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一話 薬物抗争
しおりを挟む若い男が暴れまわっていた
3人相手に大立ち回り 数の差をものともせずに次々と倒していく
「クソッッ 警察の狗に成り下がりやがって…… タケル!!!てめぇにプライドはねぇのか!?」
捨て台詞を吐きながら3人が逃げていく
「俺だってなりたくてなったんじゃねぇやい」
タケルと呼ばれたその男は静かに呟いた
ヤクザには鉄砲玉と呼ばれる男がいる
戻ることはない特攻兵 ヒットマンと言えば聞こえは良いが、組のために無茶をさせる使い捨ての駒だ
タケルはそんな鉄砲玉だった
高校生の時から大人相手にも怯むことなく立ち向かい、ほとんど負けなしの化物として名を馳せた
しかしある時ヤクザと喧嘩したことから面倒事に巻き込まれ、にっちもさっちも行かなくなった所を郡山組に拾ってもらい、今ではその組の鉄砲玉として働いている
本当はもっと上の地位につける実力と実績を兼ね備えているのだが、なにぶん喧嘩っぱやくキレやすいため鉄砲玉から上がることはない
上の地位にしてしまうと、ただの喧嘩から組同士の抗争などに話が発展し大きくなってしまうからだ
しかしタケルは鉄砲玉である事に満足していた
売られた喧嘩は全て買い、気に入らない奴には喧嘩を吹っ掛け勝利する
郡山組に所属したことで大義名分を得て存分に暴れ回れる日々、今思えば夢のように楽しかった
そんな夢が覚めたのがあの日 組長直々に呼び出された忌々しいあの日だ
「タケル ただいま到着しました 失礼しやす」
「おぅ、ようきたな 最近もまた暴れ回っているようでいいぞ~ もっとド派手にやっちまえ」
初老の男性がにこやかに話しかける この男こそ郡山組組長にしてタケルの溺愛者
昔気質の極道なため薬物半グレ大嫌い そんな奴らは殴られて当然と息巻く過激派
警察側とのパイプも太く、どんなにタケルが暴れ回ろうとも騒ぎが大きくなる前に揉み消している張本人だ
「組長がそう言ってくれるおかげで、俺も自由に暴れられます 誠にありがとうございます」
「いいんだよ 本当は儂が直々に喧嘩してぇが組長だからそうもいかねぇ だからお前に全て託してんだ 第一鉄砲玉に負けたらヤクザの面目丸つぶれだろ?それを見るのが痛快なのよ~!」
「相変わらずお人が悪い事で して今日はどのような?」
「あぁ それがお前に1つ頼みがあってな おい!入ってくれ!」
組長が声をかけると、奥の部屋から1人の男が入ってきた
白いスーツに身を包んだいかつい高身長 見るからに強いとわかる偉丈夫だ
「こちら、警察の白瀬だ 実はぜひタケルをスカウトしたいと言われてな」
「白瀬だ 単刀直入に言う 俺専門の鉄砲玉になれ」
「……組長 冗談ですよね?俺に警察の狗になれ、と?」
「儂だって断ったがしかしだな」
「俺が把握しているだけで暴行罪・傷害罪・器物破損その他諸々様々な罪状があるが?そこの組長が頑張って揉み消したようだが事実は事実 今からでもしょっぴけるぞ」
「てめぇ……!!」
思わず殴りかかるタケルを組長が制止する
「落ち着けタケル 郡山組にも利益がある話だ お前が白瀬と組んで邪魔な奴等を潰してくれれば儂らの利権が広がる ただでさえ敵が多い郡山組だ このチャンスには乗っかるべきだと考えた」
「しかし組長!! そんなことしちまえば郡山組は他の組から徹底的に狙われますよ!?」
激昂するタケルを見て呆れたように白瀬が口を開く
「阿呆 もう狙われとるわ 大規模な抗争が起きた場合に備えて警察が常に監視しとるのを知らんのか 組長さんよ、ハッキリ言ってやれ お前のせいでこの組が憎まれてるってな」
「ふん 儂がそうさせてるんだ タケルに罪はねぇよ」
「甘やかしすぎはよくねぇぜ?まぁいい コレで状況は理解できたか? 郡山組はお前のせいで追い詰められている 逆転の一手を打つにはこっちから攻めに転じないといけない そのために手を貸してやろうって優しさだ」
「だからってなんで俺を鉄砲玉に……?」
「簡単だ 即戦力が欲しい もともと郡山組には警察に協力してもらっていたしな」
「そういうわけだタケル ツライだろうが儂の顔を立てると思って 済まぬ」
組長が深々と頭を下げる 大恩ある組長にそこまでされては断れない
こうして渋々ながら、タケルは警察の鉄砲玉となったのだ
かといってタケルの日常に大きな変化があったわけではない
いつも通りの喧嘩三昧だ
しかし姑息な作戦に手を貸すことも増えた
証拠不十分で検挙に踏み切れない容疑者を白昼堂々襲撃するのだ
「オイお前なんか気に食わねぇな ちょっとツラ貸せよ」
理由なんてなんでもいい とりあえず一発ぶん殴る
驚いた相手が反撃してくるのを待ち、数発わざと殴られる
「ハイご苦労さん 後は俺の仕事だ こんな往来で喧嘩しちゃダメだろ?署までついてきてもらおうか?」
こうして喧嘩が成立したら白瀬が登場 容疑者だけを傷害罪で引っ張り、あとは荒っぽいやり方で自白させれば事件解決万々歳
組の命令以外で動くなど初めてのタケルにとって、白瀬の指示に従うことは大きなストレスだった
まるで首輪をつけられた飼い犬だ しかも周囲から軽蔑の目で見られているのを感じるため、常にイラついていた
そんな苛立ちを発散する場所などもちろん喧嘩しかなく、やたらめったらに暴れ回った
その結果皮肉なことにどんどん強くなっていく もはやここら一帯の者は誰も敵わない必殺の弾丸と化した
そんな荒んだ日常のある日
珍しく白瀬が緊張した面持ちで話しかけてきた
「おいタケル 今日の相手はちとヤバいぞ ドラッグの流通元締めだ 取り巻きが3人、全員薬物をキメている可能性が高い いつもと勝手が違うが応援いるか?」
「いらん ここはウチの島のド真ん中 ここで暴れて助けられるのは俺にとって恥にしかならねぇ そもそもドラッグ持ち込むだなんて最低だ」
「郡山組は非薬物でやってるもんなぁ じゃあ組をあげての敵だ 徹底的にやっちまえ」
「言われなくてもそのつもりだ」
