なんで？なんで？なんで？

最終章

ブランコ山

ミカちゃんの話はなしを聞きいて、ブンちゃんがボソッと呟つぶやきました。

「なんだ、ミカちゃんもリキヤ君くんと同おなじか」

ブンちゃんの言葉ことばにリキヤ君とミカちゃん、二人ふたりが一緒いっしょに反応はんのうしました。

「おい！」

リキヤ君がブンちゃんを睨にらみます。

「えっ？」

驚おどろいた顔かおで、ミカちゃんがブンちゃんを見詰みつめます。

「あ！」

自分じぶんが何なにを言いってしまったのか気が付ついたブンちゃんは、慌あわてて口に手を当あてます。
情なさけない表情ひょうじょうで、リキヤ君がブンちゃんを見詰みつめめて言いいました。

「お前まえ、言いうなよー」

ミカちゃんが二人ふたりをジロジロ見回みまわしながら、秘密ひみつを探さぐるように言いいました。

「なになにー、同おなじってなにー」

リキヤ君はため息いきをつくと、

「ハァー・・・」

と言いって俯うつむきました。
ブンちゃんは申もうし訳わけなさそうにリキヤ君に謝あやまります。

「ごめん・・・」

リキヤ君が顔かおを上あげて、チラッとミカちゃんを見ると、

「ハー、まあ、いいか」

と、諦あきらめたように言いいました。
ミカちゃんは興味津々きょうみしんしんでリキヤ君を見詰みつめています。

リキヤ君は「仕方しかたない」と言いう表情ひょうじょうをすると、空を見上みあげて、思おもい出すように話はなし始はじめました。

「あのな・・・」

あの夏休なつやすみの出来事できごとです。

ブランコ山やまで女おんなの子ことぶつかったこと。
強つよい雨あめの中なかでイチョウの木きに追おいかけられるような怖こわい思おもいをしたこと。
夢ゆめの中のことやその後あとの不思議ふしぎな出来事できごと。
自分じぶんがどれだけ周まわりに迷惑めいわくをかけていたのか気付きづいたこと。
女の子になかなか会あえなかったこと。
それでも、やっと会あえて謝あやまれたこと。

ミカちゃんの話はなしに応こたえるように、リキヤ君も全すべてを話はなしました。

カサカサカサ

穏おだやかな風かぜが大おおイチョウの葉はを揺ゆらしています。
遠とおくの空そらを見みながらミカちゃんが言いいました。

「ふーん、だからここに来きてるのかあ」

リキヤ君は少すこし顔かおを赤あかくして、言いい訳わけするように

「毎日まいにち来きてるわけじゃないぞ。たまにだよ。たまに」

と言いって、照れくさいのを隠すように遠とおくの空を見詰みつめると、自分じぶんから話はなしを逸そらすようにブンちゃんに言いいました。

「お前まえの話はなしもしてやれよ」

ブンちゃんは驚おどろいて、リキヤ君を見詰みつめます。

「えっ、俺おれも？」

ブンちゃんがチラッとミカちゃんを見ると、ミカちゃんはニヤニヤしながらブンちゃんを見ていました。
ブンちゃんも「仕方しかたない」と言いう表情ひょうじょうを浮うかべると、思おもい出すように話はなし始はじめました。

こうた君がマスクをして眠ねむっていたこと。
こうた君から手紙てがみをもらったこと。
眠ねむっているこうた君とこうた君のお母さんに謝あやまったこと。

ブンちゃんはミカちゃんやクラスのみんなに話はなしていない、病院びょういんでの出来事できごとを話はなしました。

「リキヤ君も不思議ふしぎな体験たいけんしてたのね。だからか、だからあの時とき、こうた君を許ゆるせたんだ。だからブンちゃんもみんなの前まえで謝あやまったんだ」

ミカちゃんがそう呟つぶやくと、それぞれの体験たいけんを思おもい出だしながら、三人さんにんは黙だまってしまいました。
しばらくして、ミカちゃんが顔かおを上げ、大おおきく背伸せのびをして言いいました。

「うーーん、なんか少すこしだけスッキリした！」

すると、ブンちゃんがボソッと呟つぶやきました。

「もしかして、リキヤ君とミカちゃんの話はなしに出てきた女の子って、同おなじ女の子だったりして・・・」

ブンちゃんは二人ふたりを見ました。
リキヤ君とミカちゃんは少し驚おどろいた表情ひょうじょうです。
ブンちゃんは二人ふたりの表情ひょうじょうが変かわったのを見て、また手てで口を押おさえて言いいました。

