【完結】もしかしてヒロインなのでしょうか?断固拒否ということで

桃田みかん

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31.最終話

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 誘拐事件から二日後、リーリエまだ王宮に留め置かれていた。

 パトリシアは昨日の内に自邸へと帰って行ったが、リーリエは事件の被害者ということで、まだ帰宅が許されなかったのだ。


「リーリエ様はとっても可愛らしいお顔でいらっしゃるから、着飾らせ甲斐がありますわぁ」
 王宮のメイドたちに、ドレスを着せられ、ヘアメイクまでしっかりされて、すっかり着せ替え人形と化していた。

 コルセット、きつい…
 世の中の貴族令嬢はみんなこんなの着てるの?
 用意してくれた少し濃いめの水色のドレスは素敵だけど…

 少し童顔気味のリーリエの顔は少し大人っぽくなってキレイなお姉さん風になっているが、コルセットのせいで表情は冴えない。

 嬉々として着飾らせさてくれたメイドさんたちには申し訳ないけど、早く着替えたい。
 全く寛げない!

 学院の制服のまま、何も持たずにここに連れて来られたから、着替えの服などは用意してもらったものを着せてもらっている。
 昨日は誘拐された翌日ということで、気を遣ってくれたのか、比較的楽なワンピースを用意してくれていたのに、今日は何故かドレスだ。

「やっぱり苦しいので着替えを…」
 リーリエが言いかけると
「コルセットを少し緩めますね」
 と緩めて少し楽にしてくれたものの、着替えは笑顔で却下される。

「このドレスはライハート殿下とパトリシア様が手配されたんですよ。素敵ですよね。すごくお似合いです。何かあったら、仰って下さいね」
 ライハート殿下たちが折角用意してくださった物を気に入らないだなんて許されませんことよ、ほほほといった感じで、そのまま部屋から出て行ってしまった。

 
 ドレスのままベッドでゴロゴロと寝転ぶ訳にいかず、ソファに座り、ぼんやりと綺麗に整えられた庭を見つめる。

 ………暇だ。暇過ぎる。


 部屋の外ではレオナルドを含めた騎士が交代で護衛を務めていてくれている。

 聖属性の魔力を持つとはいえ、ただの平民がこんなに高待遇で大丈夫なのか思うものの、
「聖属性持ちってだけで狙われるし、元王女側の残党がいるかもしれない」
 ライハートにそう言われれば、リーリエが口を出せる訳もない。


 コンコン
 響いたノックの音に返事をすると、レオナルドが入ってきた。
 リーリエと目が合うと、目を見開いたまま、動きを止めた。

 レオナルドが部屋に入って来ることは滅多にないので、何事かと目を瞬かせる。

「……渡したい物があるだが…」
 しばらく見つめ合った後、ポツリと言うと、手を差し出した。

 その手のひらの上には鮮やかな青い色の魔石の付いたネックレスが載っていた。

 綺麗な色の魔石。レオナルドさんの瞳の色みたい…

 レオナルドの瞳とネックレスの魔石をリーリエの視線が往復する。

「これは居場所が特定できる魔道具なんだ。監禁場所を特定できたのは、これを持っていたからということになっているから、身につけておいて欲しい。常に居場所を特定する訳ではなく、必要な時にしか発動させないから」
 レオナルドが少し早口で説明する。

「あっ、そう言えばそんなこと言ってましたね」
 なんだ、それか…なんだかがっかりした気になるリーリエ。


「ライハート殿下が用意してくれたんですか?」
 それなら、ライハート殿下にお礼を言わないとなと思いつつ、レオナルドの手のひらからネックレスを受け取った。

「いや、それは俺が用意した物だ」
 レオナルドの言葉にネックレスを身につけようとしたリーリエの動きが止まる。

「え…」
「俺が君の為に用意した物だ。リーリエ嬢が行方不明だと聞いた時、不安でしょうがなかった。だから、身につけてくれると俺が安心する」
 目の前には少し赤い顔をしたレオナルドがいる。

 レオナルドさんが安心する?
 それくらい心配してくれていたってこと?
 そして、魔石の色がレオナルドさんの瞳の色と同じなのは…

 いやいや、護衛対象が突然いなくなったら、不安になるのは当然?