白瀬と別れ、いつも通り標的に近づく 堂々と目線を合わせて挑発しながら距離を詰めていく
気持ち悪い 直感がそう叫ぶ 目が虚ろで焦点があっていない その癖闘志や殺意だけがメラメラと燃えている
そんな目をした男が4人 真ん中のアタッシュケースを持っているのが元締として、その後ろと両隣が護衛役か
もちろん向こうもとっくに気づいて臨戦態勢 それでも逃げないのは舐められているからだろう
上等だ ならばやることはただ1つ先手必勝あるのみ
タケルはいきなり走り出した 狙いはド真ん中元締の顔面
たっぷりと助走をつけてからのドロップキックをお見舞いする
鼻血・骨折・動揺・反撃 そのいずれもない
タケルの脚は左隣の護衛にガッツリと捕まれていた
「クソっ 見切られたか!?」
慌ててもがくとあっけなく離された こんなものかという嘲笑の色が見える
考えている余裕は無い 左の護衛役へ殴りかかる
まずは腹に一撃 手加減無しの正拳突きだ
そのまま顔面を狙った回し蹴りを放つ
タケルの誇る必殺コンボである
しかし無傷 というよりも手応えが無い 人を殴ったという感覚が無いのだ
避けようとして体をそらす 殴られて体勢が崩れる
そういった人間ならば当たり前に行われるはずの挙動が一切生じていなかった
「ッッッ!!気持ち悪いなテメェら!?ホントに人間か!?」
たまらずそう叫びながら鳩尾や胸を連続で殴る 肋骨を折ったような気もするがわからない
「こんなものか?やれやれ、こちらからもいくぞ」
護衛役が悠々と言い放つ 繰り出す技はただただ大振りのパンチだ
全然見切れる いつも通りガードしカウンターだ そんなタケルの思いは吹っ飛ばされる
「うおっ!?マジか!?」
ただのパンチ一発で体が後退する 見ると護衛役の手は血だらけだ
「お前痛くねぇのかよ!?ただの一撃で骨折してんじゃねぇか!?」
「まだ動く それだけで充分だ それに腕なら無傷な物が後5本はあるしな」
「正気じゃねぜ全く だからドラッグは嫌いなんだ 白瀬!怒るなよ!」
護衛役の膝を狙い、全体重を乗せた蹴りを放つ まるでサッカーボールを蹴り抜くような全力の一撃だ
膝の骨を折った 人間である以上骨が折れれば動けない
苦悶の表情も痛みに喘ぐこともなく、護衛役が静かに崩れ落ちる
もう一度立ち上がろうと無様にもがいているのでついでに顔面を踏みつぶす
しばらくバタバタしていたが動かなくなった まぁ死んではいないだろう
「まずは1人!!かかってこいや!!」
これは相手の慢心にかこつけて勝てたラッキー勝利だ
次からはこう上手い事いかない 現に残りの護衛役2人がかりで向かってきている
さっきの闘いで攻撃は避ける・手加減無く骨を折らないと勝てないことはわかっている
さぁさぁさぁやってやるぞと覚悟を決めると
「よく頑張ったタケル あとは俺の仕事だ というよりも派手にやりすぎた 逃げるぞ」
白瀬が割り込んできた 確かに周りを見れば人だかりが出来ており、パトカーのサイレン音も鳴り響いている
しかもよく見れば群衆の中にヤクザ者も紛れている 弱った俺を殺したいのか、あるいは俺が殺されるのを見たいのか どちらにせよ悪趣味だ
「後詰の警察も到着し、こいつらももう逃げられない 仕事は終了、一度郡山組の事務所まで引くぞ」
「はぁ~~~~~~ わかったよ 一度引こう」
郡山組の事務所に戻ると組長が笑いながら出迎えてくれた
その笑顔を見て、タケルはようやく一息ついた
「ハッハッハッ ド派手にやったなタケル!!いいぞあっぱれだよくやった!!」
「笑い事じゃないですよ組長 気持ち悪かったんですからね!? 人間と闘ってる感じがしませんでした」
「薬物漬けの人間なんて人間じゃねぇや なぁ白瀬?そもそもアレはお前を追って来たものなんだろう?」
組長が静かに白瀬へ詰め寄る さっきまでのにこやかな雰囲気が一転、いつの間にか武闘派のひりついた雰囲気を纏っている
「白瀬 まずお前は最近この街に配属された新入りだな? しかも各地を転々と飛ばされている鼻つまみ者だ 上層部の命令を無視して一人で突撃し、成果はあげるものの疎まれ転勤させられる
というよりも周りに被害が出るんだろ?勝手に突っ込むせいで詰めが甘く、数人取り逃すことが多発 その残党から恨みを買って、警官が無差別に襲われる事件も起きたそうじゃないか」
白瀬は何も喋らない ということは事実なのか
重く張りつめた空気の中、タケルはただ見つめることしかできない
「なぁ白瀬 だいぶ便利に使われてるみたいだな 確実に成果をあげる転勤族だからこそ、その土地のしがらみに縛られず自由に動ける 時には腐敗した警官の告発までやったのか?」
「……告発というよりは、この組織を叩いてくれと言われて叩いたらオマケで腐った警官がくっついてきただけだ タケルにとってのアンタのように、俺を気に入って守ってくれる人がいるのよ」
「で その結果各地に敵をつくりここに流れ着いたと もはや1人では身動きが取れなくなり、便利な盾として足としてウチの大事なタケルを欲しがったと」
「まぁそういうことだ せめてもう1人頼れる戦力が欲しかった」
「その結果、今日の薬物野郎みてぇなのが続々とやってくる なんなら儂ごと、郡山組ごと潰そうと企んでいる奴等もいるようだな なぁタケルどうだ?今のうち白瀬を消しとかないか?」
いつの間にか組長はドスを握っている もしもここでタケルがうなずけば即座に抜くだろう
白瀬の命は自分次第 そう悟ったタケルは絞り出すように言葉を紡ぐ
「組長 今日闘った奴等は異常でした どうにか1人は倒せましたが、あれが束になって襲ってきたらどうなっていたかわかりません
郡山組が狙われているのならば、戦力である白瀬を殺すのは惜しいと思います」
その言葉を受け、組長がじっくりと考える
「そうか まぁタケルがそう言うのなら、今ここで殺すのだけは勘弁してやろう しかし白瀬 ウチのタケルを捨て駒扱いするのだけは許さんぞ
それと知っている情報は洗いざらい全て吐いてもらおうか あんな危険な薬物は一朝一夕で完成するものじゃねぇだろ?」
