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後日譚
後日譚272.ロリエルフは意図せず道連れにした
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世界樹ファマリーの根元にあるシズトたちが暮らす屋敷のすぐ近くには、使用人用の別館がある。そこにはシズトと結婚していない奴隷や、その家族、保護されている人物などがいた。その中には小柄なエルフのジューロも含まれている。
エルフの平均よりもはるかに小さく、子どものような体型の彼女は、見た目に反して成人している。その様な容姿だった事もあり、ジューンがしている役割である『代理人』候補だったが、シズトからNGを出された。その事に関して思う所はなく、今は悠々自適な魔道具研究ライフを送っていた。
彼女の研究対象は『回転』の魔法陣である。それらの副産物は多岐にわたるが、シズトの生誕祭の時に各地を巡る神輿の車輪も彼女が担当していた。
「という訳で、生誕祭までに神輿の車輪を量産するように」
都市国家出身であるジューロにとって、世界樹の番人のリーダー格であるジュリウスの命令は絶対である。それよりも優先される命令はシズトの『お願い』くらいだ。のんびり気ままに自室にこもって『回転』の魔道具を試行錯誤しながら作る日々は唐突に終わりを迎えた。
「わ、分かりました」
プルプルと震えながら答えるジューロ。任された役割の大きさに緊張しているのか、それとも日頃関わりの少ないジュリウスに指示される事に緊張しているのか。彼女自身にも分からなかった。
ジュリウスが満足そうに部屋を出て行った。置いて行った資料に目を通すジューロ。
「……時間、足りるかなぁ」
神輿の数は軽く二十を超えている。
シズトが提案したのは配偶者もそれぞれ神輿に乗ってパレードに参加する事だったが、そこからさらに数が増えた。シズトが信仰していない神々を信仰している教会がそれぞれ神輿を出したいと要望を出したからだ。シズトが信仰している四柱はシズトが乗る神輿の一番上に像が祀られるそうなのでそれを作らなくていいのは不幸中の幸いだろう。
さらに、エルフの国々からも神輿を出す要望が出された。これはまだシズトやその配偶者の神輿よりも小さい物を、という事だったので労力は多くはないだろう。
エルフの国が神輿を出すのならば、当然生誕祭に参加する各国もパレードに参加しようとするのは当然である。シズトと関係が深いドラゴニア王国や海洋国家ガレオールは当然として、シグニール大陸にある国々も参加表明をしていた。異大陸の国々はとりあえず本国に持ち帰って話し合う、という事で一先ず作らなくていいのだが、これは作る流れになるだろう、とジューロは覚悟した。
一人でやる事もできなくはないが、祭りまでの残りの時間を考えると、毎日それだけに時間を費やすしかないだろう。
だが、彼女もまた、魔道具の研究を熱心にする研究者である。できれば研究を止める事はしたくない。であればやる事は一つだ。
「あれ? ジューロちゃんが自分から出てくるなんて珍しいね。夜ご飯はもうすぐだよ」
「うん、わかった。ちょっと用事があるから外に出るね」
料理を作っている母親の手伝いをしていた人族の少女アンジェラがジューロを見て目を丸くしたが、そんなアンジェラを気にした様子もなくジューロはそそくさと外に出ようとした。
それを見てのんびりと紅茶を飲んで待っていたエルフの少女リーヴィアが立ち上がり「私も行くわ」と彼女の後を追った。意中の相手であるジュリーニと密会するのでは? と不安になったのだろう。
「お母さん、心配だからアンジェラもついてっていい?」
「そうね。夜ご飯が出来たら合図を送るから戻ってくるのよ?」
「はーい」
魔力探知ができるアンジェラであれば遠く離れていても問題ないだろう、と母親であるシルヴェラは判断したようだ。元気よく二人の後をついて行く愛娘の後姿を優しい眼差しで見送った後は、夜ご飯の準備を再開するのだった。
ジューロが向かった先は本館だった。夜間の出入りは禁止されているので正面玄関で待っていると、中から扉が開かれた。
「何か御用でしょうか?」
丁寧な言葉遣いで問いかけたのはモニカである。黒い髪に黒い瞳の女性だったが、異世界転移者ではなく、彼らの子孫だ。メイド服を着た彼女は本館の手入れや来客の対応などを任されている。
「ノエルさんにお話したい事があって……」
「ノエルにですか。……分かりました、連れてくるように伝えます」
