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16.街の散策③
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瞳の色を変えることができる魔道具のメガネが壊れた。
レンズにヒビの入ったメガネを掛けてみたが、レオナルドに首を横に振られる。
うわー!これ高いやつだよね。
普通のでも高いのに、魔道具だし。
「ごめんなさい。僕がぶつかったから」
ユアンが申し訳なさそうにリーリエを見る。
ユアンがぶつかって来た時に、衝撃でメガネが落ちてしまったようだ。
「あっ、うん、大丈夫よ。直せるわ(きっと、多分…)」
何の根拠もないが、俯いてしまったユアンを元気づけるために明るく言う。
食べる物にも困っているユアンに弁償しろだなんて言えないし、言う気もない。
元々目が悪くて掛けていたメガネではないから、どうしても必要なわけでもない。
「ぶつかる前に回避できなかった俺の落ち度なので、それは責任を持って修理します」
レオナルドがリーリエの顔からそっとメガネを外した。
「え?でも…」
いくらかかるか分からない物だし、レオナルドはリーリエを護衛していてくれているが、リーリエがお金を出して雇っている訳じゃない。
そんな風に責任を感じてもらうと、なんだか居た堪れない。
邪魔しないように少し離れた場所にいたレオナルドがぶつかるのに、間に合わなかったのは仕方ない。
と言うか、吹っ飛びそうになったのを助けてもらっただけでもありがたいのに!
「メガネなら伝手があるし、僕が直してあげるよ」
先を行っていたアンドリューがいつの間に戻って来たのか、手を出してる。
「え、でも、そんな…」
それこそ何の関係のないアンドリューに、かなりの金額がかかるであろう修理費を出してもらう理由はない。
「腕のいい職人を知ってるから、任せときなよ」
気軽に言うアンドリューに困っていると、急に冷気が漂って来て、ブルっと震えた。
「修理の店くらい知ってるから大丈夫だ」
レオナルドのいつもの無表情に心なしか冷たい瞳が合わさって、ブリザードが見える気がする。
うわっ!?何これ。レオナルドさんって氷属性?
寒い。寒過ぎる。
「えっと、それは後で考えるとして、ユアンくんがお腹をすかしてるんで、まずはマイルズ亭に行きたいんですけど、皆さんはどうされます?」
これ以上、ここでこの話をしていると凍えそうなリーリエは、困った顔をして立ち尽くしていたユアンの手を引き歩き出す。
「あぁ、みんなマイルズ亭に行ってみたいって」
アンドリューは何事もなかったように、リーリエたちについて来た。
「なら、みんなでマイルズ亭でランチですね。わたしも久しぶりだから、楽しみです」
魔力検査の後、突然辞めることになったが、久しぶりにマイルズ亭のおじさんやおばさんに会えると思うとウキウキしてくる。
「マイルズ亭のご飯はすごく美味しいから期待しててね」
流石にこの年でそれはまずいかと、スキップしそうになるのを何とか我慢して普通に歩いたが、ユアンと繋いだ手は少しばかり大きく振ってしまっていた。
「リリー!久しぶりだね。元気にしてたかい」
マイルズ亭に入って行くと、すぐにおばさんが気づいて顔を綻ばせた。
おばさんの大きな声に、おじさんも厨房から顔を覗かせて嬉しそうに笑みを見せる。
「元気よ。突然辞めることになってごめんなさい」
「分かってるから、気にしなくてもいいよ。それより今日は友達を連れて来てくれたのかい?」
リーリエの後ろにいる眩い面々を見て、一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに嬉しそうに空いている席に案内する。
ランチの時間がそろそろ終わるという時間になっていたので、お店の中は二、三人のお客がいる程度だった。
「ユアンくん、何が食べたい?わたしのおすすめは唐揚げ定食だよ」
「じゃあ、それにします」
リーリエに促されて、ユアンはおずおずと椅子に座った。
「みんなはどうします?」
「僕も唐揚げ定食にするよ」
来店したことがあるライハートが即座に決める。
「唐揚げって初めて聞くけど、どんなやつ?」
アンドリューとフェルナンドは興味津々といった感じで、目を輝かせている。
「鶏肉に味をつけて、揚げた物ですよ」
リーリエが答えると、二人共唐揚げを注文することに決めた。
「じゃあ、わたくしもそれでお願いします」
同じ物を注文したパトリシアが、さりげなく観察していたことに、久しぶりのマイルズ亭に浮かれていたリーリエは気づかなかった。
