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後日譚
後日譚644.事なかれ主義者はサシで会話をした
栄人のお見合いを兼ねたお披露目会はまだ行われていない。それなのに既に相手がほとんど決まっているのは彼が授かった加護が関係している。
栄人が授かったのは『予知』という加護だった。未来を視る事ができる強力な加護だ。
だが、その加護を授かっている者は今まで全員アマテラス出身の女性ばかりだったそうだ。
それなのになぜ我が子に『予知』が授けられたのか。理由は神のみぞ知る状態だけれど、アマテラスの人たちからしたらたまったものじゃないだろう。
どうやら占いの神様から直々に加護を授けた事を伝えられたようで、年末の間に何通も手紙が来た。
神様からの神託である、とまで言われると流石に断る事ができず、アマテラスの誰かと婚約する事が決まったというわけだ。
栄人も神様から神託を授かっていたようで、よく分からないけど乗り気な様なのが幸いな事だろうか?
「お待たせしてすみません」
「大丈夫なのじゃ。この状況も見えておったからのう」
キリッとした表情でそう言ったのはアマテラスの女王であるヒミコ様だ。
正直彼女とほとんど交流がないのでよく知らない。黒い髪に黒い瞳は日本人っぽいけれど顔立ちはモニカ同様日本人っぽくない。
彼女もついてきた人たちも全員着物を着ていて、全員が黒い髪だった。目の色が違う所を見ると髪を染めているのか……魔法がある世界で髪や目の色の関連を深く考えても意味ないな、と思考を放棄して僕も微笑を浮かべて改めて挨拶をした。
「こちらは妻のエミリーと息子の栄人です」
「エミリーです。よろしくお願い致します」
「えいとです! かみさまがなかよくしてね、っていってたよ!」
「存じておるとも。こちらこそなかよくしておくれ」
ヒミコ様はそう言いながらにこっと微笑んで栄人と握手をした。
……この人、笑うんだ。普段は目を瞑っているか、無表情だけど、人間だからそりゃ笑うか。
そんなどうでもいい考えが彼女に筒抜けになっているわけではないだろうけど、視線を僕に戻したヒミコ様は笑っていなかったのでちょっとドキッとした。
「えっと、今回は大勢でいらっしゃったんですね」
「そうじゃのう。事前に渡していた書類だけでは決められぬ、と言われたからのう。直接会わせた方がいいじゃろう、と思ってな。こちらとしてはわらわの娘が一番いいと考えておるんじゃが……モモ、前へ」
「はい、お母様」
静かに控えていた子どもたちの中で一番年上っぽい子が前に出た。おかっぱ頭で着物姿のその子は栄人に向けてにっこりと微笑んだ。
「今年で七つになる。御子息とは三歳差になるが、許容範囲かの?」
「まあ、そうですね。明確に設けてるわけではありませんけど」
「そうじゃろうな。この中で『予知』の加護を授かっておるのはモモだけじゃ。加護についてもいろいろ教えてあげる事ができるじゃろう。じゃが、それは婚約者でなくともするつもりじゃからな。他の者を選ぶというのであればそれはそれで構わん」
本人を前にしてそんな事を言っていいのかな、なんて思ったけれどモモと呼ばれた子どもは気にした様子もない。むしろヒミコ様の後ろに控えている女の子たちが少しそわそわしているくらいだろうか。
まあ、モモと呼ばれた子たちよりもさらに幼そうに見えるからじっと待つのも苦痛だろうな。
栄人もそろそろ限界が近いようだし、とりあえず好きに関わらせてみるか。
「分かりました。僕としては栄人の気持ちを尊重してあげたいと考えておりますのでここで誰かを選ぶ事はしないと思います。……双方の今後の判断材料にするためにとりあえず子どもたちは子どもたち同士で好きに過ごさせてみてもよろしいでしょうか」
「問題ないのじゃ。……おまえたち、エイト様に失礼のないようにな」
ヒミコ様がモモと呼ばれた子を含めて連れてきた全員に向けてそういうと彼女たちは元気に返事をした。
栄人が同年代の女の子たちに囲まれて連れてかれるさまを見送った後、エミリーに「栄人の事を見ててもらってもいいかな?」とお願いすると彼女は躊躇う様子を見せた。
「もちろん話をしたいという事であれば同席してもらって全然かまわないんだけど、あっちの方が少しは気が楽かなって思ったんだけど……」
「差別意識が全くない者たちを選んだとはいえ、知らない内にそなたたちに失礼な事をしてしまうやもしれん。わらわとしてはわらわが連れて来た者たちを含めて見張っておいてくれると助かるのう」
「! かしこまりました。またお話をする機会がありましたらその時はよろしくお願いします」
「ああ。よろしく頼む」
もう部屋の奥の方に行ってしまっていた栄人を追ってエミリーが離れて行った。
その様子を見ながら僕は隣に立って一緒に様子を眺めていたヒミコ様にお礼を言うと彼女は「わらわも下手したら自分よりも立場が上の平民の相手はした事がないのでな。こっちの方が助かるんじゃ」と微かに口元を綻ばせながら言うのだった。
栄人が授かったのは『予知』という加護だった。未来を視る事ができる強力な加護だ。
だが、その加護を授かっている者は今まで全員アマテラス出身の女性ばかりだったそうだ。
それなのになぜ我が子に『予知』が授けられたのか。理由は神のみぞ知る状態だけれど、アマテラスの人たちからしたらたまったものじゃないだろう。
どうやら占いの神様から直々に加護を授けた事を伝えられたようで、年末の間に何通も手紙が来た。
神様からの神託である、とまで言われると流石に断る事ができず、アマテラスの誰かと婚約する事が決まったというわけだ。
栄人も神様から神託を授かっていたようで、よく分からないけど乗り気な様なのが幸いな事だろうか?
