影街〜①真契約編〜

和にんじん

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第10話 炉ノ岩編の後日談

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あの日から3日経つ。




真契約のあの姿は時間が経つと

姿が元に戻るらしく紅釈はいつもの

自分に戻り安心していた。




在多川家の全焼した旅館は

茹と焼が2人で再建し、前ほど大規模では

無いもののなにやら楽しそうな

お宿を作る予定だとか。




紅釈は相変わらず折西の部屋に

よく遊びに来ていた。




変わったことと言えばメールの量が

200通から100通に減ったことや、

ちょっと時間に遅れるくらいでは

何も気にしなくなったくらいだろうか?




紅釈は今日も部屋に来て勝手にベッドに座る。




「そういえば折西、茹と焼のROYN

アカウント貰ったってマジ…?」




「ええ、もらったと言うより

僕のアカウントが特定されたというか…?」




「ハ!?不味くねぇかそれ!?

下手したら情報抜かれそうじゃん!!!」




「僕もそう思ったのでお2人と

会った時にもし個人情報抜いたら

ROYNごとブロックして絶交ですって

言っときましたよ!」




あまりにも酷なことを伝えた折西に

紅釈は顔が引き攣った。



「絶交の二文字で絶望顔になってそうだな…」



「それくらい言わないとまた

情報抜きそうですし…」




「折西って意外と鬼だよな…」



ドン引きする紅釈に



「よ、用心深いだけです!!!」



と折西は失礼な!と言わんばかりの

不服そうな顔をしている。




「…それにしてもあの2人のROYNの量、

紅釈さんよりグロいです…」




「俺のROYNもさりげなくディスるんじゃ

ねぇよ…どれ、見せてみろ!」




紅釈は折西のスマートフォンを覗き込む。




先程までの好奇心で高揚していた

紅釈の顔が一気に青ざめた。



「…茹が1555件、焼が2374件…」




「…どの話題から話せばいいですかね…?」



血の気が引いた折西の顔を見て



「もういい!!!無理すんな折西!!!!!

既読無視しとけ!!!!!!」



と言うと紅釈は折西のスマートフォンを

サッと抜き取り既読だけつけて返した。




「ちょ、やめてください!!!!!

この2人既読無視するとこの倍の

通知が来るんですよ!?!?!?」




「ゲッ!!!!!!!!

キモ…俺もうROYN30件位でやめとく…

客観的に見た俺ってこんなに

キモかったのか…」




「ま、まあ紅釈さんは減った方では

ありますし…お2人ももしかしたら…ね?」




折西が3人のフォローをしている間にも

通知音が止まらない。




「折西やめろ!!通知を止めろ!!!

せめて通知を切れ!!!!!!」



紅釈は折西のスマートフォンを奪おうとする。




「ダメですって!!!!!

トークだけならいいんですけど

ガン無視すると鬼電になるんです!!!」




折西はスマホを紅釈から奪われないように

必死にスマートフォンを守り、

茹のトーク内容を見る。




「私たちのお宿、食べ放題を提供したくて

…折西さんのお好きな食べ物とか

あればお伺いしたいです。」




折西はふと目に入ったトークを話題に選ぶ。




「食べ放題…!アイスとかお茶漬けとか…!」




「まてまてまてコイツらまた借入すんのか!?

そんなことやったら…!!!」



そんな焦る紅釈の気を感じたのか

茹はトークをポン、と追加した。




「もしかして、隣に紅釈でも居ます?

もしそうなら宿泊代の中に

食べ放題の料金も含むと伝えてください。」




「あっ、なんだ…宿泊代に含めて…

キッショ!!!!!

なんで隣にいるのが分かんだよ!?

監視カメラか???お???」





慌てて監視カメラを探す紅釈。



「落ち着いてください紅釈さん!!!

この場所は東尾さんの能力で

守られてるんですから!!!ちょっと!?

ベッドの下を探さないでください!!!」



折西は紅釈と一緒に焦ったのか



「ドンピシャ推測やめてください!!!

紅釈さんが監視カメラ探し始めました!

食べたいのはお」



と変な文章で誤送信した。



「お…なんです?【おにぎり】?