レンズにヒビの入ったメガネを掛けてみたが、レオナルドに首を横に振られる。
うわー!これ高いやつだよね。
普通のでも高いのに、魔道具だし。
「ごめんなさい。僕がぶつかったから」
ユアンが申し訳なさそうにリーリエを見る。
ユアンがぶつかって来た時に、衝撃でメガネが落ちてしまったようだ。
「あっ、うん、大丈夫よ。直せるわ(きっと、多分…)」
何の根拠もないが、俯いてしまったユアンを元気づけるために明るく言う。
食べる物にも困っているユアンに弁償しろだなんて言えないし、言う気もない。
元々目が悪くて掛けていたメガネではないから、どうしても必要なわけでもない。
「ぶつかる前に回避できなかった俺の落ち度なので、それは責任を持って修理します」
レオナルドがリーリエの顔からそっとメガネを外した。
「え?でも…」
いくらかかるか分からない物だし、レオナルドはリーリエを護衛していてくれているが、リーリエがお金を出して雇っている訳じゃない。
そんな風に責任を感じてもらうと、なんだか居た堪れない。
邪魔しないように少し離れた場所にいたレオナルドがぶつかるのに、間に合わなかったのは仕方ない。
と言うか、吹っ飛びそうになったのを助けてもらっただけでもありがたいのに!
「メガネなら伝手があるし、僕が直してあげるよ」
先を行っていたアンドリューがいつの間に戻って来たのか、手を出してる。
「え、でも、そんな…」
それこそ何の関係のないアンドリューに、かなりの金額がかかるであろう修理費を出してもらう理由はない。
「腕のいい職人を知ってるから、任せときなよ」
気軽に言うアンドリューに困っていると、急に冷気が漂って来て、ブルっと震えた。
「修理の店くらい知ってるから大丈夫だ」
レオナルドのいつもの無表情に心なしか冷たい瞳が合わさって、ブリザードが見える気がする。
うわっ!?何これ。レオナルドさんって氷属性?
寒い。寒過ぎる。
「えっと、それは後で考えるとして、ユアンくんがお腹をすかしてるんで、まずはマイルズ亭に行きたいんですけど、皆さんはどうされます?」
これ以上、ここでこの話をしていると凍えそうなリーリエは、困った顔をして立ち尽くしていたユアンの手を引き歩き出す。
「あぁ、みんなマイルズ亭に行ってみたいって」
アンドリューは何事もなかったように、リーリエたちについて来た。
「なら、みんなでマイルズ亭でランチですね。わたしも久しぶりだから、楽しみです」
魔力検査の後、突然辞めることになったが、久しぶりにマイルズ亭のおじさんやおばさんに会えると思うとウキウキしてくる。
「マイルズ亭のご飯はすごく美味しいから期待しててね」
流石にこの年でそれはまずいかと、スキップしそうになるのを何とか我慢して普通に歩いたが、ユアンと繋いだ手は少しばかり大きく振ってしまっていた。
「リリー!久しぶりだね。元気にしてたかい」
マイルズ亭に入って行くと、すぐにおばさんが気づいて顔を綻ばせた。
おばさんの大きな声に、おじさんも厨房から顔を覗かせて嬉しそうに笑みを見せる。
「元気よ。突然辞めることになってごめんなさい」
「分かってるから、気にしなくてもいいよ。それより今日は友達を連れて来てくれたのかい?」
リーリエの後ろにいる眩い面々を見て、一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに嬉しそうに空いている席に案内する。
ランチの時間がそろそろ終わるという時間になっていたので、お店の中は二、三人のお客がいる程度だった。
「ユアンくん、何が食べたい?わたしのおすすめは唐揚げ定食だよ」
「じゃあ、それにします」
リーリエに促されて、ユアンはおずおずと椅子に座った。
「みんなはどうします?」
「僕も唐揚げ定食にするよ」
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「唐揚げって初めて聞くけど、どんなやつ?」
アンドリューとフェルナンドは興味津々といった感じで、目を輝かせている。
「鶏肉に味をつけて、揚げた物ですよ」
リーリエが答えると、二人共唐揚げを注文することに決めた。
「じゃあ、わたくしもそれでお願いします」
同じ物を注文したパトリシアが、さりげなく観察していたことに、久しぶりのマイルズ亭に浮かれていたリーリエは気づかなかった。
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