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後日譚
後日譚605.事なかれ主義者はどちらも捨てがたい
紫亜と健斗の誕生日から三日後に再び誕生日パーティーを開く事になった。ジューンさんとの間に生まれた子どもである大樹の誕生日だ。
「十一月は誕生日の子が多すぎるよね」
「来月はもっと多いです、マスター」
「うん、まあ、そうなんだけどね」
プレゼントを選ぶのが大変なので三歳からは同じ物を、という事にしていたけれど、今日誕生日の大樹は二歳なので個別のプレゼントを用意してある。お手伝いが好きな彼のために、朝食を一緒に食べているホムラにアイテムバッグを用意してもらった。加護で作れないからダンジョン産だけど、良い感じのサイズがあったようで助かった。
「それはそうと、明後日のパレードの準備は大丈夫そう?」
「はい。万事抜かりなく準備を終えております」
「そっか。龍斗の一週間後には千恵子のパレードもあるけどそっちは?」
「ランチェッタ様と相談しながら進めています。もうほとんど準備は終えているので、リュウトの誕生日を祝った後、最後の仕上げをする予定です、マスター」
「なるほどね。僕がした方が良い事ってある?」
「晴天を祈願してくださるだけで十分です、マスター」
「まあ、それはもちろんするけど……。それだけでいいの? 虹とかも出せそうな気がするけど……ああ、でも僕が目立ちすぎるのも良くないか」
「マスターがお望みならば段取りはしますが?」
「いや、やっぱさっきのなしで」
そもそもパレードの後の社交界のようなもので子どもたち以上に来賓の相手をする事になっているので、わざわざ他の場所で目立つ必要もないだろう。
そんな事を考えながら、スープを飲んで口の周りに豪快に後をつけたホムラの口元を近くの布巾で拭う。子どもたちが見ていないからとやりたい放題なホムラだけど、彼女たちなりの甘え方なのかもしれない。
「龍斗と千恵子のお披露目会の方はどんな感じ?」
「やはり想定されていた通りチエコ目当ての者が多いので男女比に偏りが生じております」
「なるほどねぇ。その中に龍斗と気が合う子がいるといいんだけど……」
「そうですね、マスター」
「できる限り対応を頑張るけど、ホムラもユキと一緒にお披露目会に参加する人たちの対応よろしくね?」
「お任せください、マスター」
他の子たちのお披露目会では極力僕が対応するようにしていたけれど、ランチェッタさんとの間に生まれた千恵子のお披露目会ともなると僕だけでは時間内に終わる事が出来ないのは分かり切っていたのでお嫁さんたちの力を借りる事にした。
大部分はランチェッタさんが対応してくれることになっているけど、足りない場合はホムラやユキ、それからレヴィさんとジューンさんが対応してくれる手筈になっている。
それでも足りない場合は……諦めてもらいたいけれど、流石に顔合わせが目的のその場でその様な対応をするのはまずいだろう。子どもたちを先に返して夕方以降も続ける予定だ。
「いっその事、悪天候にして参加が難しい状態にするのもありかな」
「マスターがお望みであれば天候が悪くなる事を通達しますが――」
「しなくていいよ! 冗談だから!」
ユキもそうだけど、ホムラ相手に冗談は言わないように気を付けないとな。
そんな事を思いながら僕は最後の一切れとなったサンドイッチを口に運ぶのだった。
十二時を報せる鐘の音がファマリアの各地から聞こえる頃、世界樹の根元近くに設営されたパーティー会場に向かうとそこは既に準備が終わっていて、ジューンさんと大樹が席についていた。
ジューンさんはエルフだけど、エルフらしからぬ体の持ち主である。ただ、男として産まれた大樹はそれは遺伝をする事もなく、今のところ人族と変わらずにすくすくと育っている。
エルフはある程度大きくなったらそこから成長がゆっくりになるらしいけど、人の血が混じっている大樹はそうでもないようだ。ノエルも「ちょっと寿命が人間より長い程度で成長は変わらないっす」とかなんとか言ってたので気にする必要はないだろう。
「二人ともお待たせ。食前の挨拶と共に神様へ感謝のお祈りをしようか」
「うん!」
「さっき話してたんですけどぉ、ダイキがいただきますと神様のお祈りを先導したいそうですよぉ」
「そうなの? いう事は覚えてる?」
「うん!」
「それじゃあ任せようかな」
別に堅苦しいパーティーじゃないし、ちょっと失敗しても問題はないだろう。
そんな事を思っていると、大樹は胸の前で両方の手の平を組んで祈りを捧げるポーズをした。その様子を見ていたドライアドたちも真似してお祈りをし始めたけれど彼女たちの事は放っておいて僕も同じように両手を組んで目を閉じた。
大樹がいつもよりもゆっくりとした口調ではっきりと喋り始める。
「かみさまたちへ。いつもみまもってくれてありがとーございます。これからもおてつだいがんばります。みまもっててください。おわり!」
「よくできましたぁ」
改めてしっかり聞いてみたけど、大樹もお喋り上手だよな。本当に二歳か、と聞きたくなるくらいだ。たくさんの人のお手伝いをするついでにたくさんお喋りしているからか?
