のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ

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水路の悪夢・・・1

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 二つの門を前に、勝敗が決した。
 残る水路に向かう四万の勢力、その大半がケストア王国軍の軍直属攻撃部隊であった。

 指揮官は、ケストア王国軍 司令であるバロ・ネトラの副官と呼ばれる男であり、成功の為なら手段を選ばない性格の持ち主である。

 名は、バスコ・オルディ。

 冒険者だったバスコは、実力を認められ、バロ・ネトラの直属の部下となり、ライバルを蹴落とし、時には消し去る事で今の地位を得るに至っている野心の絶えない男だ。

 そんな男の指揮する四万の軍勢には、ケストアの首都である【イザ】の冒険者ギルドからも多くの人材が金品により参戦している。
 そんな中には、不本意ながら参加している冒険者も少数だが存在している。

 その少数には、チャンスをあげても良いと考えているわ。

 様子を伺いながら、紅茶を楽しむ。
 オシャレな西洋風壁紙に小さな丸テーブル、古い柱時計とオルゴールの音に包まれた室内。
 足音の無いまま、扉がノックされ、レイコが頭を下げて室内に入ってくる。

「パンドラ様。予定通り、敵が到着しました。作戦を始めてよろしいですか?」

「構わないわ。この部屋の形、凄く好きだったんだけどね。予定通りに始めてちょうだい」

 レイコは頭を下げると両手を広げる。

 室内が突如、レイコに吸い込まれていく。

 全てが吸い込まれると、水門の前に私とレイコは立っている。

「本当に便利な能力ね」

「いえいえ、パンドラ様のお陰で能力が向上しましたので、それにパンドラ様には絶対に勝てませんから」

「そうね。でも、逆に言えば、私以外に簡単に負けない力でもあるわ」

「買い被りすぎですよ。始めますので皆様も、準備はよろしいですか?」

 そうレイコが声を掛けると、姿を隠していたクイーン、ラクネ、ホーネットが姿を現す。

 そして、レイコの全身から一瞬で無数の和柄の反物の様な布が伸びるとそれはドーム状になり、一気に形を形成していく。

 私達は作られたドームが巨大な屋敷の形になったのを確認してから、内部に入る。

 外観は屋敷だが、内部は倉庫の様な作りになっており、普段はレイコに商人達の入場等の管理を任せており、その際に使われている形状だ。

 水路の入口は商人達が大量の品を水路から運び入れる搬入口となっている。
 陸路より早く小船等で運び込む事が可能であり、そのまま反対の水路から元の河川に戻る事も可能になっている。

 大切なのは、水路からガレル内部に入る際に、レイコの能力を使ったゲートが張られている事だ。

 この能力で、レイコが知らないと判断した人物や、悪意のある人物、認識できる人物等に分けて別々の部屋に強制的に移動する事が可能になっている。

 此処でレイコの能力を詳しく話すなら、レイコの能力は異形と言える物だ。

 スキルは"来る者拒まず"と"戻らずの部屋" そして、"安全管理者"となっている。

 "来る者拒まず"は、入ってくる者に対して入るまでは妨害が出来なくなると言う訳の分からないスキルになっているわ。

 "戻らずの部屋"は、"来る者拒まず"を発動している際に発動できるスキルになっている。
 自分の意思で踏み込んだ者は、レイコの許可無く出る事が出来なくなり、更に"来る者拒まず"の能力により相手からの妨害つまりは、内部からのレイコに対する攻撃は全て無効化される事になる。

 最後、"安全管理者" これがレイコの能力を更に強力な物にしている。
 この能力"安全管理者"は、レイコ内部で攻撃を受けた際に攻撃者とそれに関わる者に攻撃をする事が可能になると言うモノになっている。
 更に言えば、相手からの攻撃は"安全管理者"達には、無効化され、更に強力な存在になっていく仕組みになっている。
 その為、レイコ内部では、まさにレイコは最強の存在となる。

 つまりは、水路の入口に踏み込んだ瞬間からレイコの体内に自ら入った事になる。

 そして、案の定と言わんばかりに水路からは大勢のケストア王国軍と金に目が眩んだ冒険者達が我先にと押し寄せてくる。

 相手からすれば、二つの門にガレルの兵が集中して、水路の防衛はガラ空きになると考えていたからだ。

 そんな甘い考えは通じる訳は無いのだが、10万人と言う大戦力が仲間である事実からなのだろう、次々に内部に敵が押し寄せていく。

「いくぞ! 他の門からも攻撃してるんだ。戦利品は早い者勝ちだ!」
「おおよ。金持ちそうな家から調べるんだ! ケストア軍の奴らに先越されんなよ!」

 ケストア軍の中には、犯罪者ギリギリの冒険者や、初めから火事場泥棒のように盗みを目的とした冒険者まで混じっていた。

 冒険者達は我先にと水路から内部に入る。

 水路の先に現れる複数の枝分かれした通路。
 此処で重要なのは、どの通路も正解であり、不正解に繋がると言う事実である。

「ふざけやがって、外からは、そんなに広く見えなかったが、かなり広いじゃねぇか」

「ジャミル。 どの道を選ぶ? 流石に皆が同じ道を進むのは、やばいだろう?」

「チッ、分かってる! 他の連中が追いつく前に、別れて進むぞ!」

 がたいの良い、片目に眼帯をした男が苛立ちながら、指示を出していく。

 男の名はジャミル。

 職業 冒険者(盗賊 獅子王の頭)

 鍛え上げられた巨体、オールバックにされた銀色の髪。
 片目には眼帯をつけており、鋭くギラギラした片方の瞳が印象的な男だ。
 得物は戦斧であり、腰には、麻痺毒が塗られたナイフが複数ベルトにケースごと付けられている。

 他の団員も冒険者でありながら、盗賊 獅子王のメンバーという、危険な集団である。
 
 そして、ジャミルの指示により、複数で通路を別々に進む。

 そんな彼等には悪いが、通路の先はレイコの思うがままに転移する様になっており、どの通路を選択しても結果は同じなのだ。

 互いに進すむ彼等は当然同じ部屋に辿り着く。

 進んだ先に現れる扉を開くと離れた筈の部下達が皆、広いだけの空間に集まっている。

「何だこりゃ、広すぎるだろ?」

「か、頭! なんか変なんだよ!」

「そうなんだ、ジャミル。何故か全員、同じ部屋に辿り着いてるんだよ」

「あぁ? つまり、最初から分岐は時間稼ぎかよ。ちくしょうが! だが、この状況は頂けねぇ。引き返すぞ!」

 ジャミルは、悩まずに判断すると、来た道を戻る為に入ってきたであろう通路に向かおうと後ろを振り向く。

「頭! 入口が、入口がただの壁に描かれた絵になってやがる!」

「あぁ? 何、寝言言ってやが……こりゃやべぇな」

 壁を前にして直ぐにジャミルは周囲を見渡す。

 そんな姿にパチパチと手を叩く音が室内に響き渡る。

「いやぁ~いいねぇ。凄く嬉しいよね~沢山の玩具が集められてる~」

「誰だ! ふざけやがってッ!」

「玩具は遊ばれる物なんだよ? ふざけてるの、そっちだよね~アハハ」

 ジャミルの鋭い視線の先、腹を抱えて笑うホーネット。

「さぁ、楽しもう、ボクは玩具を壊すのが大好きなんだよね~」


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