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第55話 誘拐、快諾について
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大きなトンネル形状の迷宮に、気持ちいい風が吹いていた。
天井の岩地が迷宮内を昼間のように明るく照らし、臭気のような類はしない。
岩場の壁際には、体の半分程度を欠損してしまった精霊がぐったりとした姿となり横たわっていた。
この状態では、しばらくはミスリル鉱石を生み出す事は出来ないだろう。
精霊には『私の加護』を刻んでおきましょう。
異変があればすぐに知らせが私に届くはずだ。
しばらく体を休めていてください。
最強種と言われる黒龍の処刑を完了した。
月の加護が届かない迷宮内で黒滝と戦闘する流れとなり、死を覚悟したものの、態度が悪いただのクソ雑魚のであった。
どの種族にも駄目な者がいるものだ。
◇
幻影通りへ戻ると、住人であるドワーフ達が黒龍討伐の宴会を昼間から開始していた。
既に12時間を経過しており、日付がちょうど変わったところである。
空からは星明かりが落ち、気持ちいい風が吹いている。
宴会の主役である私は、酒場の端っこにあるデーブル席に1人で座っていた。
石畳の道路では、深夜にもかかわらず酔っ払い達が騒いでいる姿が見える。
酒場の中では、この店の大将もみんなと一緒になって酒をがぶがぶ飲んでおり、眼鏡女子の月姫が1人で調理を行い、お客さんに料理を出していた。
迷宮最奥まで最短距離となる地獄ルートを何事もなく選択し、躊躇なく進んでいたのだが、何気に凄い少女なのかもしれない。
その酒場の一角では、四十九が同年代の少年・少女達に囲まれており、私の武勇伝を話している姿がある。
その四十九の話を聞いていた少年・少女達は、目をキラキラさせていたのであるが、徐々に濁ったものに変化していた。
どうせ四十九のことだ。またろくでもないことを話しているのだろう。
空が明るくなり始める時間が近づいている頃、酒場にいた少年少女達は家に帰り、親父達は泥酔し、床や路上で寝ていた。
騒がしかった声も既に静かになっている。
四十九へアイコンタクトを送りながら席を立ちあがり、酒場の外へ出ると、泥酔した男達が野垂れ死にをしているかのように道路に転がっていた。
この幻影通りに留まる理由もなくなってしまったことですし、そろそろここから退出することにしましょう。
路面に転がっている親父達を踏まないように、街の外に待たしている機械人形の元へ足を進めていくと、四十九の後ろに眼鏡女子が続いてきていた。
四十九にはまだ空が暗いうちに『幻影通り』から出発する話しを事前にしていたが、月姫が付いてきているのは、見送りでもしてくれるのだろうか。
風が吹き枝葉が揺れる音が聞こえてくる中、歩みを進めていくと、砂漠の都市から幻影通りまで移動手段として使用していた馬車の姿があった。
馬車を引いてくれる機械人形へ簡単に挨拶をすると、当然のような感じで四十九と月姫が客室へ乗り込もうとする姿が見える。
何故、眼鏡女子も馬車へ乗ろうとしているのかしら。
そこでようやく四十九が、客室へ乗り込みながら月姫と一緒にいる理由を話し始めた。
「三華月様。報告、ある。月姫、家出。」
「家出だと!」
「最後まで、話し聞く。月姫、家出、違う。」
完全に私をからかっておるな。
四十九は、私の疑問を察したような感じでポンと両手を叩いた。
また、ろくでもないことを言うつもりだろうと用意に予想できる。
案の定、わけのわからない事を口にしてきた。
「アタシ。月姫、誘拐した。」
「誘拐は犯罪ですよ。早く本当の理由を教えてください。」
「三華月様。乗りツッコミ、大事。」
もう、いいって。
早く眼鏡女子がここにいる理由を言ってくれよ。
そこでようやく、四十九の背後にいた月姫が黙っていることに辛抱が出来なくなった様子で、一緒にいる理由を説明し始めてきた。
「三華月様。私からお話しさせてもらいます。四十九から一緒に旅をしようと誘われたんです。」
「泥酔状態で、安眠中の、酒場のマスター。月姫の旅、快く快諾。」
「もう、四十九。三華月様をからかったら駄目じゃない。ちゃんと手紙を残してきました。私は元々、この幻影通りの住民ではなかったのです。旅に出ても問題ありません。」
そもそも安眠中である者に、快諾できるような判断能力はないだろ。
とにかく、合意の上の行動ということで安心しました。
それにしても、月姫と四十九がじゃれ合っているように見えるのだが、いつの間に仲良くなったのだろうか。
それから、勇者候補の少年・少女達が私の旅に同行したいと殺到していたと記憶しているが、彼等はどうしたのでしょうか。
四十九が、呪いの言葉でも吐いたのかしら。
気がつくと月姫が何か言いたげな様子で小さく手を上げていた。
「三華月様。四十九から誘われて付いて来たのですが、私などが旅に同行したら、足でまといになってしまいませんか。」
「足でまといにはなるでしょう。ですが同行してもらっても構いませんよ。」
「月姫。アタシと一緒に、魔界、行く。」
四十九を故郷へ帰すべく要塞都市から魔界へ入る予定ではあるが、月姫は一緒に魔界まで行くつもりなのか。
自己再生スキルを獲得している私は問題ないが、地上世界の者は魔神の加護が無ければ魔界では生きていけない。
つまり眼鏡女子が魔界にいくためには、魔神の加護を受ける必要がある。
