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後日譚
後日譚425.元生徒会長は出迎えた
オールダムは民主主義国家になろうとしているが、それでも旗振り役は必要である。
その旗振り役となっているのが、前世の歴史などから民主主義に必要な事を知っている佐藤学だった。
海を越えた先にある大陸からの使節団を出迎えるために最近着こなす事ができるようになってきたスーツよりも少し派手な装飾が入っている物を着用し、何事もなく無事に出迎える事が出来たし、会場中の視線を一身に集めながらもスピーチをそつなくこなす事も出来た。
それは知識神から授かった『記憶』の加護のおかげもあるだろう。一度知った情報は忘れる事がないその加護があればカンペなどなくとも原稿を頭の中に叩きこんでスラスラと話す事ができる。
スピーチだけではなく、外交でもその加護は効果を発揮するのだが、あくまでそれは事前準備ができるものに限られる。突発的な事には自分の力で臨機応変に対応するしかない。
例えば、急遽他国の者が『新年会』に参加するために龍に乗ってやって来たとか。
慌てた様子で入ってきた伝令の様子で何かがあった事は知られてしまったが、学は慌てずに報告を聞いた。
「分かりました、すぐに向かいます」
幸いな事に他の国の者たちとは一通り新年の挨拶を終わらせていたので少しの間位離れても問題なかった。
学を見ていた参加者たちにゆっくり過ごすようにと言いながら足早に会場を後にした彼は、兵士と共に建物の外に出て、止まっていた馬車にそのまま乗り込んだ。
対面に向かい合うように座った兵士に学が問いかける。
「ドラゴンに乗ってやって来たのは誰か分かりますか?」
「噂に名高い『龍姫』だと思われますが……正直、ルフラビアの向こう側の国の人なので本物かは分かりません。こちらの手紙を渡していただければ分かるだろう、との事でしたが……」
差し出された手紙を受け取った学は、まずは裏返して封蝋を見た。
「……確かに、レビヤタンの印で間違いなさそうですね。いくつか残されていた古い文献を確認した時に見た覚えがあります。相手が『龍姫』かどうかは分かりませんが、それ相応の対応をしなければいけませんね」
新年早々不測の事態が起きた事にため息をつきたい気持ちが湧いてきたが、深く深呼吸をして抑え込んだ学は相手への対応について脳内でシミュレーションするのだった。
オールダムの首都の外壁の向こう側に一投のドラゴンが鎮座していた。その前には鎧を身に纏った人物が立っており、城門から出てきた馬車を真っすぐに見ていた。ドラゴンをぐるりと囲むように武装した兵士が取り囲んでいるが気にした様子もない。
馬車から降りた学は、まずはドラゴンを見上げた。タルガリア大陸の中でも飛ぶ事に特化したストームドラゴンである。
大きな翼に凸凹が少ない流線形の体が特長的なそのストームドラゴンは、鋭い眼差しで学を睥睨している。
学は視線をゆっくりとそのドラゴンから下に向けて、こちらの方を向いている人物に視線を向けた。
空を飛ぶために防寒のためか随分と着込んだその人物の素顔は兜で見えないが、学がある程度近づいて来たところでその兜を撮った。
露になったのは若々しい肌と艶やかな黒髪を持つ女性の顔だった。端正な顔立ちのその女性は、兜を小脇に抱え、初手で頭を下げた。
「急いでいたとはいえ許可も取らずに飛んできてしまい申し訳ない」
「……いえ、事情は把握していますし、事前に決めておいた約束を守って頂いているようなのでこちらから言う事はありません」
竜騎士を伝令に用いる場合は一頭のみドラゴンの入国を許可する、という約束事を他国と結んでいた学は、それ以上の謝罪は不要であると手で制した。
「ありがとうございます。我が国の王が『新年会』の報せを聞いて『すぐに向かうように』と命じたので馳せ参じました。リリス・レビヤタンです。以後お見知りおきを」
「オールダム国会議員議長を務めさせていただいております学と申します。遥々お越しいただいたのに申し訳ございませんが、武装した方は事前に許可がない限り入場は認めておりません。控室を用意いたしますので着替えていただけますか?」
「もちろんです。シルフィーはどこに待機させておけばいいでしょうか?」
「竜舎はないのでここで待つように指示してもらえますか?」
「分かりました。シルフィー、『待機』よ。寝てて頂戴」
リリスが指示するとストームドラゴンは寝るために丸まった。そして瞳を閉じてすぐに寝息を立て始める。
(これ以上借りは作らないように、と言われてるけど今回ばかりはエルフの力を貸してもらう必要があるかもしれないな)