子どもらしい舌足らずな話し方をする様子を見るのは可愛くて好きなんだけど、こういうしっかりとお話ができるのも成長を実感できていいな、なんて思っている間に食前の挨拶の準備が整っていた。
僕は慌てて組んでいた手を合わせて一緒に「いただきます」と唱和するのだった。
「十一月は誕生日の子が多すぎるよね」
「来月はもっと多いです、マスター」
「うん、まあ、そうなんだけどね」
プレゼントを選ぶのが大変なので三歳からは同じ物を、という事にしていたけれど、今日誕生日の大樹は二歳なので個別のプレゼントを用意してある。お手伝いが好きな彼のために、朝食を一緒に食べているホムラにアイテムバッグを用意してもらった。加護で作れないからダンジョン産だけど、良い感じのサイズがあったようで助かった。
「それはそうと、明後日のパレードの準備は大丈夫そう?」
「はい。万事抜かりなく準備を終えております」
「そっか。龍斗の一週間後には千恵子のパレードもあるけどそっちは?」
「ランチェッタ様と相談しながら進めています。もうほとんど準備は終えているので、リュウトの誕生日を祝った後、最後の仕上げをする予定です、マスター」
「なるほどね。僕がした方が良い事ってある?」
「晴天を祈願してくださるだけで十分です、マスター」
「まあ、それはもちろんするけど……。それだけでいいの? 虹とかも出せそうな気がするけど……ああ、でも僕が目立ちすぎるのも良くないか」
「マスターがお望みならば段取りはしますが?」
「いや、やっぱさっきのなしで」
そもそもパレードの後の社交界のようなもので子どもたち以上に来賓の相手をする事になっているので、わざわざ他の場所で目立つ必要もないだろう。
そんな事を考えながら、スープを飲んで口の周りに豪快に後をつけたホムラの口元を近くの布巾で拭う。子どもたちが見ていないからとやりたい放題なホムラだけど、彼女たちなりの甘え方なのかもしれない。
「龍斗と千恵子のお披露目会の方はどんな感じ?」
「やはり想定されていた通りチエコ目当ての者が多いので男女比に偏りが生じております」
「なるほどねぇ。その中に龍斗と気が合う子がいるといいんだけど……」
「そうですね、マスター」
「できる限り対応を頑張るけど、ホムラもユキと一緒にお披露目会に参加する人たちの対応よろしくね?」
「お任せください、マスター」
他の子たちのお披露目会では極力僕が対応するようにしていたけれど、ランチェッタさんとの間に生まれた千恵子のお披露目会ともなると僕だけでは時間内に終わる事が出来ないのは分かり切っていたのでお嫁さんたちの力を借りる事にした。
大部分はランチェッタさんが対応してくれることになっているけど、足りない場合はホムラやユキ、それからレヴィさんとジューンさんが対応してくれる手筈になっている。
それでも足りない場合は……諦めてもらいたいけれど、流石に顔合わせが目的のその場でその様な対応をするのはまずいだろう。子どもたちを先に返して夕方以降も続ける予定だ。
「いっその事、悪天候にして参加が難しい状態にするのもありかな」
「マスターがお望みであれば天候が悪くなる事を通達しますが――」
「しなくていいよ! 冗談だから!」
ユキもそうだけど、ホムラ相手に冗談は言わないように気を付けないとな。
そんな事を思いながら僕は最後の一切れとなったサンドイッチを口に運ぶのだった。
十二時を報せる鐘の音がファマリアの各地から聞こえる頃、世界樹の根元近くに設営されたパーティー会場に向かうとそこは既に準備が終わっていて、ジューンさんと大樹が席についていた。
ジューンさんはエルフだけど、エルフらしからぬ体の持ち主である。ただ、男として産まれた大樹はそれは遺伝をする事もなく、今のところ人族と変わらずにすくすくと育っている。
エルフはある程度大きくなったらそこから成長がゆっくりになるらしいけど、人の血が混じっている大樹はそうでもないようだ。ノエルも「ちょっと寿命が人間より長い程度で成長は変わらないっす」とかなんとか言ってたので気にする必要はないだろう。
「二人ともお待たせ。食前の挨拶と共に神様へ感謝のお祈りをしようか」
「うん!」
「さっき話してたんですけどぉ、ダイキがいただきますと神様のお祈りを先導したいそうですよぉ」
「そうなの? いう事は覚えてる?」
「うん!」
「それじゃあ任せようかな」
別に堅苦しいパーティーじゃないし、ちょっと失敗しても問題はないだろう。
そんな事を思っていると、大樹は胸の前で両方の手の平を組んで祈りを捧げるポーズをした。その様子を見ていたドライアドたちも真似してお祈りをし始めたけれど彼女たちの事は放っておいて僕も同じように両手を組んで目を閉じた。
大樹がいつもよりもゆっくりとした口調ではっきりと喋り始める。
「かみさまたちへ。いつもみまもってくれてありがとーございます。これからもおてつだいがんばります。みまもっててください。おわり!」
「よくできましたぁ」
改めてしっかり聞いてみたけど、大樹もお喋り上手だよな。本当に二歳か、と聞きたくなるくらいだ。たくさんの人のお手伝いをするついでにたくさんお喋りしているからか?
子どもらしい舌足らずな話し方をする様子を見るのは可愛くて好きなんだけど、こういうしっかりとお話ができるのも成長を実感できていいな、なんて思っている間に食前の挨拶の準備が整っていた。
僕は慌てて組んでいた手を合わせて一緒に「いただきます」と唱和するのだった。
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