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第79話 デフレスパイラル
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海からの風が肌に当たり心地よく感じる。
次元列車へ乗車してから6時間ほど経過し、乗客席より見える景色が、白銀の氷雪地帯から穏やかな海域に変わっていた。
全方位360度には海が広がり、東の水平線から昇り始めた太陽が静かに揺れる波にキラキラと反射している。
海鳥が獲物を捕獲するために滑空をしている姿が見えていた。
1両編成の次元列車は、海上の現れてくるレールの上を時速20kmの速度で走り、規則正しいリズムで揺れている。
目的地はS王国。
神託に従い、佐藤翔の横暴を止めるために向かっているところだ。
全長12mの車内には、球体の姿をした立体フォログラム映像が回転し、衛星から送られてきたリアルタイムの情報が物凄い速度で流れていた。
とにかく今は、佐藤翔がいるS王国の状況を獲得したい。
「次元列車さん。リアルタイムで流れてくる情報についてお願いがあります。」
「また私にお願いですか。前にも言いましたように、三華月様だけを特別扱いしてしまうと、他の乗客に対し示しがつきません。ご理解願います。」
「同じ費用を払った乗客には、同じサービスを提供しなければならないことは理解できます。ですが、次元列車さんが言われるところの乗客なんて、私以外にいないではないですか。」
「三華月様。乗客が他にいないからといって、特別扱いは出来ません。過去に利用して下さった乗客の事を考えますと、そのお願いは受け入れることは出来ないのです!」
「今の話し。おかしくないですか?」
「な。何がおかしいのですか。」
「次元列車さんの運行履歴を確認したところ、私は最初の乗客です。過去に利用した者はいないはず。」
「ぼ、僕の運行履歴を見たのですか!」
「はい。拝見しました。そんなことよりも、運行履歴のとおり過去に利用した乗客がいなかったのか、そこをハッキリさせましょう。」
「…。」
次元列車が黙り込んでしまった。
履歴によると、数万年もの間、次元列車は死の世界と言われる氷雪地帯から動くことなく停車していたのだ。
AIの引きこもりみたいな存在だったようだ。
図らずもマウントを取るような行為をしてしまい、気まずい空気にさせてしまった。
気にしても仕方ないし、勝手に話しを進めさせてもらいましょう。
「次元列車さんへのお願いというのは、まず衛星から入ってくる情報のうち、S王国だけのものに選別してもらえないでしょうか。」
「まぁそれくらいのサービスでしたら、対応させてもらいます。」
「有難うございます。もう一つ。獲得した情報を、私の脳内へ直接お送り願います。」
「可能ではありますが、それをしてしまいますと、三華月様に莫大な負荷がかかってしまいます。よろしいのでしょうか。」
「構いません。よろしくお願いします。」
視覚的要素だけでは津波のような勢いで流れてくる情報を拾いきれない。
そして、脳内へ情報を送り込む行為は慣れている。
世界の記憶アーカイブを展開させた際にいつもしていることなのだ。
怒涛の勢いで情報が頭の中へ流れ込んできた。
S王国では現在『歴史的なデフレ』が起きている。
デフレとは、デフレーションの略称で、物価が全体的に下がり紙幣価値が上昇し、その結果、物が売れにくくなり不景気となる状態のこと。
安価の装備品やアイテムが市場に大量供給されており、大幅な値崩れを引き起こしていた。
王国内の商業ギルドは倒産し、更に国内での金貨が回らなくなってきている。
深刻なデフレスパイラルにより失業者の数が増加し続けて、歴史的な不景気に突入しているところだ。
「次元列車さん。デフレを引き起こした原因となっている装備品とアイテムが、市場へ過剰供給されている原因について、分かるのなら教えてもらえませんか。」
「その原因をつくっているのは佐藤翔であるようです。」
私の問いに対して次元列車が予想の範囲で答えてきた。