「あ、ごめん。また余計よけいなことだったね」

リキヤ君が苦笑にがわらいをして言いいました。

「しょうがねーなー」

ミカちゃんはクスクスと笑わらって呟つぶやきました。

「でも確たしかに『不思議ふしぎな子』ってことでは同おなじかもね」

ミカちゃんは納得なっとくしたようにリキヤ君を見詰みつめます。
リキヤ君はミカちゃんを横目よこめで見て言いいました。

「でも、ミカの会あった女の子は、本当ほんとうにいたのかもハッキリしないんだろう？」

ミカちゃんは口を少し尖とがらせて、

「最近さいきんじゃ自分でも分わかんなくなっちゃった。落おち込こんでた時ときだから、ベンチで勝手かってに妄想もうそうしちゃったのかも知しれないし、今いまじゃ、お母かあさんが言いうように、眠ねむっちゃって夢ゆめを見ていたのかも知しれないって思おもう時ときもある。ホント、何なんだったんだろうって・・・」

そう言いうと、ミカちゃんはベンチから立たち上あがって、大イチョウの方ほうに視線しせんを移うつし、

「変かわっていくのは、大人おとなになるために仕方しかたないんだろうけど、忘わすれてしまうのはなんか寂さびしい」

と、笑わらっているのか、悲かなしんでいるのか、よく分わからない顔かおをして言いいました。

「うわー、すごいよー」

小ちいさな子が楽たのしそうにブランコで遊あそんでいます。
小さな子のお母かあさんは優やさしい表情ひょうじょうで見守みまもっています。
ブランコの横よこでは風船ふうせんを持もった子が、ブランコの順番じゅんばんを待まっています。
銀色ぎんいろの風船ふうせんです。
糸いとには犬いぬの形かたちをした紙かみがついています。

「あっ」

ミカちゃんが急きゅうに声こえを上げました。

「あの風船ふうせん、覚おぼえてる」

ブンちゃんとリキヤ君はミカちゃんの視線しせんの方向ほうこうに目めを向むけます。
（あっ！）
リキヤ君は風船ふうせんを見てハッとしました。
ミカちゃんは何なにかを思おもい出すように、目を閉とじて言いいました。

「うーんと、病院びょういんの木に引ひっ掛かかってた。確たしかイチョウの木だったわ。ちょうど金属きんぞくの梯子はしごみたいなのが近ちかくあったから、立てかけて、木に登のぼって取とったのよ。そうそう、思おもい出した。
糸いとに筒つつみたいなのが付ついてたから、手に取とって『何なんだろうって』って覗のぞき込こんでみたの。そしたら文字もじが書かいてあった。そう！『おにいちゃん』って字じが書かいてあった。小さな子が飛とばしちゃったのかなって思おもったんだけど、糸いとを外はずして見るのは気きが引ひけたし、もしかしたら入院にゅういんしいる子へのプレゼントかなと思おもって、そのまま看護師かんごしさんに渡わたした！」

蘇よみがえった記憶きおくにミカちゃんは興奮こうふんしています。
今度こんどはリキヤ君が興奮こうふんしたようにミカちゃんに尋たずねました。

「それって、いつだよ」

ミカちゃんは記憶きおくを探さぐるように答こたえました。

「えーっと、確たしか夏なつだった。ブンちゃんが転校てんこうしてきた四年生よねんせいの夏休なつやすみ。そうそう、夏休なつやすみの最初さいしょの日で、ほら、凄すごい雨が降ふった時ときあったじゃない。そう『ゲリラ豪雨ごうう』ってやつ？　短みじかい時間じかんだったけど。風かぜも強つよくて、窓まどが壊こわれるんじゃないかと思おもった。雷かみなりも凄すごくて。覚おぼえてない？　うちのお母かあさんなんか洪水こうずいになるんじゃないかって凄すごく心配しんぱいしてた。たしか風船ふうせんを木から取とった後あと、急きゅうに降ふって来きたのよ」

ミカちゃんも興奮気味こうふんぎみです。
（もしかして届とどけた絵えって・・・）
ミカちゃんは女の子の言葉ことばを思おもい出していました。
ブンちゃんも思おもい出して呟つぶやきました。

「夏休なつやすみの最初さいしょの日って・・・、ああ、秘密基地ひみつきちで大変たいへんだった時ときだ」

ミカちゃんの話はなしを聞きいて、リキヤ君が驚おどろいた顔かおをしています。
忘わすれる訳わけがありません。
イチョウの木が迫せまって来きたあの日の雨あめです。
リキヤ君が銀色ぎんいろの風船ふうせんを見ながら言いいました。

「俺おれがさっき話はなした雨あめだよ。飛とばしてしまった女の子の風船ふうせんもあんな風船ふうせんだった」

「あっ！」
何なにかを思おもい出したように、いきなりブンちゃんが立ち上がって、ミカちゃんに詰つめ寄より言いいました。

「お兄にいちゃんって、もしかしてひらがなで書かいてあった？」

「何なんで知しってるの」と言いった表情ひょうじょうで、ミカちゃんはブンちゃんを見詰みつめて答こたえました。

「そう、ひらがなで『おにいちゃん』って。筒つつの中を覗のぞいただけだから、絵えなのか何なんだったのかは分わからなかったけど、文字もじは紙かみの下の方ほうに書かいてあった」

