ダンジョンチケット

１９章 月界の長と凍結の支配者

ダンジョンチケット３０４

　全ての出会いと歩んできた日々が即座に拓武の脳裏に甦り消えていく。
　砂の城が波に流されるように、ただ大切な物が奪われていく。

怒りを感じずにはいられない状況でそれ以上の悲しみの感情が拓武を襲ったのだ。

「なんで……俺から大切な物を奪うんだよ、俺から幾つ奪えば満足するんだよッ！！」

　拓武の言葉は涙と共に露にされそれは怒りの力となっていく。怒りが自我を崩壊させ怒りは力を暴走へと誘っていく。

「ウオオォォォッ！！」

　アースは楽しそうに震えながら笑みを浮かべている。拓武は雄叫びにも似た声をあげると一心不乱に走り出した。

「アハハハ、良かったよ！　その怒りを僕にぶつけれがいい！　さぁ来い拓武ゥゥゥゥッ！！」

「アァァァァーースゥゥゥゥッ！！」

　次の瞬間……拓武とアースの間に割って入ってきたのはキーメイスだった物であった。
　拓武のガザ・アッサルがキーメイスだった物に触れた瞬間……拓武は声にならない絶望を全身に感じた。

　それを嘲笑うアースは精神が崩壊寸前の拓武に更に追い討ちをかけたのだ。

「拓武……僕は君の仲間を今から蹂躙して見せるから、後で感想を聞かせてよ……」

　冷めた笑いと冷たくいい放たれた言葉は拓武を更に追い込んでいく。
　現実にやられていく仲間達、拓武の精神は限界に達していた。恨み憎しみ哀しみ、全ての絶望が拓武を包み込んだのだ。

　その瞬間、一斉に死者達が襲い掛かり拓武を斬りつけていく。更なる絶望を前に光を失いそうな瞳に写ったのはバーダの姿であり、涙を浮かべながら振るうその槍は悲しくも研ぎ澄まされていた。