処刑対象者の佐藤翔が獲得したチートスキルにより、安価な装備品を市場へ大量供給しているのかしら。
迷宮主からのコア以外は、地上世界へ持ち出すと消滅してしまう。
獲得した情報を元にした推測であるが、佐藤翔はチートスキルの効果により、迷宮内のドロップ品を地上世界へ持ち出しているのかもしれない。
神託によると、異界の教徒の操り人形となっている佐藤翔は、まもなくすると莫大に得た利益を国民達へ分配し始めていく。
激しいインフレに生活苦に陥っていた国民を誘導し、佐藤翔は英雄的な存在となり、S国王を倒す象徴となるのだ。
神託が降りてきているからには、これ以上の被害を広げてはならない。
おもいを巡らせていると不意に次元列車が質問をしてきた。
「三華月様は、これからS王国で起きている混乱を、沈めるつもりなのでしょうか?」
「はい。神託に従い、混乱を鎮静化させようと思います。」
「もしかして、混乱の原因となっている佐藤翔を処分するつもりなのですか?」
「はい。出来るだけ早く処刑させてもらいます。」
「処刑ですか。処刑って、乱暴すぎませんか。佐藤翔にも事情があるかと愚考します。」
「既にS王国では佐藤翔の行動により、多くの者が職を失っております。それが無自覚だったとしても大罪であることは変わりありません。」
「駄目人間が脳略を得て、少しはしゃいでいるだけのことではないですか!」
次元列車からの口調が強い。
感情の起伏が激しいAIだ。
見解の相違かもしれないが、少しはしゃいでいるというものではないだろ。
次元列車内に映しだされている立体フォログラム映像に、お腹がタプタプしている青年が映っていた。
その青年こそが佐藤翔である。
可愛らしい幼女と楽しそうに歩いているが、もしかして幼女達に悪戯をしようとしているのかしら。
何にしても、今すぐに処刑した方がよさそうだ。
現地点からS王国までの距離は約2000km。
ここから佐藤翔を天空から狙撃した場合、着弾時間は約10分。
『未来視』の効果にて10分後の姿を見ることができる私からすると、狙撃するぶんには問題ない。
ここから佐藤翔を狙い撃たせてもらいます。
次元列車へ乗車してから6時間ほど経過し、乗客席より見える景色が、白銀の氷雪地帯から穏やかな海域に変わっていた。
全方位360度には海が広がり、東の水平線から昇り始めた太陽が静かに揺れる波にキラキラと反射している。
海鳥が獲物を捕獲するために滑空をしている姿が見えていた。
1両編成の次元列車は、海上の現れてくるレールの上を時速20kmの速度で走り、規則正しいリズムで揺れている。
目的地はS王国。
神託に従い、佐藤翔の横暴を止めるために向かっているところだ。
全長12mの車内には、球体の姿をした立体フォログラム映像が回転し、衛星から送られてきたリアルタイムの情報が物凄い速度で流れていた。
とにかく今は、佐藤翔がいるS王国の状況を獲得したい。
「次元列車さん。リアルタイムで流れてくる情報についてお願いがあります。」
「また私にお願いですか。前にも言いましたように、三華月様だけを特別扱いしてしまうと、他の乗客に対し示しがつきません。ご理解願います。」
「同じ費用を払った乗客には、同じサービスを提供しなければならないことは理解できます。ですが、次元列車さんが言われるところの乗客なんて、私以外にいないではないですか。」
「三華月様。乗客が他にいないからといって、特別扱いは出来ません。過去に利用して下さった乗客の事を考えますと、そのお願いは受け入れることは出来ないのです!」
「今の話し。おかしくないですか?」
「な。何がおかしいのですか。」
「次元列車さんの運行履歴を確認したところ、私は最初の乗客です。過去に利用した者はいないはず。」
「ぼ、僕の運行履歴を見たのですか!」
「はい。拝見しました。そんなことよりも、運行履歴のとおり過去に利用した乗客がいなかったのか、そこをハッキリさせましょう。」
「…。」
次元列車が黙り込んでしまった。
履歴によると、数万年もの間、次元列車は死の世界と言われる氷雪地帯から動くことなく停車していたのだ。
