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第19話 葭ヶ谷亜里亜の屋敷にて
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生暖かい風か吹くと森全体が揺れているような音が聞こえ、まるで生命があるかのように感じる。
天空に輝く月から落ちる光が、眼下に見える屋敷を明るく照らしていた。
あの建物こそが、目的地である帝国貴族の葭ヶ谷家が所有している屋敷だ。
間口の広い2階建ての大邸宅の正面に広がっている庭園が、機械兵で埋めつくされ、その中央には黒鉄色の装甲を固めている5m級の機体が鎮座している。
その黒鉄色の装甲は、この地上世界に存在しないはずの『アダマンタイト』と呼ばれている金属で、『絶対回避』の効果が付与されている代物。
その話しを聞いた藍倫が震える声で、アダマンタイト攻略の是非について聞いてきた。
「三華月様。絶対回避って、絶対に物理攻撃が当たらないことなんですよね。」
「はい。そうです。」
「それって、やばくないですか?」
「やばいと言えばそうですが、でもまぁなんとかなるでしょう。」
「おおお。さすが三華月様。期待して大丈夫なんですか。」
「はい。安心して下さい。」
藍倫は大きく息を吐き、安堵した表情を浮かべた。
満月の夜に限っていうと、私の力は神域に達している。
そう。世界最強生物と言われるドラゴンさへも、今夜の私には遠くおよばない。
いずれ黒鉄色の機械兵を破壊することになるのだろうが、今は葭ヶ谷亜里亜の生存を確認する方が優先される。
藍倫も同じ認識をもっており、同行してきている死霊王へ、葭ヶ谷邸の状況について話しをしていた。
「黒マント。葭ヶ谷邸の庭が機械兵達に埋め尽くされているようだな。」
「はい。敷地外にいる数も加えると500機体ほどが駐留しております。」
「うむ。建物自体が荒らされていないようだが、不自然と思わんか。」
「機械兵は帝国を侵攻する意思を見せました。それはつまり機械兵は人類に宣戦布告をしたということ。藍倫様の指摘のとおり屋敷が綺麗な状態が保たれていることとは物事が整合していないと愚行します。」
「まだ、葭ヶ谷亜里亜は生きていると思うか?」
「はい。藍倫様。屋敷の建物内には6名の生存者を確認しました。その1人がその本人でないかと思われます。」
「なんだと。それが本当なら早く救助しなければならないじゃないか。」
藍倫が指摘したとおり、荒らされた様子のない建物の窓からは、人影が確認できていた。
1階の奥の部屋にいる女が、葭ヶ谷亜里亜なのだろう。
金色に輝く瞳で見えていた女の姿と、聞いていた亜里亜の容姿が合致する。
機械兵達に捕らえられているのでしょうか。
考えても仕方ないですし、とにかくここは葭ヶ谷亜里亜を保護することに致しましょう。
唸り続けている藍倫へ、屋敷内に潜入してくることを告げた。
「藍倫。これから屋敷内へ潜入侵入してきます。黒マントとここで待機していて下さい。」
◇
スキル『隠密』『瞬足』『跳躍』『未来視』を獲得している私にとって、斥候型の機体のみを注意しておけば屋敷内へ潜入することは難しくない。
視界にはその斥候系の機体は確認できない。
藍倫については、死霊王が付いていれば危険に陥ることはないだろう。
高台を下り、スキル『隠密』を発動させながら葭ヶ谷邸の門を潜ると、3m級の機械兵達が自由に動いているものの、私の存在には気が付いていない。
仮に気づかれたとしても、5m級の黒鉄色の機体以外は相手にもならないだろう。
何事もなく屋敷の玄関扉の前まで到達したところで、建物の中にいる何者かが私の気配に気づいたようだ。
玄関扉を隔てたホール内にいる侍と思われる者が、侵入者に備えている姿を視認した。
腰を落とし居合い抜きの構えをとっている。
それなりに出来る者が揃っているようだ。
玄関扉を少し開き、その開いた隙間に身を滑りこませ、音もなく扉を閉じた。