「お待たせしてすみません」
「大丈夫なのじゃ。この状況も見えておったからのう」
キリッとした表情でそう言ったのはアマテラスの女王であるヒミコ様だ。
正直彼女とほとんど交流がないのでよく知らない。黒い髪に黒い瞳は日本人っぽいけれど顔立ちはモニカ同様日本人っぽくない。
彼女もついてきた人たちも全員着物を着ていて、全員が黒い髪だった。目の色が違う所を見ると髪を染めているのか……魔法がある世界で髪や目の色の関連を深く考えても意味ないな、と思考を放棄して僕も微笑を浮かべて改めて挨拶をした。
「こちらは妻のエミリーと息子の栄人です」
「エミリーです。よろしくお願い致します」
「えいとです! かみさまがなかよくしてね、っていってたよ!」
「存じておるとも。こちらこそなかよくしておくれ」
ヒミコ様はそう言いながらにこっと微笑んで栄人と握手をした。
……この人、笑うんだ。普段は目を瞑っているか、無表情だけど、人間だからそりゃ笑うか。
そんなどうでもいい考えが彼女に筒抜けになっているわけではないだろうけど、視線を僕に戻したヒミコ様は笑っていなかったのでちょっとドキッとした。
「えっと、今回は大勢でいらっしゃったんですね」
「そうじゃのう。事前に渡していた書類だけでは決められぬ、と言われたからのう。直接会わせた方がいいじゃろう、と思ってな。こちらとしてはわらわの娘が一番いいと考えておるんじゃが……モモ、前へ」
「はい、お母様」
静かに控えていた子どもたちの中で一番年上っぽい子が前に出た。おかっぱ頭で着物姿のその子は栄人に向けてにっこりと微笑んだ。
「今年で七つになる。御子息とは三歳差になるが、許容範囲かの?」
「まあ、そうですね。明確に設けてるわけではありませんけど」
「そうじゃろうな。この中で『予知』の加護を授かっておるのはモモだけじゃ。加護についてもいろいろ教えてあげる事ができるじゃろう。じゃが、それは婚約者でなくともするつもりじゃからな。他の者を選ぶというのであればそれはそれで構わん」
本人を前にしてそんな事を言っていいのかな、なんて思ったけれどモモと呼ばれた子どもは気にした様子もない。むしろヒミコ様の後ろに控えている女の子たちが少しそわそわしているくらいだろうか。
まあ、モモと呼ばれた子たちよりもさらに幼そうに見えるからじっと待つのも苦痛だろうな。
栄人もそろそろ限界が近いようだし、とりあえず好きに関わらせてみるか。
「分かりました。僕としては栄人の気持ちを尊重してあげたいと考えておりますのでここで誰かを選ぶ事はしないと思います。……双方の今後の判断材料にするためにとりあえず子どもたちは子どもたち同士で好きに過ごさせてみてもよろしいでしょうか」
「問題ないのじゃ。……おまえたち、エイト様に失礼のないようにな」
ヒミコ様がモモと呼ばれた子を含めて連れてきた全員に向けてそういうと彼女たちは元気に返事をした。
栄人が同年代の女の子たちに囲まれて連れてかれるさまを見送った後、エミリーに「栄人の事を見ててもらってもいいかな?」とお願いすると彼女は躊躇う様子を見せた。
「もちろん話をしたいという事であれば同席してもらって全然かまわないんだけど、あっちの方が少しは気が楽かなって思ったんだけど……」
「差別意識が全くない者たちを選んだとはいえ、知らない内にそなたたちに失礼な事をしてしまうやもしれん。わらわとしてはわらわが連れて来た者たちを含めて見張っておいてくれると助かるのう」
「! かしこまりました。またお話をする機会がありましたらその時はよろしくお願いします」
「ああ。よろしく頼む」
もう部屋の奥の方に行ってしまっていた栄人を追ってエミリーが離れて行った。
その様子を見ながら僕は隣に立って一緒に様子を眺めていたヒミコ様にお礼を言うと彼女は「わらわも下手したら自分よりも立場が上の平民の相手はした事がないのでな。こっちの方が助かるんじゃ」と微かに口元を綻ばせながら言うのだった。
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