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第27話 いい仕事
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空には白銀の満月が輝いていた。
空気が少し冷たくなってきている。
森から自然の香りが流れ、風のなびく音が聞こえていた。
片手と両足を失った鋼色の小さな機械兵は、死んでいるかのように地面に横たわり動かないでいる。
5m級の黒鉄色の機体が消滅し、葭ヶ谷邸の庭園を埋めつくしている機械兵達は沈黙していた。
圧倒的な戦力差を見せつけられ退散するかと思いきや、何故逃げないのだろうか。
あまりの恐怖にチビって動けないでいるのかしら。
こちらとしては何ら問題ないし、ここにいてくれる方が都合がいい。
あなた達にも最後のイベントへ参加してもらおうと思います。
そう。黒鉄色の機体を処刑は完了したが、まだ私にはイベントが残っているのだ。
人類を滅ぼす力を機械兵に与えてしまった亜里亜を処刑しなければならない。
神託を降ろすためのそのシナリオも用意できている。
背後にて高笑いをしている藍倫へ、死霊王が不思議そうに質問をしている声が聞こえてきていた。
「不思議ですね。マスターであると思われる黒鉄色の機体が三華月様に破壊されたにもかかわらず、何故機械兵達はここから退いていかないのでしょうか。」
「黒マント。お前、そんな事も分からないのか。相当、勘が悪いな。」
「ということは、藍倫様には、機械兵達が逃げない理由が分かるのですか。」
「当然じゃ。機械兵達が散開しないのは新しくマスターになった機体を置いて逃げるわけにいかないからだろうが。」
「なるほど。黒鉄色の母親機械兵と親子関係にある、鋼色の子供機械兵が新しいマスターになるのが必然であり、新しいマスターを置いて逃げるわけにはいかないということなのですね。」
「そうじゃ。足元に転がっている鋼色の子供機械兵を回収しようにも、鬼の三華月様に近づくわけにはいかないからな。少し考えれば分かるものだろ。人は考えることをやめたらそこで終わりだぞ。」
なるほど。
機械兵達が岩のように動かない理由は、そういうことか。
その藍倫の推測には整合性があり、機械兵が逃げない理由は高確率で指摘した通りなのだろう。
それはそうと、死霊王と一緒に私もディスられている感覚がする。
その藍倫は、屋敷からこちらの様子を覗いている5人の使用人達に声をかけると、亜里亜の安否を確認するために死霊王と一緒に建物の奥へ消えていった。
私の方はせっかくですし、鋼色の子供機械兵が新しいマスターになったという仮説の検証をさせてもらいましょう。
足元でぼろ雑巾のような姿で横たわっている鋼色の子供機械兵に足を乗せ、少しずつ体重をかけていくと、全身に入っている亀裂がミシミシと音をたてている。
もう少しだけ力を入れると粉々に砕けてしまいそうだ。
残虐無比な聖女のその振る舞いを見ていた機械兵達は、こみ上げてくる怒りを必死に耐えようとしている様子が伺える。
この反応を見る限り、藍倫の予測どおり鋼色が新しいマスターであると考えていいだろう。
この死にかけの鋼色の子供機械兵には、まだ利用価値がある。
神託を降ろすための手伝いをしてもらわなければならないのだよ。
大人しく動かない機械兵達へ全員へ声が届くように力を込めて演説を開始した。
「機械兵の皆さん。鋼色の子供機械兵が死にかけていますが、これだけ破損してしまっていたら、もう駄目かもしれません。この半死半生の状態から救うには、この屋敷に住む者の『錬金』が必要なのではないでしょうか。」
機械兵達からの反応があった。
仲間同士で何かを確認し始めている。
鋼色の子供機械兵を治すためには、亜里亜の『錬金』技術が必要だと理解・認識してくれたようだ。
機械兵達が私の意図をくみ取ってくれたタイミングで、亜里亜が屋敷の中から藍倫に連れられて現れると、半死半生である状態となっている鋼色の子供機械兵が私に踏まれている様子を見て、悲鳴をあげた。
「キャァァァ、ハガネちゃん!」
想定どおりの反応をして頂き有難うございます。
藍倫は、不思議そうな顔をし状況を把握しようとし、死霊王は藍倫の背後に佇んでいる。
それでは、最後のイベントの幕を上げさせてもらいます。
力なく両膝を地面につけていた亜里亜へ視線を送った。
「亜里亜様には運命の選択をしてもらいます。人類を滅ぼそうとしていた機械兵を助けるか、それとも人として生きていく道を選ぶかの選択です。」
悲鳴をあげた亜里亜を正面から真っ直ぐ見つめ、低くとおる声で運命を決める二者択一の選択を求めた。