「わかった 正直俺が予想していたよりも事が大きくなっちまった 巻き込んでしまった身ではあるが、こっからは1人の男としてこの白瀬 協力を惜しまない」
覚悟を決めたのか、白瀬は胸ポケットから警察手帳を取り出し静かに置いた
「組長 アンタの言う通り俺は鼻つまみ者だ 各地を転々し面倒事を引き受ける しかしそのせいでいつの間にか俺自身が狙われるようになり、トラブルメーカーとなってしまった
それでは今後の仕事に影響が出るため、一度ケリをつけようと思い選ばれたのがこの街だ ここで騒ぎを起こし、俺を狙って集まってきた奴を返り討ちにし圧倒的な強さを見せつければ諦めて狙われなくなると考えたのさ」
「随分甘い考えだな そんなくだらんデモンストレーションに儂等を巻き込みやがって だがそう上手く運ばなかったんだろう?」
「あぁ 郡山組に敵対している奴等が手を組みやがった 俺とタケルと郡山組をまとめて潰そうと必死だ そのためには手段を選ばないだろう」
「だからってあんな薬物持ち込まれちゃたまったもんじゃねぇや 儂等郡山組は非薬物でやってんだ 島にも目を光らせて流通を止めてるが おいタケル 最近取引みてぇなのはあったか?」
「いえ ありません 俺が殴った連中も全員薬物なんてやってませんし、ブローカーもいませんでした」
「俺達警察もそれは知っている だからこそ元締が来た瞬間に逮捕することで流通を阻止しようとした
しかしそれを逆に利用されてしまった タケルに勝てる可能性のあるドラッグ なんてみんな欲しがるだろう」
「そういえば俺の喧嘩を見てたヤクザ者が数人いたな おいまさかアレって」
「ドラッグの効果を確かめに来ていたのさ おそらく捕らえた元締は偽物だ そして今日の喧嘩を元に更に改良されるだろう」
「儂等でも手に余る面倒事を持ち込みやがって 白瀬、お前これが解決したらキッチリケジメをつけてもらうからな?」
「言われなくてもそのつもりだ まぁ解決できたらの話だがな」
あまりにも現実離れした話にタケルはついていけない いつも通り喧嘩していただけなのに面倒な事に巻き込まれたことだけはわかる
いつの間にか白瀬への苛立ちも消え、そんなんことよりもう一度あの護衛役達と闘う時のシュミレーションを考え始めていた
「組長、タケル おそらく今こうしている間にもドラッグはどんどん売られている もちろん改良もされているだろう」
「そうするとどこかに拠点を作っているな 儂等に敵対してる組にかくまわれていると考えるのが妥当か?」
「じゃあ組長 片っ端からカチコミかけて居場所吐かせますが」
「ハッハッハッ いいぞタケル その血気盛んなところがお前らしいぜ だがもっと手っ取り早い方法があるだろう?なぁ白瀬」
「あぁ タケルのおかげで捕まえられた護衛役達に楽しい楽しい尋問タイムだ」
白瀬が覚悟を決めたその少し前、ある男達も覚悟を決めていた
郡山組に敵対するヤクザ達だ
ドラッグの売買会議が開かれていたのだ
「幹部の皆様お集まりいただき誠にありがとうございます 私の事ははまぁそうですね、ブローカーとお呼びください 本日はボスに代わって皆様にご説明させていただきます」
がたいのいい男が喋り始めた ブローカーと名乗ったその男は、並み居るヤクザの幹部連中相手に一歩も臆さず商談を続ける
「私達が開発した新型ドラッグ 効果は先程の喧嘩を見ていただいておわかりでしょう このドラッグを各組織に一律20本500万で売ります 20本以上の販売は致しませんし、むしろそれ以下の本数で値切ることも致しません」
場がどよめく ここに集まった全員が金に糸目を付けずにあるだけ買い叩くつもりだったからだ
郡山組を潰した勢いそのままに他の組も潰し一帯を支配する 最終的な狙いは皆すべからくこれだけだ
そのために様々な策を講じていた最中にとんでもなく有能なドラッグがやってきた
ならばそのドラッグを1本でも多く手にし、優位に立ちたいと思うのは自然な事だろう
「ハッキリ言えば格安です 普段でしたら倍以上の値段で売っています しかし今回は確実にある男を消していただきたいのです その男の名は白瀬
最近郡山組と連携し皆様を苦しめている警官です 郡山組を潰すだけでなく、この男を消すために尽力していただける組織には、それなりに便宜を図りましょう」
その言葉を幹部達はゆっくりと反芻する
すなわち 白瀬を殺すと宣言すればより多くのドラッグが買えるという事か
今更殺す対象が1人増えたところで何も変わらない
「では、後ほど私達が皆様の事務所にお伺いいたします その時にまた詳しくお話いたしましょう」
決まりだ わざわざ各組織へ訪問販売までしてくれるなら、白瀬を殺すと宣言し他の組より1本でも多く買う
なんなら来た奴を殺して全て奪ってもいい
どす黒い腹の中で覚悟は決まった
「ここに来たことはあるか?」
「高校生の時に喧嘩の補導でしょっちゅう ただこんなに奥まで行くのは初めてだ」
「だろうな ここは関係者かよっぽどの極悪人じゃねぇと入れねぇからな」
タケルは白瀬に連れられて警察署へやってきた 他の警察官には話しかけらないどころかみんな逃げ隠れする
「アンタホントに嫌われてんだな 誰も目すら合わせようとしねぇじゃねぇか」
「当たり前だ 俺に関わると碌なことにならないと有名だからな つーかお前も有名だぞ?目を合わせたらキレて殴られる凶弾だって」
「え?なに俺そんな風に思われてんの?」
案外似た物同士の2人は軽口を叩きながら取調室へ向かう
「え~っとお前が倒した護衛役は顔面ぐちゃぐちゃで喋れないから、吐かせるのは別の護衛役な?おい資料くれ」
部屋の前にいた警官から資料を受け取りペラペラとめくる
そんな白瀬を眺めながら、へ~コイツの警察らしい一面初めて見た とか テレビでよく見る取調室だすげ~ などタケルは暢気に考えていた
「よし大体把握した タケルはとりあえず黙って見とけ おそらくドラッグの効果も切れてきている 油断はするなよ?」
取調室の扉を開け中に入る 手錠をかけられうつむいて座っているが、右側にいた護衛役か?
