のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ

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新たな存在・・・2

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 私が微笑んだ瞬間、気が狂った様にバロ・ネトラは、自身が身に付けていた剣を抜き、それを確りと此方に向ける。

「ワシは、ワシは……貴様なんかに、貴様の様な小娘が、うわぁぁぁッ!」

 振り抜かれる剣先から柄に至るまで全てに魔力が流れ込んでいる事が理解出来る。

「普通じゃ有り得ない流れ方ね? 魔剣の暴走ってやつかしら?」

 軽々と剣を躱しながら、私は質問するように呟いて見るも、それに対する反応はない。
 残念に思いながらも、楽しめそうに無いと判断した私は、直ぐにこのゲームから、壊れた駒を排除する。

「もういいわ……ラクネ、全力で吹き飛ばして」

 私の言葉に、ラクネが嬉しそうに笑みを浮かべ、同時に魔力を拳に集中させた。
 一瞬だった。

 ラクネの拳が前に高速で打ち出され、バロ・ネトラを貫き、魔力が内部から破裂した。

 一瞬でラクネは、バロ・ネトラを文字通り跡形もなく吹き飛ばしたのだ。

「ふぅ、御館様。終わりました!」

「御苦労様、あ、ラクネ? もう一つお願いできるかしら?」

「はいッ! なんなりと」

 私の言葉に嬉しそうに答えるラクネ、先程、人、一人を吹き飛ばした者と同一人物とは思えない程、明るい声に此方がびっくりしてしまう。

「ふふっ、貴女にはルーズ達の支援を頼むわ。大丈夫だと思うけど、圧倒的な勝利は、後々大切になるわ、いいわね?」

 喋り終わると同時に、ラクネは片膝をつき、深々と頭を下げる。

「御意! このラクネ、御館様である、パンドラ様の為に、全力で敵を粉砕して参りますッ!」

 ラクネは立ち上がり、出窓の方に身体を向ける。
 足に魔力を集中して、今にも飛び出そうとしている。

「ラクネ、分かってるでしょうけど、全滅じゃなく、一人は確実に逃がしなさいよ?」

「へ? 一人逃がすのですか?」

 不思議そうに私の顔を見つめるラクネ。

 私は理由を手短に説明する。

「ラクネ、全滅さそたら、誰が全滅させたか分からなくなるでしょ、相手がケストアの兵士だと思う場合や、他の冒険者とか思われても困るわ」

「は、はい! 分かりました! 直ぐに一人だけ残して、全滅させて来ます!」

「確りと、自分が何者か名乗るのよ?」

「畏まりましたッ! 行ってきます!」

 ラクネは、再度、足に魔力を集中させると凄まじい勢いでルーズ達が戦う戦場に移動する。

 ラクネにも、いい息抜きになるだろう。

「ホーネット、吸血蟲達を召喚して貰えるかしら、ケストア城の中にある残骸と血痕を綺麗にするわよ」

「はいはい~ 了解だよ~ 御主人様? 生き残りが隠れてたら……どうします?」

 はぁ、ホーネットの悪い癖かしら、直ぐに遊びたがるのよね。

「任せるわ。ただ、やるなら、逃がしたりは駄目よ、いいわね?」

「アハハ~い、ありがとうございます」

 楽しそうに笑うホーネットは、まるで玩具を与えられた子供の様に見える。

 これで、証拠も目撃者もすべて消えるわね。
 本来なら、死体があった方が説得力があるけど、希望と恐怖は大切なスパイスになるわ。

 前ケストア王は、クーデターに恐れ、国民と国を捨てて逃亡、新たな王は敗退して逃走ってシナリオができる。
 前ケストア王が生きていると期待する者、怒りを抱く者、更にクーデターを起こしたバロ・ネトラが生きているかも知れないと言う、恐怖と憎しみの感情、すべて素敵なスパイスになるわ。

