【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚271.事なかれ主義者は道連れにした

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 オールダムの様子を見てから一週間ほどが過ぎた。
 オールダムでは離間工作で隣国に協力しようとしていた貴族たちの対応で忙しいようだけど、僕も『天気祈願』を使うために各国を回るのに忙しかった。
 加護を使う合間に屋敷に戻ってきては子どもたちになんとか「パパ」と言ってもらおうとしたけれど、育生は「レモン」の方が先だった。

「どういう事なんだろうね、レモンちゃん」
「れも? レモン、レモレモーン」
「うん、なんて言ってるか分かんないや。おんなじ時間関わってるはずなんだけど…………しばらく肩車は禁止にしようかな」
「レッ!? レモン、れももれももん!」

 脇の下に手を入れられ、大人しく持ち上げられていたレモンちゃんが目を丸くしたかと思えばじたばたと暴れ始めた。
 よくよく考えたら「レモン」を先に覚えてもおかしくないんだよな。
 子どもたちと関わる時にレモンちゃんがずっと僕の頭に引っ付きながら「レモンレモン」言っていたらそりゃ先にレモンを覚えるわ。食いしん坊な育生なら余計にそうだわ。レモン食べないけど。
 であれば、他の子が「レモン」という前にしばらく別行動になるしかないんだけど……レモンちゃんは離れる意思はない! と主張するかのように髪の毛を僕の手に絡みつかせていた。
 どうしたものかな、と考え込んでいると玄関の扉が開いて、中からレヴィさんが出てきた。

「こんな所で何をしているのですわ?」

 いつも通りオーバーオール姿だと思ったけれど、ドレスを着ている。露出が少ないのに胸がとても大きいから目がそこに行ってしまうのは仕方ないよね。

「ちょっとレモンちゃんと交渉を」
「レモン!!」
「破談に終わりそうだけど」
「もん」
「レヴィさんはどこに行くの?」
「迎賓館ですわ。シズトにも関係のある事ですけれど、一緒にいくのですわ?」
「内容を聞いてから決めようかな」

 ただの報告とかだったら後からレヴィさんから聞けばいいし、育生たちと関わっていたい。

「生誕祭の内容について話し合うのですわ。その中にはもちろんパレードの事も――」
「あ、はい。行かせていただきます」

 年々派手になっていきそうな気がするからストッパーとして参加しなければ!
 レモンちゃんとは一時休戦して、彼女を肩車するとレヴィさんが歩き始めたので慌てて追いかける。

「…………着替えた方が良いかな?」
「気にする必要はないのですわ」
「そうかな?」
「れもん?」



 迎賓館の一室に通されたけど、心配していた服装に関しては誰からも何も言われなかった。
 広い部屋の中には様々な人が並んでいた。老若男女問わず、種族も関係なく整然と席についている。共通点と言えば、首に着けている奴隷の証だろうか? 半数以上の人が首輪を身に着けていた。
 たくさんのテーブルが等間隔に並んでいる。どういう順番で並んでいるのかは不明だけど、最前列にはドワーフのドフリックさんや仮面をつけたエルフたちもいた。
 僕とレヴィさんは最前列のさらに前に設けられたちょっと一段高い所に設置された椅子に座るように促されたのでそこに座った。

「マスターもいらっしゃったんですね」

 僕の隣にやってきた魔法使い然とした格好の女性はホムラだ。僕が作った魔法生物の内の一人で、地面に届きそうな程ながい真っ黒な髪が特長的な女性だ。端正な顔立ちで人形のような顔立ちをしているけれど、目深に被った帽子であまり顔は見えない。

「急遽、マスターも参加される事になりましたが、定刻になりましたので会議を始めさせていただきます」

 話し合いを進行するのはホムラのようだ。彼女の綺麗な声が室内に行き届いているのは手に持っている魔道具『魔動マイク』のおかげだろう。

「今回の議題は生誕祭についてです。今回は転移門が通じている国々から多くの方々がいらっしゃいます。その事を踏まえたうえで、生誕祭の内容を改良し、盛り上げていく必要があります」
「あれ以上盛り上げる必要があるのかなぁ」

 前回の生誕祭の事はあんまり思い出したくはないけれど、何週間と祭りが続いていたような気がする。

「舐められないためには必要なのですわ」
「別に舐められてもいい……わけではないか。一応エルフたちのトップって事になってるし」
「ですわ」

 肩書はあっても面倒が増えるだけだなぁ、なんて事を思いながらセシリアさんが用意してくれたティーカップに口をつけた。

「ご意見がある方は挙手をして、あてられてから発言をお願いします」

 ホムラがそう言った瞬間に手をあげたのは仮面をつけたエルフの面々だ。一番前にいた人が立ち上がり口を開いた。

「シズト様の神輿をもっと豪華にしましょう!」
「なんで?」
「当然です」
「なんで?」
「具体的にはどの様に豪華にするのですか?」
「神輿を金メッキ加工すればいいんじゃねぇか?」
「ドフリックさん面白がってない?」

 赤ら顔のドフリックさんはぐびぐびとお酒をラッパ飲みしている。その隣にはいつもいるストッパー役のドロミーさんがいなかった。
 僕の疑問や突っ込みを聞き流しているのか聞く気がない様子のホムラは「アダマンタイト製にできれば神々の力を見せる事もできるのですが……」と言葉を濁した。
 アダマンタイトを加工できるのは『加工』の加護を授かった者だけだ。世界樹を育てる事ができる『生育』の加護と違って、未だに蘭加以外の加護を授かった者は現れていないので無理な事は分かっていた。

「? 何かご意見がおありですか、マスター?」

 挙手をしたらやっとあててくれた。注目が集まっている気がするけど、このくらいの視線なら慣れてきたので何とも思わない。流石に暗闇の中から無数の目がこっちを見ているとビックリするけど……うん。

「派手なのはちょっとご遠慮したいんだけど……」
「マスター、これはマスターの影響力や財力などの力を誇示する機会でもあります。神輿には乗って頂きますし、その装飾は前年よりも豪華にする必要があります」
「じゃあせめて目立たない様にしてくれないかな? ほら、御簾とかいうのを使うとかさ」
「現実的ではないのですわ。顔を見せる事に意味があるのですわ」
「……まあ、そうだよね」

 ダメ元で言っただけだからいいんだけど……目立ちたくないなぁ。

「目立ちたくねぇのならいっその事他の奴らも乗せればいいじゃねぇか」
「神輿にはマスター以外は乗せるわけにはいきません」
「ああ、シズトが乗るやつにはそうだろうなぁ。だけど、他の神輿を用意すれば違うだろ? 神輿を増やして乗ってもらえばいいんだよ。子どもが生まれたんだったら猶更だ」
「…………なるほど?」

 お酒飲んでいる時のドフリックさんって割といい意見を出すんだよな、なんて失礼な事を考えつつもとりあえずまだ幼い子どもたちを乗せるわけにはいかないよな、と思った。でも、発想自体は悪くない。木を隠すのなら森の中。お嫁さんたちにも神輿に乗ってもらおう。
 決して僕だけが恥ずかしい思いをしたくないとか、そういう理由ではないけど、話はそっち方面で進みそうで良かったよかった。
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