AIの引きこもりみたいな存在だったようだ。
図らずもマウントを取るような行為をしてしまい、気まずい空気にさせてしまった。
気にしても仕方ないし、勝手に話しを進めさせてもらいましょう。
「次元列車さんへのお願いというのは、まず衛星から入ってくる情報のうち、S王国だけのものに選別してもらえないでしょうか。」
「まぁそれくらいのサービスでしたら、対応させてもらいます。」
「有難うございます。もう一つ。獲得した情報を、私の脳内へ直接お送り願います。」
「可能ではありますが、それをしてしまいますと、三華月様に莫大な負荷がかかってしまいます。よろしいのでしょうか。」
「構いません。よろしくお願いします。」
視覚的要素だけでは津波のような勢いで流れてくる情報を拾いきれない。
そして、脳内へ情報を送り込む行為は慣れている。
世界の記憶アーカイブを展開させた際にいつもしていることなのだ。
怒涛の勢いで情報が頭の中へ流れ込んできた。
S王国では現在『歴史的なデフレ』が起きている。
デフレとは、デフレーションの略称で、物価が全体的に下がり紙幣価値が上昇し、その結果、物が売れにくくなり不景気となる状態のこと。
安価の装備品やアイテムが市場に大量供給されており、大幅な値崩れを引き起こしていた。
王国内の商業ギルドは倒産し、更に国内での金貨が回らなくなってきている。
深刻なデフレスパイラルにより失業者の数が増加し続けて、歴史的な不景気に突入しているところだ。
「次元列車さん。デフレを引き起こした原因となっている装備品とアイテムが、市場へ過剰供給されている原因について、分かるのなら教えてもらえませんか。」
「その原因をつくっているのは佐藤翔であるようです。」
私の問いに対して次元列車が予想の範囲で答えてきた。
処刑対象者の佐藤翔が獲得したチートスキルにより、安価な装備品を市場へ大量供給しているのかしら。
迷宮主からのコア以外は、地上世界へ持ち出すと消滅してしまう。
獲得した情報を元にした推測であるが、佐藤翔はチートスキルの効果により、迷宮内のドロップ品を地上世界へ持ち出しているのかもしれない。
神託によると、異界の教徒の操り人形となっている佐藤翔は、まもなくすると莫大に得た利益を国民達へ分配し始めていく。
激しいインフレに生活苦に陥っていた国民を誘導し、佐藤翔は英雄的な存在となり、S国王を倒す象徴となるのだ。
神託が降りてきているからには、これ以上の被害を広げてはならない。
おもいを巡らせていると不意に次元列車が質問をしてきた。
「三華月様は、これからS王国で起きている混乱を、沈めるつもりなのでしょうか?」
「はい。神託に従い、混乱を鎮静化させようと思います。」
「もしかして、混乱の原因となっている佐藤翔を処分するつもりなのですか?」
「はい。出来るだけ早く処刑させてもらいます。」
「処刑ですか。処刑って、乱暴すぎませんか。佐藤翔にも事情があるかと愚考します。」
「既にS王国では佐藤翔の行動により、多くの者が職を失っております。それが無自覚だったとしても大罪であることは変わりありません。」
「駄目人間が脳略を得て、少しはしゃいでいるだけのことではないですか!」
次元列車からの口調が強い。
感情の起伏が激しいAIだ。
見解の相違かもしれないが、少しはしゃいでいるというものではないだろ。
次元列車内に映しだされている立体フォログラム映像に、お腹がタプタプしている青年が映っていた。
その青年こそが佐藤翔である。
可愛らしい幼女と楽しそうに歩いているが、もしかして幼女達に悪戯をしようとしているのかしら。
何にしても、今すぐに処刑した方がよさそうだ。
現地点からS王国までの距離は約2000km。
ここから佐藤翔を天空から狙撃した場合、着弾時間は約10分。
『未来視』の効果にて10分後の姿を見ることができる私からすると、狙撃するぶんには問題ない。
ここから佐藤翔を狙い撃たせてもらいます。
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