【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚611.事なかれ主義者はついていきたかった

 明に愚痴った翌日。
 天気は快晴で絶好のお披露目会日和である。これも『天気祈願』を授けてくださったチャム様のおかげです。ありがとうございます。次に加護を与える人は関わるのが面倒な人じゃないとなお助かります。

「こんなもんでいいかな」

 朝の日課であるお祈りをしたけれどチャム様に呼び出しされる事もなく無事に終わった。祈っている最中に肩によじ登ったレモンちゃんや、背中とお腹に引っ付いてきたドライアドたちを放っておいて立ち上がると、待ち構えていた小柄なドライアドが足に巻き付いた。
 動きにくいことこの上ないけれど、人は案外慣れるものである。
 放っておいて運んでいたら気分が乗って来たのかそれぞれ歌い始めたけれど構うと増長するので無視無視。
 今日は当番の人とリビングで食事をする日なのでそのまま向かうと、既にエミリーは部屋で待っていた。
 出産予定日が来月に迫っているのでいつ何かあってもいいようにと室内には産婆の人と、派遣されてきた聖女が待機していた。聖女は今日は姫花じゃなくて知らない御令嬢だった。じろじろ見ると勘違いされるかもしれないのでサッと視線を逸らしてエミリーの正面に座る。

「ごめん、お待たせ。体調はどう?」
「大丈夫です。さっきすれ違った時も言いましたけど」
「いつでもどこでも心配なんだよ。ちょっとでも体調悪くなったらすぐに言ってね」
「分かってます。フフフッ」

 尻尾をブンブンと振っている上機嫌なエミリーと食前の挨拶を共にして朝ご飯を食べ始めた。
 食べている間、ただ黙々と食べるのではこの場を設けた意味がない。だからいつも子どもの話をしていたんだけど、今回は子どもは子どもでも栄人ではなく今日の主役の子たちの話だった。

「リュートとチエコとはすでにお会いになってますか?」
「いや、会ってないよ。今日のお披露目会のために時間を掛けて準備するって話だったし、まだそれぞれの部屋にいるんじゃないかな」
「そうなんですね。……妊娠している私たちは今日、出席しないという話になってますし、ちょっと後で挨拶でもしてこようかしら。そのくらいは許してくれますよね?」
「まあ、敷地内だったらいいんじゃないかな」

 加護がなかった場合、もういつ生まれても不思議じゃない時期だし、できれば万全の状態の場所で過ごしてほしいとお願いしたらレヴィさん、ルウさん、シンシーラ、エミリーの四人は今回は会場の様子を魔道具を通して見る事になった。
 臨月ではないオクタビアさんもどうせならゆっくりしていて欲しかったんだけど、ランチェッタさんだけではなく、本人にも強く拒否されたので、妊娠している人の中だと彼女だけが参加する事になっている。
 心配な事が一つ頭の中に浮かぶと芋づる式で色々心配になってくるんだけど、嬉しそうに「ありがとうございます」というエミリー相手にやっぱり駄目、なんていう事もできないので僕は口を噤むのだった。



 食事を終えた後、食器を片付けるのはバーンくんたちに任せて僕とエミリーは二階に向かっていた。いいよ、とは言ったけれどやっぱり心配なのでエミリーについて行く事にしたのだ。
 僕の気持ちなんて筒抜けなんだろうけど、エミリーはついて来るなとは言わなかった。ただ、「シズト様もご自分の準備をされた方が良いんじゃないですか?」と言ってきたけど。
 ……遠回しについてくんなって言われてるのか?
 いや、邪推だな。エミリーがそんな意図で言う訳がない。きっとそう。
 そんな事を思いながら「そういうのは不足しててもジュリウスが何とかしてくれるから大丈夫だよ」と答える。

「彼に頼りすぎないようにするって仰ってたじゃないですか」
「うん、まあ、そうなんだけどさ」

 僕も子どもたちの様子が心配だし。
 荒ぶるエミリーの尻尾がちょくちょく僕の体に当たり、巻き添えを喰らったドライアドたちが声をあげていたけれど僕たちは気にする事もなく目的の部屋に辿り着いた。扉を開けると部屋の中には窓の外を見て黄昏ているように見える子どもと、その隣に小柄な女性がいた。
 僕の側室の一人であるドーラさんと、その子どもである龍斗だ。窓から差し込む太陽の光が二人の金色の髪をキラキラと輝かせていた。

「二人とももう準備は終わったの?」
「ん」
「…………! きがえ、おわった」
「部屋でのんびりしてた感じ?」
「そんな感じ」
「のんびりするのもいいけれど、ダンスの最終確認をするのはどうかしら?」

 室内にいた全員の視線が部屋の入口の方に向けられる。そこには小柄だけど健康的に焼けた様な褐色の肌に灰色の髪の女性が立っていた。女性の隣には女性と同様の外見的特徴を持つ幼女が綺麗な姿勢で立っている。ガレオールの女王で僕の側室の一人であるランチェッタさんと、僕との間に生まれた千恵子だ。
 千恵子は子ども用のドレスを着ていた。どこもかしこもふんわりしていて可愛らしい。真ん丸な目はきっとランチェッタさんに似たんだと思う。

「お互い、いい練習になるんじゃないかしら?」
「やらない。くもみてる」

 ぷいっとそっぽを向いてしまった龍斗。だけどそれでめげる事無く、千恵子が彼のすぐ近くまでトテトテと歩いて行き、彼の手を取った。

「リュートおにいさま、いっしょにおどってくれませんか?」
「…………なんで?」
「まだおどりしんぱいなの」
「ふーん。わかった。じゃあやる」
「ありがと、リュートおにいさま!」

 嬉しそうに満面の笑みを浮かべる千恵子。
 龍斗は仕方ない、といった様子で彼女に引っ張られていく。
 まあ、あんな可愛くお願いされたら断れないよね。お兄ちゃんだもん。
 そんな事を思いながら僕は二人の後を追おうとしたけれど、ランチェッタさんがその前に立ち塞がった。

「貴方は貴方のするべき事をしてきなさい」
「はい」
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