 ケストアの味付けは、こんな物でいいわ、後は、ちょっかいを出してきたお隣さんに、御礼をしないとだわ。

 まあ、既に何人かを向かわせてるけどね。

 私が笑い、ケストア城での戦いは終了した。

 それと同時に、二つの出来事が同時に起こる。

 一つは、ラクネのルーズ達が戦う戦場への到着である。

 もう一つは、サザル公国からの増援部隊の到着であった。

 遡ること数分前……

 大空で、ルーズ達の戦場に方向を変える男の姿があった。

 他の大鷲よりも巨大なそれを操り、他の者達がランスや剣などを装備しているさ中、鍛え上げた太い腕、そのデカい手に握られた巨大な斧、鋭くも優しさのある眼と白髪混じりの頭、整えられた口髭が立派な男、黒鷲の隊長である、クーリ・カアーンであった。

 クーリは、自身の部隊が撤退した事実と、今も部下達が戦っている事実を部下に命じて、巨大空船に報告させる。

 それと同時に、クーリは、戦場に舞い戻る決意を決めたのだ。
 部下達だけで向かわせた決断を後悔する様に渋い顔を浮かべる。

「すべて、オレのミスだ。残党狩り程度に考えた結果か……馬鹿はオレの方だ」

 クーリは他の部下達に改めて命令を告げる。

「いいかッ! 今から全部隊は帰還せよ! 改めて命令する! そして、確実に今ある情報を本国に伝えよッ!」

 そして、一部の部下達が同行を求め、結果的に、半数となる18人の部下がクーリと戦場に戻る事となる。

「本当にオレの部下達は、馬鹿者ばかりだ……いくぞッ!」

「「「ハイっ!」」」

 そして、両者が今、戦場にて対峙する。

 最初に動いたのは、黒鷲の隊長であるクーリであった。
 その目に飛び込んできたのは、半数が既に戦闘から離脱し、残る半数も虫の息となった部下達の姿であった。

「まさか、これ程……くっ」

 口の中を噛み切らん程に噛み締めるクーリ。

 そして、戦闘中の両者に対して、声を荒らげる

「我が名は突撃空撃部隊【黒鷲】隊長、クーリ・カアーンであるッ!」

 それに対して、ルーズが天を見つめてから、高く飛び上がるとクーリと同じ高さまで飛翔する。

「我が名は、ノー・ルーズ。
 戦騎隊、並び、重装騎士歩兵大隊を預かる者なり」

 クーリは"ルーズ"と言うと言うなに対して、軽く頷く。

「ルーズ殿は、ケストア王の一番槍と呼ばれし、ルーズ殿と考えて間違いないだろうか?」

「確かにその様に呼ばれていた事もあるな」

「ならば、互いの一騎討ちにて、この戦いの勝敗としたい!
  ルーズ殿、勝負を受けて頂けるな!」

「一騎討ちか……今のワシには、それを決める事は出来ぬ……」

 予想外の返答、クーリに緊張が走る。

 そんな最中、笑い声がこだまする。

「あははッ! よいじゃないか、実に愉快な展開じゃないかッ!
 御館様には、我から伝えよう、ルーズ、全力でぶつかるとよいぞ、ただし敗北等するなよ!」

 突然、現れたラクネの言葉に驚くクーリ、その横で頭を下げるルーズの姿に、黒鷲の面々は、事態が理解出来ず、その場で硬直する。

 本来ならば、不意打ちや、逃走と言った行動も選択肢に入るのだろうが、ラクネの存在は、そんな小細工を脳裏から吹き飛ばすのに十分な威圧感を全身から放っていた。

 そして、ルーズが改めて立ち上がり、クーリの方を向くと、自身の武器ビッグホーンランスを向ける。

「クーリ・カアーン殿と言ったな。待たせたが、許可が出たのでな、全力で御相手させて頂く」

 クーリは、その言葉に頷き、武器を構える。

「感謝する。仮にオレが勝ったなら、このまま見逃して貰いたい、敗北した際も、部下達だけは、助けてやって欲しい」

「……ラクネ様、どうされますか?」

「構わぬ。ならば、どちらにしても、部下達は助けてやると約束しようじゃないか!」

 クーリは、その言葉に深く頭をさげた。

「度重なる御心遣い、感謝する」
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