54 / 142
第54話 vsブラックドラゴン
しおりを挟む
幻影通りにある地下迷宮の最下層がトンネル状に真っすぐ伸びていた。
高くとられた天井の岩場から発せられた光により、迷宮内が明るく照らされている。
幅も30mほどはあり、集団戦を行うには十分な広さだ。
幻影通りにある迷宮には、魔物が出てくることはない。
そこは、世界に欠かせない物質を生み出してくれる精霊達の住処であるからだ。
私へ助けを求めてきた精霊は『ミスリル鉱石』を生み出しており、眼鏡女子の案内で最下層までやってきた時には、既に体の半分程度が消滅していた。
地上世界において最強生物と位置付けられている存在にかじり付かれ、体を食べられていたのだ。
その存在とは黒龍。
体長は1m程度。
暗黒の鱗が迷宮内から発せられ光に反射ささている。
このまま放置してしまうと、地上世界に生み出されるミスリルは消滅してしまうだろう。
ここで、クソ迷惑な黒龍は殺処分させてもらいます。
だが、月の加護が届かない迷宮内では、究極系のスキルを使用されてしまうと対応が出来ない。
そう。迷宮内で地上世界最強生物であるドラゴンの上位種である黒龍と戦うには分が悪いのが現実だ。
とはいうものの、黒龍を処刑する神託が降りてきたからには、命を落とすことになったとしても退くという選択肢は存在しない。
始めにやる作業は、精霊から黒龍を引き剥がすことになる。
戦闘を行うにしても、精霊を巻き込むわけにはいかないからな。
まずは鱗が薄く見えるその脇腹へ、思いっきり蹴りを入れてあげましょう。
体に刻まれている信仰心が輝き始めると、身体能力が跳ね上がっていく。
息を吐きながら腰を沈め、ひざにためをつくり、そして軸足に体重を乗せながら下半身を上半身で引っ張るように体を回転させた。
そして、鱗が薄い脇腹へ渾身の『後ろ回し蹴り』を叩きこんだ。
腹部が『グシャリ』と腹が凹み内臓を破壊した感覚が伝わってくる。
黒龍は、嗚咽をあげながら噛みついていた精霊から口を離すと地面をのたうちまわり始めた。
想定では『そんな蹴りなんぞ痛くも痒くも無いわ』と言われるものと思っていたが、まさか嗚咽を吐くとは。
もしかしてだが、この黒龍、結構弱いかもしれないという疑惑が生まれてきたぞ。
だが、蹴りにより凹んでいた黒龍の腹がみるみるうちに再生していく。
トカゲ特有の再生能力もなかなかなものだ。
ゲボゲボとむせ返りながら復活してくると、怒りの籠った瞳を向けてきた。
「弱者が強者である我を蹴るとはどういう事だ。我を誰だと思っているのだ!」
その俺様発言は、聞いたことがある。
私がまだ聖女になる前、教会にいた少しだけ地位が高いパワハラ司祭の口癖だった。
年下の言いやすいの者へ『俺はお前の上司だぞ。上司に対してその態度は何だ。』と言っていた。
他にも『お前のために言ってやっているんだぞ。』と言っていたかしら。
無駄に説教がながく『俺ならもっとできる。』というもの口癖だった。
黒龍が再びそのパワハラ司祭の口癖と同じ言葉を吐いてきた。
「お前がした今の行為は、我でなかったら激怒されているぞ。」
いやいやいや。今まさに激怒しているではないか。
大物である感を演出しているのだろうが、逆に小物であることはよく分かる。
なんと、薄っぺらな性格なのだろう。
あきれていると、勝手に怒りを急加速させてきた。
「おい人間、何か言え。黙っていたら許してもらえるなんて思うなよ。」
「ドラゴンにも駄目な奴がいるのだな、と思っておりました。」
「おい、今なんと言った?」
「器が限りなく小さいドラゴンで嫌われ者なのだろうな、と言いました。」
突然、スキル『未来視』が発動した。
――――――――――黒龍が『咆哮』を撃ってくる少し先の未来が見えたのだ。
咆哮とは雄叫びの事であり、通常は相手を威嚇するために使用されるものであるが、ドラゴンの咆哮は、全てを吹き飛ばす衝撃波である。
その一撃を受けてしまうと、私でさえも瞬殺されてしまうほど強烈だが、撃ってくる事か分かっていたら、対応は難しくない。
先程の後ろ回し蹴りとは比べ物にならないくらいの激痛をあじあわせてあげましょう。
運命の弓を召喚し、運命の矢をリロードする。
スキル『未来視』で見た映像のとおり、黒龍が『咆哮』を撃つために口を大きく開き始めた。