驚おどろいた表情ひょうじょうでブンちゃんが言いいました。

「覚おぼえてるよ。『おにいちゃん』って書かいてあった男の子の絵えが、こうた君の病室びょうしつに貼はってあった。確たしか、もう一枚いちまい貼はってあって、その絵えの男の子が何なんとなくリキヤ君に似にてたのも覚おぼえてる。少ししぼんでたけど銀色ぎんいろの風船ふうせんも二ふたつあったよ」

ブンちゃんも興奮こうふんしています。

「もしかして」

ブンちゃんがそう言いうと、三人はお互たがいの顔かおを見合みあわせました。

「おーーい、リキヤー」

聞きき覚おぼえのある声こえが、耳みみに飛とび込こんできました。
自転車じてんしゃで坂さかを上のぼって、誰だれかが三人の方ほうに近付ちかづいてきます。
ケンタ君です。
ケンタ君が自転車じてんしゃのまま公園こうえんに入はいって来きました。

「はーー、やっぱりここだった」

ケンタ君は手に何なにかを持もっています。
ケンタ君は息いきを整ととのえながら言いいました。

「別べつに急いそぎじゃなかったんだけど、懐なつかしい写真しゃしんが出てきたから、リキヤに届とどけようと思おもってさ、リキヤの家いえまで行いったんだよ。そしたら、おばさんがここじゃないかって」

ケンタ君はニヤニヤしながら緑色みどりいろの封筒ふうとうを見せて話はなしを続つづけました。

「ほら、あの時ときの写真しゃしんだよ。リキヤがここで女の子とぶつかった時ときの。あの後あと、お父とおさんのパソコンの中にデータが入ったままだったんだけど、俺おれ、パソコン弄いじってて偶然ぐうぜん見つけちゃってさ。それでリキヤに見せようと思おもってプリントしたんだ。学校がっこうで渡わたそうと思おもったけど、直接ちょくせつ渡わたした方ほうがいいかなと思おもってさ。何なんか懐なつかかしいよね。でも、プリントした後あと、人の写真しゃしんがちょっと薄うすくなってきちゃってるんだよなぁ。まあ、分わかるからいいよね。それにまたプリントできるし」

そう言いうと、ケンタ君はリキヤ君に封筒ふうとうを渡わたしました。

「リキヤが撮とった写真しゃしんだけ入ってるから」

そう付つけ加くわえたケンタ君は、自転車じてんしゃから降おりずに、そのまま走はしって行いってしまいました。
リキヤ君は思おもい出しました。
（あの時ときのだ。ぶつかってから立ち上がろうとした時ときのだ）

『わざとじゃないんです』

思おもわずシャッターを押おしてしまって、男おとこの人ひとに言いい訳わけをした自分じぶんの姿すがたが浮うかびました。
ミカちゃんが胸むねに手を当あてながら、リキヤ君に言いいました。

「ねえ、開あけて見せて」

ミカちゃんには不思議ふしぎなことの続つづきがある予感よかんがしていました。
リキヤ君が封筒ふうとうから写真しゃしんを取とり出だします。
ブンちゃんからは反対向はんたいむきでよく分わかりません。
でも、ここブランコ山から写うつした学校がっこうの写真しゃしんや大イチョウ、町まちの景色けしき、そして小さな子供こどもたちが乗のっているブランコが写うつっているのは分わかりました。
そして人が写うつった写真しゃしんが出てきました。
ほかの写真しゃしんより人の姿すがたが薄うすれているように見えます。
その写真しゃしんには、こちらを見る男の人が写うつっていて、その後うしろに横よこを向むいた女の子と女の人が写うつっていました。
リキヤ君の横よこで写真しゃしんを覗のぞき込こんだミカちゃんが、急きゅうにリキヤ君のシャツを掴つかんで泣なきそうな声こえを出だしました。

「この子、私わたしが会あった女の子・・・。女の人も男の人もあの時ときの・・・」

（え？）
リキヤ君がミカちゃんの顔かおを見詰みつめます。
ミカちゃんの目がだんだん潤うるんでいくのがリキヤ君には分わかりました。

「ホントだったんだ。やっぱりホントだったんだ。う、うう・・・」

ミカちゃんの目から大粒おおつぶの涙なみだが流ながれ落おちました。
リキヤ君は声こえが出ません。
リキヤ君の持もつ写真しゃしんをブンちゃんが覗のぞき込こみます。
女の人が目に入りました。