そんな事を考えながら学はリリスを馬車の中へ招くのだった。
その旗振り役となっているのが、前世の歴史などから民主主義に必要な事を知っている佐藤学だった。
海を越えた先にある大陸からの使節団を出迎えるために最近着こなす事ができるようになってきたスーツよりも少し派手な装飾が入っている物を着用し、何事もなく無事に出迎える事が出来たし、会場中の視線を一身に集めながらもスピーチをそつなくこなす事も出来た。
それは知識神から授かった『記憶』の加護のおかげもあるだろう。一度知った情報は忘れる事がないその加護があればカンペなどなくとも原稿を頭の中に叩きこんでスラスラと話す事ができる。
スピーチだけではなく、外交でもその加護は効果を発揮するのだが、あくまでそれは事前準備ができるものに限られる。突発的な事には自分の力で臨機応変に対応するしかない。
例えば、急遽他国の者が『新年会』に参加するために龍に乗ってやって来たとか。
慌てた様子で入ってきた伝令の様子で何かがあった事は知られてしまったが、学は慌てずに報告を聞いた。
「分かりました、すぐに向かいます」
幸いな事に他の国の者たちとは一通り新年の挨拶を終わらせていたので少しの間位離れても問題なかった。
学を見ていた参加者たちにゆっくり過ごすようにと言いながら足早に会場を後にした彼は、兵士と共に建物の外に出て、止まっていた馬車にそのまま乗り込んだ。
対面に向かい合うように座った兵士に学が問いかける。
「ドラゴンに乗ってやって来たのは誰か分かりますか?」
「噂に名高い『龍姫』だと思われますが……正直、ルフラビアの向こう側の国の人なので本物かは分かりません。こちらの手紙を渡していただければ分かるだろう、との事でしたが……」
差し出された手紙を受け取った学は、まずは裏返して封蝋を見た。
「……確かに、レビヤタンの印で間違いなさそうですね。いくつか残されていた古い文献を確認した時に見た覚えがあります。相手が『龍姫』かどうかは分かりませんが、それ相応の対応をしなければいけませんね」
新年早々不測の事態が起きた事にため息をつきたい気持ちが湧いてきたが、深く深呼吸をして抑え込んだ学は相手への対応について脳内でシミュレーションするのだった。
オールダムの首都の外壁の向こう側に一投のドラゴンが鎮座していた。その前には鎧を身に纏った人物が立っており、城門から出てきた馬車を真っすぐに見ていた。ドラゴンをぐるりと囲むように武装した兵士が取り囲んでいるが気にした様子もない。
馬車から降りた学は、まずはドラゴンを見上げた。タルガリア大陸の中でも飛ぶ事に特化したストームドラゴンである。
大きな翼に凸凹が少ない流線形の体が特長的なそのストームドラゴンは、鋭い眼差しで学を睥睨している。
学は視線をゆっくりとそのドラゴンから下に向けて、こちらの方を向いている人物に視線を向けた。
空を飛ぶために防寒のためか随分と着込んだその人物の素顔は兜で見えないが、学がある程度近づいて来たところでその兜を撮った。
露になったのは若々しい肌と艶やかな黒髪を持つ女性の顔だった。端正な顔立ちのその女性は、兜を小脇に抱え、初手で頭を下げた。
「急いでいたとはいえ許可も取らずに飛んできてしまい申し訳ない」
「……いえ、事情は把握していますし、事前に決めておいた約束を守って頂いているようなのでこちらから言う事はありません」
竜騎士を伝令に用いる場合は一頭のみドラゴンの入国を許可する、という約束事を他国と結んでいた学は、それ以上の謝罪は不要であると手で制した。
「ありがとうございます。我が国の王が『新年会』の報せを聞いて『すぐに向かうように』と命じたので馳せ参じました。リリス・レビヤタンです。以後お見知りおきを」
「オールダム国会議員議長を務めさせていただいております学と申します。遥々お越しいただいたのに申し訳ございませんが、武装した方は事前に許可がない限り入場は認めておりません。控室を用意いたしますので着替えていただけますか?」
「もちろんです。シルフィーはどこに待機させておけばいいでしょうか?」
「竜舎はないのでここで待つように指示してもらえますか?」
「分かりました。シルフィー、『待機』よ。寝てて頂戴」
リリスが指示するとストームドラゴンは寝るために丸まった。そして瞳を閉じてすぐに寝息を立て始める。
(これ以上借りは作らないように、と言われてるけど今回ばかりはエルフの力を貸してもらう必要があるかもしれないな)
そんな事を考えながら学はリリスを馬車の中へ招くのだった。
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