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4章獣人になったからには

誰でも1度はそんな経験あるんだよね

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ガルダがランクアップをして獣人になってから二日目の朝が来た。

昨日から始めたこれからの朝やることは水汲みと皿をとったり並べたりあとは子供達を起こしたりと色々な事を獣人の身体で試している。

特にマナカの手伝いをメインに増やした。ランクアップ後の歩行はあまり問題ないがまだまだ素早く走ったり急な方向転換などに反応が追い付かないのだ。

不思議な事に台所仕事は小刻みに方向転換などがありまた立ち仕事と言うこともあり今のガルダにとってはリハビリの様なものだった。

マナカの手伝いがこんな形で役にたってくるのは流石にビックリだ。

そして学校に行くために子供達が目を覚ました。
ルーデンヤードと違い温暖なクーデルトルンはフレイムフォックスの3匹にはとても住みやすいようだ。

朝ごはんを子供達は急ぎ食べ学校へと向かって行った。
最近知ったが3匹は学ぶでより早く成長しているようだ、なんでもルーデンヤードから来た者は此方の者より基本的能力が高いらしいのだ。

エメルなんかもその一人だ、エメルは此方の世界に迷い混んでから数年で爵位と領地をてにいれたが単に頭が切れるからではない、
もともとエメルは強かったが此方の世界に来てエメルの幻術スキルや攻撃スキルなどの威力が増した為である。

子供達はどう成長するのかが楽しみだ。

それから俺はみんなの食べ終わった食器をマナカと一緒に片付けて朝の手伝いが終わるのだ。

そして今日からは食器をつかんで洗うことに挑戦してみた。

『ガルダ?無理しないで先ずは簡単なことからにしよ?』

マナカは心配そうにガルダを気遣うがガルダはどうしても洗い物というのをしてみたかったのだ?

『大丈夫だよ♪マナカまかせとけ!』

マナカは不安そうにガルダを見つめるがガルダは気にしないでやりはじめた。

ガシャン!

ガルダはゆっくりと後ろを振り向いた。

割ってしまったのはマナカのマグカップだった。

マナカはまだ気づいていないようだった。

バレないように割れたマグカップをそっと布に包んだ。

『ガルダ?今なんか音しなかった?』

『あ、いや、うん』

『どうかしたのガルダ?』

ガルダは言い出そうとしたが…言えなかった。


このマグカップはマナカがクーデルトルンに来て初めて一緒に買い物に行って買った物だった、そして言うタイミングが無いまま仕方なくマグカップを自分のカバンにしまった。

そして言えないまま、マナカに言われ買い物に付き合う事になったのだ。

『ガルダ?今日の夕食何がいいかな?ガルダからお金は預かってるけど、毎日好きなもの食べてると太っちゃうしね?悩むよね?』

マナカが楽しそうにガルダに訪ねる、だが、ガルダは割ってしまったマグカップの事を言うタイミングを逃してしまい、それどころではなかった。

『ガルダ?聞いてる?』
『あぁ、聞いてるよ』

そして夕御飯の買い物を終えるとマナカと少しお茶をすることになった。

『ガルダとカフェに入るの初めてだね♪魔獣の時はデカ過ぎてお店に入れなかったもんね?』

ガルダはランクアップした事により2メートルを越えるほどの大狼型魔獣バトルフェンリルだった姿から獣人になり身長182センチと大柄ではあるが普通の店等に入れるようになれたのだった。

クーデルトルンでも魔獣はいるが大型魔獣はランクアップのお陰で存在しない詰まりガルダのような大型魔獣は皆が恐れて近寄らないし店にもお断りの貼り紙が貼られた事もあったのだ。

『普通にお茶ができるのって嬉しいよね?ガルダはそう思わない?』

『普通か…なぁ、マナカ…』
『どうしたの?あらたまって?』

ガルダは言い出せなかった事をタイミングのせいにした自分を恥じた、マナカを悲しませたくない、でも言わない方がマナカはきっと傷つく!そう思ったのだ

『マグカップを割ってしまったんだ…大切にしていたのに…すまない』

そう言うとガルダは自分のカバンから割れたマグカップを取り出した。

マナカは怒らなかった、むしろ笑っていたのだ。
『気づいてたよ?ガルダ顔真っ青だったし私のマグカップだけ棚に無かったしね』

『本当にごめん、すぐに謝ろうとしたんだがマナカの悲しむ顔が見たくなかったんだ』
『なら?何で言ったの?』
マナカは不思議そうに訊ねた

『言わない方がマナカが悲しむと思ったんだ』

その瞬間マナカはガルダにギュッと抱きついた
『ありがとうガルダ、私を心配してくれたんだね』
ガルダは顔を赤くしていた。

『そうだ!ちょっときて』

そしてマナカに言われるまま二人は雑貨屋によってから家に帰った。

新しいマグカップ2つ家の棚に仲良く並んだ。

片方は大きな狼の絵が描いてあり片方は獣人の女の子が描かれていた。

それまで魔獣だったガルダにはマグカップが無かった。
本当の意味で初めてのマグカップになったのだ。

マナカはこっそりガルダ用のマグカップを選んで買ってきていたがそれを棚の奥にしまった。
二人にはもうマグカップがあるからこれは使わないなと思いながらその棚に鍵を掛けたのだった。


ガルダはマナカの優しさに今まで以上に気づかされた一日であった。

御粗末。
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