【完結】もしかしてヒロインなのでしょうか?断固拒否ということで

桃田みかん

文字の大きさ
31 / 32

30.男たちの密談

しおりを挟む
「…ということらしい」
 ライハートがリーリエとパトリシアのふたりと話した後、ライハートの執務室に集まっている、アンドリューとフェルナンドとレオナルド。

 二人の前世の話を話すライハートは微妙な顔をしている。

「それはまた、予想の斜め上を行く話だね。しかも、あの完璧な令嬢パトリシアちゃんもとはね。今度、異世界の話を聞いてみよう」
 アンドリューは目を輝かせて面白がっている。

「他人の婚約者をパトリシアちゃんとか馴れ馴れしく呼ぶな」
「僕たちは幼馴染だろ。ケチケチするなよ。そんなに独占欲丸出しにしてると嫌われるぞ」
 顔を顰めるライハートを揶揄うようにカラカラと笑う。

「パティの話を信じない訳ではないが、二人が異世界からの転生者でここが物語の世界と似ているという荒唐無稽な話をしているなんて噂を広める訳にはいかない。だから、この話は他言無用だ」
 アンドリューの軽い態度にライハートは大きなため息を吐いた。

「監禁場所が特定できたのは、以前から危険を感じていてリーリエ嬢に居場所を特定できる魔道具を持たせていたということにしようと思う」

「そう、ですね。そういう話にしておくのが無難ですね。学院中探して見つからなかったから、仕方なく、居場所を特定する魔道具を使ったと言えば、まぁ、理解してもらえますよ。多分」
 フェルナンドは、そんな魔道具、ドン引きされそうだけどと複雑そうな顔をしている。
 
「それなら、実際に魔道具を持っていた方がいいんじゃないですか?」
 レオナルドの無表情は、前世とか、物語と似た世界だとかの話を聞いても崩れない。

「元凶である元王女は捕らえているし、もう心配はなうとは思うが、一応、しばらくは持ってもらうか。その魔道具は…」
 ライハートは視線を感じて一旦、言葉を切ると、レオナルドがじっとこちらを見ている。

「…レオナルドに任せる。適当なのを早急に用意して渡しておいてくれ。…護衛のレオナルドから渡す方が自然だよな。うん」
 触らぬ神に祟りなしとばかりに、レオナルドに一任する。

「僕が用意しても…」
 アンドリューが言いかけた言葉を途中で止めた。
 
 急に下がった気温に腕を摩る。

「……任せるよ。…氷の騎士ってこう言う意味かよ」
 最後の方はぶつぶつと他の人には聞こえないくらいの声で呟いた。


「それで、あれから元王女はどうしてるんだ?」
 気温が戻って、ほっと息を吐いたアンドリューは話を変えた。
「クラウディオを出せって未だに騒いでる。あの執着振りは何なんだろうな。どれだけもう亡くなってるって言っても信じない」
 ライハートは疲れたように目頭を押さえた。

「あれでも元王女だから、こっちで処罰するのはまずいんだ。キルバル国に送り返してあっちでどうにかしてもらうことになると思う」
「他国の民を誘拐したって言っても、平民だとそこまでの罪には問えないのか。嫁いでいるとはいえ、元王族だからな」
「あー、それな。元王女がクラウディオに執着してるのは分かってたから、リーリエ嬢を何かあった時に守る為にメルトロー侯爵はこっそり養子縁組してたらしい。大々的に公表すると、すぐに元王女に目をつけられるから、書類上だけだけど。だから、他国の侯爵令嬢を誘拐したということで罰することになるはずだ」

「へぇ、あのリーリエちゃんが侯爵令嬢か」
「リーリエ嬢はああ見えて、短い期間とはいえマルトレイ夫人の教え子らしいぞ。姉上なんて、三日ともたなかったんだがな」

「マルトレイ夫人!」
 厳しいことで有名で、王族の教育にも関わったことがあるマルトレイ夫人の教え子という意外過ぎる経歴に、アンドリューとフェルナンドは目を丸くする。

「面白過ぎるな。リーリエちゃん」
 アンドリューが誰にも聞こえない声で小さく呟いた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

お掃除侍女ですが、婚約破棄されたので辺境で「浄化」スキルを極めたら、氷の騎士様が「綺麗すぎて目が離せない」と溺愛してきます

咲月ねむと
恋愛
王宮で侍女として働く私、アリシアは、前世の記憶を持つ転生者。清掃員だった前世の知識を活かし、お掃除に情熱を燃やす日々を送っていた。その情熱はいつしか「浄化」というユニークスキルにまで開花!…したことに本人は全く気づいていない。 ​そんなある日、婚約者である第二王子から「お前の周りだけ綺麗すぎて不気味だ!俺の完璧な美貌が霞む!」という理不尽な理由で婚約破棄され、瘴気が漂うという辺境の地へ追放されてしまう。 ​しかし、アリシアはへこたれない。「これで思う存分お掃除ができる!」と目を輝かせ、意気揚々と辺境へ。そこで出会ったのは、「氷の騎士」と恐れられるほど冷徹で、実は極度の綺麗好きである辺境伯カイだった。 ​アリシアがただただ夢中で掃除をすると、瘴気に汚染された土地は浄化され、作物も豊かに実り始める。呪われた森は聖域に変わり、魔物さえも彼女に懐いてしまう。本人はただ掃除をしているだけなのに、周囲からは「伝説の浄化の聖女様」と崇められていく。 ​一方、カイはアリシアの完璧な仕事ぶり(浄化スキル)に心酔。「君の磨き上げた床は宝石よりも美しい。君こそ私の女神だ」と、猛烈なアタックを開始。アリシアは「お掃除道具をたくさんくれるなんて、なんて良いご主人様!」と、これまた盛大に勘違い。 ​これは、お掃除大好き侍女が、無自覚な浄化スキルで辺境をピカピカに改革し、綺麗好きなハイスペックヒーローに溺愛される、勘違いから始まる心温まる異世界ラブコメディ。

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

所(世界)変われば品(常識)変わる

章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。 それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。 予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう? ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。 完結まで予約投稿済み。 全21話。

処理中です...