【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚613.事なかれ主義者は察して出ていった

 千恵子目当ての親子がとても多くてお披露目パーティーは連日夜遅くまで行う予定だった。ただ、予定外の事が起こったので二日目のお披露目パーティーが延期となった。
 既に会場に入場していた段階だったけど、知らせを聞いて慌てて僕は屋敷へと戻った。

「どういう状況!?」
「お帰りなさいませ、シズト様。エミリー様は無事に出産を終えましたよ」
「そんなに早く!?」
「二人目からは早く産まれる事はよくあるそうです」
「それにしても早すぎない!?」

 エミリーが産気づいたと報告があってからすぐに戻ってきたから一時間も経ってないんだけど。
 そんな僕の考えは出迎えてくれたアンジェラにはお見通しだったようで「実は早朝から陣痛が着ていたようです」と教えてくれた。会う事がなかったし、エミリーがお披露目パーティーの邪魔をしたくなかったらしくて言わないようにと皆にお願いしていたらしい。

「これだったら最初っから言っておいた方が良かったんじゃねぇか?」
「そうね。大事なパーティーを途中で勝手に抜け出されるよりは最初っからいない方が良いわ」
「パーティーの事は申し訳ないけど、仕方なくない?」
「仕方なくないわ。王侯貴族として今後社交界にも出席するのならば、そっちを優先すべきなのよ。産婆に聖女、なによりエリクサーが二桁以上あって万全な状態なんだから」
「それでも万が一があるかもしれないし……」
「そんな状態があったら貴方がいてもできる事はないわ」
「……お別れの挨拶くらいはできるんじゃないかな」
「王侯貴族としてふるまっていくのなら、そういう挨拶ができない事もある事を覚悟しなさい」

 ……じゃあやっぱり平民として生きていくのが良いんじゃないかな。なんて、気持ちが湧いて来るけれどそうも言ってられる状況じゃない事は分かっている。
 次回以降割り切ってパーティーで振舞う事ができるのかな、なんて事を思いつつも帰ってきちゃったんだからしょうがない、とフォローするアンジェラと一緒にエミリーの部屋へと向か……おうとしたけれど、ラオさんに首根っこを掴まれてまずは体を洗う事になるのだった。



 しっかりと隅々まで体を洗ってからエミリーの部屋へと向かった。一緒にお披露目会に参加していた人たちはこれから体を清めるとの事だったので先に彼女の部屋に入る事にした。
 熟練者っぽい産婆さんたちや聖女に混じって姫花の姿もあったけれど、彼女は挨拶もする隙も無く産婆のリーダー格であるハンナさんに追い立てられるように部屋から出て行った。
 ただ、ハンナさんは部屋から出て行かなかった。どうやら生まれたばかりの子の対応をするつもりらしい。
 僕は生まれた子の様子も気になったけれど、なによりもまずはエミリーに話しかける事にした。

「……エミリー、大丈夫?」
「はい、といいたいところですけどぼちぼちです。寄進のおかげもあって安産でしたし、とてもスムーズに出てきてくれたので一人目の時よりはましですけど……」
「本当にお疲れ様」
「……結局、パーティーを抜け出してきてしまったんですね。生まれてから伝えるようにお願いすればよかったかも――」
「流石にそれされたら怒るよ。お披露目パーティーよりも出産の方が優先順位高いよ。向こうはずらせばいいし」
「でも、文句は言う人は出るんじゃないですか?」
「やむにやまれぬ事情で延期にしただけで騒ぐような人たちとは親戚になりたくないからふるいにかけられるいい機会だね」

 にっこりと笑って見せると、つられてエミリーは笑った。ただ、どこか困ったような表情だったのは解せないけど。
 それからしばらくエミリーと他愛もない会話が続いたけれど、体を清め終わったパメラが突入してきた事で生まれた子の様子を見る事になった。

「ちょっと小さいね」
「少し早く産まれたからだろうね。ただ、問題ないよ。すぐに大きくなるさ」

 ハンナさんがそういうのなら間違いないだろう。

「シズト様、次はパメラが抱っこしたいデス!」
「いや、先にエミリーだから。その次に栄人ね」

 足元に視線を向けると僕の足元をぐるぐるぐるぐる回っていた栄人がやっと落ち着いた。
 ベッドに横になっているエミリーの所へ布で包まれた赤子を持って行く。
 優し気な眼差しで我が子を覗き込むエミリーが、小さな声で「名前は決まったんですか?」と問いかけてきた。

「女の子だから恵美子にしようと思う」
「私の名前しか入ってないじゃないですか」
「僕は名前を決める事ができるだけで十分だよ。それに、漢字も決めてあげられるからね。……栄人がまだかまだかと見てるからそろそろいいかな?」
「はい。エイト、気を付けるのよ」
「うん!」

 元気に返事をする栄人だけど、日頃から動き回っている彼はまだ二歳だ。万全の状態を確保すべきだろう、という事で栄人をベッドの上に腰かけさせたうえで彼に両手で抱えさせた。僕の足元では髪の毛を伸ばしてドライアドたちが不測の事態に対応できるように構えてくれている。
 少しの間、静かな時間が流れて行ったけれど、足をぶらぶらさせていた栄人が一瞬動きを止めたかと思った次の瞬間にはギャン泣きし始めた恵美子。栄人はと言うと、どうやら加護でそうなる事を予見していたようだった。それでも慌てふためく事になったんだけど……。

「次はパメラが抱っこするデス!」
「分かったからちょっと待ってなさい」

 そう言いながらエミリーはドライアド経由で栄人から恵美子を受け取ると優しくあやしはじめた。
 僕はその様子を少しの間見守ったけど、ある事に気が付いて静かに後ろを向く。……エミリーたちはあんまり気にしないだろうけど、やっぱりジロジロ見るものじゃないよな、なんて事を考えながら一度部屋を後にするのだった。
感想 4

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