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26.パーティーへの招待状
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うーん…
父であるモントレート侯爵から一通の手紙が届いた。
コルストル辺境伯への手紙にわたくし宛の手紙が同封されていたのだ。
それは今までもあったことなので、問題はないのだけれど、内容が問題だった。
一ヶ月後、王宮で王太子殿下の生誕を祝うパーティーが開催される。この国の主だった貴族は皆それに出席をしなければならないから戻って来るように。
要約するとそういうことだ。
主だった貴族というのはこういう場合、伯爵家以上。
子爵、男爵家も招待状は届くが、強制ではない。ただ人脈作りという点でほとんどの人が参加することになるで、爵位持ちはほぼ参加となる。
デビュタントを終えているモントレート侯爵家の娘のわたくしもそうなると出席しなくてはならないのだ。
まじか…行きたくない。
王都、ましてや王宮なんて、嫌な予感しかしない。
去年は生誕パーティーなんてなかったのに、王太子殿下の誕生日が二十五歳の節目だからなのか。
病欠とかしたらダメかしら?
「何か悪い知らせですか?」
ミリーは手紙を持ったまま考え込んでいるわたくしを不安そうに見ている。
「悪いと言えば悪いんだけど、何かがあったわけではないから安心して」
ミリーが安心するように、微笑んでおく。
ダメよね。旅行に行ってることになってるのに病欠って無理がある。
嘘をついて欠席なんて、下手したら身を寄せているコルストル辺境伯にも迷惑がかかる。
嫌でも王都に戻らざる得ない現状に盛大なため息を吐いた。
「…という訳で、残念ながら戻らないといけなくなってしまって」
コルストル辺境伯のレナード様とナターリア様に近々王都に戻る旨の報告をする。
「そのパーティーの招待状はウチにも来てたな。ウチは参加を免除されてるから気にしてなかったが、そう言えば普通の貴族は参加義務があったな」
レナード様は書簡ケースの中をガサゴソと探す。
「じゃあ、そのパーティーが終わったらまた戻ってきたらいいわ」
ナターリア様のありがたいお言葉に「はい!喜んで!」と即答をしたいところだ。
「わたくしもそうしたいのは山々なんですけど、王宮では何があるか分からないんです」
ギルバートはずっとわたくしを探していたらしいし、絶対何かしてくるに決まってる。
あのバカ王子のことだから、保身のために碌なことを考えてないに違いない。
それによっては、変なことに巻き込まれるかもしれない。
わたくしのせいで、その変なことにコルストル辺境伯家を巻き込むわけにはいかない。
「あっ、あった。これだな。やっぱりウチにも来てた。まだ出欠の返事はしてないんだが…」
パーティーの招待状が見つかったらしく、白に金の縁取りの封筒を取り出した。
「確かに王太子殿下の生誕を祝うパーティーだとあるな。幼い時ならあったかもしれないが、王太子殿下が大きくなってから生誕パーティーを催された記憶はないが…」
レナード様が目を閉じてしばらく何事かを考え込んだ後、目を開けた。
「俺は滅多に王宮には行かないから知らないんだが、王太子殿下とギルバート殿下は実は仲がいいのか?二人は異母兄弟で仲が悪いと言うほどではないが、よくもないと認識していたのだが」
腑に落ちないといった表情だ。
「その認識で合ってます。王太子殿下は聡明でいらっしゃるので、ギルバートからするとコンプレックスを刺激されるんですよ。だから、お互い必要以上に近づくことはなかったと思います」
王太子殿下はギルバートに振り回されているわたくしを不憫に思ったのか、時折体調は大丈夫かと気にかけてくれていた。
ギルバートと違って気遣いのできる人なので、わたくしの中でも好感度が高い。
もちろん、恋愛的な意味ではなく、次代の王に戴くのに相応しいということだ。
「やはり、そうだよな。王太子殿下がギルバート殿下に協力しているというのは考え過ぎか」
レナード様もわたくしと同じようなことを考えたらしい。
ギルバートがわたくしを呼び出すために王太子殿下の名を使ってパーティーを開くのではないかと。
でも、どう考えても、あの王太子殿下がそんな馬鹿げた企みをするとは思えない。
王太子殿下は外面はいいが、所謂腹黒さんだ。
優しげな微笑みを浮かべているが、なんだかんだ言って、自分の思い通りに操作していくのに長けているのだ。
ずっと王宮に通っていたんだから、それくらいは分かる。
王太子殿下がギルバートに協力することはない。
していると見せかけることは充分有り得るし、そうとしか思えないのだけれど。
「それはないかと思うんですけど、碌でもないことが起こりそうな予感はします」
残念なことにこれは当たるだろう。
ああ、行きたくないわー
「なので、」
巻き込みたくないので、戻ってくることができるか分からないと言おうとした時、ナターリア様がそれを遮った。
「なら、レオナルドを連れて行きなさいよ」
え?いいんですか?