自発的には来ない事はジューロも分かっていた。
玄関の扉が閉められてからしばらく時間が流れて行く。いつの間にかジューロたちの足元には肌が真っ黒なドライアドたちが集まってきていて、ジッとジューロたちを見ていた。
しばらく黙って待っていると、扉が開かれた。中から出てきたのは金髪の女性の足首を掴んで引っ張ってきたホムラだった。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「もっと丁重に扱う事を要望するっす!」
「それでは、失礼します」
「話を聞くっす!!」
連れて来られた金髪の女性ノエルは抗議をしても無駄だと理解はしていたが、それでも抗議をせずにはいられない。ノルマとして課せられている魔道具はしっかりと作っているのに不当な扱いを受けたのだから当然の事だった。
「……それで、何の用っすか?」
ホムラがエントランスホールの奥へと消えて行ったところで、不機嫌さを隠そうともしない様子でノエルが尋ねた。寝癖がついたままの金色の髪をぼりぼりとかきながら、ジロッと小柄なジューロを見下ろした。
「『回転』の魔道具の大量発注をされたので手伝ってください」
「無理っす。ボクにもノルマがあるっす」
「じゃあ他の人たちを貸してください」
「それも無理っす。ボクのノルマはあの子たちも加味したうえで決められてるっす」
「でも、私一人だと研究ができなくなってしまいます……」
「それはボクも同じっす。同情はするけれど、通常業務を円滑にこなさないとボクが罰を受ける事になるっす。睡眠時間を削れば行けるっすよ、たぶん」
ノエルは「話はそれだけっすか? そろそろ食事の時間っす」というと玄関の扉を閉めてしまった。
残されたジューロはどうしたものか、と考え込んでいたが、結局ノエルが言った通り、睡眠時間を削って研究に回す事にしたようだ。
だが、それもアンジェラにすぐに密告された。密告相手はもちろんシズトである。
日頃からアンジェラたちとまとめてジューロを子どものように扱っていたシズトが隈を作ってまで研究に没頭しているのにいい顔をするはずがなかった。
「他の国の人にも手伝ってもらう事になったから大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます!」
「ボクのノルマもそうして欲しいっす!」
「あれ、もうすでにしてるんじゃないの?」
「仰る通りです、マスター。そのため、ノルマを少々増やす事になりました。頑張ってください」
「あんまりっす!」
早急に魔道具を作る人を育てる必要があるな、なんて事を思いつつもジューロは睡眠時間を削らなくとも多少は研究の時間を設ける事が出来て満足するのだった。
エルフの平均よりもはるかに小さく、子どものような体型の彼女は、見た目に反して成人している。その様な容姿だった事もあり、ジューンがしている役割である『代理人』候補だったが、シズトからNGを出された。その事に関して思う所はなく、今は悠々自適な魔道具研究ライフを送っていた。
彼女の研究対象は『回転』の魔法陣である。それらの副産物は多岐にわたるが、シズトの生誕祭の時に各地を巡る神輿の車輪も彼女が担当していた。
「という訳で、生誕祭までに神輿の車輪を量産するように」
都市国家出身であるジューロにとって、世界樹の番人のリーダー格であるジュリウスの命令は絶対である。それよりも優先される命令はシズトの『お願い』くらいだ。のんびり気ままに自室にこもって『回転』の魔道具を試行錯誤しながら作る日々は唐突に終わりを迎えた。
「わ、分かりました」
プルプルと震えながら答えるジューロ。任された役割の大きさに緊張しているのか、それとも日頃関わりの少ないジュリウスに指示される事に緊張しているのか。彼女自身にも分からなかった。
ジュリウスが満足そうに部屋を出て行った。置いて行った資料に目を通すジューロ。
「……時間、足りるかなぁ」
神輿の数は軽く二十を超えている。
シズトが提案したのは配偶者もそれぞれ神輿に乗ってパレードに参加する事だったが、そこからさらに数が増えた。シズトが信仰していない神々を信仰している教会がそれぞれ神輿を出したいと要望を出したからだ。シズトが信仰している四柱はシズトが乗る神輿の一番上に像が祀られるそうなのでそれを作らなくていいのは不幸中の幸いだろう。
さらに、エルフの国々からも神輿を出す要望が出された。これはまだシズトやその配偶者の神輿よりも小さい物を、という事だったので労力は多くはないだろう。