スキル『ロックオン』と、スキル『必殺』を発動する。
背筋を伸ばし、弓を引き絞っていく。
黒龍の口が開ききったところで、弓のエネルギーを解放させた。
――――――――――SHOOT
音速で走る矢が、咆哮を撃とうとして無防備に開いた黒龍の口に吸いこまれていくと、首を貫通して向こうの壁へ突き抜けた。
黒龍はというと、口から首を撃ち抜かれたという認識ができていないようで、まだ咆哮を撃とうとしている。
そして、咆哮では無く「ゲボゲボ」と嗚咽を吐き散らし始め、再び地面を転げ回り始めた。
この黒龍、相当な間抜けかもしれないぞ。
すると、撃ち抜いた傷が再生を始めている。
微妙に優秀さを感じるのだが、本当に地上世界最強生物の上位種なのかしら。
再び傷が回復した黒龍が、1m程度の体長である体を起こし、定番の流れのように怒鳴り散らしてきた。
「もう絶対に許さんぞ。何度かお前を諭そうとしたが俺の徒労に終わってしまったわ!」
いやいや、諭そうとしていないし、お前には諭してなんかいらないし。
自分に都合のよいように記憶を改ざんする能力者だな。
この黒龍は、生かしておいては駄目な類の奴だろう。
低い位置に設定されていそうな怒りの臨界点を越えてしまったようで、黒龍から凄まじい熱反応が伝わってくる。
とうとう本気にさせてしまった。
面白過ぎる黒龍と思い遊びすぎたというか、舐め切ってしまった。
さすがにヤバイ展開になってしまっている気がする。
「弱者の人間、お前は噛み殺してやる!」
――――――――――噛み殺すだと!
私を噛み殺すと言ったのか。
斜め740度をいく言葉が出てきたぞ。
黒龍を前にしても全く動じなかった私の心臓が、ここにきて波打ち始めだした。
自身が動揺していると分かる。
恐る恐ると、黒龍へ『噛み殺す』と宣言をした真意を質問してみた。
「黒龍さんに質問があります。伺ってもよろしいでしょうか。」
「なんだ。聞いてやる。」
「黒龍さんは、無限煉獄とか、永久凍結とか、雷神天槌といった究極系のスキルは使用されないのですか。」
「我はドラゴン種族最強の強度を誇る黒龍だ。そんなものは必要ない。」
凄まじい勢いで怒鳴り散らされてしまった。
究極系スキルが必要ないのは理解した。
知りたいのは、使用しないのか、使用出来ないかだ。
つまり、究極系スキルをあえて使用しないのか、そもそも使用出来ないのかを、はっきりとさせたいのだ。
「今一度確認させて下さい。黒龍さんは、私のような雑魚には究極系スキルを使う必要がないと思っているのですか。それとも、最強強度の黒龍さんにとって、究極系スキルは必要ないので獲得していないのでしょうか。」
「我は究極の強度を極める存在だ。そんなスキルなど、獲得する必要がないわ!」
そうか。究極系スキルを使用することが出来ないのか。
斜め740度を通りこして斜め1100度をいく返事が戻ってきた。
この黒龍、面白過ぎる存在だ。
これは笑いが止まらない。
笑い転げている姿に黒龍が怒気を強めてきた。
「弱者の人間、何故笑っている?」
「ドラゴンなのに究極系スキルが使えないから笑っているのです。硬いだけのドラゴンって、相当駄目な奴じゃないですか。それなのに、どうしてそんなに威張っているのかなと思いまして。」
「人間。お前のせいで人族が滅ぶ事になったぞ!」
黒龍は額に青筋を張らせ、目じりを吊り上げ、唇をひん曲げている。
この黒龍、クソ雑魚な上に相当馬鹿なようだな。
ここで処刑される事が確定したことが分かっていないようなので、現実というものを教えてあげましょう。
――――――私は『物干し竿』をリロードさせてもらいます。
空気が神気で重くなり始めていく。
徐々に世界から音が消え始め、世界の色があせていき、黒龍の姿も静止ししようとしている。
黒龍は『静止した時』の中では動くことが出来ない雑魚であったようだ。
時が静止した世界の中、地面から召喚されてきた『物干し竿』が少しずつ姿を現してきた。
26話で、満月の夜に絶対回避の効果を持つアダマンタイトで武装した黒鉄色の機械兵を仕留めた際に、月を周回させて戻ってきた全長10mの巨大な矢だ。
音がない世界の中、『物干し竿』が私の隣で旋回を始めると、黒龍に狙いをつけている。
そして徐々に音が戻り始め、セピア色の世界が色付いていく。
――――――――――時が動き始めた。
