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第5章 新しいお姉ちゃんと一緒に生きていく
幕間の物語27.引きこもり王女は活動的
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不毛の荒野とも、不毛の大地とも呼ばれているその場所は、昔あった大きな戦によってアンデッドたちが蔓延る地になったと言われている。
草木は育たず、時々ニョキニョキと生えてくるのは、アンデッドの腕。
ドラゴニア王国の領土の南に位置するそこは、以前までは活用法がなかった。
アンデッドに対する有効手段を持つ者ならばアンデッドを倒す事はできるだろう。ただ、他にもっといい狩場がドラゴニアには無数にあった。
だからこそ、都市国家ユグドラシル等への交易路程度にしか考えられておらず、誰もそこに街を築こうとはしてこなかった。
だが、いつの頃からか、そんな不毛の大地にニョキニョキと一本の木が生えた。
ダンジョン都市ドランから南に進み、都市国家ユグドラシルまで折り返しになる印の看板が呑み込まれ、尋常ではない速さで成長したその木は世界樹。まだ名をつけられていないが、エルフたちが独占してきた世界樹だった。
世界樹の周りには正方形の結界が常に張られていてアンデッドの侵入を防いでいる。
その結界の外側は一面鉄で平らに整えられていて、騎士の様なオブジェが乱立していた。
遠くから見るとリビングアーマーの様なそれらは近づいても動く気配はなく、ただただそこに立っていた。
そんな周囲を気にした素振りもなく、正方形の結界内で朝早くから作業しているのはレヴィア・フォン・ドラゴニア。
朝食を食べ終えたら誰よりも早く世界樹の近くにやってきて、世界樹への祈りを捧げる姿は、朝日に照らされた金色の髪が輝いているように見える事もあり、神々しさすら感じさせた。
両手を胸の前で組み、静かに祈りを捧げる彼女は、しばらくそうしていたが立ち上がる。
そして、このドラゴニア王国第一王女であるレヴィアは、顔をキリッとさせて、大きな声でこう言った。
「今日も耕すのですわ!」
ここにいる彼女は王女ではなく、農家だった。
王城ではいつも着ていた華やかなドレスではなく、動きやすさを重視した彼女は照り付ける日差しから肌を守るために麦わら帽子を被り、長袖長ズボンに長靴を履いていた。手には厚手の手袋をしている。
そんな彼女は、朝日が昇ってすぐにやってきては結界の周囲でわらわら動いているアンデッドをピカッと神聖ライトを向けて一通り倒す。
その後に、魔動測定器で世界樹の大きさを計測し、『この木何の木気になる木』部分に二重線が引かれ、『世界樹観察日記』に書き換えられたノートに記録を取る。
日時、天気、大きさ、周囲の様子――個性的な絵を書きながら、綺麗な字でその時に見た景色や思った事を事細かに記す。
朝食を食べるために一度戻った彼女は、日課となっている世界樹への祈りを捧げた後、持ってきていた鍬を使って、草が生えた世界樹の周りを耕していく。
当初は何かを育てようと種をまいた彼女だったが、ニョキニョキ伸びる世界樹に呑み込まれた。
彼女が丹精込めて育てようとしていた畑が呑み込まれた時、悲痛な叫び声が響いたが、不毛の大地ではアンデッドのせいで日常茶飯事。気にされる事はなかったという。
「セシリア! たい肥をどんどん被せていくのですわ! もっともっと栄養のある土を作るのですわ!」
「かしこまりました」
世界樹にその内呑み込まれてしまう所を耕したところで、果たしてそれに意味があるのか等と側にいたメイドは聞かなかった。
しばらく作業をしていた彼女たちだったが、少し遅れてシズトがやってきて作業を止めて彼を見守る。
シズトは手を合わせてすりすりとこすり合わせつつ目を瞑った。
それに合わせるようにレヴィアは跪いて祈りを捧げる。
「なんかいい感じに伸びて~。【生育!】……うん、このくらいにしとこ。レヴィさんいつも早いね」
「世界樹のお世話をしっかりとするためには必要な事なのですわ!」
「お世話って言っても、勝手にニョキニョキ伸びるじゃん」