一瞬、思わず目が輝く。
いや、ダメでしょう。
思いっきり巻き込んじゃう。
ナターリア様は大丈夫大丈夫と笑っているが、本人そっちのけなのはいかがなものか。
「じゃあ、レオナルドの意志に任せるから。ね?本人がオッケーならいいでしょう?」
なんだかんだとナターリア様に丸め込まれてしまった気がする。
父であるモントレート侯爵から一通の手紙が届いた。
コルストル辺境伯への手紙にわたくし宛の手紙が同封されていたのだ。
それは今までもあったことなので、問題はないのだけれど、内容が問題だった。
一ヶ月後、王宮で王太子殿下の生誕を祝うパーティーが開催される。この国の主だった貴族は皆それに出席をしなければならないから戻って来るように。
要約するとそういうことだ。
主だった貴族というのはこういう場合、伯爵家以上。
子爵、男爵家も招待状は届くが、強制ではない。ただ人脈作りという点でほとんどの人が参加することになるで、爵位持ちはほぼ参加となる。
デビュタントを終えているモントレート侯爵家の娘のわたくしもそうなると出席しなくてはならないのだ。
まじか…行きたくない。
王都、ましてや王宮なんて、嫌な予感しかしない。
去年は生誕パーティーなんてなかったのに、王太子殿下の誕生日が二十五歳の節目だからなのか。
病欠とかしたらダメかしら?
「何か悪い知らせですか?」
ミリーは手紙を持ったまま考え込んでいるわたくしを不安そうに見ている。
「悪いと言えば悪いんだけど、何かがあったわけではないから安心して」
ミリーが安心するように、微笑んでおく。
ダメよね。旅行に行ってることになってるのに病欠って無理がある。
嘘をついて欠席なんて、下手したら身を寄せているコルストル辺境伯にも迷惑がかかる。
嫌でも王都に戻らざる得ない現状に盛大なため息を吐いた。
「…という訳で、残念ながら戻らないといけなくなってしまって」
コルストル辺境伯のレナード様とナターリア様に近々王都に戻る旨の報告をする。
「そのパーティーの招待状はウチにも来てたな。ウチは参加を免除されてるから気にしてなかったが、そう言えば普通の貴族は参加義務があったな」
レナード様は書簡ケースの中をガサゴソと探す。
「じゃあ、そのパーティーが終わったらまた戻ってきたらいいわ」
ナターリア様のありがたいお言葉に「はい!喜んで!」と即答をしたいところだ。
「わたくしもそうしたいのは山々なんですけど、王宮では何があるか分からないんです」
ギルバートはずっとわたくしを探していたらしいし、絶対何かしてくるに決まってる。
あのバカ王子のことだから、保身のために碌なことを考えてないに違いない。
それによっては、変なことに巻き込まれるかもしれない。
わたくしのせいで、その変なことにコルストル辺境伯家を巻き込むわけにはいかない。
「あっ、あった。これだな。やっぱりウチにも来てた。まだ出欠の返事はしてないんだが…」
パーティーの招待状が見つかったらしく、白に金の縁取りの封筒を取り出した。
「確かに王太子殿下の生誕を祝うパーティーだとあるな。幼い時ならあったかもしれないが、王太子殿下が大きくなってから生誕パーティーを催された記憶はないが…」
レナード様が目を閉じてしばらく何事かを考え込んだ後、目を開けた。
「俺は滅多に王宮には行かないから知らないんだが、王太子殿下とギルバート殿下は実は仲がいいのか?二人は異母兄弟で仲が悪いと言うほどではないが、よくもないと認識していたのだが」
腑に落ちないといった表情だ。
「その認識で合ってます。王太子殿下は聡明でいらっしゃるので、ギルバートからするとコンプレックスを刺激されるんですよ。だから、お互い必要以上に近づくことはなかったと思います」
王太子殿下はギルバートに振り回されているわたくしを不憫に思ったのか、時折体調は大丈夫かと気にかけてくれていた。
ギルバートと違って気遣いのできる人なので、わたくしの中でも好感度が高い。
もちろん、恋愛的な意味ではなく、次代の王に戴くのに相応しいということだ。
「やはり、そうだよな。王太子殿下がギルバート殿下に協力しているというのは考え過ぎか」
レナード様もわたくしと同じようなことを考えたらしい。
ギルバートがわたくしを呼び出すために王太子殿下の名を使ってパーティーを開くのではないかと。
でも、どう考えても、あの王太子殿下がそんな馬鹿げた企みをするとは思えない。
王太子殿下は外面はいいが、所謂腹黒さんだ。
優しげな微笑みを浮かべているが、なんだかんだ言って、自分の思い通りに操作していくのに長けているのだ。
ずっと王宮に通っていたんだから、それくらいは分かる。
王太子殿下がギルバートに協力することはない。
していると見せかけることは充分有り得るし、そうとしか思えないのだけれど。
「それはないかと思うんですけど、碌でもないことが起こりそうな予感はします」
残念なことにこれは当たるだろう。
ああ、行きたくないわー
「なので、」
巻き込みたくないので、戻ってくることができるか分からないと言おうとした時、ナターリア様がそれを遮った。
「なら、レオナルドを連れて行きなさいよ」
え?いいんですか?
一瞬、思わず目が輝く。
いや、ダメでしょう。
思いっきり巻き込んじゃう。
ナターリア様は大丈夫大丈夫と笑っているが、本人そっちのけなのはいかがなものか。
「じゃあ、レオナルドの意志に任せるから。ね?本人がオッケーならいいでしょう?」
なんだかんだとナターリア様に丸め込まれてしまった気がする。
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