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「ううっ……何でこんなことに……」
壁に額を付けて嘆くのは桐生昂史課長、私――河野加奈の上司。
イケメンエリートとして女性社員から人気のその人は今部下の部屋で恥ずかしい格好を強いられているのである。
私としては素晴らしいけど、課長としては情けないに違いない。年上の威厳もない。いや、お互いアラサーのくくりに入ってるし、誤差程度だけど。
いつもはクールなのに、耳まで真っ赤。
「もっとお尻締めてくださいよ。ご褒美にならないじゃないですか」
「くっ……俺の部下がこんな変態だったとは……」
そう言いながら背筋を正すのだから根の真面目さが仇となってる感は否めない。
今の課長は前から見れば普通にスーツ。普段着ているものからすれば格段に劣る材質だと思うけど、私の良心の塊。最大限の配慮というもの。
暖房をつけているとは言ってもこんな寒い夜にパン一にしなかったことに感謝してほしい。たとえ、後ろが丸出しの貧乏スタイルだとしても。
「部下思いの優しい課長様がご褒美くれるって言うから恥を忍んでお願いしたんじゃないですか」
「恥を忍ぶやつの要求じゃない! 俺の恥を考えろ!」
課長は文句タラタラだけど、私に弱みを握られているというわけでもない。敢えて言うならば、これから握られると思っているのかもしれない。でも、発端は課長。
残業続きで疲れは顔に出まくり、食事もろくに喉を通らない私を心配して課長がご褒美をくれると言った。お互い恋人もいなくて寂しいクリスマスイブに。
だから、今日まで頑張れた。飴のために鞭に耐えた。うちに来てもらって、クリスマスプレゼントを押し付けて脱衣所に押し込んだ。シャワーを浴びてもいいと言ったから課長もそうすることにしたみたい。
だから、出てくるまでビールを飲んで待ってたけど、ニヤニヤが止まらなかった。今だって必死に堪えてる。
後ろを隠すように壁際に沿って蟹歩きしてた課長可愛かったなぁ……ふひひっ。
「聖夜に俺は一体何をやっているんだ……」
「可哀想な部下を救ってるんです! 救世主です! 世界も救えますよ!」
ぐっと拳を握り締める。これは力説できる。
ケツで世界が救えるなら安いもの! 何も減らない!
「上司にセクハラするような部下のどこが可哀想なんだ?」
「残業続きだったし上司は鬼だし善良だった部下は壊れてしまったんです……会社の犠牲者なんです……闇堕ちしたんです……光属性の雄尻で救ってください」
ほろりと泣き真似をすれば溜息が聞こえた。お前は何を言っているんだと言いたげ。
仕事だから厳しいのは当然だし忙しいのも仕方ないけど、良い雄尻を探す気力さえなくなれば、何か手軽に潤いがほしくなるもの。
そんな時に課長がご褒美くれるなんて軽率なこと言うから欲しいものを要求しただけなのに。いや、本当はセクシーなサンタさんにでもなってもらおうと思ったのを理性で抑えたんだ。
課長の尊厳を守るために自分に我慢を強いているのに。
「本当にお前はこれで飯が食えるんだな? 明日から健康になるんだな?」
「もちろん! いいっすよ、課長のプリケツ! ぐへへ……」
常々「いいケツしてんなぁ」と思って見てた課長の雄尻を生で眺めれば白米三杯は軽いと思ったわけで。
大体、課長がいい感じに鍛えてるからいけないんだ。だから、ケツの悪魔が私に囁いてきたんだ。
ちょっと攻めすぎかと思ったけど、こんなにTバックが似合うとは思ってなかった。キュッと雄尻が上がってて最高。ちょっとスーツの紐が邪魔だけど仕方ない。
もしも、壁に穴が空いていたら何としてでもはめたと思う。そうしたら課長が動けないのをいいことに揉みまくったかもしれない。本来は触りたいんじゃなくて見たい方だけど、状況に流されることってあると思う。壁にハマった雄尻を揉まないなんて女じゃない!
「もういいだろう?」
「ま、まだ……もうちょっとお願いします!」
撮影は絶対にダメって言われたからこの目に焼き付けないといけない。
最近は寝不足やら眼精疲労やらで半目がデフォくらいになってた目を思いっきりかっぴらく。
隠しカメラでも設置しておけば良かった……! くっそ……!
「そろそろ俺は限界なんだが」
そりゃあ貧乏スタイルのスーツは寒いかもしれない。でも、私はまだ満たされない。
満たされないのに、課長がこっちに来るから慌てた。
後ろはあんなにけしからんことになってるのに、前は普通にスーツに見えるからいつもの鬼課長感を感じる。いや、怖くない……怖いと思ったら負けだ!
