【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
108 / 1,443
第5章 新しいお姉ちゃんと一緒に生きていく

幕間の物語33.エルフたちは壁の補強をする

しおりを挟む
 世界樹ファマリーは、ダンジョン都市ドランと都市国家ユグドラシルの中間地点に生えている。
 その周囲を囲うように高さ五メートルほどの鉄の壁が取り囲み、外からの侵入者を防いでいた。たとえ鉄壁を超えたとしても内側に張られた聖域に弾かれて下級のアンデッドはそれだけで消滅してしまう。
 その二重の防壁に守られる形で、十人のエルフたちが作業をしていた。一週間前に勇者たちがファマリーを去ったが、同行していたエルフたちは半数がその場に残って待機していた。加護を持ち、移動力に秀でたエルフだけがすぐに戻ってきて世界樹の使徒からの命令を伝えたのだが、命じられたのは鉄の壁の補強という名の隠蔽工作だった。
 エルフたちは内側の壁を精霊の力を借りて土で覆っていく。鉄壁に刻まれた文字や絵のいずれも見えないように多めに土で覆っていくため、想定よりも長い時間がかかってしまっている。昼の休憩を取っていたエルフたちが輪になりながら雑談をしていた。

「国から応援が来るまでは地道に広げていくしかないな」
「外側は上に登って目視でやっていくしかねぇよな?」
「マジかよ。壁の上って普通にアンデッドが襲ってくるじゃねぇか」
「それだけで済めばいいけどな」
「応援が来たら何とかなるだろ」
「応援……無事に来るといいな」

 覇気のない様子で壁を覆っていく仲間たちを見ながら一刻も早く応援が来る事を願っていた彼らだったが、日に日に彼らを取り巻く環境は悪くなっていっていた。
 食料や飲料は現在の人数で一か月分はあった。普通に食べてそのくらいあるが、当初の予定と異なり一週間経ってもやってきたのは精霊魔法で飛んで戻ってきた数人だけ。
 その他の者たちは明らかに時間がかかりすぎていた。
 その事もあり、食事や水分補給は最小限だけで済ませるようにしていた。

「ドラゴニアの奴ら、今日もどんどん増えてるみたいだぜ」
「アンデッド退治をしているだけだ、とか言ってるが、どう考えても我らの邪魔をしているだろアレ」
「物資が届かねぇのもあいつらが襲ってるからだろうな」
「盗人の次は強奪かよ。人間ってのはどこまでも卑しい奴らだ」
「ほんとほんと。こーんな、嘘まで残しちゃって。後処理する僕らの身にもなってみろっての」
「…………これが嘘だといいんだがな」
「嘘に決まってんだろ、何言ってんだお前!」
「動かすのは手だけにしとけ」

 魔力回復のために休憩をしていた彼らだったが、ばらばらに分かれて自らが担当する場所にどんどん土を盛っていく。結局、その日も内側の補強は終わらなかった。

(応援に来る予定だった奴らに見られなかった事を喜ぶべきか、現状を憂うべきか)

 彼らを纏め上げるエルフのリーダーは危険は承知で鉄の壁に上って周囲を見渡していたが、ドランからどんどんと鎧を身に纏った集団が近づいてきているのが見えた。ある程度の集団に分かれて湧いてくるゾンビたちに筒状の魔道具から不思議な光を浴びせて倒していく。
 それを目を凝らして見ていたリーダーだったが、ぐるりと囲むように点在してある程度の人数で野営をしている人間共の料理の匂いが風に乗って彼の嗅覚を刺激する。
 ただでさえやる気が削がれているエルフたちだったが、人間の嫌がらせに苛立ちを募らせていた。



「我々ドラゴニアが貴殿らの国から世界樹の種と呼ばれるものを盗んだという事実はない。世界樹ファマリーは生育の加護を持つ者が、ドランにある最高神教会で礼拝をした際に神々から下賜された苗木を育てたものである。世界樹は生育の加護を持つ者しか育てる事ができぬ。ユグドラシルのように枯れてしまう前に、大人しく立ち去れ! 貴殿らの国とは現在国交断絶状態であるが、大人しく立ち去るというのならば、ユグドラシルまでの安全は保障しよう」

 日の出と日没のタイミングで同じ内容が魔道具を使って大音量で響き渡るようになって一週間。内側の壁の補強はすでに終わっていた。今は半数が壁の補強を行い、残りの半数が周囲の警戒に勤めている。
 ただ、ゾンビたちは周りを固めているドラゴニアの兵士たちが処理をしてしまう。彼らが警戒をするべきは、ドラゴニアの兵士たちと、時折飛んでやってくるレイスの様な上空から襲ってくる魔物だけだった。

「神聖エンジェリア帝国並びにその他の周辺諸国からなる連合国は既にユグドラシルの援助は断っている。生育の加護を持つ者に濡れ衣を着せ、世界樹を育む事もできぬ者たちよ――」
「同じ事ばかり適当に言いやがって、聞き飽きたっての」
「本当にそういう状況になってたら、とっくに俺たち死んでるだろ」

 二人組のエルフは無表情でぶつぶつと言いながら片方は外側の土を盛っている。もう一方は上空を警戒しながらも、不思議な形をしたものを口に当てながらこちらを見上げて喋り続けている人間を睨みつけていた。
 この二週間、人間共はなぜか周りのアンデッドを討伐するだけでこちらに直接攻撃を仕掛けて来なかった。それを不審に思いつつもエルフたちは与えられた職務を全うしていた。そういう風に育てられていたのだからそれしかできなかった。
 今日もまた何事もなく日が暮れる。エルフたちは風に乗って運ばれて来る肉が焼ける匂いを感じながら、憂鬱そうな表情で自分たちの質素な食事の準備をし始めるのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...