「世界樹の周りを整えて置いたらきっともっと成長しやすくなるのですわ!」
「そうかなぁ。……それにしても、この範囲を全部耕すのはきついんじゃない?」
「問題ないのですわ! 世界樹を守り育てるためにはこのくらいの労力なんて辛くもなんともないのですわ!」
鍬はおろか、重たいものをあまり扱う事がなかった彼女が、帰ってきたら掌にポーションをかけているのを知っていたが、シズトは何も言わずにアイテムバッグから鉄のインゴットを取り出す。
「レヴィさん、ちょっと浮遊台車押す感じで手を前に出して」
「いいですわ! 何を作るのですわ?」
「んー、魔動耕耘機もどき、みたいな? ……このくらいの高さね。ちょっと記憶が曖昧だから細かい所はアレンジするしかないんだけど、掃除機みたいに片手で押せるほうがいいかな? 両手の方が安定するかも。【加工】して……ここら辺回転するようにして……どのくらいの深さにしようかな……まあ、とりあえず十センチでいいか。【加工】して……後は付与すればいいか」
ぶつぶつと呟きながら【加工】を使うと液体のようにインゴットが形を変える。
何度見ても不思議な光景ですわ、とレヴィアはまじまじと見つめるが、シズトは視線に気づいた様子もなく、テレビで見た事がある耕耘機の見た目を模していく。
耕すための刃の大きさを調節し、移動がしやすいように車輪も鉄で作った。
【付与】で車輪と刃の耐久性を上げ、軽量化の魔法も【付与】して、最後に魔石をセットするための部分も作った。
「こんなもんかなぁ? 魔石も入れてちょっと試してみるか……うん、魔石入れたらそりゃ動くよね……ちょっとスイッチ的なのを作るか。取っ手部分でいいよね」
その様なやり取りがあり、農家の様な王女様は耕耘機を手に入れた。
自分で耕すより楽になったレヴィアは、その日からよりいっそう世界樹周辺の手入れをするために張り切ったのは言うまでもない。
「今日も耕すの頑張るのですわー! そこのゾンビたち、魔石をよこすのですわ!!!」
「ちょ、ちょっとレヴィア様! 神聖ライトがあるからって、あんまり一人で先に行かないでください! レヴィア様!!!」
不毛の大地に似つかわしくない姦しい声が朝から響く。
引きこもりで大人しかったレヴィア様はいったいどこへ行ってしまったのでしょう、と心の中でセシリアは問いかけるが、王女様にはその心の声は届かなかった。
草木は育たず、時々ニョキニョキと生えてくるのは、アンデッドの腕。
ドラゴニア王国の領土の南に位置するそこは、以前までは活用法がなかった。
アンデッドに対する有効手段を持つ者ならばアンデッドを倒す事はできるだろう。ただ、他にもっといい狩場がドラゴニアには無数にあった。
だからこそ、都市国家ユグドラシル等への交易路程度にしか考えられておらず、誰もそこに街を築こうとはしてこなかった。
だが、いつの頃からか、そんな不毛の大地にニョキニョキと一本の木が生えた。
ダンジョン都市ドランから南に進み、都市国家ユグドラシルまで折り返しになる印の看板が呑み込まれ、尋常ではない速さで成長したその木は世界樹。まだ名をつけられていないが、エルフたちが独占してきた世界樹だった。
世界樹の周りには正方形の結界が常に張られていてアンデッドの侵入を防いでいる。
その結界の外側は一面鉄で平らに整えられていて、騎士の様なオブジェが乱立していた。
遠くから見るとリビングアーマーの様なそれらは近づいても動く気配はなく、ただただそこに立っていた。
そんな周囲を気にした素振りもなく、正方形の結界内で朝早くから作業しているのはレヴィア・フォン・ドラゴニア。
朝食を食べ終えたら誰よりも早く世界樹の近くにやってきて、世界樹への祈りを捧げる姿は、朝日に照らされた金色の髪が輝いているように見える事もあり、神々しさすら感じさせた。
両手を胸の前で組み、静かに祈りを捧げる彼女は、しばらくそうしていたが立ち上がる。
そして、このドラゴニア王国第一王女であるレヴィアは、顔をキリッとさせて、大きな声でこう言った。
「今日も耕すのですわ!」
ここにいる彼女は王女ではなく、農家だった。