壁に額を付けて嘆くのは桐生昂史課長、私――河野加奈の上司。
イケメンエリートとして女性社員から人気のその人は今部下の部屋で恥ずかしい格好を強いられているのである。
私としては素晴らしいけど、課長としては情けないに違いない。年上の威厳もない。いや、お互いアラサーのくくりに入ってるし、誤差程度だけど。
いつもはクールなのに、耳まで真っ赤。
「もっとお尻締めてくださいよ。ご褒美にならないじゃないですか」
「くっ……俺の部下がこんな変態だったとは……」
そう言いながら背筋を正すのだから根の真面目さが仇となってる感は否めない。
今の課長は前から見れば普通にスーツ。普段着ているものからすれば格段に劣る材質だと思うけど、私の良心の塊。最大限の配慮というもの。
暖房をつけているとは言ってもこんな寒い夜にパン一にしなかったことに感謝してほしい。たとえ、後ろが丸出しの貧乏スタイルだとしても。
「部下思いの優しい課長様がご褒美くれるって言うから恥を忍んでお願いしたんじゃないですか」
「恥を忍ぶやつの要求じゃない! 俺の恥を考えろ!」
課長は文句タラタラだけど、私に弱みを握られているというわけでもない。敢えて言うならば、これから握られると思っているのかもしれない。でも、発端は課長。
残業続きで疲れは顔に出まくり、食事もろくに喉を通らない私を心配して課長がご褒美をくれると言った。お互い恋人もいなくて寂しいクリスマスイブに。
だから、今日まで頑張れた。飴のために鞭に耐えた。うちに来てもらって、クリスマスプレゼントを押し付けて脱衣所に押し込んだ。シャワーを浴びてもいいと言ったから課長もそうすることにしたみたい。
だから、出てくるまでビールを飲んで待ってたけど、ニヤニヤが止まらなかった。今だって必死に堪えてる。
後ろを隠すように壁際に沿って蟹歩きしてた課長可愛かったなぁ……ふひひっ。
「聖夜に俺は一体何をやっているんだ……」
「可哀想な部下を救ってるんです! 救世主です! 世界も救えますよ!」
ぐっと拳を握り締める。これは力説できる。
ケツで世界が救えるなら安いもの! 何も減らない!
「上司にセクハラするような部下のどこが可哀想なんだ?」
「残業続きだったし上司は鬼だし善良だった部下は壊れてしまったんです……会社の犠牲者なんです……闇堕ちしたんです……光属性の雄尻で救ってください」
ほろりと泣き真似をすれば溜息が聞こえた。お前は何を言っているんだと言いたげ。
仕事だから厳しいのは当然だし忙しいのも仕方ないけど、良い雄尻を探す気力さえなくなれば、何か手軽に潤いがほしくなるもの。
そんな時に課長がご褒美くれるなんて軽率なこと言うから欲しいものを要求しただけなのに。いや、本当はセクシーなサンタさんにでもなってもらおうと思ったのを理性で抑えたんだ。
課長の尊厳を守るために自分に我慢を強いているのに。
「本当にお前はこれで飯が食えるんだな? 明日から健康になるんだな?」
「もちろん! いいっすよ、課長のプリケツ! ぐへへ……」
常々「いいケツしてんなぁ」と思って見てた課長の雄尻を生で眺めれば白米三杯は軽いと思ったわけで。
大体、課長がいい感じに鍛えてるからいけないんだ。だから、ケツの悪魔が私に囁いてきたんだ。
ちょっと攻めすぎかと思ったけど、こんなにTバックが似合うとは思ってなかった。キュッと雄尻が上がってて最高。ちょっとスーツの紐が邪魔だけど仕方ない。
もしも、壁に穴が空いていたら何としてでもはめたと思う。そうしたら課長が動けないのをいいことに揉みまくったかもしれない。本来は触りたいんじゃなくて見たい方だけど、状況に流されることってあると思う。壁にハマった雄尻を揉まないなんて女じゃない!
「もういいだろう?」
「ま、まだ……もうちょっとお願いします!」
撮影は絶対にダメって言われたからこの目に焼き付けないといけない。
最近は寝不足やら眼精疲労やらで半目がデフォくらいになってた目を思いっきりかっぴらく。
隠しカメラでも設置しておけば良かった……! くっそ……!
「そろそろ俺は限界なんだが」
そりゃあ貧乏スタイルのスーツは寒いかもしれない。でも、私はまだ満たされない。
満たされないのに、課長がこっちに来るから慌てた。
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