ただならぬ空気を感じ取った亜里亜が震えている。
もし鋼色の子供機械兵を助けようとして『錬金』を発動させてしまうと、亜里亜処刑の神託が降りてくるだろう。
完璧なシナリオだ。
亜里亜は必ず鋼色の子供機械兵を助けようとする。
想定外なことは絶対に起こりえない。
それでは、選択してください。
踏み付けていた鋼色の子供機械兵が死なないように、優しく亜里亜の方へ蹴り飛ばすと、カランコロンと壊れた人形のように転がっていく。
動けないでいた亜里亜は、悲鳴をあげながら鋼色の子供機械兵を抱きしめて機械兵達に向かいながら叫んだ。
「誰か、『錬金』をする素材を持って来て下さい!」
亜里亜の叫びに応じた機械兵達が、集めていた純金を差し出し始めている。
ここまではシナリオ通りだ。
———————そして想定したとおり亜里亜が『錬金』を発動させ始めた。
ついに辿りついたぞ。
殲滅することなく機械兵達を異世界から招きいれた私の苦労が報われる時がきた。
そして、神託が降りてくる寸前に信じられない事件が起きた。
「このバカちんがぁぁぁ」
錬金を開始し始めた亜里亜の頭を、藍倫が思いっきりしばいたのだ。
当然、亜里亜の『錬金』が中断される。
目の前で何が起きているのか、私の理解が追い付かない。
藍倫が立て続けに説教を開始している姿が見える。
「よく聞け、亜里亜。その鋼色はうちを殺そうとした極悪非道の機械兵なのじゃ!」
「しかし、ハガネちゃんだけが私の味方なのです。」
「このバカちんがぁぁ!お前の目は節穴か。後ろを見てみぃ。お前の味方はそこにおるじゃろぉがぁぁ!目を覚まさんかぁ!」
亜里亜が振り向いた先には、葭ヶ谷家の使用人である5人がいた。
藍倫の説教は続き、亜里亜をバカスカとしばいている。
亜里亜は泣き崩れていた。
5人の使用人は、藍倫のふるまいに感動している様子だ。
死霊王についてはその様子を見て「さすが聖女様です。」と呟いている。
藍倫については、こちらの視線を送りながら親指を突き立てて口パクをしていた。
『三、華、月、様、う、ち、い、い、仕、事、を、し、ま、し、た、よ。』
私は信じられないくらい長い息を吐いた。
既に神託が降りようとする気配は消えている。
藍倫は、煙草を吸い酒は飲む不良聖女ではあるが、教会の第1位になる日が案外早いのかもしれない。
だが、やる事全てが私のためにならない事ばかりだ。
藍倫、あなたは私にとって、やれやれな感じの聖女である。
空気が少し冷たくなってきている。
森から自然の香りが流れ、風のなびく音が聞こえていた。
片手と両足を失った鋼色の小さな機械兵は、死んでいるかのように地面に横たわり動かないでいる。
5m級の黒鉄色の機体が消滅し、葭ヶ谷邸の庭園を埋めつくしている機械兵達は沈黙していた。
圧倒的な戦力差を見せつけられ退散するかと思いきや、何故逃げないのだろうか。
あまりの恐怖にチビって動けないでいるのかしら。
こちらとしては何ら問題ないし、ここにいてくれる方が都合がいい。
あなた達にも最後のイベントへ参加してもらおうと思います。
そう。黒鉄色の機体を処刑は完了したが、まだ私にはイベントが残っているのだ。
人類を滅ぼす力を機械兵に与えてしまった亜里亜を処刑しなければならない。
神託を降ろすためのそのシナリオも用意できている。
背後にて高笑いをしている藍倫へ、死霊王が不思議そうに質問をしている声が聞こえてきていた。
「不思議ですね。マスターであると思われる黒鉄色の機体が三華月様に破壊されたにもかかわらず、何故機械兵達はここから退いていかないのでしょうか。」
「黒マント。お前、そんな事も分からないのか。相当、勘が悪いな。」
「ということは、藍倫様には、機械兵達が逃げない理由が分かるのですか。」
「当然じゃ。機械兵達が散開しないのは新しくマスターになった機体を置いて逃げるわけにいかないからだろうが。」
「なるほど。黒鉄色の母親機械兵と親子関係にある、鋼色の子供機械兵が新しいマスターになるのが必然であり、新しいマスターを置いて逃げるわけにはいかないということなのですね。」
「そうじゃ。足元に転がっている鋼色の子供機械兵を回収しようにも、鬼の三華月様に近づくわけにはいかないからな。少し考えれば分かるものだろ。人は考えることをやめたらそこで終わりだぞ。」
なるほど。
機械兵達が岩のように動かない理由は、そういうことか。
その藍倫の推測には整合性があり、機械兵が逃げない理由は高確率で指摘した通りなのだろう。
それはそうと、死霊王と一緒に私もディスられている感覚がする。
その藍倫は、屋敷からこちらの様子を覗いている5人の使用人達に声をかけると、亜里亜の安否を確認するために死霊王と一緒に建物の奥へ消えていった。