「仕事としてだけではなく、リーリエ嬢を守りたいんだ。…迷惑かな」
 最後には自信なさそうな顔になったレオナルドの手を思わず掴んだ。

「そんなことないです!えっと、嬉しい、です」
 自分でも赤くなっているだろうと分かる。

 赤い顔の二人が再び見つめ合うことしばし。


 ガタン
 
 静かな空間に突如、ドアから音が響いた。

 リーリエとレオナルドがビクリとして、音のした方を見ると、ドアの隙間から二対の瞳が覗いている。

「!?」

「パティ?ライハート殿下?」
 リーリエの声が思わず低くなる。

「ごめんね。邪魔しちゃって」
 パトリシアは申し訳なさそうにしながらも、目が笑っている。

「いや、わざと邪魔しようとした訳じゃないんだぞ。いい雰囲気だったから、声を掛けそびれただけだから」
 ライハートは真面目な顔をして言い訳をしているが、口元がひくひくしている。

「なるほど、ドアをこっそり開けて見るのが、わざとではない訳ですね」
 辺りに冷たい空気が漂い始める。

「いやいや、待て待て。凍ってる!」
 ライハートが掴んだままだったドアノブが凍りついて、慌てて手を離す。

「じゃあ、後は二人で楽しんでくれ」
 ライハートとパトリシアはニマニマしつつも
慌てて退散して行った。

 閉じられたドアを見つめて、レオナルドがため息を吐いた。

「リーリエ嬢にそのドレスを着せるところから、読み通りなんだな」
 レオナルドの言葉にリーリエは首を傾げる。

「ライハート殿下たちだろう?そのドレスを用意したのは。とても似合ってるし、綺麗だが、次は俺に用意させてほしい」
 
 綺麗!?
 絶対、女の人に甘い言葉を言わなさそうなレオナルドさんに褒められた!

 いつも無表情、言葉少ななレオナルドが照れくさそうにしながら、褒めてくれるのが嬉しくて思わず顔が綻ぶ。

 ありがとう!
 メイドさんたち!
 …ついでにライハート殿下とパティも。

 あ、でも…

「あの、すごく嬉しいんですけど、ドレスを着る機会なんてこの後はないかと…」

「…いや、多分、あると思う。本当に何にも知らされてないんだな」
 最後にはぶつぶつと呟くように小さな声になったので、リーリエには聞き取れなかった。


「ドレスを贈り、パーティーにパートナーとして参加する権利をもらいたい」
 レオナルドの真剣な様子に、訳が分からないながらも、レオナルドにエスコートされて、パーティーで踊るのを想像するだけでワクワクする。

「そんな機会があるとは思えないけど、エスコートしてもらえるのは嬉しいです。その時はよろしくお願いしますね」

 そう言えば、魔法学院の卒業パーティーがあるはずだよね。その時にエスコートしてもらえるかな?

 楽しみだなーと浮かれているリーリエにはレオナルドのその後の言葉が届いていなかった。

「じゃあ、正式なものはまた改めて然るべき筋からちゃんと申し込むから」




 レオナルドから、メルトロー侯爵家経由で婚約を打診されて、リーリエが腰を抜かしそうになるのは、そう遠くない未来。

                〈完〉









 最後まで、お読みくださり、ありがとうございました。
 ここで一旦、完結とさせていただきますが、また、レオナルドサイドの話を足すつもりなので、またお読み頂けると、嬉しいです。
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感想 3

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みんなの感想(3件)

ねこのたま
2024.08.29 ねこのたま

はぁ~。とても面白かったです。リーリエもパトリシアもいい子で可愛いし、ほのぼのしていて良かったです。
レオナルドサイドのお話や続き等もあると嬉しいです。これからも頑張ってください。

解除
cyame76
2023.04.30 cyame76

完結おめでとうございます。
悪役?夫人の方がヤベー女性なの面白かったです。
ざまぁされなくて良かった。

2023.04.30 桃田みかん

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
リーリエも勘違いの数々に悶絶しつつも、ほっとしていることと思います。

解除
cyame76
2023.03.19 cyame76

面白いです!リーリエが果たして、ヒロインなのかどうなのかワクワクしてます。
更新楽しみにしています。

2023.03.19 桃田みかん

ありがとうございます。
楽しんでいただけると、嬉しいです。
リーリエは思い込みで行動しているので、それがいいことなのかどうか…更新頑張ります。

解除

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