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1章新しい風と陰謀の花

海を黒く染めた大海賊

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ガルダ達は船甲板にいた。
何故こんなことになっているのかと改めてガルダは考えていた。
遡るさかのぼる事5時間前、ミックがガルダの元に訪ねてきた所から話は始まる。
ミックは式の後、しばらくの間ガルダ達と生活していた。
しかし何時までもザルバトランの港に船を繋いでおく訳にもいかなかった。
そんなミックは渋々、故郷であるアスラステアに海賊船団と共に帰還したのだ。

ミックの故郷はバルドリア海とザルバ海の中心くらいにあるらしいのだが、ミックの話だと幻の都とまで言われているらしい。

地図で調べたがそれらしい島や国はその海域には存在しないのだが、ミックは嘘を言うような娘ではない。

ましてや海賊の掟を重んじるミックがガルダに嘘を言うなどあり得ない話だったからだ。
ミックはガルダ達の元から離れて1ヶ月程が経とうとしていた。

そんなある日、朝早くドアを開ける音と共にマナカとガルダの寝室に忍び寄る足音、そしてベットに忍び込む気配に気づきガルダが目を開けると

『ダーリン?私が居なくて寂しかった?』

ミックが既に隣にいた。
流石に驚いたがミックは変わらず冗談混じりに笑ってきた。

マナカも声を聞き目を覚ますと久々に会うミックにバグをする。
そしてマナカはミックの足元に目を向けた。
ミックの足には靴がちゃんと履かれていた。

『ミックーまた、あなた……靴履いたままであがってきたのね!』

マナカに怒られ、すぐに靴を脱ぐとミックはその場で正座をし頭を下げたのだ。

『ミック?!そんなに怒ってないから頭あげてよ』

流石にマナカも怒るのをやめてミックに頭を上げるようにいったのだ。
だがミックから驚きの一言が飛び出したのだった。

『実は、私の父がガルダに会いたいと言っているの、父も元海賊だから掟の事は理解しているんだけど、1度ダーリンと話がしたいそうなの』

ミックの父であるナビカ・ライド・テナスは元大海賊で若かれし頃は此処等の海を荒らし回り指名手配されていた程の有名人だ、だが旧友であるラッソの父がバルドリア海軍との戦闘で負傷したと聞くと、クーデルトルン海軍とバルドリア海軍の戦闘に乱入するほど友を大切にする熱血漢でもあった。

双方が激しく戦う中で互いに動きを止め、東の海を見ると。
其処に海を真っ黒く染めあげる海賊艦隊が姿を現した。

『我が名は大海賊。キャプテン!ナビカ・ライド・テナスである!我が友の無念を張らすべく!クーデルトルンに加勢する!者共かかれぇぇぇぇ!』

掛け声と共に海賊艦隊がバルドリア海軍に向かい突っ込んでいく!海のモンスターを使い好きな方向に自在に動く彼らの船を止める術は無く。
バルドリア海軍は翻弄される一方であり状況が一変した。
その日の内にバルドリア海軍は壊滅寸前にまで追いやられる事になる。
そして、バルドリアが降伏した。
この事件がきっかけになりバルドリアとクーデルトルンの和平条約が締結される事になり。
クーデルトルンに今も名が刻まれる大海賊になった。
其れこそがミックの父であるナビカ=ライド=テナスである。 

ガルダはミックの父が有名人とは知らなかった。
しかしミックの父が会いたいと言うならばと会いに行く事にしたのだ。

そして、ガルダ達はミックの故郷に向かう事になった。

しかし、デンはアクアとの約束があるからとアスラステア行きを断られてしまった。

ガルダからしたら、寂しい限りだが、男の子はみんな、そんなもんだなと!自分の中で言い聞かせた。

「いざ行かん幻の都、その名はアスラステア!」
楽しそうなガルダであったがマナカはデンが心配で仕方なかった。
マナカは当面のデンの食事をアイレンとイッサンに御願いし色々とデンの為に出来ることをしてきたがやはり不安そうであった。 

そうとは知らないデンは、マナカの心配を余所に昼御飯を食べていたのであった。
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