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本編
夜会に招かれて-3
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『神秘の力を前に王が傀儡となることを危惧したのだろうが……受け入れるには遅すぎると思うか?』
罪滅ぼしなのだろうか。答えることも問うこともテレンスにはできなかった。
エリアスは魔獣の脅威から民を守るための研究を進めている。そのためにジョシュアを貸し出すこともある。シャルロッテのような境遇の人間をこれ以上増やさないためにも協力を惜しまない気でいた。
けれども、彼女を自分の側に置きたいと思ってしまっている。彼女の笑顔が団には必要なのだと理由を付けたがっている。
『そろそろ覚悟決めた方がいいんじゃねぇか?』
以前にブランドンに言われた言葉がテレンスの頭の中で妙に大きく響く。
いつまでも危険に晒すわけにはいかない。彼女が安全な場所に落ち着いて幸せに生きられるのならば、手放す覚悟も必要だ。絆が消えるわけでもないのだから。
尤も、エリアスもシャルロッテの意思を尊重する気でいる。この仕事が終わればテレンスは彼女と話し、望まれれば素直に送り出す約束だった。
「あの……」
壁に寄りかかったまま物思いに耽っていたテレンスは声をかけられて現実に引き戻される。
これまでもいくつかの視線は感じていたが、気付かないふりをしていた。
立っているだけで自ずと獲物がかかると言われたが、信じていたわけでもない。近くにはエリアスの騎士や従者も姿を変えて紛れている。要するに餌にされたのだ。
エリアスはなぜかテレンスに戦い以外にもできることがあると証明したがっていた。
「あ……」
声の主は見ればまだ若い少女のようだった。テレンスと目が合うと萎縮した様子で短い音を発する。
女子供の扱いは不得手だ。どう対応すれば良いのかわからないまま、テレンスもまた目を奪われていた。
ドレスと装飾品で着飾った彼女は社交界デビューを果たしたばかりだろうか、シャルロッテと同じ年頃なのかもしれない。
何よりも赤みがかった茶髪と茶色と緑の間の瞳があの美しさとは似ても似つかないはずなのに、どうしても重なってしまう。
彼女も生まれてきた場所が違えばここにいたかもしれない。
この煌びやかさを見れば目を輝かせただろうか。その裏に渦巻く欲望の影に気付かずに。
それでも見せてやりたかった。綺麗な物だけを。それは親心なのだろうか。
「良かったらどうぞ……」
「……ありがとう」
おずおずと差し出されるグラスを受け取れば少女はほっとした様子を見せる。そんな些細な仕草さえシャルロッテを思い出さずにはいられなかった。
グラスに口をつけ、少し含めば甘い味が広がる。
それで気を許されたと思ったのか。少女もまた少しずつ飲みながら、こういった場に慣れない胸の内を吐露し始めた。
テレンスは時折相槌を打ちながら聞くばかりだったが、それだけで十分なようだった。退屈を悟られないように飲む酒は甘かったが、喉の渇きを癒やせるなら今は何でも良かった。
罪滅ぼしなのだろうか。答えることも問うこともテレンスにはできなかった。
エリアスは魔獣の脅威から民を守るための研究を進めている。そのためにジョシュアを貸し出すこともある。シャルロッテのような境遇の人間をこれ以上増やさないためにも協力を惜しまない気でいた。
けれども、彼女を自分の側に置きたいと思ってしまっている。彼女の笑顔が団には必要なのだと理由を付けたがっている。
『そろそろ覚悟決めた方がいいんじゃねぇか?』
以前にブランドンに言われた言葉がテレンスの頭の中で妙に大きく響く。
いつまでも危険に晒すわけにはいかない。彼女が安全な場所に落ち着いて幸せに生きられるのならば、手放す覚悟も必要だ。絆が消えるわけでもないのだから。
尤も、エリアスもシャルロッテの意思を尊重する気でいる。この仕事が終わればテレンスは彼女と話し、望まれれば素直に送り出す約束だった。
「あの……」
壁に寄りかかったまま物思いに耽っていたテレンスは声をかけられて現実に引き戻される。
これまでもいくつかの視線は感じていたが、気付かないふりをしていた。
立っているだけで自ずと獲物がかかると言われたが、信じていたわけでもない。近くにはエリアスの騎士や従者も姿を変えて紛れている。要するに餌にされたのだ。
エリアスはなぜかテレンスに戦い以外にもできることがあると証明したがっていた。
「あ……」
声の主は見ればまだ若い少女のようだった。テレンスと目が合うと萎縮した様子で短い音を発する。
女子供の扱いは不得手だ。どう対応すれば良いのかわからないまま、テレンスもまた目を奪われていた。
ドレスと装飾品で着飾った彼女は社交界デビューを果たしたばかりだろうか、シャルロッテと同じ年頃なのかもしれない。
何よりも赤みがかった茶髪と茶色と緑の間の瞳があの美しさとは似ても似つかないはずなのに、どうしても重なってしまう。
彼女も生まれてきた場所が違えばここにいたかもしれない。
この煌びやかさを見れば目を輝かせただろうか。その裏に渦巻く欲望の影に気付かずに。
それでも見せてやりたかった。綺麗な物だけを。それは親心なのだろうか。
「良かったらどうぞ……」
「……ありがとう」
おずおずと差し出されるグラスを受け取れば少女はほっとした様子を見せる。そんな些細な仕草さえシャルロッテを思い出さずにはいられなかった。
グラスに口をつけ、少し含めば甘い味が広がる。
それで気を許されたと思ったのか。少女もまた少しずつ飲みながら、こういった場に慣れない胸の内を吐露し始めた。
テレンスは時折相槌を打ちながら聞くばかりだったが、それだけで十分なようだった。退屈を悟られないように飲む酒は甘かったが、喉の渇きを癒やせるなら今は何でも良かった。
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