「単刀直入に聞くぞ お前らは実験台であの元締も偽物だな?」
もちろん返事はない ただ黙って白瀬を見つめるのみである
「まぁそうこなくっちゃ面白くないわな だがここにいるタケル そうだお前の仲間をボコボコにしたタケルだ
コイツのおかげでな、ドラッグの効果を打ち消す薬が作れたんだ ようは無様に顔面ぐちゃぐちゃされたお仲間から血液採取 ドラッグの分析とそれに対抗する薬を作ったってわけ それがコレ
案外簡単なレシピだったな 警察舐めんなよ?これまで押収したドラッグのデータを元に分析すればこんなオモチャはあっという間だ」
白瀬は小瓶を机に置く 流石の護衛役も動揺を隠しきれない
目がしきりに泳ぎ、焦って様々な事を考えているのが丸わかりだ
「お前らがコレをどう呼んでいるかは知らん スーパーマンドラッグでもバーサーカードラッグでも興味はない ただしこんなのに頼って調子に乗ったあげく、こんな若造に負けるなんざみっともねぇしたいしたことねぇみてぇだな」
煽りに煽る白瀬に対し激昂する護衛役 手錠をかけられ動けないものの呼吸が荒く顔も真っ赤だ
「で、こんなくだらねぇオモチャを使って俺等を殺せると本当に思ったか?現代社会で拳銃なんかは目立ちすぎる 防犯カメラ・目撃者によるカメラでの撮影・大きすぎる音もマイナスだよな
だからといってサイレンサーまで準備するのは大変だ それなら科学の力で拳銃の効かない完璧超人軍団を作ろう お前らのボスの考えはどうせこんな幼稚なもんだろう?」
「違う!!!!!!俺たちのボスはもっと崇高な理念で動いている!!お前ら警察がどんなに分析しようとも、この瞬間に改良を重ね更に素晴らしい薬を作っているのだ!!」
極めつけにボスをバカにされとうとう護衛役がブチぎれた
それを見て白瀬はニヤリと笑う 今の発言でボスは別にいることが確定したからだ
「じゃあなんでそんなボスはお前を見捨てた 結局遠くで高みの見物なんだろう?」
「お前にボスの完璧な考えなどわかるまい いつでも俺達を見てくれているのだ」
「よ~くわかった タケル 帰るぞ」
納得いかず未だに鼻息荒い護衛役を残し、タケルと白瀬は退室する
「タケル、お前はタバコ吸うか?」
「いや 俺は吸わん」
「そうか なら缶コーヒーでもおごるわ」
警察署の休憩スペースへ案内され、缶コーヒーを渡される
「どうだ?お前から見ててさっきの取り調べはどう感じた」
「あれこそホントに鉄砲玉 大事な情報は何も知らされていない端役だと思う」
「同感だ ボスが別にいるのは間違いない」
「というかそもそもどこまで嘘?聞いている俺も騙されそうになったぜ」
「アッハッハッハ ぜ~んぶ嘘さ いまだにドラッグが効いている可能性もあったからな 暴力で吐かせるよりも騙した方が簡単だと考えたのさ
こんな栄養ドリンクの小瓶にひっかかるなんてやっぱりドラッグやってると判断力落ちるんだな」
笑いながら白瀬が小瓶を振る もちろんドラッグを打ち消す薬なんて作れていない 白瀬がかまをかけたのだ
その姿を見てタケルは本当にこの男を信じていいのか、何か底知れぬ不安を感じた
「じゃあ後はコッチで裏取りしていくつか証拠抑えるから、お前はもう戻っていいぞ」
「あいよ 組長には嘘が上手でしたと報告しとくわ」
「技術といえ技術と」
警察署を出たタケルはまっすぐ事務所に戻らずに、少し寄り道をすることにした
目的地は本屋 今まで我流の喧嘩殺法だったが、初めての強敵と闘ったことでもっといろいろと知りたいと思ったのだ
空手や柔道、合気道なんかの本もあるのかな~など考え歩いていると
「ッッッッ!?」
不意に口を塞がれた 必死で抵抗するが全く振りほどけない
そのうち首元に針の感触がした
組長と白瀬の顔が浮かぶが時すでに遅し
視界が回り意識が遠のいていく………
「おいタケルが攫われたって本当か!?」
血相を変えた白瀬が事務所に駆け込んでくる
「儂の組員が儂の島で攫われたんだ 警察よりも情報は速い おそらく2時間程前だ」
「俺と別れて警察署を出たあとに襲われたんだな…… おい!タケルが護衛役達と喧嘩した付近に敵対している組織の事務所はあるか?」
「どういうことだ 落ち着いて話せ」
こう言ったものの組長自身今すぐに飛び出したい気持ちを抑えている
しかし無鉄砲に動いても何も得られない 今はまず情報の整理が先決だ
「あのドラッグ連中のボスは別にいる しかもすぐ近くに潜伏しているのは間違いない 護衛役の話しぶりではあのドラッグを作ったのはボス本人だ
しかもかなりの完璧主義者で、薬の効果は自分の目で確かめないと気が済まないだろう」
「ということはタケルと喧嘩したあの場所を見渡せる場所で郡山組の敵対組織の事務所…… いやそんな物はないぞ?ここは儂等郡山組の縄張りド真ん中だ」
「なに?そんなバカな!?」
組長が広げた地図を見ながら2人で考える
「廃ビル、空き店舗、いやそんなものはない おい白瀬 お前警察側の情報なんかねぇのか」
「そっちこそタケルがどこ連れていかれたかわかんねぇのか」
「わからん 警察署を出た後の足取りが全く掴めないから攫われたと判断しただけだ あそこまで顔が知られているタケルが、しかもウチの島で行方知れずなど有り得ない」
「あと考えられるのは…… もしかしてこの付近で俺がコッチに移動してきたと同時にオープンした店なんてないか?」
「白瀬がコッチに来てから?……1軒だけある!!このビルの最上階に陣取る猫カフェだ!!」
組長が指差したのは、このあたりでも1、2を争う高層ビル
ここならどこでも見渡せるだろう
「オーナーはどんな奴だ?」
「別に変わりない普通の親父だと聞いているが、儂等ヤクザが好んでそんな所に行くわけないだろ?詳しくは知らねぇな ……いや待てよ 猫や餌の運搬用としてハイエース一台持っていたはずだ」
「それにタケルを乗せて運んだってわけか そこまでわかれば充分だ 俺一人で行く」
「お前1人で敵本陣へ?無茶もいい所だ儂も行く」
「いやアンタは最後の砦だ組長 もし2時間経って何も連絡がなければ、組の総力をあげて潰しに来てくれ そしてこれと同じ条件を警察側にも伝えておく
郡山組と警察の特殊部隊が合わされば無敵だろう?」
その言葉を受け組長は逡巡する
タケルの救出には一刻を争う 組員を搔き集める時間も無い
むしろこの段階で郡山組総出で動いた場合、もしも負けたら郡山組は一巻の終わりだ
かといってヤクザの鉄砲玉を助けるために特殊部隊を展開するなど流石の白瀬も無理だろう
せめて自分が飛び込んでピンチにならないと要請できない
さらにビルに忍び込む以上単独の方がやりやすい
だがしかし そもそも白瀬を信用していいのか
様々な事を考えて組長は決めた
「わかった タケルを必ず助け出してこい それと何かあったら連絡を寄越せ いいな?」
「……ん? う~~ん……」
タケルは何かにまとわりつかれて目を覚ました
というか臭い
少しづつ意識が戻るにつれて、全身を何かが這い回っているのがわかってきた
「なんじゃこりゃ気持ち悪い!!!!」
思わず叫んで目を開くとそこには猫がうじゃうじゃしていた
「は?」
夢か 夢なのか なんか上品そうな猫が俺の顔に尻をこすりつけてやがる
思わず振り払おうとするが、両手が上で縛られており動けない
その他にも様々な種類の猫が体の周りを歩いている
「お?目覚めたかい いやぁいいショーを見せてくれたよ」
猫と戯れていると奥の部屋から男が歩いてきた
長身瘦躯で真っ白い肌の眼鏡に白衣 あだ名をつけるなら、そうだな
「お前が俺を拉致ったのかモヤシ博士?」
「お!いい名前だねモヤシ博士 いいよそう呼びな 僕は誰かから固有の名前で呼ばれるのが嫌いなんだ ボスでもドクターでもモヤシ博士でも何でもいいよ」
「質問に答えろ 俺を拉致ったのはお前なんだな?」
「そうだよ 特性睡眠薬をプスっと刺してここまでお連れしたってわけ」
そういいながら足元の猫を無造作に抱き上げる
しかし猫は滅茶苦茶嫌がって暴れている
悪人なのは確かなのだが、なんというかテンポを崩される
「あのいかれたドラッグを作ったのもお前か?」
「そう あれは僕の新商品 ここら辺一帯のヤクザに売りつけるのよ まぁもともとは白瀬を追って来たんだけどね」
「白瀬とはどんな関係だ?」
「警察を抱き込んで運営していた僕の第一ラボがアイツのせいで潰されたのさ 全くそのせいでどれだけの損失と研究の遅れが出たか」
タケルは内心驚いていた え?コイツなんでも喋るじゃん
しかし怖い事に感情が全く読み取れない 声に乗る感情の抑揚というか、何を考えているのかが察せないのだ
「一体何が目的だ そこまでして何がしたい」
「白瀬を追ってるのはね、またラボを潰されたんじゃたまらないから先にアイツを潰しとこうってだけよ ただその道中でこうしてビジネスチャンスが転がり込むからむしろ感謝してるくらいさ
流石にここまで大々的なヤクザ相手の商売は初めてだけどね 今頃僕の部下達が売りまくっているよ」
「じゃあもしかして白瀬が狙われているのって……」
「うん 半分くらいは僕が焚き付けてる ただやっぱりなんか上手い事いかなくてさ 白瀬じゃなくて警察への無差別攻撃になったりしちゃって困ってたのよ
それはそれで見ていて面白かったけどね」
「お前のせいか!!そもそもお前の狙いは何だ?捕らえた護衛役の男は崇高な理念で動いていると信じていたが……」
「崇高な理念??あぁその嘘ホントに信じてたんだ そう言っておけば都合がいいでしょ? 僕は金と研究にしか興味がないよ」
「徹底的なクズだな 俺をどうするつもりだ」
ニッコリと男は笑った 初めて見えた人間らしい感情だった
「君との喧嘩を見て、もう少し改良が必要だと思ってね 知性が無くなる代わりにさらに素早く凶暴に動ける新薬を開発したってわけ まぁ後遺症やら悪影響が大きすぎるから、今まであえて作っていなかった欠陥品なんだけどね これを君に打つ」
「ならなんで俺を拉致る時に打たなかった」
「簡単さ コレを打って怪物となった君と白瀬を闘わせたい そんな最高のショーを最前列で見たいのさ あとそれが終わればヤクザとも闘ってもらうよ?」
「結局ここら辺のヤクザを利用して人体実験してぇだけじゃねぇか」
「簡単に言えばそう さて僕も我慢の限界だ そろそろ打たせてもらうよ」
男は懐から注射器を取り出した
ニタニタと笑いながら近寄ってくる
あぁそっか そのドラッグの匂いを猫は嫌がったのか
俺の人生これで終わりか~! もう少しいろいろやりたかったな 来週のお笑い向上委員会楽しみにしてたのにな
そういやレンタルビデオの返却期限明日だっけ?
そんな取り留めのないことばかり頭に浮かぶ
必死に暴れても両手の枷がキツく喰いこむだけでまんじりとも動けない
最期に見るのがモヤシ博士の憎たらしい顔面なんてのは嫌なので、ギュッと目をつむり今までの人生を思い出す
喧嘩 喧嘩 ラーメン 喧嘩
俺の人生喧嘩ばっかじゃねぇか地獄行き確定だな
組長 今までありがとうございました
アナタに拾っていただいたからこそ、俺は今まで生きてこれました
しかしそれもここまでのようです 先立つ不孝をお許しください
「タケル!! まだ生きてるか!?」
あ~あ ついに白瀬が俺を呼ぶ幻聴まで聞こえきやがった
周りでたむろっていた猫達が何かに驚いたのか、甲高く鳴きながら離れていった
…ん? 猫が離れた??
直後に轟音が響く
「おし!!間一髪だがコレでセーフだな」
ゆっくりと目を開けるとそこには
白瀬が堂々と立っていた
組長相手に啖呵きったものの、白瀬に何か策があったわけではない
ただただ馬鹿正直に真正面から乗り込む それが全てだ
正面玄関から悠々と入る
ビルに入っている他の店舗は普通に営業しているのか一般客も多い
ここで俺を襲えば警察沙汰になり、折角の拠点が台無しになる
そもそも相手は最上階で待ち構えればいいだけなので、道中襲われることは無いはずだ
ゆっくりと階段を登っていく
おそらく監視カメラもハッキングされ悪用されているだろう
俺が来たことなどとっくにお見通しだ
どのくらいの敵がいるのかわからない もしも大量に銃を持っていたら俺の負けだ
しかしそんな博打は日常茶飯事 敵の情報がわからないのに独りで突っ込むなどいつものことだ
違うのは誰かを助けるという使命があること
タケルは無事だろうか アイツには一度命を救ってもらった
組長が俺を殺そうとした時、アイツが首を縦に振ったら俺は今こうして歩いていない
だからその借りを返す そう思い込まないと、鉄砲玉としてスカウトしたヤクザをわざわざ自分が助けにいくこの状況を納得できなかった
アイツを無視してボスだけ捕まえよう 自分自身に何度も問いかけるが答えはノーだ なんでわざわざアイツを助けたいと思うのか意味が分からない
結局答えが出ないまま いよいよ最上階についた
「わざわざ階段で来るとは用心深い奴だな」
ガラの悪そうな男が5人ほど待ち受けていた 全員目が虚ろでドラッグをきめているのが丸わかりだ
「こっちは5人 お前は1人 降参するなら今のうちだぜ~??」
下卑た笑いをあげながら白瀬を円形に取り囲む
なのでまず正面の男に目潰しをした
容赦なく両目に指を突きさす
痛みを感じないせいで自分の目が潰れたことを理解できず、叫び声をあげてパニック状態だ
それを見て右脇から殴り掛かってきた男の手を掴み、グンと引っ張る
さらに軽く足払いをかけると体勢を崩し前のめりに転んだため、顔面を踏みつけて気絶させる
流石に危機感を感じ3人がかりで突っ込んできたがもう遅い
さっき目を潰した男の背中を押して3人にぶつける
目が見えずパニック状態のため敵に殴られたと勘違いした男はガムシャラに周囲を殴り始めて大混乱
その隙を逃さず猫カフェのドアを蹴破り一気にバックヤードまで侵入する
猫カフェには場違いな試験管や薬のサンプルを横目に探し回る
ガラスで仕切られたいくつかの部屋を見回ると いた
縛られたタケルとニタニタ笑う白衣の男だ
「タケル!!まだ生きてるか!!」
とりあえず近くにあった椅子を投げつけてガラスの仕切りを叩き割る
「おし!間一髪だがコレでセーフだな」
モヤシ博士の建てた計画は完璧だった
タケルを攫う
白瀬か組長が助けに来るので部下5人で足止めする
その間にドラッグを打ちタケルを凶暴化させ争わせる
さらにこれと同時進行で一帯のヤクザにドラッグを売りつけ、自分の手駒を増やしておく
そうすることで白瀬も郡山組も倒す計画だった
ただ1つ誤算だったのはあまりにも白瀬が強すぎた
足止めするだけなので部下を5人しか配置せず、ビジネスチャンスに目がくらんでドラッグの販売に人手を割いてしまったのが失敗だった
そのことを悔やみつつ必死に逃げる
どうにか業務用エレベーターに辿り着いた 急いで乗って下まで降りる
なぜか不思議と白瀬が追ってこない いつもの白瀬なら間違いなく追ってくるのだが、まさかタケルの手錠を外しているのだろうか
ありえない あの白瀬が誰かを助けようとしている?
想定外のイレギュラーな事態に困惑する 自分の思い描いたシナリオが破綻していくのを実感し嗚咽が漏れる もはや苛立ちを隠そうともしない
八つ当たりで壁を殴りながらグルグルと考える
この街から逃げよう ここでのビジネスは失敗であり、これ以上は損失が増えるだけだ
部下に連絡し召集をかける
「ヤクザ共に売りつけたか?売上もってビルの裏口まで今すぐ来い」
その頃白瀬はタケルの救出に難儀していた
「えぇいクソ、ご立派な手錠を用意しやがって」
「バカ白瀬無理矢理引っ張るなって痛いわボケ!!」
「こちとらドラッグ漬けの狂人5人を急いで倒して駆けつけたんだ文句言うな! よしやっと外れたぞ なにかされたか?」
「いやなにも ドラッグ打たれる寸前だったわ あ~その~ ありがとな白瀬」
「いいんだ礼なんてお前らしくもない それよりも組長に電話して救出成功と言っておけ」
素直に電話をかけ始めるタケル その間に白瀬は考えを整理する
あの博士が逃げていったのは業務用エレベーターのある方向だ いまさら追っても遅い
ならばどうする 奴等はあっという間に体制を立て直しもう一度仕掛けてくるだろう
叩くなら今しかない ましてやこの街から逃がしてしまえば二度と尻尾もつかめない
いくつか手を考え悩んでいると
「なぁ白瀬?業務用エレベーターで逃げたのは間違いないんだよな?」
「あぁそうだ 裏口は完全に掌握されていると考えて間違いないだろう」
「だそうです組長 はい、はいわかりました」
なにやらタケルがニヤリと笑う
その時白瀬の電話も鳴った
一方その裏ではドラッグの販売が迅速に行われていた
ヤクザ側がごねることもなく、白瀬を殺すと宣言することで20本以上を購入し我先にと郡山組へ殺到する
一番最初に到着し、一番最初に倒さなければ意味がない
他の組より優位に立つために速く速く そうでなければ意味がない
我先にと事務所へ辿り着くとそこは――――もぬけの殻だった
「なんじゃこりゃ!? おい!!郡山組の連中はどこ行った!!組長はどこじゃ!!探せぇ!!!」
誰からともなくそんな悲鳴があがる
もはやこうなると恥も外聞もありゃしない
郡山組を潰せないのなら他の組を潰す コチラにはドラッグがある以上負けない もちろんここにいる全員がそう考えている
ならばこそ、郡山組を見つけないと次は自分達が狙われる ここにいる全員が理解しているのだ
この混乱はモヤシ博士へもすぐに伝わる
「ヤクザ共に売りつけたか?売上もってビルの裏口まで今すぐ来い この街から逃げるぞ」
「ボス 異常事態です 郡山組がもぬけの殻です 組長はおろか組員の姿が1人も見当たりません」
「なに!? まぁビビって雲隠れでもしたんだろう 今はそんなことより僕の安全が第一だ ヤクザなんてほっといて今すぐに来い」
そう言いながら業務用エレベーターが開くととそこには
郡山組組長その人がいた
「儂の島で随分と暴れてくれたな ケジメつけてもらおうか」
白瀬を送り出してすぐに組長は組員を召集しありったけの戦力を用意した
白瀬から提示された2時間という期限 もしもそれを1秒でも遅れたら、全員で乗り込んで白瀬ごと殺そうと考えていた
しかしこれが偶然にも功を奏し、事務所をがら空きにしたことで敵対組織の襲撃を免れたのだ
そしてタケルから無事だという報告と、モヤシ博士が業務用エレベーターで逃走したとの連絡を受けた
なので裏口を制圧し待ち構えていたというわけである
部下が到着すれば突破口が開けるか…… いや、それよりも組長に僕が殺される方が早い
仕方ない 第二プランを使うか
モヤシ博士は業務用エレベーターの閉じるボタンを連打する その後行先ボタンをいくつか押すと、エレベーターは更に下がり始めた
「クソっ、まだ逃げやがるか お前らはここで待て おそらく薬物漬けの馬鹿共がわんさか来る 迎え撃つ作戦は――――」
組長が激を飛ばしていると、階段で白瀬とタケルが降りてきた
「おうタケル 無事でなによりだ」
「すみません組長しくじりました ご迷惑をおかけし申し訳ございません」
「いや無事ならいいんだよ 白瀬もよくやってくれた」
「借りを返しただけだ あとな、さっき郡山組を見張っていた警察から電話があって大量のヤクザが攻め込んできたらしい
あまりの非常事態に特殊部隊へ出動要請も出したそうだ」
「全く迷惑な事だ あの博士は地下へ逃げていった どうにか追えないか?」
「組長!俺と白瀬が降りてきた階段は地下まで続いていました もしかすると繋がっているかもしれません」
「ただで行けるとは思えねぇな タケル、白瀬、そこら辺からバールなり鉄パイプなり持ってこい 扉があった場合こじ開けるぞ」
そうして白瀬とタケル、組長の3人で地下へ向かう事が決まった
何が待ち構えているかわからないが不思議とこの3人なら負ける気はしない
タケルはどこかワクワクしていた
予想通り扉があり鍵も閉まっていたが、白瀬とタケルの馬鹿力でどうにか突破
地下に降りるとそこには不思議な光景が広がっていた
「これはなんだ…… 拷問部屋?」
思わずタケルがそう漏らす 忌々しい物を見るように組長が説明する
「ヤクザの慣例でな こういうビルを建てる時には地下に隠し部屋を作るのよ それこそ人を拉致監禁する時や、拷問する時に使う秘密の部屋さ」
「しかしここらへんの器具は最新式 拷問道具というより実験器具だな あらかた新薬の人体実験をするのに使っていたんだろう」
「なるほどな…… なぁ白瀬、何か匂わないか?薬とか血の匂いじゃなくて、なんつーかこう山の匂いというか」
「確かに獣臭いな なんだこの強烈な匂いは」
3人とも眉を顰めつつ、奥へ奥へと進んでいく
すると暗幕で遮られた謎の部屋が見えてきた
「まさかここまで追ってくるとは僕の研究が台無しだ まぁいい ここでお前ら3人殺せば解決だ」
モヤシ博士があらわれた ただでさえ細身な体がフラフラと揺れ、まるで幽霊のような印象を受ける
「まぁいい 準備は間に合った 最終兵器の短期決戦用ドラッグを作っておいてよかったぜ」
そう言ってポッケから注射器を取り出す
「やめておけ お前が薬物を打ったところで儂等に敵うと思うのか?」
「僕に打つわけないだろう 打つのはコイツだ」
そういって暗幕をバサリと開ける あらわれたのは
「クマァ!!!!!!?????????」
そこにいたのはグリズリーだった
動けず叫ばないように口枷と足枷がつけられ寝かされている
そこへドラッグがブスリと注入された
滅茶苦茶ビビりながら及び腰だが、博士は確かに注入した
「ハッハッハッ じゃあな御三方 僕は逃げるよ あとはコイツが相手してくれるからよろしくな!!」
博士は高笑いしながらさらに奥へ逃げていく
追おうとした3人の前でグリズリーが動き始めた
身を震わせ力を込めると口枷と足枷が壊れて自由の身となる
大きく咆哮し臨戦態勢だ
「うおっ!?えっ!?自力で壊しやがった!?」
思わずタケルが叫ぶ 目の前で鉄製の枷が脆く簡単に壊されたのだから驚くのも無理はない
「タケル、組長、ここは俺に任せろ おそらくあの様子じゃクマ自身に相当強い負荷がかかっている アイツも言っていたが短期決戦用で効果は持って5分だ そのくらいなら俺が稼ぐ」
鉄パイプを構えた白瀬がそう言い放つ
「バカをいえ お前なんぞもって1分だ その間にコッチも策を用意する」
「わかった 頼んだぞ」
組長と白瀬がアイコンタクトを交わす それを見てタケルは羨ましいと感じた
「いくぞクマ野郎!!!」
勇ましく叫んだ白瀬がクマへ飛び掛かる
組長は真反対の研究スペースへと走り出した
白瀬の初撃 振りかぶった鉄パイプを鼻面に叩きつける
しかし効果はない お返しとばかりに右腕で大振りのビンタを繰り出してくるが、間一髪後ろに跳んで躱す
すかさず噛みつきにきたグリズリーの顎を半身で避けて下からぶっ叩く
そのまま振り抜いて上段の構えになったところで、脳天めがけて振り下ろす
流石に効いたかと思ったが、全く意にもかけずに今度は両腕を大きく上へ振り上げ叩き潰そうとしてくるので後ろへ跳んで距離を取る
もともとグリズリーが持つタフさにドラッグの効果が合わさり正に無敵
あの膂力を受け止めるわけにもいかず、避けることしかできない
一度呼吸を整え再度アタックする 今度は狙いを顔面から右前足の肘に変える
攻撃を避けながら執拗に何度も鉄パイプで肘を殴り骨を折ろうと試みるが全く効かない そうやってちょこまかと動く白瀬に対してグリズリーの怒りはピークに達した
大きく咆哮し立ち上がる 前へ進みながら両腕を振り回し無差別に付近を破壊していく
あの腕で一度でも殴られたら致命傷は確実だ どうにか必死で避けながらチャンスを探っていると
「白瀬!!!引け!!!!!」
組長の声が響いた
戻ってきた組長は何かの薬品の瓶を山のように抱えていた
「タケル!これをあのクマにぶつけろ!!なるべく顔面を狙え!」
言われた通りにどんどん投げる 謎の薬品をぶつけられ、グリズリーは足を止めた
その隙に白瀬は組長の近くまで戻ってくる
「よし 頃合いだな」
そういうと組長は懐から拳銃を引き抜いた
「組長!?なんでそんな物を持ってるんですか!?」
「こんな非常時だ 持ってこれるものはなんでも持ってくるさ」
眉間を狙いズドンと一発 するとグリズリーの全身が発火した
悶えるように鳴きながら暴れまわる しかしやがてゆっくりと崩れ落ちた
「なるほど 消毒用アルコールか…… てか拳銃持ってるなら最初から使えや おかげでこちとらヘトヘトだ」
肩で荒い息をする白瀬が恨めし気に言う
「そういうこと 人体実験してたならアルコールは必ずあるはずだと思ってな アイツにぶっかけて拳銃撃てば丸焼きにできると考えたのさ 奥の手は最後まで隠しておくものだろう?」
無事にグリズリーを倒した3人はさらに奥へ進んでいく
走りながらタケルは先程の白瀬の闘いを思い返していた
カッコイイ いやもはや美しかった あの化け物相手にほとんど無傷で生還したのだ
さらに俺を助ける時、最上階でドラッグ漬けの狂人5人を倒したと言っていた
俺が1人でもどうにかやっとだった相手を5人、しかも時間をかけずに手早く倒した……
あの強さをもっと知りたい なんなら闘いたい 闘うことで味わってみたい
自分とは比較にならない強者を目の前にしてタケルの心は震えていた
いよいよ最奥の部屋に辿り着く
「俺が先に飛び込みます 次に白瀬 最後に組長の順番で行きましょう」
「わかった 飛び込むタイミングはタケルに任せる 白瀬も異議はないな」
「無論だ ここで終わらせるぞ」
一息ついて心を落ち着かせる ドアノブに手をかけ一気に開ける
「モヤシ博士!!!!ここで終わりだ!!!!」
「は?????? え???????グリズリー倒したの????」
信じられないとばかりに博士は素っ頓狂な声をあげる
部屋の中にはパソコンなど事務用品が並んでいる 奥には地上に出れるのか梯子も見える
どうやらこの期に及んで傲慢にも研究結果を纏めてから逃げようとしていたらしい
「あ~~~~~あ 僕もいよいよここまでかぁ~~~~~~」
モヤシ博士が大声で叫ぶ 観念したのか逃げようともせずその場にへたりこむ
白瀬が手錠をかけて無理やり立たせる
「今地上に残してきた組員達から連絡が来た コイツの部下もほぼ全て倒せたらしい」
「流石ウチの組員ですね でもいったいどうやって?」
「裏口のシャッターを閉めたのさ そうすると開けようと躍起になるだろ? だから上の窓からロッカーやら植木鉢落としまくってだな」
「俺が言うのもなんですが、郡山組が憎まれるのってそういうところですよ」
「ハッハッハッ 間違いねぇな」
「事務所を襲撃してきたヤクザもあらかた鎮圧できたそうだ ずっと郡山組を探していたらしいが、全員ビルに閉じこもってるなんて思いもしないわな」
「よし 儂等も地上へ戻るぞ!!」
激動のドラッグ事件から数日後
白瀬を筆頭に警察側は大忙しだった
拠点とされていたビルの現場検証や捕らえたヤクザ達の調査などなど仕事は山積みだ
郡山組も無傷では済まなかった 警察と組んで勝利した卑怯者という誹りは甘んじて受け入れるしかない
しかしむしろドラッグに頼った敵対組織のほうが軟弱者だという声もあり、あまつさえドラッグのブローカー如きに良いように動かされるなど恥さらしだとさえ言われている
なんにせよ一帯の利権を手にした郡山組は辛くも勝利といえるだろう
ちなみにドラッグの売り上げもちゃっかりねこばばしているためかなり儲かった
一方のタケルはまた喧嘩三昧の日々に戻っていた
未だに残る敵対組織の残党をぶん殴り、郡山組に従わせる 組長曰くこういった小さな種を摘んでおかないといつかまた同じような事件が起きるとのことだがイマイチピンと来ない
というよりも白瀬の姿がちらついて仕方ない あの強さを求めている自分がいる
そのせいで喧嘩が空虚な物に感じてしまい、いまいち実が入らないのだ
そんなある日 事務所に久々に白瀬がやってきた
どこかかしこまった態度で神妙な面持ちだ
「お!白瀬!久しぶりだなお前」
タケルの顔が思わずほころぶ
「元気そうでなによりだ 組長いるか?」
「あぁいるぜ 組長!白瀬が来ました」
「おう よく来たな」
「組長お久しぶりです 単刀直入に言います 転勤が決まりました」
「そうか まぁやはりな 次はどこに行くんだ?」
「今回の事件に使われた猫カフェのように、各地に転々と拠点があることが判明しました それを潰しに行きます」
「フフッ、またこき使われてやがんな だが待てよ ケジメをつけてもらう約束は忘れていないだろうな」
「もちろんです 今日はそのために来ました そもそも今回は郡山組の協力無しでは解決できませんでしたしね」
「それはこっちも同じだ というわけで おいタケル!お前、白瀬にくっついてけ」
「……は?組長?冗談ですよね?」
「冗談なわけあるか 儂は本気だぞ 全くあの事件以来腑抜けやがって 久々に白瀬と会ったら満面の笑みとは随分懐いてるみてぇだな?」
「いやそんなことは無いです組長 決してそんな事は」
「タケル、いいか 高校生の頃にお前を拾って育ててきたが、もうそろそろ外の世界を見てこい それに白瀬の強さを知りたがってるのが丸わかりだぞ」
タケルは思わずドキッとした 流石組長 全て見透かされている
「白瀬も異論ねぇよな? 無鉄砲でキレやすい馬鹿野郎だが根は真っすぐでイイ奴だ 何よりも俺の息子だ よろしく頼むぞ」
「………承知した アンタの息子を大事に預かろう」
「ちょっと待ってくれ組長!俺は!!」
「組長命令だ 行ってこい」
ニヤニヤと笑う組長を見て、もはや自分が何を言おうと覆せないことを悟った
「白瀬、お前は本当にそれでいいのか?俺がついていって困らないのか?」
「愚問だな お前ほど強い男がついてきてくれれば心強い」
そう言いながら白瀬も笑っていた
ぶっちゃけついていきたい それがタケルの本心だ
しかしここでホイホイ喜んでついていくのはプライドが許さない
悩みに悩んだタケルはある結論を出した
「わかった だけどな白瀬! そう簡単に俺を連れていけると思うなよ! 俺と喧嘩して勝ったら、どこへでも好きなところに連れていけ!!」
白瀬と組長が顔を見合わせる 2人ともニンマリと笑い気味が悪い
なんとなく上手い事嵌められたような気がしないでもないが、言ってしまった以上男に二言はない
「よく言ったタケル 儂が見届け役兼審判となろう 白瀬もそれでいいな」
「願っても無い事です これから俺についてくる男の技量は知っておきたいですしね」
「バカお前もう連れていける気でいやがるのか 俺が勝つに決まってんだろうがよ」
やいのやいの言いながら表に出る
「よし 準備はいいな白瀬?」
「それはコッチの台詞だタケル 泣くなよ?」
まずはタケルから仕掛ける
顔面を狙って右ストレートを仕掛けるが、簡単に避けられ腹にカウンターの一撃を喰らう
しかし怯まずに前蹴りを浴びせるがガードされ、むしろ足を掴まれた
そのまま後ろに突き飛ばされ無様に転ぶ
余裕の表情な白瀬に対し、地面に這いつくばって息も絶え絶えのタケルではもはや実力の差は歴然だ
「まだまだぁ!!」
タケルは跳ね起きると白瀬へタックルする
しかし白瀬はビクとも動かない
そんな攻防がかれこれ30分は続いた
タケルの攻撃は全ていなされる
殴っても蹴っても歯が立たず、カウンターをくらってヘロヘロだ
「蹴りが甘い 今の体勢で狙うなら脇腹だ」
白瀬がアドバイスを送る
いつの間にか喧嘩というより修行になってきた
タケルはもう満面の笑みだ
それを見ながら組長は自分の判断が間違っていなかったことを実感した
タケルはなまじ強すぎた だからこそ師匠として教えられる、タケルよりも強い者が現れなかった
「あ~~~~ ダメだックソッッ 俺の負けだどこへでも連れてけ~!!」
大の字に寝転んだタケルはそう叫ぶ
「やっと認めやがったな!? お前クマよりしぶてぇわ」
白瀬も流石に座り込む
「ハッハッハッ これで白瀬の勝ちそれでいいなタケル?」
その言葉を受けタケルが跳ね起きる
そして深々と頭を下げながら
「はい 組長 行ってきます」
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