傲慢に吠えていた黒龍が、突然現れた『物干し竿』の存在に気が付くと、顔を強張らせ、敬語口調でおかしな質問をしてきた。
「聖女さんに私から質問をさせて下さい。その巨大な神気を帯びている棒は、もしかして、神槍なのでしょうか?」
「私は史上最強に鬼可愛い聖女ではありますが、さすがに神槍なんていう代物をリロードすることは出来ませんよ。」
「それでは、僕に照準を定めているそれは何なのですか?」
「これは26話で、月を周回し戻ってきてアダマンタイトを破壊した矢です。」
黒龍の声が震えている。
言葉遣いが丁寧になっているのは何故なのでしょうか。
月の加護を秘めている全長が10mほどの『物干し竿』は、リロードした運命の矢と『シンクロ』しており、引き絞って発射される矢と同じ軌道で走っていくのだ。
いつも通りに撃ち放てばいいのである。
くそ生意気だったブラックドラゴンが両手を合わせて頭を下げていた。
「生意気な事を言ってすいませんでした。命だけは助けて下さい。」
「私は今日の耳は日曜日なのです。」
「それは、どういう意味ですか?」
「古代文明の言葉で『聞こえていない』という意味ですよ。」
「いや、聞こえていますよね。僕の声はちゃんと聞こえているじゃないですか!」
それが、黒龍の最後の言葉であった。
―――――――――――SHOOT
黒龍は断末魔を上げる暇も無く完全消滅してしまった。
高くとられた天井の岩場から発せられた光により、迷宮内が明るく照らされている。
幅も30mほどはあり、集団戦を行うには十分な広さだ。
幻影通りにある迷宮には、魔物が出てくることはない。
そこは、世界に欠かせない物質を生み出してくれる精霊達の住処であるからだ。
私へ助けを求めてきた精霊は『ミスリル鉱石』を生み出しており、眼鏡女子の案内で最下層までやってきた時には、既に体の半分程度が消滅していた。
地上世界において最強生物と位置付けられている存在にかじり付かれ、体を食べられていたのだ。
その存在とは黒龍。
体長は1m程度。
暗黒の鱗が迷宮内から発せられ光に反射ささている。
このまま放置してしまうと、地上世界に生み出されるミスリルは消滅してしまうだろう。
ここで、クソ迷惑な黒龍は殺処分させてもらいます。
だが、月の加護が届かない迷宮内では、究極系のスキルを使用されてしまうと対応が出来ない。
そう。迷宮内で地上世界最強生物であるドラゴンの上位種である黒龍と戦うには分が悪いのが現実だ。
とはいうものの、黒龍を処刑する神託が降りてきたからには、命を落とすことになったとしても退くという選択肢は存在しない。
始めにやる作業は、精霊から黒龍を引き剥がすことになる。
戦闘を行うにしても、精霊を巻き込むわけにはいかないからな。
まずは鱗が薄く見えるその脇腹へ、思いっきり蹴りを入れてあげましょう。
体に刻まれている信仰心が輝き始めると、身体能力が跳ね上がっていく。
息を吐きながら腰を沈め、ひざにためをつくり、そして軸足に体重を乗せながら下半身を上半身で引っ張るように体を回転させた。
そして、鱗が薄い脇腹へ渾身の『後ろ回し蹴り』を叩きこんだ。
腹部が『グシャリ』と腹が凹み内臓を破壊した感覚が伝わってくる。
黒龍は、嗚咽をあげながら噛みついていた精霊から口を離すと地面をのたうちまわり始めた。
想定では『そんな蹴りなんぞ痛くも痒くも無いわ』と言われるものと思っていたが、まさか嗚咽を吐くとは。
もしかしてだが、この黒龍、結構弱いかもしれないという疑惑が生まれてきたぞ。
だが、蹴りにより凹んでいた黒龍の腹がみるみるうちに再生していく。
トカゲ特有の再生能力もなかなかなものだ。
ゲボゲボとむせ返りながら復活してくると、怒りの籠った瞳を向けてきた。
「弱者が強者である我を蹴るとはどういう事だ。我を誰だと思っているのだ!」
その俺様発言は、聞いたことがある。
私がまだ聖女になる前、教会にいた少しだけ地位が高いパワハラ司祭の口癖だった。
年下の言いやすいの者へ『俺はお前の上司だぞ。上司に対してその態度は何だ。』と言っていた。
他にも『お前のために言ってやっているんだぞ。』と言っていたかしら。
無駄に説教がながく『俺ならもっとできる。』というもの口癖だった。
黒龍が再びそのパワハラ司祭の口癖と同じ言葉を吐いてきた。
「お前がした今の行為は、我でなかったら激怒されているぞ。」
