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本編
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しおりを挟む「じゃあ、次は俺たちのご飯だな!
なに作るんだ?」
ラインハルトが聞いてくる。
「うん。んーどうしよう?
カイルくんは何が好き?」
「え?僕も一緒に食べるんですか!?」
「もちろん!」
ラインハルトを見ると同じく「当たり前だ」って頷いてた。
「皆様と食事なんて、緊張しますよ……。
うぅ……強いて言うなら卵が好きです......。」
俺たちが逃がしてくれないということを悟ったのか、観念して好きな食べ物を教えてくれた。
「ラインハルトは?」
「俺は、ジャガイモを使ったものならなんでもいいよ?」
それはヴェインさんの好きな物じゃん。
「それも作るけど、ラインハルトの好きな物だよ。」
「んー、俺も卵は好きかな。
とろとろな食感が特に。」
あぁ、そういえば昨日の焼き立てキッシュのトロトロ感にハマってたもんなぁ。
「じゃあ、卵料理に決定だね。
あ、エッグベネディクトにしようかな。あとは、ジャガイモのガレットにしよう。」
「また、名前じゃ全くわからない料理だなぁ。
どんな料理なんだ?」
ラインハルトが聞いてくる。
カイルくんも頭にはてなマークを浮かべながらこちらをみている。
「エッグベネディクトは、パンの上に燻製肉と半熟卵を乗せて卵黄とバターで作ったソースをかけた料理かな。
今回はパンケーキで作るけど。
ガレットは、元々薄く焼いたって意味だから、ジャガイモを細長く切って薄く焼いた料理。カリカリ、中はもちもちで美味しいんだ。」
「ほぅ?あんまりイメージ湧かないけどトオルが作るなら上手いんだろうな?」
「パンケーキってなんですか?ケーキ?」
カイルくんがケーキと聞いて目を輝かせている。可愛いなぁ......。
「カイルくん、ケーキ好きなんだ?
今回作るのは、んーなんていうんだろ?
お菓子のケーキとは、また別で食事用にも出来るケーキかな?」
「そうなんですか......。」
あ、やばい、天使を落ち込ませてしまった!
尻尾と耳があったら絶対垂れ下がってるよ....
..。
「ケーキなら今度、作ってあげるから!」
「本当ですか?」
カイルくんが喜んでくれた。
なんだろう、このアレンとはまた別の、守りたいその笑顔!って感じの気持ち。
あ、これが父性ってやつかな。
「トオル、カイルに母性本能全開だな!」
ニヤニヤしながらラインハルトが言ってくる。
うるさいやい、俺は男だ!
気を取り直して料理を再開だ。
まずは、ジャガイモの皮を剥いて千切りにする。それをボウルに移し軽く塩を振って置いておく。ガレットの準備は完了だ。
「おぉ、器用なもんだな?
そんなに細く切れるのか?」
「まぁ、慣れだよ。
俺なんてまだまだ、下手だけどね。
ほら、大きさがまだ、まばらじゃん?」
「いや、よくわからんが......。」
指よりも舌の感覚は繊細だから手を抜いたら意外に分かっちゃうもんなんだよなぁ。
次はパンケーキだ。
ベーキングパウダーはないだろうから、シフォンケーキの作り方を応用して作るか。
卵を卵黄と卵白に分けて別々のボウルに入れる。
卵白にちょっとでも卵黄とかの不純物が入っちゃうと泡立ちが悪くなるから注意しないと。
卵黄を解きほぐして砂糖と塩をいれて白くなるまで泡立てる。
泡立ったら牛乳、油を入れてムラなく合わせ、2回ふるった薄力粉と強力粉合わせたものを2~3回に分けて入れていく。
混ぜすぎるとふわふわな生地にならないから注意だ。
これは、カイルくんとラインハルトがやってくれた。
俺は、その間にメレンゲを立てる。
下に氷水を入れたボウルを用意して冷やしながら角が立つまでしっかり泡立てる。
メレンゲを卵黄のボウルに2~3回に分けて泡を潰さないように優しく手早く合わせていく。
これで生地の完成だ。
フライパンに油を引いて焼いていく。
一度熱したフライパンを濡れタオルの上に乗せてフライパン全体の温度を均一にしてからもう一度温めて焼くとムラなく全体がきれいなきつね色のパンケーキに仕上がる。
毎回やるのは手間がかかるが、やっぱり見た目も大事な要素だからな……。
これでパンケーキは、完成だ。
2人が涎を垂らしてる。
「1枚味見する?」
「いいんですか?」
「いいのか?」
「もちろん!味見は作ってる人の特権だからね。」
1枚を3等分にして食べる。
ふわふわでほのかに甘い生地はどこか懐かしさを感じる。
「美味しい......。パンとは違ってやわらくてふわふわもちもちで...。」
「おぉ、これうまいな!ボソボソのパンじゃなくて毎日これが食いたい!」
2人が顔を見合わせながら喜んでいて、同じ顔をしているものだからついつい吹き出してしまった。
ラインハルトがボソッと「俺、もうここに住もうかな...。」って言ってた。
公爵家の次男それでいいのか?