王城ではいつも着ていた華やかなドレスではなく、動きやすさを重視した彼女は照り付ける日差しから肌を守るために麦わら帽子を被り、長袖長ズボンに長靴を履いていた。手には厚手の手袋をしている。
そんな彼女は、朝日が昇ってすぐにやってきては結界の周囲でわらわら動いているアンデッドをピカッと神聖ライトを向けて一通り倒す。
その後に、魔動測定器で世界樹の大きさを計測し、『この木何の木気になる木』部分に二重線が引かれ、『世界樹観察日記』に書き換えられたノートに記録を取る。
日時、天気、大きさ、周囲の様子――個性的な絵を書きながら、綺麗な字でその時に見た景色や思った事を事細かに記す。
朝食を食べるために一度戻った彼女は、日課となっている世界樹への祈りを捧げた後、持ってきていた鍬を使って、草が生えた世界樹の周りを耕していく。
当初は何かを育てようと種をまいた彼女だったが、ニョキニョキ伸びる世界樹に呑み込まれた。
彼女が丹精込めて育てようとしていた畑が呑み込まれた時、悲痛な叫び声が響いたが、不毛の大地ではアンデッドのせいで日常茶飯事。気にされる事はなかったという。
「セシリア! たい肥をどんどん被せていくのですわ! もっともっと栄養のある土を作るのですわ!」
「かしこまりました」
世界樹にその内呑み込まれてしまう所を耕したところで、果たしてそれに意味があるのか等と側にいたメイドは聞かなかった。
しばらく作業をしていた彼女たちだったが、少し遅れてシズトがやってきて作業を止めて彼を見守る。
シズトは手を合わせてすりすりとこすり合わせつつ目を瞑った。
それに合わせるようにレヴィアは跪いて祈りを捧げる。
「なんかいい感じに伸びて~。【生育!】……うん、このくらいにしとこ。レヴィさんいつも早いね」
「世界樹のお世話をしっかりとするためには必要な事なのですわ!」
「お世話って言っても、勝手にニョキニョキ伸びるじゃん」
「世界樹の周りを整えて置いたらきっともっと成長しやすくなるのですわ!」
「そうかなぁ。……それにしても、この範囲を全部耕すのはきついんじゃない?」
「問題ないのですわ! 世界樹を守り育てるためにはこのくらいの労力なんて辛くもなんともないのですわ!」
鍬はおろか、重たいものをあまり扱う事がなかった彼女が、帰ってきたら掌にポーションをかけているのを知っていたが、シズトは何も言わずにアイテムバッグから鉄のインゴットを取り出す。
「レヴィさん、ちょっと浮遊台車押す感じで手を前に出して」
「いいですわ! 何を作るのですわ?」
「んー、魔動耕耘機もどき、みたいな? ……このくらいの高さね。ちょっと記憶が曖昧だから細かい所はアレンジするしかないんだけど、掃除機みたいに片手で押せるほうがいいかな? 両手の方が安定するかも。【加工】して……ここら辺回転するようにして……どのくらいの深さにしようかな……まあ、とりあえず十センチでいいか。【加工】して……後は付与すればいいか」
ぶつぶつと呟きながら【加工】を使うと液体のようにインゴットが形を変える。
何度見ても不思議な光景ですわ、とレヴィアはまじまじと見つめるが、シズトは視線に気づいた様子もなく、テレビで見た事がある耕耘機の見た目を模していく。
耕すための刃の大きさを調節し、移動がしやすいように車輪も鉄で作った。
【付与】で車輪と刃の耐久性を上げ、軽量化の魔法も【付与】して、最後に魔石をセットするための部分も作った。
「こんなもんかなぁ? 魔石も入れてちょっと試してみるか……うん、魔石入れたらそりゃ動くよね……ちょっとスイッチ的なのを作るか。取っ手部分でいいよね」
その様なやり取りがあり、農家の様な王女様は耕耘機を手に入れた。
自分で耕すより楽になったレヴィアは、その日からよりいっそう世界樹周辺の手入れをするために張り切ったのは言うまでもない。
「今日も耕すの頑張るのですわー! そこのゾンビたち、魔石をよこすのですわ!!!」
「ちょ、ちょっとレヴィア様! 神聖ライトがあるからって、あんまり一人で先に行かないでください! レヴィア様!!!」
不毛の大地に似つかわしくない姦しい声が朝から響く。
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