いやいやいや。今まさに激怒しているではないか。
大物である感を演出しているのだろうが、逆に小物であることはよく分かる。
なんと、薄っぺらな性格なのだろう。
あきれていると、勝手に怒りを急加速させてきた。
「おい人間、何か言え。黙っていたら許してもらえるなんて思うなよ。」
「ドラゴンにも駄目な奴がいるのだな、と思っておりました。」
「おい、今なんと言った?」
「器が限りなく小さいドラゴンで嫌われ者なのだろうな、と言いました。」
突然、スキル『未来視』が発動した。
――――――――――黒龍が『咆哮』を撃ってくる少し先の未来が見えたのだ。
咆哮とは雄叫びの事であり、通常は相手を威嚇するために使用されるものであるが、ドラゴンの咆哮は、全てを吹き飛ばす衝撃波である。
その一撃を受けてしまうと、私でさえも瞬殺されてしまうほど強烈だが、撃ってくる事か分かっていたら、対応は難しくない。
先程の後ろ回し蹴りとは比べ物にならないくらいの激痛をあじあわせてあげましょう。
運命の弓を召喚し、運命の矢をリロードする。
スキル『未来視』で見た映像のとおり、黒龍が『咆哮』を撃つために口を大きく開き始めた。
スキル『ロックオン』と、スキル『必殺』を発動する。
背筋を伸ばし、弓を引き絞っていく。
黒龍の口が開ききったところで、弓のエネルギーを解放させた。
――――――――――SHOOT
音速で走る矢が、咆哮を撃とうとして無防備に開いた黒龍の口に吸いこまれていくと、首を貫通して向こうの壁へ突き抜けた。
黒龍はというと、口から首を撃ち抜かれたという認識ができていないようで、まだ咆哮を撃とうとしている。
そして、咆哮では無く「ゲボゲボ」と嗚咽を吐き散らし始め、再び地面を転げ回り始めた。
この黒龍、相当な間抜けかもしれないぞ。
すると、撃ち抜いた傷が再生を始めている。
微妙に優秀さを感じるのだが、本当に地上世界最強生物の上位種なのかしら。
再び傷が回復した黒龍が、1m程度の体長である体を起こし、定番の流れのように怒鳴り散らしてきた。
「もう絶対に許さんぞ。何度かお前を諭そうとしたが俺の徒労に終わってしまったわ!」
いやいや、諭そうとしていないし、お前には諭してなんかいらないし。
自分に都合のよいように記憶を改ざんする能力者だな。
この黒龍は、生かしておいては駄目な類の奴だろう。
低い位置に設定されていそうな怒りの臨界点を越えてしまったようで、黒龍から凄まじい熱反応が伝わってくる。
とうとう本気にさせてしまった。
面白過ぎる黒龍と思い遊びすぎたというか、舐め切ってしまった。
さすがにヤバイ展開になってしまっている気がする。
「弱者の人間、お前は噛み殺してやる!」
――――――――――噛み殺すだと!
私を噛み殺すと言ったのか。
斜め740度をいく言葉が出てきたぞ。
黒龍を前にしても全く動じなかった私の心臓が、ここにきて波打ち始めだした。
自身が動揺していると分かる。
恐る恐ると、黒龍へ『噛み殺す』と宣言をした真意を質問してみた。
「黒龍さんに質問があります。伺ってもよろしいでしょうか。」
「なんだ。聞いてやる。」
「黒龍さんは、無限煉獄とか、永久凍結とか、雷神天槌といった究極系のスキルは使用されないのですか。」
「我はドラゴン種族最強の強度を誇る黒龍だ。そんなものは必要ない。」
凄まじい勢いで怒鳴り散らされてしまった。
究極系スキルが必要ないのは理解した。
知りたいのは、使用しないのか、使用出来ないかだ。
つまり、究極系スキルをあえて使用しないのか、そもそも使用出来ないのかを、はっきりとさせたいのだ。
「今一度確認させて下さい。黒龍さんは、私のような雑魚には究極系スキルを使う必要がないと思っているのですか。それとも、最強強度の黒龍さんにとって、究極系スキルは必要ないので獲得していないのでしょうか。」
「我は究極の強度を極める存在だ。そんなスキルなど、獲得する必要がないわ!」
そうか。究極系スキルを使用することが出来ないのか。
斜め740度を通りこして斜め1100度をいく返事が戻ってきた。
この黒龍、面白過ぎる存在だ。
これは笑いが止まらない。
笑い転げている姿に黒龍が怒気を強めてきた。
「弱者の人間、何故笑っている?」