まぁ、ヴェインさんもいるからありなのかな?
「でもなぁ、卵を泡立てるのが大変だよなぁ......。」
ラインハルトが俺に言ってくる。
「たしかに、いっぱい作るのは厳しそうだね。泡立て機とか欲しいなぁ。」
「泡立て機ってなんですか?」
カイルくんが聞いてくる。
俺は、ホイッパーを手に取りカイルくんに説明する。
「俺の故郷にあった物でね、このホイッパーが勝手に動いてくれるから簡単にメレンゲが作れるんだよ。」
「すごい!そんなのあったらパンケーキ食べ放題じゃないですか!」
はしゃぐカイルくんは可愛かった。
ラインハルトも感心したように話を聞いている。
ちなみに、ラインハルトは、俺が渡り人だって知ってるから深くは聞いてこなかった。
機械って偉大だよなぁ。
次はポーチドエッグとオランデーズソースを作っていく。
沸かしといたお湯にビネガーをいれてスプーンでかき混ぜ渦を作っていく。
割って置いた卵を1つ入れて卵白がある程度固まるまで待つ。
ちなみに、鍋のお湯はそれなりに量が無いと鍋底に卵がくっついて割れてしまう。
もう1つ別の鍋にお湯を沸かして、完成した卵をそのお湯に通してビネガーの味を洗い流す。
それを繰り返していくつか作った。
アレンは3つくらい食べるかな?
その間にラインハルトとカイルくんにはサラダ用のレタスをちぎって水に晒して置いてもらい、飾り用にパプリカをスライスしといて貰った。
次はオランデーズソースを作る。
卵黄をボールに入れて50~60度ぐらいのお湯に浮かべて温めながら溶かしバターの上澄みを少しずつ加えて混ぜていく。
温度が高すぎると卵黄が固まってしまうから注意が必要だ。
全体がもったりするまでひたすら混ぜていく。
うん!いい感じ。
レモン汁を加え塩で調味する。
そう!ついに見つけたんだ!
ブラックペッパーもどき!
ライユと言う桃くらいの大きさの実だ。
この大きさで胡椒の味とは予想外だった。
そのライユもほんの少しだけ加える。
うん、味が引き締まって美味しい。
あとは、油を引いたフライパンでガレットと燻製肉を焼いたら完成だ………。
あ、サラダのドレッシング忘れてた。
オレンジの実と皮を切り細く刻む。
ボウルへ入れたら、ビネガーとオイル、塩、ライユで味をつけて簡単オレンジヴィネグレットの完成だ。
アレン、生野菜は、まだ厳しいかもしれないけど、オレンジは好きらしいから食べてくれるといいなぁ…。
と、アレンの笑顔を思い浮かべながら作る。
準備が整うと、ラインハルトが「俺が呼ぶよ」って言ってくれた。
ラインハルトの手から翠色の光が出て2羽の鳥になって飛んでいく。
「え?すごい!魔法?」
「あぁ、風魔法の応用でな。声を届ける魔法なんだ。」
「いいなぁ。俺も魔法使ってみたい。」
ついつい呟く。
すると、ラインハルトが衝撃なことをいい出した。
「すぐ使えるようになると思うぞ?
料理してる時ずっと魔力が漏れ出てたから魔力自体はあるんだろうし。」
「!?え?それほんと?」
自分の掌を見ながら聞いてみる。
「あぁ、自分で気づかなかったのか?
そうだな、1番強かったときは、ドレッシングを作ってた時かな。
属性まではわからなかったけどな。
何考えてたんだ?」
ドレッシング?
アレンが食べてくれたらいいなぁって…。
「!?……い、いや、2人遅いなぁと思って……。」
「ほぅ?まぁ、アレンにはだまっといてやるよ。」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。
な?バレてる?
言い返そうとした所で2羽の鳥が戻ってきた。
「すぐ来るってさ。」って言われてしまい料理の仕上げをする羽目になった。
ラインハルト覚えてろよ?
♦♦♦♦♦
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