「あっ・・・」

ブンちゃんは驚おどろいて声こえが出ません。
声こえを上げたブンちゃんをリキヤ君が見詰みつめます。
ミカちゃんも顔を上げ、ブンちゃんの方ほうに目を向むけました。
胸むねに手を当あてながら「落おち着つけ」と自分じぶんに言いい聞きかせるように、ブンちゃんがゆっくりと静しずかに話はなし出だしました。

「この女の人、こうた君のお母かあさんだよ。男の人はこうた君のお葬式そうしきで、みんなの前まえで挨拶あいさつしてた。それにこの女の子、お葬式そうしきの時とき、こうた君のお母かあさんの横よこにいた・・・.たぶん、こうた君の妹・・・。」

ブンちゃんはドキドキしています。
リキヤ君はまだ声こえが出でません。
ミカちゃんは両手りょうてで顔かおを覆おおいました。

三人はしばらく黙だまったままでした。

サササササ

大イチョウの葉はが揺ゆれています。
ブンちゃんが空そらを見上みあげて呟つぶやきました。

「何なんか不思議ふしぎだね。三人とも忘わすれられない思おもい出でが繋つながっていたなんて」

ブンちゃんはゆっくりと流ながれる雲くもを見詰みつめました。
お葬式そうしきの日ひ、雲くもに映うつったこうた君の笑顔えがおが蘇よみがえります。

「ああ、ホントだな」

リキヤ君がやっと声こえを出しました。

「う、うう」

ミカちゃんは声こえを抑おさえるように泣ないています。

「僕ぼくら、こうた君とこうた君の家族かぞくに大切たいせつなことを教おしえてもらったんだね」

空そらを見上みあげているブンちゃんの目にも、涙なみだが溜たまっていました。
また三人はしばらく黙だまったままでした。
それぞれが自分じぶんの思おもい出での中なかにいます。

サササササ

大イチョウの木が静しずかに葉はを揺ゆらしています。
ブンちゃんが何かに気が付つきました。

「でも・・・」

ブンちゃんは不思議ふしぎそうな表情ひょうじょうで話はなし始はじめます。

「ミカちゃんが女の子と会あった日って、学校がっこうを休やすんだ二日目ふつかめだよね。確たしか火曜日かようび」

ミカちゃんが涙なみだを拭ぬぐいながら答こたえました。

「うん」

ブンちゃんがリキヤ君を見て言いいました。

「それって、こうた君のお葬式そうしきの日だ」

リキヤ君もミカちゃんも、あの日を思おもい出しています。

「あっ」

ミカちゃんが何なにかを思おもい出して言いいました。

「じゃあ、あの日、バスに乗のっていた沙織先生さおりせんせいみたいな人って、やっぱり？」

ブンちゃんはミカちゃんを見詰みつめて答こたえました。

「そのバス、俺おれも乗のってたよ。お葬式そうしきの後あとだったから、みんなでバスに乗のって帰かえったんだ」

ミカちゃんが不思議ふしぎそうにブンちゃんを見て言いいました。

「みんな？」

ミカちゃんが驚おどろいたような表情ひょうじょうを浮うかべて続つづけます。

「バスに乗のっていたのは四人よにんしか見えなかった。男の人と女の子、それと沙織先生さおりせんせいとブンちゃんだけ」

ミカちゃんの話はなしに、ブンちゃんが驚おどろいた表情ひょうじょうで叫さけびました。

「えーーー、ほかの大人おとなの人も知しらな子たちも、みんなバスに乗のって帰かえったよ」

そう言いうと、ブンちゃんは空を見上みあげて、自分じぶんの記憶きおくを確たしかめています。
リキヤ君は何なにかに気きが付つきました。

「じゃあ、その後あと、すぐにミカは女の子に会あったってことか？」

ミカちゃんとブンちゃんが顔かおを見合みあわせます。
リキヤ君が二人ふたり見て言いいました。

「何なんかおかしくないか？」

バスにたくさん人が乗のった話はなしは忘わすれて、ブンちゃんが思おもい出だしたように言いいました。

「そう、そうだよね。こうた君のお母かあさんたちは、あの後あと、すぐにブランコ山に来きたってこと？　お葬式そうしきの後あとだって言いうのに早はやすぎるよね。俺おれ、記憶きおくがハッキリしないけど、バスが駅えきにも寄よった気がするし、学校がっこうにも寄よって、その後あと、眠ねむっちゃって記憶きおくがないけど、最後さいごは沙織先生さおりせんせいと一緒いっしょにブランコ山で降おろしてもらったんだよ。そう、このベンチで目が覚さめたんだよ。その時とき、多分たぶん、男の人はバスに乗のってたと思おもうんだよね」

思おもい出し始はじめたブンちゃんは、考かんがえ込こむように話はなしを続つづけました。

「ミカちゃんがバスを見てからブランコ山まで来くる間あいだだよね。ここでミカちゃんに会あった時ときは普通ふつうの服ふくを着きてたんだよね。駅えきや学校がっこうとか寄よったのに、黒くろい服ふくから着替きがえてすぐに来きたなんて・・・」