もしかして【お前】…って送りたかったん

ですか!?なんか大胆ですね(照)」



茹から壮大な勘違い通知がポン、

と投稿される。



「あああっ…!!違います!違いますッ!!」




その後本当に食べたかったのがお茶漬けと

アイスだと2人に理解されるのに

数日かかったという…




・・・




コンピュータ室で昴は旅館で作動させていた

監視カメラで紅釈と折西をぼんやりと

眺めていた。




「昴。」




背後からの声に昴が振り返ると東尾が



「おつかれ」



とコーヒーを持ってきた。



東尾は机にコップを置き、昴をじっと見る。



「…なんだ?」




「紅釈に渡した計画書、

組長じゃなくて昴が作ったでしょう?」




昴はしばらく無言で作業するもはぁ、

とため息をついた。




「…折西が来て俺を気絶させた後、

在多川家の茹が情報を盗んでた。


んでその時気絶させた折西にも

いつも喧嘩腰の紅釈にも、勝手に情報

盗んだ茹にも腹が立ったから

派手な計画書をゴリ押しで通した。」



「やっぱり!組長にしては大人げない

計画だったから気になってて!」




「それは俺が大人げないってことか…?」



眉間に皺を寄せた昴は椅子を回転させ、

東尾のいる方に体を向けた。




「いえいえ、組長がずば抜けて

大人なだけですよ!」




「…まあ、俺が大人げないのは認める。

お前に迷惑をかけたんだ、俺に小言を

言う資格くらいある。」





「小言を言ったつもりじゃなかったん

ですけどね…あの計画、私も好きですし。」




東尾がそう言うとふふ、

と昴は笑みを浮かべた。







「…そういえば紅釈が見逃した

茹さんと焼さん、大丈夫なんですか?」





「一応折西のスマートフォンを

パクってアイツらの情報を監視する

システムは作った。

変な動きしたら俺が殺す。」




「私の能力で騒ぎにならないように

隠蔽はしましたけど焼と茹には

何もするなと紅釈に言われましてね。」





「…あいつは馬鹿なのか?

いつ命を狙われてもおかしくないのに?」





「…紅釈は暗殺した方を律儀に

覚えてますからね。炒さんと煮見さんを

殺した事をなかったことにしたく

なかったのでは?」




「…アイツは暗殺するには無能だな。」




昴は深いため息をついた。




「…そうかもしれませんね。」




東尾のいつもの不気味な笑顔は

どこか悲しそうだった。



「…そもそも折西は何故2人と仲良く…」



「折西さんってThe 癒し系だから

じゃないですか?」



「これを見てもそう思うか?」



監視カメラの映像を巻き戻す。



すると気絶させられた後、

ガラリと雰囲気の変わる折西の姿が

映し出された。



「…!これは」




「…この影…ファージによるものかと

思ったがそれらしきものが見当たらない。

こうなった原因は不明だな。」




「この帯みたいなものがファージでは

ないのですか?」




「いや、この帯からファージ

特有の生体反応はない。」




昴は無反応のセンサー付きモニターの

画面を指でトントンと叩く。




「…今は?」




「最近はいつもの気の弱い折西のままだ。」




「性格が変わるトリガーが

あるんですかね…?」



「…だろうな。今後も要監視だ。」



「…性格が変わると言えば。

紅釈、変わりましたね。」



「そうか?いつも通りの馬鹿だろ。」



「なんというか、常にピリピリしてたのが

少し和らいだというか…」



「確かに、折西と会ってから

よく笑うようになったな。

何があったのかは知らんが。」



「…映像が途切れてる所でなにか

きっかけがあったんですかね?」



折西が豹変する箇所から更に巻き戻す。



折西が4階への階段へ登ろうとしたあたりで

ブツンと映像が途切れ、

変わり果てた紅釈の姿の映像が流れ始める。



「紅釈、姿が変わってますよね。」



「途切れてる最中に何かあったんだろうな。」



「…」



一通り映像を見終わる。



「さてと!見終わったことだし、そろそろ!」



帰ろうとする東尾の顔はいつもより

不気味な笑顔をしていた。



「私も折西くんのこと調べてみますね!」



そう言って東尾はコンピュータ室から

出ていった。



「…相変わらず研究熱心な弁護士だな。」



研究というより執着に近いが。




呆れはてた昴は机の上のチョコレートの

包みを破り、中身を口の中に

放り込んだのだった。


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