、微かに口元を動かす。
『――アリス』
その声を、アリスは確かに聞いた。
途端に、頭の奥に痛みが走った。忘れていた記憶が、ぶわりとあふれ出す。
――若き日、共に魔法を学んだ青年。正義感が強く、どこまでもまっすぐだった彼。
ある日、その力を暴走させ、国を襲う存在となってしまった――親友の面影。
「……あなたは、私の……」
目を伏せかけたそのとき、リリィが手を取った。
「先生。私は、先生の今を信じてる」
その言葉が、アリスを現実に引き戻す。
「ありがとう、リリィ。――行くわよ。あの人を、終わらせてあげなきゃ」
ふたりは魔力を重ね合わせる。アリスの光の魔法と、リリィの火の魔法が混ざり合い、まるで朝日のような輝きを生んだ。
「――封魔結界・陽光の刻印(ようこうのこくいん)!」
その魔法は、影の主を包みこみ、静かに、そして確かにその存在を浄化した。
……すべてが終わった。
遺跡の中に、静けさが戻る。崩れかけた壁も、魔力が浄化されたのか少し安定を取り戻していた。
アリスは、空を見上げた。そこには、何もない。ただ青く広がる空。
「……やっと、終わったわ」
「先生……泣いてます」
「え? うそ、ほんとに?」
アリスは慌てて目元を拭うと、リリィがくすっと笑った。
「先生って、ほんとはすごく優しいんですね」
「いまさら何を……」
ふたりは顔を見合わせて、ふっと笑った。
帰り道、森の中を歩きながら、リリィはぽつりと口を開いた。
「私、将来は……魔法使いになりたい」
「もう、なってるわよ」
「……じゃあ、先生みたいな魔法使いになりたい」
アリスは何も言わず、優しくリリィの頭を撫でた。
――こうして、王都の片隅にある小さな魔法店には、今日も変わらぬ日常が戻ってきた。
けれど、その日常はもう、以前とは少し違っている。
そこには、ただの“依頼”ではなく、確かな絆と成長が息づいていた。
だが、それはほんの前哨に過ぎなかった。
地響きのような音と共に、遺跡の奥――封印陣の中央に黒い亀裂が走る。そこから、異様な魔力が溢れ出していた。
「……やっぱり、本体がまだ残ってた」
アリスは冷静に言い、リリィの前に立った。
「リリィ。ここからは、私ひとりで――」
「嫌です!」
リリィの叫びが響く。
「先生はいつも、自分だけで全部抱えようとする。でも、私はもう子どもじゃありません。魔法も、想いも……先生と一緒に学んできた!」
アリスの目が、少しだけ驚いたように見開かれた。
「私も、一緒に戦います。だって……私は先生の弟子だから!」
アリスは少しだけ沈黙し、それからふっと笑った。
「――そうね。あなたは、もう立派な魔法使いの卵だわ」
ふたりは並んで、封印の中心に向き直った。
そこに立つ“影の主”は、かつて人であったことを感じさせる姿をしていた。鋭い目、悲しみを湛えた表情、そして――どこかアリスと似た雰囲気。
アリスは静かに言った。
「……あなたの名は?」
影の主は答えなかった。ただ、闇の中に浮かぶその姿が、微かに口元を動かす。
『――アリス』
その声を、アリスは確かに聞いた。
途端に、頭の奥に痛みが走った。忘れていた記憶が、ぶわりとあふれ出す。
――若き日、共に魔法を学んだ青年。正義感が強く、どこまでもまっすぐだった彼。
ある日、その力を暴走させ、国を襲う存在となってしまった――親友の面影。
「……あなたは、私の……」
目を伏せかけたそのとき、リリィが手を取った。
「先生。私は、先生の今を信じてる」
その言葉が、アリスを現実に引き戻す。
「ありがとう、リリィ。――行くわよ。あの人を、終わらせてあげなきゃ」
ふたりは魔力を重ね合わせる。アリスの光の魔法と、リリィの火の魔法が混ざり合い、まるで朝日のような輝きを生んだ。
「――封魔結界・陽光の刻印(ようこうのこくいん)!」
その魔法は、影の主を包みこみ、静かに、そして確かにその存在を浄化した。
……すべてが終わった。
遺跡の中に、静けさが戻る。崩れかけた壁も、魔力が浄化されたのか少し安定を取り戻していた。
アリスは、空を見上げた。そこには、何もない。ただ青く広がる空。
「……やっと、終わったわ」
「先生……泣いてます」
「え? うそ、ほんとに?」
アリスは慌てて目元を拭うと、リリィがくすっと笑った。
「先生って、ほんとはすごく優しいんですね」
「いまさら何を……」
ふたりは顔を見合わせて、ふっと笑った。
帰り道、森の中を歩きながら、リリィはぽつりと口を開いた。
「私、将来は……魔法使いになりたい」
「もう、なってるわよ」
「……じゃあ、先生みたいな魔法使いになりたい」
アリスは何も言わず、優しくリリィの頭を撫でた。
――こうして、王都の片隅にある小さな魔法店には、今日も変わらぬ日常が戻ってきた。
けれど、その日常はもう、以前とは少し違っている。
そこには、ただの“依頼”ではなく、確かな絆と成長が息づいていた。
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