不思議ふしぎな出来事できごとに、ブンちゃんもリキヤ君もミカちゃんも、訳わけが分わからなくなっていました。
三人ともそれぞれ別べつの方ほうを見ながら考かんがえています。
（あれ？）
ブンちゃんが何なにかに気が付つきました。
さっきまでブランコで遊あそんでいた小さい子とお母かあさんがいません。
辺あたりを見回みまわすと、公園こうえんにいるのは三人だけです。
（いつの間まに・・・）
ブンちゃんがそう思おもった時ときです。
フッと香かおりが漂ただよい、ミカちゃんが香かおりに気が付つきました。

「あ、この香かおり」

リキヤ君もブンちゃんも気が付つきました。
ミカちゃんは目を瞑つむって、漂ただよう香かおりを追おっています。

「ねえ、この香かおり分わかる？　思おもい出せそうで思おもい出せないの。身近みじかにある香かおりなんだろうけど、考かんがえると眠ねむっちゃったり、思おもい出さずに別べつのことしちゃったり、いつもそう」

そう言いうと、ミカちゃんは辺あたりを見回みまわして、目をキョロキョロさせました。
ブンちゃんも辺あたりを見回みまわしながら答こたえました。

「僕ぼくもそうだよ。思おもい出せそうで思おもい出せない。でもなんか懐なつかしい香かおりなんだよね。いつもは薄うっすらと嗅かいでいる気がするんだけど、たまにこうやってハッキリと香かおりが分わかる時ときがあるんだよね」

そう言いって、ブンちゃんは大きく深呼吸しんこきゅうしました。
ミカちゃんがリキヤ君に尋たずねます。

「もしかしてリキヤ君も？」

リキヤ君は短みじかく、

「ああ」

と答こたえると、ジッと大イチョウを見詰みつめました。

ザザザザー

大イチョウの木が音おとを鳴ならしました。
黄色きいろくなった葉はが、ひらひらと落おちて、三人の前まえでクルクルと回まわり始はじめました。

ビューーー
ザザザザザザー

突然とつぜん、強つよい風かぜが大イチョウの木を揺ゆらし、イチョウの葉はを飛とばしました。
その光景こうけいを見たブンちゃんとミカちゃんが、同時どうじに声こえを上げました。

「あっ！」

それはまるで黄色きいろい鳥とりが、一斉いっせいに飛とび立たつような光景こうけいでした。
大イチョウの葉はは空高そらたかく舞まい上あって行いきます。
まとまった葉はは、徐々じょじょに帯おびのように姿すがたを変かえ、風かぜに乗のるように舞まい始はじめました。
リキヤ君は自分じぶんが見た夢ゆめを思おもい出しました。
（同おなじだ。夢ゆめと同おなじだ）
三人は舞まい上がるイチョウの葉はの行方ゆくえを見詰みつめています。
黄色きいろい帯おびは、三人の見上みあげる空の真上まうえで、円えんを描えがくように回まわり始はじめました。
その円えんは徐々じょじょに一ひとつにまとまると、花火はなびのように「パッ」と弾はじけ、黄色きいろい葉はが、ゆっくりと三人の頭あたまの上に舞まい降おりて来きました。
それは、まるで黄色きいろい雪ゆきが降ふっているようです。
辺あたりは心地良ここちよい香かおりに包つつまれます。
あの香かおりです。
ブンちゃんが両手りょうてを広ひろげ、空を見上みあげて言いいました。

「ああ、この香かおり。イチョウの香かおりなんだ。こんなに身近みじかな香かおりだったのに気が付つかなかった。じっくり嗅かいだことなんてなかったし、いつも微かすかな香かおりで包つつまれていたから、かえって思おもい出せなかったんだ」

ブンちゃんの言葉ことばに、ミカちゃんもリキヤ君も静しずかに頷うなずきます。
ミカちゃんが思おもい出しました。

「不思議ふしぎなことが起おこる前まえは、いつもこの香かおりがしてた。こうた君の声こえが聞きこえたり、こうた君の顔かおが浮うかんだり、女の人に会あう前まえもこの香かおりがした」

リキヤ君も思おもい出しました。

「俺おれが女の子に会あった時ときもこの香かおりがしてた」

ブンちゃんが大イチョウの木を見ながら言いいました。

「俺おれもだよ。今いま、思おもい出した。こうた君のお母かあさんもこの香かおりがしていた」

ミカちゃんもあの日、肩かたを抱だいてくれた女の人の温ぬくもりを思おもい出しています。
三人は気が付つきました。
この香かおりはこうた君の家族かぞくの香かおりでもあったのです。
ブンちゃんがソワソワして、辺あたりをキョロキョロと見回みまわしながら言いいました。

「この香かおりがしたってことは・・・」

リキヤ君とミカちゃんも何なにかを待まっています。

カサカサカサ

大イチョウの葉はが、再ふたたび風かぜに揺ゆれた時ときでした。
突然とつぜん、女の子の声こえが聞きこえました。

「木にも心こころがあると思おもう？」

聞きき覚おぼえのある声こえに、ミカちゃんがハッとしました。

「あっ！」

ミカちゃんとブンちゃんは慌あわてて辺あたりを見回みまわし、女の子の姿すがたを探さがします。
でも、リキヤ君は動うごきません。
リキヤ君は大イチョウの木をジッと見詰みつめると、大イチョウの木に向むかって話はなしかけました。

「アンちゃん？　アンちゃんだよね？」

リキヤ君の言葉ことばに、ブンちゃんとミカちゃんは、驚おどろいて顔かおを見合みあわせました。
ミカちゃんは今いまにも泣なき出しそうです。
突然とつぜんの出来事できごとに慌__あわ__#てていたブンちゃんでしたが、泣なきそうなミカちゃんを見て、ニッコリと微笑ほほえみながら、ミカちゃんの肩かたをポンと叩たたきました。

「木にも心こころがあると思おもう？」

また女の子の声こえがしました。
ブンちゃんも大イチョウを見詰みつめます。
リキヤ君が大イチョウの木に向むかって答こたえました。

「あると思おもう。あると思おもうよ。不思議ふしぎだけど、木が見守みまもってくれているような気持きもちちになることがあるよ」

リキヤ君の言葉ことばにブンちゃんも頷うなずいて答こたえます。

「そう、ここに来くると、誰だれかに見守みまもられているようで安心あんしんする」

ミカちゃんは目に涙なみだを溜ためながら黙だまって頷うなずいています。
女の子の声がしました。

「新あたらしい校舎こうしゃの工事こうじが始はじまったら、私わたしが校庭こうていから移うつされてしまうことはわかっていたの。悲かなしかったけど、学校がっこうのみんなのためだから、役やくに立たてるのだから仕方しかたないと思おもったの。でも、そんな時とき、お兄にいちゃんが病気びょうきになってしまったの。私を心配しんぱいして病気びょうきになったんじゃないかって、ホントにホントに悲かなしかった。毎日まいにち、毎日まいにち、心配しんぱいだった。だから毎日まいにち、毎日まいにち、元気げんきになるようにお願ねがいしていたの」

大イチョウの葉が静しずかに揺ゆれています。
でも女の子の姿すがたはありません。

「そんな時とき、ブンちゃんが転校てんこうして来きたの。ブンちゃん覚おぼえてる？　ブンちゃんはお兄にいちゃんに優やさしくしてくれたのよ」

（えっ？）
驚おどろいたブンちゃんは、目をキョロキョロさせて思おもい出そうとしています。

「えーっと・・・」

「ふふふ」と笑わらい声ごえが聞きこえた後あと、女の子の声ごえが続つづきました。

「お兄にいちゃんが病気びょうきだと知しった時とき、元気げんきになるようにブンちゃんは水をかけてくれたのよ」

イチョウじいさんと話はなした時ときのことをブンちゃんは思おもい出しました。
（あっ、あの時とき・・・）

「優やさしくされて、お兄にいちゃん、とっても喜よろこんでたわ。自分じぶんを心配しんぱいしてくれる子がいるって、ホントに喜よろこんでた」

ミカちゃんがブンちゃんを見詰めます。
ブンちゃんは下を向むいて照てれています。

「リキヤ君も同おなじだった。私わたしやお兄にいちゃんの枝えだを折おって遊あそんでいた子に注意ちゅういしてくれたの。その時とき、ミカちゃんも一緒いっしょだったよね。折おれた枝えだをテープで繋つないでくれたり、水をかけてくれたり、とっても嬉うれしかった」

（あっ）
リキヤ君とミカちゃんは、お互たがいの顔かおを見てニッコリ微笑ほほえみました。

「わたし嬉うれしかった。ホントに嬉うれしかったの。だからお兄にいちゃんと話はなしたの。三人さんにんのために役やくに立たてたらいいねって。毎日まいにち、毎日、話はなしたの」

三人の目には涙なみだが浮うかんでいます。
そして今度こんどは女の人の声こえがしました。

「三人の気持きもちは嬉うれしかったわ。アンと耕太こうたに優やさしくしてくれて」

ブンちゃんはドキッとしました。
こうた君のお母かあさんの声こえです。
ミカちゃんは両手りょうてで顔かおを覆おおって、泣なき出してしまいました。

「うううう」

優やさしく肩かたを抱だいてくれた女の人の声こえに、ミカちゃんの目から涙なみだが溢あふれます。

「でもアンと耕太こうたは、まだ若わかい木だから余あまり力ちからがなかったの。それでね、お父とおさんと話はなしたの。私わたしたちも手伝てつだいましょうって。みんなで三人のために役やくに立ちましょうって。耕太こうたはブンちゃん。アンはリキヤ君。そして私わたしとお父とおさんはミカちゃん」

ブンちゃん、リキヤ君、ミカちゃん、三人それぞれの思おもいが蘇よみがえってきます。
ブンちゃんはギュッと服ふくの裾すそを握にぎり締しめます。

「元気げんきな木のほとんどは、切られた後あとに別べつの姿すがたに変かわって行いくの。家いえをつくる材料ざいりょうになったり、家具かぐになったり、食器しょっきや人形にんぎょうやおもちゃになったりするの。短みじかい間あいだだけの物ものもあるけど、何十年なんじゅうねんも使つかわれる物ものもある。でも時間じかんの長ながさは関係かんけいないの。幸しあわせなの。また新あたらしい姿すがたで誰だれかの役やくに立たてるから幸しあわせなの」

お母かあさんの声こえが嬉うれしそうに語かたりかけました。
リキヤ君が大イチョウの木を見上みあげて尋たずねました。

「じゃあ、みんなも別べつの姿すがたに変かわるの？」

カサカサカサ

大イチョウの葉はが、風__かぜ__#に揺ゆれました。

「いいえ、私わたしたちは別べつの道みちを選えらんだの。『この人の役やくに立ちたい』と思おもうような人が現あらわれたとき、特別とくべつな力ちからを使つかうことができるの。人間にんげんの姿すがたになったり、力ちからを与あたえたりできる。そうして、その人のために役やくに立つことができる。でも、それにはたくさんの力ちからが必要ひつようで、使つかってしまうと木として生いきていく力ちからが失うしなわれてしまうの。だんだん弱よわくなって、ゆっくりと枯かれてしまう。病気びょうきになったのと同おなじ。私わたしもお父とおさんも来年らいねんは葉はを付つける力ちからは無ないかも知しれない。子供こどもたちの役やくには立てないかも知しれない。そうしたらイチョウの木としての役割やくわりは終おわってしまう。病気びょうきなった木が別べつの姿すがたにはなかなか変かわれないのと同おなじように、多おおくの木が切きられて、燃もやされてしまうのと同おなじように、私わたしたちもきっと同おなじになるかも知しれない。でも仕方しかたないの。それは私わたしたちが選えらんだことだから仕方しかたないの」

ミカちゃんが顔かおを上げて、声こえを絞しぼり出すように尋たずねました。

「切きられると死しんじゃうの？　燃もやされると死しんじゃうの？」

少すこしの間まが空あいた後あと、また、女の子の声こえがしました。

「ううん、大丈夫だいじょうぶ。イチョウの木の姿すがたではいられなくなるだけなの。また大イチョウの元もとに戻もどって生うまれ変かわるの。時間じかんはかかるけど、また木の姿すがたに戻もどれるかも知しれないの。心こころは残のこるの。ずっーと残のこるの」

ミカちゃんの目から涙なみだが零こぼれ落おちます。
ミカちゃんは声こえを震ふるわせながら尋たずねました。

「また会あえるの？」

返事へんじはありません。
大イチョウの葉はが静しずかに揺ゆれています。
三人はジッと大イチョウを見詰みつめています。
リキヤ君が声こえを上あげました。

「でも、ここに来くれば、また話はなしできるよね？」

お母かあさんの声こえが、悲かなしそうに答こたえました。

「いいえ、もうすぐ私わたしたちも力ちからがなくなってしまう。もう話はなせなくなってしまう。今いまは大イチョウの力ちからを借かりてお話はなししているの。でもこれも特別とくべつな力ちから。大イチョウを弱よわらせることは、これ以上いじょうできないの」

大イチョウから黄色きいろい葉はが舞まい落おちます。
ミカちゃんの目に溜たまっていた涙なみだが、また一筋ひとすじ流ながれ落おちました。

「そんな・・・、そんなの・・・」

ブンちゃんがハッと何なにかに気きが付つきました。
（心こころは残のこるって、もしかして・・・）

「それじゃ、こうた君もいるの？」

ブンちゃんがそう聞きいた途端とたんに、大イチョウの木からたくさんの葉はが舞まい落おちました。
すると、舞まい落おちる葉はの向むこう側がわに、薄うっすらと、こうた君たち家族かぞくの姿すがたが現あらわれました。
四人よにんとも少すこし驚おどろいた様子ようすで顔かおを見合みあわせます。
大イチョウの特別とくべつな力ちからです。
四人よにんがブンちゃんたちの前まえに姿すがたを現あらわすために、大イチョウが力ちからを貸かしてくれたのです。
四人よにんはニッコリと微笑ほほえんでいます。
ブンちゃんもリキヤ君も口をギュッと結むすんで涙なみだを堪こらえています。
ミカちゃんが泣なきながらこうた君を見詰みつめます。

「う、う、う。こうた君、ゴメンネ。私わたし、ひどいこと言いってゴメンネ」

ミカちゃんが声こえを絞しぼり出だすように言いいました。
こうた君はニッコリとミカちゃんを見詰みつめて頷うなずきます。
こうた君のお母かあさんはニッコリと微笑ほほえんで、こうた君のお父とおさんに寄より添そいながら言いいました。

「ブンちゃん、リキヤ君、ミカちゃん、三人ともとても素敵すてきな人になったわ。三人のお役やくに立たてて、私わたしたちは幸しあわせよ」

こうた君のお父とおさんもニッコリと微笑ほほえんで、三人にお礼れいを言いいました。

「ブンちゃん、ありがとう。リキヤ君、ミカちゃん、ありがとう」

ハッとしたミカちゃんが、こうた君のお父とおさんに尋たずねした。

「もしかして、おばあちゃんの足を治なおしてくれたのって・・・」

涙なみだを拭ぬぐいながら、ミカちゃんがこうた君のお父とおさんを見詰みつめます。
こうた君のお父とおさんとお母かあさんは、互たがいに見詰みつめ合あった後あと、ミカちゃんを見てニッコリと微笑ほほえむと、小ちいさく頷うなずきました。

「ううううう」

ミカちゃんは両手りょうてで顔かおを覆おおいながら、何度なんども何度なんども頭あたまを下さげました。
アンちゃんが手を振ふりました。

「ありがとう、ブンちゃん。ありがとう、リキヤ君。ありがとう、ミカちゃん」

アンちゃんがそう言いうと、四人よにんの姿すがたは徐々じょじょに薄うすくなって行いきました。
ブンちゃんが叫さけびました。

「こうた君！」

三人は大イチョウに向むかって走はしり寄よります。

ザワザワザワー

大イチョウが大おおきな音おとを上あげました。
強つよい風かぜが三人を包つつみます。
すると地面じめんに落おちていたイチョウの葉はが風かぜに運はこばれ、三人の周まわりをグルグルと回まわり始はじめました。
心地良ここちよいイチョウの香かおりが漂ただよいます。
イチョウの葉はは徐々じょじょに浮うかび始はめ、帯おびのように繋つながって、高たかく高たかく、空そらに舞まい上あがって行いきました。
ブンちゃんが飛とんで行いくイチョウの葉はに向むかって叫さけびます。

「こうた君！約束やくそく守まもるよー、ずっと、ずっと忘わすれないよー」

リキヤ君もミカちゃんも叫さけびます。

「アンちゃん、俺おれも忘わすれないぞー」
「私わたしもー」

イチョウの葉はが鳥とりの群むれのようにまとまって、空で踊おどっています。
たくさんの仲間なかまたちと楽たのしいそうに踊おどっています。
三人は空を見上みあげ、イチョウの葉はを見詰みつめています。
ブンちゃんが空そらを見上みあげて呟つぶやきました。

「ここに来くれば、また会あえるかも知しれない。声こえが聞きけるかも知しれない」

リキヤ君とミカちゃんも答こたえます。

「そうだな」
「そうよね」

三人の後うしろで、大イチョウの葉はが揺ゆれています。
「いつでもおいで」と言いうように、静しずかに優やさしく揺ゆれています。

ビューーーー

強つよい風かぜが吹ふきました。
空を見上みあげていた三人は、思おもわず目を閉とじて、顔かおを下したに向むけました。

「ママー、ブランコ乗のっていいー」

突然とつぜん、男の子の声こえがしました。
三人は驚おどろいて、顔__かお__#を上げました。
辺あたりを見回みますと、いつの間まにか、小さな子たちが公園こうえんで遊あそんでいます。
何事なにごともなかったように、公園こうえんはいつもの景色けしきに戻もどっています。
空を見上みあげると、踊おどるように舞まっていたイチョウの葉はは消きえていました。
そこには吸すい込こまれそうな青あおい空そらが広ひろがっています。
三人は顔かおを見合みあわせると、ニッコリと微笑ほほえみました。　
　
　大イチョウの木は静しずかに葉はを揺ゆらし、三人を見守みまもっています。
三人はまた空を見上みあげました。
遠とおくの空に飛行機雲ひこうきぐもが真まっ直すぐな線せんを引ひいています。
また誰だれかが手てを離はなしてしまったのでしょう。
銀色ぎんいろの風船ふうせんが飛行機雲ひこうきぐもに結むすばれたように飛とんで行いきます。
「クスッ」と笑わらいながら、三人は呟つぶやきました。
大イチョウの木に向むかって。
大切たいせつな贈おくり物ものをくれた人たちに向むかって、静しずかに呟つぶやきました。

「ありがとう。忘わすれないよ」