玄関ホール内は吹抜けになっている窓からの月灯りと魔道の灯りにより明るく照らされ、荒らされた様子もなく手入れがいき届いている。
奥の壁際には、腰を落とし鋭い眼光で睨みつけている居合抜きの構えを取っているタキシード姿をした年配の紳士がいた。
いつでも必殺の斬撃を撃ち放つ準備が出来ている。
タキシード姿をした年配の男が、私の姿を見て驚愕の表情を浮かべた。
「三条華月様!」
三条華月とは、三条家からもらった名前だ。
帝都では鬼可愛い最強の聖女くらいにしか思われていないようであるが、正面にいる紳士は、私が武神の家系の純血種として生まれたことを知っている。
私の姿を見た紳士が片膝を付いてこうべを下げると、音もなく姿を現したメイド服を着た女忍者も同じように片膝を床についてきた。
「大変無礼をしました。私は葭ヶ谷亜里亜様の執事をしている者で、名を武野里と言います。となりの者も私と一緒に亜里亜様へ仕えております。」
「亜里亜様の保護と機械兵達の掃討のために、ここへ来ました。」
「屋敷を取り囲んでいる全ての機械兵の掃討を、華月様が一人でされるつもりなのでしょうか。」
「はい。それくらいのことくらいはさせてもらうつもりです。」
「武神の家系において歴代最強だと聞いておりましたが、さすがです。」
「そうですね。鬼可愛最強説が正しければ、私が歴代最強で間違いありません。」
「え?」
何故かタキシード姿の紳士と、メイド服のクノイチが戸惑っている。
微妙な空気になってしまったが、まぁそれはさておきだな。
人類の敵である機械兵達に屋敷が囲まれているにもかかわらず、この屋敷が無事である事情について問おうとした時、玄関をノックする音が聞こえてきた。
外は機械兵達で埋め尽くされているはず。
誰がノックをしてきたのかしら。
年配の紳士がこちらに手のひらを見せながら静かに話し始めた。
「華月様。機械兵達が来ました。屋敷内に招き入れますので姿を隠してください。」
機械兵を屋敷内に招き入れるだと?
聞き間違いでしょうか。
人類の敵になってしまった機械兵を葭ヶ谷家は招き入れているって、どういうことなのでしょうか。
天空に輝く月から落ちる光が、眼下に見える屋敷を明るく照らしていた。
あの建物こそが、目的地である帝国貴族の葭ヶ谷家が所有している屋敷だ。
間口の広い2階建ての大邸宅の正面に広がっている庭園が、機械兵で埋めつくされ、その中央には黒鉄色の装甲を固めている5m級の機体が鎮座している。
その黒鉄色の装甲は、この地上世界に存在しないはずの『アダマンタイト』と呼ばれている金属で、『絶対回避』の効果が付与されている代物。
その話しを聞いた藍倫が震える声で、アダマンタイト攻略の是非について聞いてきた。
「三華月様。絶対回避って、絶対に物理攻撃が当たらないことなんですよね。」
「はい。そうです。」
「それって、やばくないですか?」
「やばいと言えばそうですが、でもまぁなんとかなるでしょう。」
「おおお。さすが三華月様。期待して大丈夫なんですか。」
「はい。安心して下さい。」
藍倫は大きく息を吐き、安堵した表情を浮かべた。
満月の夜に限っていうと、私の力は神域に達している。
そう。世界最強生物と言われるドラゴンさへも、今夜の私には遠くおよばない。
いずれ黒鉄色の機械兵を破壊することになるのだろうが、今は葭ヶ谷亜里亜の生存を確認する方が優先される。
藍倫も同じ認識をもっており、同行してきている死霊王へ、葭ヶ谷邸の状況について話しをしていた。
「黒マント。葭ヶ谷邸の庭が機械兵達に埋め尽くされているようだな。」
「はい。敷地外にいる数も加えると500機体ほどが駐留しております。」
「うむ。建物自体が荒らされていないようだが、不自然と思わんか。」
「機械兵は帝国を侵攻する意思を見せました。それはつまり機械兵は人類に宣戦布告をしたということ。藍倫様の指摘のとおり屋敷が綺麗な状態が保たれていることとは物事が整合していないと愚行します。」
「まだ、葭ヶ谷亜里亜は生きていると思うか?」