「ドラゴンなのに究極系スキルが使えないから笑っているのです。硬いだけのドラゴンって、相当駄目な奴じゃないですか。それなのに、どうしてそんなに威張っているのかなと思いまして。」
「人間。お前のせいで人族が滅ぶ事になったぞ!」
黒龍は額に青筋を張らせ、目じりを吊り上げ、唇をひん曲げている。
この黒龍、クソ雑魚な上に相当馬鹿なようだな。
ここで処刑される事が確定したことが分かっていないようなので、現実というものを教えてあげましょう。
――――――私は『物干し竿』をリロードさせてもらいます。
空気が神気で重くなり始めていく。
徐々に世界から音が消え始め、世界の色があせていき、黒龍の姿も静止ししようとしている。
黒龍は『静止した時』の中では動くことが出来ない雑魚であったようだ。
時が静止した世界の中、地面から召喚されてきた『物干し竿』が少しずつ姿を現してきた。
26話で、満月の夜に絶対回避の効果を持つアダマンタイトで武装した黒鉄色の機械兵を仕留めた際に、月を周回させて戻ってきた全長10mの巨大な矢だ。
音がない世界の中、『物干し竿』が私の隣で旋回を始めると、黒龍に狙いをつけている。
そして徐々に音が戻り始め、セピア色の世界が色付いていく。
――――――――――時が動き始めた。
傲慢に吠えていた黒龍が、突然現れた『物干し竿』の存在に気が付くと、顔を強張らせ、敬語口調でおかしな質問をしてきた。
「聖女さんに私から質問をさせて下さい。その巨大な神気を帯びている棒は、もしかして、神槍なのでしょうか?」
「私は史上最強に鬼可愛い聖女ではありますが、さすがに神槍なんていう代物をリロードすることは出来ませんよ。」
「それでは、僕に照準を定めているそれは何なのですか?」
「これは26話で、月を周回し戻ってきてアダマンタイトを破壊した矢です。」
黒龍の声が震えている。
言葉遣いが丁寧になっているのは何故なのでしょうか。
月の加護を秘めている全長が10mほどの『物干し竿』は、リロードした運命の矢と『シンクロ』しており、引き絞って発射される矢と同じ軌道で走っていくのだ。
いつも通りに撃ち放てばいいのである。
くそ生意気だったブラックドラゴンが両手を合わせて頭を下げていた。
「生意気な事を言ってすいませんでした。命だけは助けて下さい。」
「私は今日の耳は日曜日なのです。」
「それは、どういう意味ですか?」
「古代文明の言葉で『聞こえていない』という意味ですよ。」
「いや、聞こえていますよね。僕の声はちゃんと聞こえているじゃないですか!」
それが、黒龍の最後の言葉であった。
―――――――――――SHOOT
黒龍は断末魔を上げる暇も無く完全消滅してしまった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
領民の幸福度がガチャポイント!? 借金まみれの辺境を立て直す【領地ガチャ】が最強すぎた!内政でUR「温泉郷」と「聖獣」を引き当てて…
namisan
ファンタジー
「役立たず」と中央から追放された没落貴族の俺、アルト・フォン・クライナー。継いだのは、借金まみれで作物も育たない見捨てられた辺境領地だけだった。
絶望する俺に発現したスキルは【領地ガチャ】。それは、領民の「幸福度」をポイントとして消費し、領地発展に必要なものを引き当てる唯一無二の能力だった。
「領民を幸せにすれば、領地も豊かになる!」
俺は領民と共に汗を流し、壊れた水路を直し、地道に幸福度を稼ぐ。
『N:ジャガイモの種』『R:土木技術書』
地味だが確実な「当たり」で、ほのぼのと領地を再建していく。
だが、ある日。溜め込んだ幸福度で引いたガチャが、俺の運命を激変させる。
『UR(ウルトラレア):万病に効く【奇跡の温泉郷】』
この「当たり」が、中央の腐敗した貴族たちの欲望を刺激した。
借金のカタに領地を狙う大商会の令嬢。
温泉利権を奪うため、父の命で派遣されてきた元婚約者の侯爵令嬢。
「領民の幸福(ガチャポイント)を脅かす者は、誰であっても許さない」
これは、ただ平穏に暮らしたかっただけの俺が、ガチャで得た力(と証拠とゴーレムと聖獣)を駆使し、ほのぼの領地を守り抜き、いつの間にか最強の領主として成り上がっていく物語。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる