ダンジョンチケット

１５章 知界

ダンジョンチケット１９１

拓武達は次の日の朝、知界のゲートから人間界つまりは地球に向かうことになった。
目的は人間界の偵察と、現状を変えるための足掛かりを作ることにあった。

そんな拓武にスルトが追憶のオルゴールを手渡したのだ。
「クリュメノスから預かっていた物だ、本来、拓武に渡していいのか迷ったが、間違いなく拓武は、クリュメノスだ」

そう言われ拓武は追憶のオルゴールを開いた。
オルゴールのメロディーが拓武の精神に入り込む。

そこで眼にしたのは、クリュメノスがただ幸せに暮らしている風景であり、皆の笑顔に囲まれている光景だった。 

「これは」
「クリュメノスが一番大切な物だと言っていたが？」
「うん、凄くクリュメノスらしい宝物だったよ」
スルトは其れを聞き喜んだ。

そんな拓武に次はナノが丸い玉の様な物を持ってきた。

「拓武さんが嫌なら止めますが、拓武さんは空を自由に飛びたいですか？」
「そりゃあ？飛べたら嬉しいが」
其れを聞き、ナノがいきなり拓武の服を目繰り上げる。
そして、背中にその球体を押し込んだ。
球体がみるみる拓武の体内に侵入していく。
拓武は余りの激痛に意識を失ないそうになるが、何とか持ちこたえた。

「ハァハァ…… ナノ、此れは」
皆が異変に気付き拓武に近寄るなか、ナノが拓武に与えた球体について語る。

「拓武さんの体内にリンク、サルベージ、神経リンク、血圧正常、血流動機、血管再構築及びリンク、オールリンク、無事に拓武さんの体内に同化しました。おめでとうございます」

「此れは何なんだ？」
「さっきも言いましたが、拓武さんは空を飛べるようになりました」

拓武は、ナノの言葉に驚かされた。
人間が空を飛ぶから胸筋を遥かに鍛え上げねばならない、物理法則や運動力学から見ても、人間が鳥の様に空を飛ぶのはやはり不可能だろう。

しかしナノは拓武に「飛びたいと強く念じてください」そう言うのだ。

そして、拓武はゆっくりと宙に浮いたのだ。