エルフの国が神輿を出すのならば、当然生誕祭に参加する各国もパレードに参加しようとするのは当然である。シズトと関係が深いドラゴニア王国や海洋国家ガレオールは当然として、シグニール大陸にある国々も参加表明をしていた。異大陸の国々はとりあえず本国に持ち帰って話し合う、という事で一先ず作らなくていいのだが、これは作る流れになるだろう、とジューロは覚悟した。
一人でやる事もできなくはないが、祭りまでの残りの時間を考えると、毎日それだけに時間を費やすしかないだろう。
だが、彼女もまた、魔道具の研究を熱心にする研究者である。できれば研究を止める事はしたくない。であればやる事は一つだ。
「あれ? ジューロちゃんが自分から出てくるなんて珍しいね。夜ご飯はもうすぐだよ」
「うん、わかった。ちょっと用事があるから外に出るね」
料理を作っている母親の手伝いをしていた人族の少女アンジェラがジューロを見て目を丸くしたが、そんなアンジェラを気にした様子もなくジューロはそそくさと外に出ようとした。
それを見てのんびりと紅茶を飲んで待っていたエルフの少女リーヴィアが立ち上がり「私も行くわ」と彼女の後を追った。意中の相手であるジュリーニと密会するのでは? と不安になったのだろう。
「お母さん、心配だからアンジェラもついてっていい?」
「そうね。夜ご飯が出来たら合図を送るから戻ってくるのよ?」
「はーい」
魔力探知ができるアンジェラであれば遠く離れていても問題ないだろう、と母親であるシルヴェラは判断したようだ。元気よく二人の後をついて行く愛娘の後姿を優しい眼差しで見送った後は、夜ご飯の準備を再開するのだった。
ジューロが向かった先は本館だった。夜間の出入りは禁止されているので正面玄関で待っていると、中から扉が開かれた。
「何か御用でしょうか?」
丁寧な言葉遣いで問いかけたのはモニカである。黒い髪に黒い瞳の女性だったが、異世界転移者ではなく、彼らの子孫だ。メイド服を着た彼女は本館の手入れや来客の対応などを任されている。
「ノエルさんにお話したい事があって……」
「ノエルにですか。……分かりました、連れてくるように伝えます」
自発的には来ない事はジューロも分かっていた。
玄関の扉が閉められてからしばらく時間が流れて行く。いつの間にかジューロたちの足元には肌が真っ黒なドライアドたちが集まってきていて、ジッとジューロたちを見ていた。
しばらく黙って待っていると、扉が開かれた。中から出てきたのは金髪の女性の足首を掴んで引っ張ってきたホムラだった。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「もっと丁重に扱う事を要望するっす!」
「それでは、失礼します」
「話を聞くっす!!」
連れて来られた金髪の女性ノエルは抗議をしても無駄だと理解はしていたが、それでも抗議をせずにはいられない。ノルマとして課せられている魔道具はしっかりと作っているのに不当な扱いを受けたのだから当然の事だった。
「……それで、何の用っすか?」
ホムラがエントランスホールの奥へと消えて行ったところで、不機嫌さを隠そうともしない様子でノエルが尋ねた。寝癖がついたままの金色の髪をぼりぼりとかきながら、ジロッと小柄なジューロを見下ろした。
「『回転』の魔道具の大量発注をされたので手伝ってください」
「無理っす。ボクにもノルマがあるっす」
「じゃあ他の人たちを貸してください」
「それも無理っす。ボクのノルマはあの子たちも加味したうえで決められてるっす」
「でも、私一人だと研究ができなくなってしまいます……」
「それはボクも同じっす。同情はするけれど、通常業務を円滑にこなさないとボクが罰を受ける事になるっす。睡眠時間を削れば行けるっすよ、たぶん」
ノエルは「話はそれだけっすか? そろそろ食事の時間っす」というと玄関の扉を閉めてしまった。
残されたジューロはどうしたものか、と考え込んでいたが、結局ノエルが言った通り、睡眠時間を削って研究に回す事にしたようだ。
だが、それもアンジェラにすぐに密告された。密告相手はもちろんシズトである。
日頃からアンジェラたちとまとめてジューロを子どものように扱っていたシズトが隈を作ってまで研究に没頭しているのにいい顔をするはずがなかった。
「他の国の人にも手伝ってもらう事になったから大丈夫だよ」
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