のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ

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計画された舞台・・・1

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 昼過ぎ、ガレルの表通りを高台に向けて進む。
 高台になれば、なるほどに力がある事を示すように見た目のいい家が増えていくのが分かる。

 それと同時に、一般人という言い方だと誤解があるかもしれないが、敢えて言うならば、成金思考の貴族や権力を有した者達の場所と言う印象であり、普通の通行人はおろか、外を走る子供の姿すら無く、活気もないと言える。

 とにかく、簡単に言うなら、居心地の悪い場所だと言う他ない。

 そんな高台の先に、ガレルの領主が住むデルノバ邸が存在する。
周囲にある他の立派な建物と比べても大きさが分かる。

 私は呆れながら、領主の元に向かう。
 姿を老婆に変化させ、クイーン達には村娘の様な姿になるように指示を出す。

 あくまでも私が今回、この場所を訪れた理由は話し合いなのだ。

 その為には、弱々しく当たり障りのない姿が一番だと思ったからだ。

 私達は、静かにデルノバ邸の敷地内に移動すると、巨大な扉を叩く。

 トントン……トントン…

 叩かれた扉から室内に微かに音が響く。

 ツカ、ツカっと上等な靴が此方に近づいてくる音がする。

 そして、扉が開かれると初老の男性が姿を姿を現す。

 痩せ型のオールバックにきっちりした服、全てが執事だと言わんばかりの姿だ。

「お待たせ致しました。執事のロルと申します。御初にお目に掛かりますが、どの様な、御用件で御座いましょうか?」

 ロルと名乗る執事は丁寧な口著で優しめに質問する。

「はい、私共は、町に新たなギルドを許可して頂きたく、領主様にお願いに参った次第で御座います」

 私達の言葉に、渋い表情を浮かべるロル。

「かしこまりました。主人に一度、お伝えして参りますので、暫し、お待ちくださいませ」

 そう言うと静かに扉が閉められる。
 数分もせず、その静けさは消え去る事になる。

 ガッシャン! っと、花瓶のような物が割れる音が外まで響き、怒り狂う怒号が響く。

 再度、入口の扉が開かれると、額から血を流す執事のロルが立っていた。

「申し訳ございません、主人にお伝えしましたが話はないとの事です。独り言ですが……あの御方は命を軽視しています、命は失うべきではない、全うまっとうするものです」

 私は少し驚かされた、領主はクソ野郎なのに、この執事は有能だわ。

「でしたら、私からも、独り言を……執事様、自身で防げない問題が起きた際には、守らずに逃げてください。
 ゆめゆめ、忘れなきよう……でわ、失礼致します」

 領主は、私の話なで聞く気はない事が理解できた。

 まあ、他の者達の声すら通らないのだから、見ず知らずの村娘や老婆の格好をした私達の意見など聞く筈ないのだ。

 でも、コレは必要な流れだから、予定どおりね。
 確りと忠告はしたんだもの、私の優しさを無駄にしたら、どうなるか教えてあげないと。

 ガレルの町に夜がやってくる。
 夜は町を守るケストア軍の数も減る。

 そして、私は作戦を実行する為に動き出す。

 今回の作戦は、かなり犠牲者を出す事になる。
 寧ろ、犠牲者が必要になる作戦なのだ。

 私は町の外から空を見上げる。
 綺麗な満月が浮かび、ぶ厚い雲が風に流されるようにゆっくりと動いていく。

 私はクイーン達に作戦を伝える。

「頃合いね、敵は装備で判断、無差別の殺戮は無しよ。あと死ぬ事は許さないから、ミスるんじゃないわよ!」

「はいです」
「御意!」
「は~いだよ」

 まとまりのない返事に若干の不安はあるが、実力や信頼度は間違いない。

 ラクネが一番槍となる。
 ラクネを元に作った中級の影モンスターを与えており、ラクネ本人は正面に配置している。

 作戦はシンプルだ。
 正面からの殴り込みとなる、ラクネが槍であり、盾としての役割を与えたクイーンが同行する。

 私はホーネットと共に、空中から移動する事になる。

 ホーネットを元にした影モンスターに加え、ホーネット自身が使役している昆虫モンスター達が私と行動を共にする。 

 満月が雲にゆっくりと隠されていき、私達は、擬人化を解除する。

「作戦開始よ、標的、ガレルの町。ケストア軍は全滅させなさい!」

 作戦開始の指示に、ラクネが直ったばかりの正門に向けて駆け出していく。

 空中から、私達はラクネ達の見つめる。

 門番となっていたのは四人で、その肩に付けられたワッペンから、すぐにケストア兵だと分かる。
 ついてないわね、こんな日に門番だなんて、可哀想に……

 ラクネとクイーン以外の影から生まれたモンスター達が次々にラクネに続いて突撃していく。

 出来たばかりの門に向けて、駆け出したままに拳を構えるラクネ。

 その拳はただ、全力で目の前の強固な扉へと打ち出されていく。

 ズッッゴォーーンッ! っと、容赦ない衝撃音が鳴り、その音は開戦を告げるように町中に鳴り響く。

 ラクネを微かに雲と雲の境い目から月光が照らしだし、ニヤリと微笑みが露になる。
 真っ赤な瞳が不気味に照らし出された瞬間、完全に吹き飛ばされた門の先から、人々の悲鳴が響く。

「魔、魔物だァァァ! 魔物の大群が攻めてきたぞ!」

「うわァァァ逃げろッ! 早く! 王国兵を呼べ!」

 私は上空から、流れを見つめていた。
 信頼はしているが、ラクネが、やり過ぎないかが心配だったからだ。

 叫んでいるのは、一般人だろうか、かなり慌ててるのが理解出来るわ。

 私はその先から、慌てて、動く二つの集団を確認する。

 1つ目は、ケストア軍だ。

 中隊長だったエルドを一人失っているが、既に補充を済ませていると考えるのが正しいだろう。
 少なくとも100人の訓練された兵士が今回のラクネとクイーン達の相手をする事になる。

 この十数倍程の戦力なら、僅かな希望も見えただろうが、圧倒的な人数不足だ。

 ラクネとクイーンに与えた影のモンスター は、200体程度の中級レベルになる。

 普通の冒険者や兵士が相手すると考えれば、一体に対して、五人程の兵が犠牲を覚悟で戦う必要があるレベルなのだから。

 そして、もう一つの集団は、デュバルとその仲間、更に言えば、スラムから集めた義勇兵の様な者達だ。

 ケストア兵の好きにさせたくないって奴らが、意外に多くてびっくりするが、ならず者でも、武器を扱えれば戦力と言えるだろう。

 そして、ラクネ達が向かうのは、ケストア兵側になる。

 勿論、ケストア軍には、私の計画から、早々に退場して貰うつもりよ。


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