夜空を見上げて輝く星達の位置を確認しながら、世界の記憶『アーカイブ』を開いた。
近くに魔神の教会の廃墟がある。
せっかくなので、ここに立ち寄ってみようかしら。
天井の岩地が迷宮内を昼間のように明るく照らし、臭気のような類はしない。
岩場の壁際には、体の半分程度を欠損してしまった精霊がぐったりとした姿となり横たわっていた。
この状態では、しばらくはミスリル鉱石を生み出す事は出来ないだろう。
精霊には『私の加護』を刻んでおきましょう。
異変があればすぐに知らせが私に届くはずだ。
しばらく体を休めていてください。
最強種と言われる黒龍の処刑を完了した。
月の加護が届かない迷宮内で黒滝と戦闘する流れとなり、死を覚悟したものの、態度が悪いただのクソ雑魚のであった。
どの種族にも駄目な者がいるものだ。
◇
幻影通りへ戻ると、住人であるドワーフ達が黒龍討伐の宴会を昼間から開始していた。
既に12時間を経過しており、日付がちょうど変わったところである。
空からは星明かりが落ち、気持ちいい風が吹いている。
宴会の主役である私は、酒場の端っこにあるデーブル席に1人で座っていた。
石畳の道路では、深夜にもかかわらず酔っ払い達が騒いでいる姿が見える。
酒場の中では、この店の大将もみんなと一緒になって酒をがぶがぶ飲んでおり、眼鏡女子の月姫が1人で調理を行い、お客さんに料理を出していた。
迷宮最奥まで最短距離となる地獄ルートを何事もなく選択し、躊躇なく進んでいたのだが、何気に凄い少女なのかもしれない。
その酒場の一角では、四十九が同年代の少年・少女達に囲まれており、私の武勇伝を話している姿がある。
その四十九の話を聞いていた少年・少女達は、目をキラキラさせていたのであるが、徐々に濁ったものに変化していた。
どうせ四十九のことだ。またろくでもないことを話しているのだろう。
空が明るくなり始める時間が近づいている頃、酒場にいた少年少女達は家に帰り、親父達は泥酔し、床や路上で寝ていた。
騒がしかった声も既に静かになっている。
四十九へアイコンタクトを送りながら席を立ちあがり、酒場の外へ出ると、泥酔した男達が野垂れ死にをしているかのように道路に転がっていた。
この幻影通りに留まる理由もなくなってしまったことですし、そろそろここから退出することにしましょう。
路面に転がっている親父達を踏まないように、街の外に待たしている機械人形の元へ足を進めていくと、四十九の後ろに眼鏡女子が続いてきていた。
四十九にはまだ空が暗いうちに『幻影通り』から出発する話しを事前にしていたが、月姫が付いてきているのは、見送りでもしてくれるのだろうか。
風が吹き枝葉が揺れる音が聞こえてくる中、歩みを進めていくと、砂漠の都市から幻影通りまで移動手段として使用していた馬車の姿があった。
馬車を引いてくれる機械人形へ簡単に挨拶をすると、当然のような感じで四十九と月姫が客室へ乗り込もうとする姿が見える。
何故、眼鏡女子も馬車へ乗ろうとしているのかしら。
そこでようやく四十九が、客室へ乗り込みながら月姫と一緒にいる理由を話し始めた。
「三華月様。報告、ある。月姫、家出。」
「家出だと!」
「最後まで、話し聞く。月姫、家出、違う。」
完全に私をからかっておるな。
四十九は、私の疑問を察したような感じでポンと両手を叩いた。
また、ろくでもないことを言うつもりだろうと用意に予想できる。
案の定、わけのわからない事を口にしてきた。
「アタシ。月姫、誘拐した。」
「誘拐は犯罪ですよ。早く本当の理由を教えてください。」
「三華月様。乗りツッコミ、大事。」
もう、いいって。
早く眼鏡女子がここにいる理由を言ってくれよ。
そこでようやく、四十九の背後にいた月姫が黙っていることに辛抱が出来なくなった様子で、一緒にいる理由を説明し始めてきた。
「三華月様。私からお話しさせてもらいます。四十九から一緒に旅をしようと誘われたんです。」
「泥酔状態で、安眠中の、酒場のマスター。月姫の旅、快く快諾。」
「もう、四十九。三華月様をからかったら駄目じゃない。ちゃんと手紙を残してきました。私は元々、この幻影通りの住民ではなかったのです。旅に出ても問題ありません。」
そもそも安眠中である者に、快諾できるような判断能力はないだろ。
とにかく、合意の上の行動ということで安心しました。
それにしても、月姫と四十九がじゃれ合っているように見えるのだが、いつの間に仲良くなったのだろうか。
それから、勇者候補の少年・少女達が私の旅に同行したいと殺到していたと記憶しているが、彼等はどうしたのでしょうか。
四十九が、呪いの言葉でも吐いたのかしら。
気がつくと月姫が何か言いたげな様子で小さく手を上げていた。
「三華月様。四十九から誘われて付いて来たのですが、私などが旅に同行したら、足でまといになってしまいませんか。」
「足でまといにはなるでしょう。ですが同行してもらっても構いませんよ。」
「月姫。アタシと一緒に、魔界、行く。」
四十九を故郷へ帰すべく要塞都市から魔界へ入る予定ではあるが、月姫は一緒に魔界まで行くつもりなのか。
自己再生スキルを獲得している私は問題ないが、地上世界の者は魔神の加護が無ければ魔界では生きていけない。
つまり眼鏡女子が魔界にいくためには、魔神の加護を受ける必要がある。
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