1,423 / 1,483
後日譚
後日譚611.事なかれ主義者はついていきたかった
明に愚痴った翌日。
天気は快晴で絶好のお披露目会日和である。これも『天気祈願』を授けてくださったチャム様のおかげです。ありがとうございます。次に加護を与える人は関わるのが面倒な人じゃないとなお助かります。
「こんなもんでいいかな」
朝の日課であるお祈りをしたけれどチャム様に呼び出しされる事もなく無事に終わった。祈っている最中に肩によじ登ったレモンちゃんや、背中とお腹に引っ付いてきたドライアドたちを放っておいて立ち上がると、待ち構えていた小柄なドライアドが足に巻き付いた。
動きにくいことこの上ないけれど、人は案外慣れるものである。
放っておいて運んでいたら気分が乗って来たのかそれぞれ歌い始めたけれど構うと増長するので無視無視。
今日は当番の人とリビングで食事をする日なのでそのまま向かうと、既にエミリーは部屋で待っていた。
出産予定日が来月に迫っているのでいつ何かあってもいいようにと室内には産婆の人と、派遣されてきた聖女が待機していた。聖女は今日は姫花じゃなくて知らない御令嬢だった。じろじろ見ると勘違いされるかもしれないのでサッと視線を逸らしてエミリーの正面に座る。
「ごめん、お待たせ。体調はどう?」
「大丈夫です。さっきすれ違った時も言いましたけど」
「いつでもどこでも心配なんだよ。ちょっとでも体調悪くなったらすぐに言ってね」
「分かってます。フフフッ」
尻尾をブンブンと振っている上機嫌なエミリーと食前の挨拶を共にして朝ご飯を食べ始めた。
食べている間、ただ黙々と食べるのではこの場を設けた意味がない。だからいつも子どもの話をしていたんだけど、今回は子どもは子どもでも栄人ではなく今日の主役の子たちの話だった。
「リュートとチエコとはすでにお会いになってますか?」
「いや、会ってないよ。今日のお披露目会のために時間を掛けて準備するって話だったし、まだそれぞれの部屋にいるんじゃないかな」
「そうなんですね。……妊娠している私たちは今日、出席しないという話になってますし、ちょっと後で挨拶でもしてこようかしら。そのくらいは許してくれますよね?」
「まあ、敷地内だったらいいんじゃないかな」
加護がなかった場合、もういつ生まれても不思議じゃない時期だし、できれば万全の状態の場所で過ごしてほしいとお願いしたらレヴィさん、ルウさん、シンシーラ、エミリーの四人は今回は会場の様子を魔道具を通して見る事になった。
臨月ではないオクタビアさんもどうせならゆっくりしていて欲しかったんだけど、ランチェッタさんだけではなく、本人にも強く拒否されたので、妊娠している人の中だと彼女だけが参加する事になっている。
心配な事が一つ頭の中に浮かぶと芋づる式で色々心配になってくるんだけど、嬉しそうに「ありがとうございます」というエミリー相手にやっぱり駄目、なんていう事もできないので僕は口を噤むのだった。
食事を終えた後、食器を片付けるのはバーンくんたちに任せて僕とエミリーは二階に向かっていた。いいよ、とは言ったけれどやっぱり心配なのでエミリーについて行く事にしたのだ。
僕の気持ちなんて筒抜けなんだろうけど、エミリーはついて来るなとは言わなかった。ただ、「シズト様もご自分の準備をされた方が良いんじゃないですか?」と言ってきたけど。
……遠回しについてくんなって言われてるのか?
いや、邪推だな。エミリーがそんな意図で言う訳がない。きっとそう。
そんな事を思いながら「そういうのは不足しててもジュリウスが何とかしてくれるから大丈夫だよ」と答える。
「彼に頼りすぎないようにするって仰ってたじゃないですか」
「うん、まあ、そうなんだけどさ」
僕も子どもたちの様子が心配だし。
荒ぶるエミリーの尻尾がちょくちょく僕の体に当たり、巻き添えを喰らったドライアドたちが声をあげていたけれど僕たちは気にする事もなく目的の部屋に辿り着いた。扉を開けると部屋の中には窓の外を見て黄昏ているように見える子どもと、その隣に小柄な女性がいた。
僕の側室の一人であるドーラさんと、その子どもである龍斗だ。窓から差し込む太陽の光が二人の金色の髪をキラキラと輝かせていた。
「二人とももう準備は終わったの?」
「ん」
「…………! きがえ、おわった」
「部屋でのんびりしてた感じ?」
「そんな感じ」
「のんびりするのもいいけれど、ダンスの最終確認をするのはどうかしら?」
室内にいた全員の視線が部屋の入口の方に向けられる。そこには小柄だけど健康的に焼けた様な褐色の肌に灰色の髪の女性が立っていた。女性の隣には女性と同様の外見的特徴を持つ幼女が綺麗な姿勢で立っている。ガレオールの女王で僕の側室の一人であるランチェッタさんと、僕との間に生まれた千恵子だ。
千恵子は子ども用のドレスを着ていた。どこもかしこもふんわりしていて可愛らしい。真ん丸な目はきっとランチェッタさんに似たんだと思う。
「お互い、いい練習になるんじゃないかしら?」
「やらない。くもみてる」
ぷいっとそっぽを向いてしまった龍斗。だけどそれでめげる事無く、千恵子が彼のすぐ近くまでトテトテと歩いて行き、彼の手を取った。
「リュートおにいさま、いっしょにおどってくれませんか?」
「…………なんで?」
「まだおどりしんぱいなの」
「ふーん。わかった。じゃあやる」
「ありがと、リュートおにいさま!」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべる千恵子。
龍斗は仕方ない、といった様子で彼女に引っ張られていく。
まあ、あんな可愛くお願いされたら断れないよね。お兄ちゃんだもん。
そんな事を思いながら僕は二人の後を追おうとしたけれど、ランチェッタさんがその前に立ち塞がった。
「貴方は貴方のするべき事をしてきなさい」
「はい」
天気は快晴で絶好のお披露目会日和である。これも『天気祈願』を授けてくださったチャム様のおかげです。ありがとうございます。次に加護を与える人は関わるのが面倒な人じゃないとなお助かります。
「こんなもんでいいかな」
朝の日課であるお祈りをしたけれどチャム様に呼び出しされる事もなく無事に終わった。祈っている最中に肩によじ登ったレモンちゃんや、背中とお腹に引っ付いてきたドライアドたちを放っておいて立ち上がると、待ち構えていた小柄なドライアドが足に巻き付いた。
動きにくいことこの上ないけれど、人は案外慣れるものである。
放っておいて運んでいたら気分が乗って来たのかそれぞれ歌い始めたけれど構うと増長するので無視無視。
今日は当番の人とリビングで食事をする日なのでそのまま向かうと、既にエミリーは部屋で待っていた。
出産予定日が来月に迫っているのでいつ何かあってもいいようにと室内には産婆の人と、派遣されてきた聖女が待機していた。聖女は今日は姫花じゃなくて知らない御令嬢だった。じろじろ見ると勘違いされるかもしれないのでサッと視線を逸らしてエミリーの正面に座る。
「ごめん、お待たせ。体調はどう?」
「大丈夫です。さっきすれ違った時も言いましたけど」
「いつでもどこでも心配なんだよ。ちょっとでも体調悪くなったらすぐに言ってね」
「分かってます。フフフッ」
尻尾をブンブンと振っている上機嫌なエミリーと食前の挨拶を共にして朝ご飯を食べ始めた。
食べている間、ただ黙々と食べるのではこの場を設けた意味がない。だからいつも子どもの話をしていたんだけど、今回は子どもは子どもでも栄人ではなく今日の主役の子たちの話だった。
「リュートとチエコとはすでにお会いになってますか?」
「いや、会ってないよ。今日のお披露目会のために時間を掛けて準備するって話だったし、まだそれぞれの部屋にいるんじゃないかな」
「そうなんですね。……妊娠している私たちは今日、出席しないという話になってますし、ちょっと後で挨拶でもしてこようかしら。そのくらいは許してくれますよね?」
「まあ、敷地内だったらいいんじゃないかな」
加護がなかった場合、もういつ生まれても不思議じゃない時期だし、できれば万全の状態の場所で過ごしてほしいとお願いしたらレヴィさん、ルウさん、シンシーラ、エミリーの四人は今回は会場の様子を魔道具を通して見る事になった。
臨月ではないオクタビアさんもどうせならゆっくりしていて欲しかったんだけど、ランチェッタさんだけではなく、本人にも強く拒否されたので、妊娠している人の中だと彼女だけが参加する事になっている。
心配な事が一つ頭の中に浮かぶと芋づる式で色々心配になってくるんだけど、嬉しそうに「ありがとうございます」というエミリー相手にやっぱり駄目、なんていう事もできないので僕は口を噤むのだった。
食事を終えた後、食器を片付けるのはバーンくんたちに任せて僕とエミリーは二階に向かっていた。いいよ、とは言ったけれどやっぱり心配なのでエミリーについて行く事にしたのだ。
僕の気持ちなんて筒抜けなんだろうけど、エミリーはついて来るなとは言わなかった。ただ、「シズト様もご自分の準備をされた方が良いんじゃないですか?」と言ってきたけど。
……遠回しについてくんなって言われてるのか?
いや、邪推だな。エミリーがそんな意図で言う訳がない。きっとそう。
そんな事を思いながら「そういうのは不足しててもジュリウスが何とかしてくれるから大丈夫だよ」と答える。
「彼に頼りすぎないようにするって仰ってたじゃないですか」
「うん、まあ、そうなんだけどさ」
僕も子どもたちの様子が心配だし。
荒ぶるエミリーの尻尾がちょくちょく僕の体に当たり、巻き添えを喰らったドライアドたちが声をあげていたけれど僕たちは気にする事もなく目的の部屋に辿り着いた。扉を開けると部屋の中には窓の外を見て黄昏ているように見える子どもと、その隣に小柄な女性がいた。
僕の側室の一人であるドーラさんと、その子どもである龍斗だ。窓から差し込む太陽の光が二人の金色の髪をキラキラと輝かせていた。
「二人とももう準備は終わったの?」
「ん」
「…………! きがえ、おわった」
「部屋でのんびりしてた感じ?」
「そんな感じ」
「のんびりするのもいいけれど、ダンスの最終確認をするのはどうかしら?」
室内にいた全員の視線が部屋の入口の方に向けられる。そこには小柄だけど健康的に焼けた様な褐色の肌に灰色の髪の女性が立っていた。女性の隣には女性と同様の外見的特徴を持つ幼女が綺麗な姿勢で立っている。ガレオールの女王で僕の側室の一人であるランチェッタさんと、僕との間に生まれた千恵子だ。
千恵子は子ども用のドレスを着ていた。どこもかしこもふんわりしていて可愛らしい。真ん丸な目はきっとランチェッタさんに似たんだと思う。
「お互い、いい練習になるんじゃないかしら?」
「やらない。くもみてる」
ぷいっとそっぽを向いてしまった龍斗。だけどそれでめげる事無く、千恵子が彼のすぐ近くまでトテトテと歩いて行き、彼の手を取った。
「リュートおにいさま、いっしょにおどってくれませんか?」
「…………なんで?」
「まだおどりしんぱいなの」
「ふーん。わかった。じゃあやる」
「ありがと、リュートおにいさま!」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべる千恵子。
龍斗は仕方ない、といった様子で彼女に引っ張られていく。
まあ、あんな可愛くお願いされたら断れないよね。お兄ちゃんだもん。
そんな事を思いながら僕は二人の後を追おうとしたけれど、ランチェッタさんがその前に立ち塞がった。
「貴方は貴方のするべき事をしてきなさい」
「はい」
あなたにおすすめの小説
俺のレベルが常人では到達不可の領域にある件について ~全ユーザーレベル上限999の中俺だけレベル100億いった~
仮実谷 望
ファンタジー
ダンジョンが当たり前のようにある世界になって3年の月日が流れてずっとダンジョンに入りたいと願っていた青年が自宅にダンジョンが出現する。自宅の押し入れにダンジョンが出現する中、冷静に青年はダンジョンを攻略する。そして自分だけがレベル上限を突破してレベルが無尽蔵に上がり続けてしまう。そうしていづれは最強への探索者として覚醒する青年なのであった。
裏スキルで最強異世界攻略~異世界召喚されたのだが、勇者じゃないと追い出されたので新しい国を造りました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
いつものようにヤンキーに絡まれて逃げていたら、いつの間にか異世界召喚されてました。でも、スキルが『農民』しかなかったから、いらないと追放されました。
エブリスタ、カクヨム、ノベリズム、ノベルアップ、小説家になろうにも掲載しています。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら、訳アリの女性たちが迷い込んできました。
山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。
異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。
その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。
攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。
そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。
前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。
そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。
偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。
チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。