私の方はせっかくですし、鋼色の子供機械兵が新しいマスターになったという仮説の検証をさせてもらいましょう。
足元でぼろ雑巾のような姿で横たわっている鋼色の子供機械兵に足を乗せ、少しずつ体重をかけていくと、全身に入っている亀裂がミシミシと音をたてている。
もう少しだけ力を入れると粉々に砕けてしまいそうだ。
残虐無比な聖女のその振る舞いを見ていた機械兵達は、こみ上げてくる怒りを必死に耐えようとしている様子が伺える。
この反応を見る限り、藍倫の予測どおり鋼色が新しいマスターであると考えていいだろう。
この死にかけの鋼色の子供機械兵には、まだ利用価値がある。
神託を降ろすための手伝いをしてもらわなければならないのだよ。
大人しく動かない機械兵達へ全員へ声が届くように力を込めて演説を開始した。
「機械兵の皆さん。鋼色の子供機械兵が死にかけていますが、これだけ破損してしまっていたら、もう駄目かもしれません。この半死半生の状態から救うには、この屋敷に住む者の『錬金』が必要なのではないでしょうか。」
機械兵達からの反応があった。
仲間同士で何かを確認し始めている。
鋼色の子供機械兵を治すためには、亜里亜の『錬金』技術が必要だと理解・認識してくれたようだ。
機械兵達が私の意図をくみ取ってくれたタイミングで、亜里亜が屋敷の中から藍倫に連れられて現れると、半死半生である状態となっている鋼色の子供機械兵が私に踏まれている様子を見て、悲鳴をあげた。
「キャァァァ、ハガネちゃん!」
想定どおりの反応をして頂き有難うございます。
藍倫は、不思議そうな顔をし状況を把握しようとし、死霊王は藍倫の背後に佇んでいる。
それでは、最後のイベントの幕を上げさせてもらいます。
力なく両膝を地面につけていた亜里亜へ視線を送った。
「亜里亜様には運命の選択をしてもらいます。人類を滅ぼそうとしていた機械兵を助けるか、それとも人として生きていく道を選ぶかの選択です。」
悲鳴をあげた亜里亜を正面から真っ直ぐ見つめ、低くとおる声で運命を決める二者択一の選択を求めた。
ただならぬ空気を感じ取った亜里亜が震えている。
もし鋼色の子供機械兵を助けようとして『錬金』を発動させてしまうと、亜里亜処刑の神託が降りてくるだろう。
完璧なシナリオだ。
亜里亜は必ず鋼色の子供機械兵を助けようとする。
想定外なことは絶対に起こりえない。
それでは、選択してください。
踏み付けていた鋼色の子供機械兵が死なないように、優しく亜里亜の方へ蹴り飛ばすと、カランコロンと壊れた人形のように転がっていく。
動けないでいた亜里亜は、悲鳴をあげながら鋼色の子供機械兵を抱きしめて機械兵達に向かいながら叫んだ。
「誰か、『錬金』をする素材を持って来て下さい!」
亜里亜の叫びに応じた機械兵達が、集めていた純金を差し出し始めている。
ここまではシナリオ通りだ。
———————そして想定したとおり亜里亜が『錬金』を発動させ始めた。
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殲滅することなく機械兵達を異世界から招きいれた私の苦労が報われる時がきた。
そして、神託が降りてくる寸前に信じられない事件が起きた。
「このバカちんがぁぁぁ」
錬金を開始し始めた亜里亜の頭を、藍倫が思いっきりしばいたのだ。
当然、亜里亜の『錬金』が中断される。
目の前で何が起きているのか、私の理解が追い付かない。
藍倫が立て続けに説教を開始している姿が見える。
「よく聞け、亜里亜。その鋼色はうちを殺そうとした極悪非道の機械兵なのじゃ!」
「しかし、ハガネちゃんだけが私の味方なのです。」
「このバカちんがぁぁ!お前の目は節穴か。後ろを見てみぃ。お前の味方はそこにおるじゃろぉがぁぁ!目を覚まさんかぁ!」
亜里亜が振り向いた先には、葭ヶ谷家の使用人である5人がいた。
藍倫の説教は続き、亜里亜をバカスカとしばいている。
亜里亜は泣き崩れていた。
5人の使用人は、藍倫のふるまいに感動している様子だ。
死霊王についてはその様子を見て「さすが聖女様です。」と呟いている。
藍倫については、こちらの視線を送りながら親指を突き立てて口パクをしていた。
『三、華、月、様、う、ち、い、い、仕、事、を、し、ま、し、た、よ。』
私は信じられないくらい長い息を吐いた。
既に神託が降りようとする気配は消えている。
藍倫は、煙草を吸い酒は飲む不良聖女ではあるが、教会の第1位になる日が案外早いのかもしれない。
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