ダンジョンチケット

１９章 月界の長と凍結の支配者

ダンジョンチケット２９７

　ヴァサゴは未来を予想して攻撃をしていたが、アースが介入する未来の先は闇でしかなかった。それは未来が見えないのではなく、未来が無いのではないかと錯覚させるほどに強烈なインパクトをヴァサゴに与えていた。

　ヘラは自身の腕が無くなった事実に怒りを露にし、冷静さを欠いていた。バーダとバティーンに相手取られる姿を見たアースは呆れたようにその手をヘラに向ける。

「僕は使えない玩具も壊れた人形も要らないんだ……バイバイ、ヘラ」

　アースの手がグッと握られた瞬間、ヘラの体が地面に倒れ込み絶命する。

　その姿を陽気に手を叩きながら笑うアースの姿があった。

「アハハハ、最後は僕を楽しませてくれたねヘラ、御褒美にもう一回チャンスをあげるよ」

　指を鳴らしたアース。次の瞬間ヘラが立ち上がり、自身に何が起きたかを確かめるように顔を左右に動かした。

「ヘラ？　次はないからね……」

　その言葉にヘラだけでなくヨミにも緊張が走る。

　皆がアースとは何なのかを考える最中、キーメイスがモシュネに向かって突進していく。

　それを合図にスルト達も同様に動き出した。

　魔族達も勝てる勝てないに縛られず、バティーンを見てその拳を奮い立たせた。
　拓武は闇の中に吸い込まれ、ベルゼとサブナックもいない、しかし魔族達は拓武を信じアースへと向かっていく。