「はい。藍倫様。屋敷の建物内には6名の生存者を確認しました。その1人がその本人でないかと思われます。」
「なんだと。それが本当なら早く救助しなければならないじゃないか。」
藍倫が指摘したとおり、荒らされた様子のない建物の窓からは、人影が確認できていた。
1階の奥の部屋にいる女が、葭ヶ谷亜里亜なのだろう。
金色に輝く瞳で見えていた女の姿と、聞いていた亜里亜の容姿が合致する。
機械兵達に捕らえられているのでしょうか。
考えても仕方ないですし、とにかくここは葭ヶ谷亜里亜を保護することに致しましょう。
唸り続けている藍倫へ、屋敷内に潜入してくることを告げた。
「藍倫。これから屋敷内へ潜入侵入してきます。黒マントとここで待機していて下さい。」
◇
スキル『隠密』『瞬足』『跳躍』『未来視』を獲得している私にとって、斥候型の機体のみを注意しておけば屋敷内へ潜入することは難しくない。
視界にはその斥候系の機体は確認できない。
藍倫については、死霊王が付いていれば危険に陥ることはないだろう。
高台を下り、スキル『隠密』を発動させながら葭ヶ谷邸の門を潜ると、3m級の機械兵達が自由に動いているものの、私の存在には気が付いていない。
仮に気づかれたとしても、5m級の黒鉄色の機体以外は相手にもならないだろう。
何事もなく屋敷の玄関扉の前まで到達したところで、建物の中にいる何者かが私の気配に気づいたようだ。
玄関扉を隔てたホール内にいる侍と思われる者が、侵入者に備えている姿を視認した。
腰を落とし居合い抜きの構えをとっている。
それなりに出来る者が揃っているようだ。
玄関扉を少し開き、その開いた隙間に身を滑りこませ、音もなく扉を閉じた。
玄関ホール内は吹抜けになっている窓からの月灯りと魔道の灯りにより明るく照らされ、荒らされた様子もなく手入れがいき届いている。
奥の壁際には、腰を落とし鋭い眼光で睨みつけている居合抜きの構えを取っているタキシード姿をした年配の紳士がいた。
いつでも必殺の斬撃を撃ち放つ準備が出来ている。
タキシード姿をした年配の男が、私の姿を見て驚愕の表情を浮かべた。
「三条華月様!」
三条華月とは、三条家からもらった名前だ。
帝都では鬼可愛い最強の聖女くらいにしか思われていないようであるが、正面にいる紳士は、私が武神の家系の純血種として生まれたことを知っている。
私の姿を見た紳士が片膝を付いてこうべを下げると、音もなく姿を現したメイド服を着た女忍者も同じように片膝を床についてきた。
「大変無礼をしました。私は葭ヶ谷亜里亜様の執事をしている者で、名を武野里と言います。となりの者も私と一緒に亜里亜様へ仕えております。」
「亜里亜様の保護と機械兵達の掃討のために、ここへ来ました。」
「屋敷を取り囲んでいる全ての機械兵の掃討を、華月様が一人でされるつもりなのでしょうか。」
「はい。それくらいのことくらいはさせてもらうつもりです。」
「武神の家系において歴代最強だと聞いておりましたが、さすがです。」
「そうですね。鬼可愛最強説が正しければ、私が歴代最強で間違いありません。」
「え?」
何故かタキシード姿の紳士と、メイド服のクノイチが戸惑っている。
微妙な空気になってしまったが、まぁそれはさておきだな。
人類の敵である機械兵達に屋敷が囲まれているにもかかわらず、この屋敷が無事である事情について問おうとした時、玄関をノックする音が聞こえてきた。
外は機械兵達で埋め尽くされているはず。
誰がノックをしてきたのかしら。
年配の紳士がこちらに手のひらを見せながら静かに話し始めた。
「華月様。機械兵達が来ました。屋敷内に招き入れますので姿を隠してください。」
機械兵を屋敷内に招き入れるだと?
聞き間違いでしょうか。
人類の敵になってしまった機械兵を葭ヶ谷家は招き入れているって、どういうことなのでしょうか。
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