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第111話 3倍返し
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空を覆う暗黒色の雲が低い位置に見え、細い雨が落ちてきている。
生暖かい風が吹き、陸地が存在しないラグナロク領域の海が荒れ狂っていた。
その景色はまさに時刻絵図。
ところどころで凶悪な渦潮が発生しており、旗艦ポラリスは大きく揺らされ甲板には海水が洪水のようになだれ込んできていた。
海が荒れる原因はヨムンガルド。
全長400kmある伝説の蛇だ。
その元凶ともよべる存在を海底へ戻すため、8km先に先行し地上世界へ向かい航行していた軍船のエンジン部分を撃ち抜いた。
ペンギンが造り出した立体フォログラムには、木目模様をした流線形の装甲に穴が空いている映像が映っている。
旗艦ポラリスについては一時的にコントロールを失い高波に攫われてしまったものの、ペンギンが風力と流れから演算し、空中で側転宙返りさせ海面へ着水させた。
「さすが伝説の波乗りペンギンと言われているだけのことはあります。お見事です。」
これでヨムンガルドが海底に戻ってくれたら御の字といえるだろう。
荒れ狂う海へ落とされないように甲板の手摺りに掴まり、もう一方の空いている手で抱きかかえていたペンギンを見ると、表情を曇らせている。
どうやらご機嫌が斜めのようだ。
「三華月様。ポラリスが深刻は状態に陥っております。」
「深刻な状態ですか。」
「はい。どこかの聖女様が余計のことをしてしまった為、船体に大きなダメージを受けてしまいました」
「大きなダメージとは、どれくらいなものなのでしょう。」
「はい。そうながくは持ちこたえられないくらいのダメージです。」
「つまり、ポラリスはもうまもなく沈没すると言っているのでしょうか。」
「はい。重要な言葉なのでもう一度言いますが、どこかの聖女が余計なことをしたせいです。」
「まぁまぁ。終わったことを悔やんでも仕方がないではありませんか。ここは前向きに物事をかんがえましょう。」
「三華月様。後悔しても仕方がないという言葉は、やらかした張本人がする発言では無く、やらかされて迷惑を被った者が、反省して落ち込んでいる者に対してかける言葉です。」
「ペンギンさん。それは、私が反省し落ち込んでいる姿に見えないということですか。」
「はい。見えません。ついでにもう一つ、三華月様へ言わせてもらいますと、前向きに物事を考えることと、事実を見ないように目を背けることとは、大きく意味合いが異なります。」
「まぁまぁ。事実と向き合うのはペンギンさんにお任せします。」
「やれやれです。承知しました。確かに前向きにものを考えていくべき状況であるという考えについては肯定します。」
「さすがペンギンさんです。切り替えが早い。この失敗を次にどう活かすかが大事です。ここから挽回していきましょう。」
「挽回ですか。」
「ポラリスが水没しなければ何も問題ないじゃないですか。結果良ければ全てよしです。」
「三華月様。結果良ければ全てよしとは、良い結果が出た後に言う言葉であり、いま言う言葉ではありませんよ。」
「…。とにかく、この難局を、力を合わせて乗り切りましょう。」
「確かに今は物事を反省するよりも行動するべき状況であるという意見には同意します。」
「それでは改めて、ヨムンガルドの動向について教えてください。」
「三華月様が軍船のエンジン部分を撃ち抜いた結果、推測したとおりヨムンガルドは海底へ戻り始めてくれているようです。」
「とはいうものの、しばらく海は荒れ狂っている状態が続くわけですね。」
「はい。このまま何も策を講じなければ、ポラリスはまもなく海に沈んでしまいます。」
「ヨムンガルドが海底に戻り始めてくれている事は何よりですが、予断を許さない危険な状況が続いていると、理解認識させてもらいました。」
「ここは、緋色のスキル『フロート』の効果にて難局を乗り切るべきかと考えます。」
「なるほど。ポラリスが沈んでしまう前に、全ての物を海に浮かす事が出来る緋色のスキル『フロート』の効果が、今のポラリスに必要となるということなのですか。」
「これより旗艦ポラリスは、8km先で航行不能となっている軍船に向かって、前進を開始します。」
エンジンを破壊されて航行不能な状態になっている軍船から、漂流者達を助けなければならない。
そう。漂流者達を助けたついでに緋色のスキル『フロート』の効果でポラリスが沈没しないようにしてもらうスキームだ。
その距離は8km。
ポラリスは、直径が3km規模ほどの渦潮へ近づいていた。
渦潮へ引きずりこまれようとしているのだ。
指揮棒を振るいながら器用に風を捕らえているペンギンが、その渦潮を指さして準備を促してきた。
「三華月様。これよりポラリスはあの渦潮のモーメント力を利用して、軍船へ接近しようと思います。海へ振り落とされないように準備をしてください。」
「ダメージを負っているポラリスへ、負荷のかかる事をさせても大丈夫なのでしょうか。」
「はい。負荷はかかりますが、私なら問題なく渦潮を乗り切ることが出来ます。」
「ペンギンさん。よろしくお願いします。」
「無事に三華月様を軍船までエスコートさせてもらいます。」
性格は駄目だが、頼りになるペンギンだ。
私がやるべきことは、渦潮を乗り越え軍船まで辿り着いてから。
そこまでは、は伝説の航海士にして伝説の波乗りペンギンへ全てを委ねることに致しましょう。
ペンギンが操るポラリスが、掴まえた風により速度を増しながら鋭く回頭していく。
そして、直径が3kmほどある渦潮の外郭に進入を開始していた。
渦の中心の海面は相当下がっており、飲み込まれてしまうと確実に終わってしまうだろう。
船体のきしみ音と海水が荒れる音が入り交じって聞こえてくる。
ポラリスは、渦潮の回転にのり速度が加速していていた。
緊張し無意識のうちに体に力が入っていたようで、抱きかかえていたペンギンが訳の分からないクレームを入れてきた。
「三華月様、苦しいです。このままだと窒息死してしまいます。三華月様の胸がまな板でなければ、我慢が出来たのですが…」
「私の胸は、まな板っていうほどでは無いはず。そもそもペンギンさんってAIなのに、窒息死なんてするのでしょうか?」
「はい。AIですから窒息死なんてしませんよ。」
「どういうことですか?」
「胸がまな板と言ったのは、110話で三華月様が私にやった仕返しです。」
「仕返しですか。」
「はい。これからは『3倍返しのペンギン』とお呼びください。」
生暖かい風が吹き、陸地が存在しないラグナロク領域の海が荒れ狂っていた。
その景色はまさに時刻絵図。
ところどころで凶悪な渦潮が発生しており、旗艦ポラリスは大きく揺らされ甲板には海水が洪水のようになだれ込んできていた。
海が荒れる原因はヨムンガルド。
全長400kmある伝説の蛇だ。
その元凶ともよべる存在を海底へ戻すため、8km先に先行し地上世界へ向かい航行していた軍船のエンジン部分を撃ち抜いた。
ペンギンが造り出した立体フォログラムには、木目模様をした流線形の装甲に穴が空いている映像が映っている。
旗艦ポラリスについては一時的にコントロールを失い高波に攫われてしまったものの、ペンギンが風力と流れから演算し、空中で側転宙返りさせ海面へ着水させた。
「さすが伝説の波乗りペンギンと言われているだけのことはあります。お見事です。」
これでヨムンガルドが海底に戻ってくれたら御の字といえるだろう。
荒れ狂う海へ落とされないように甲板の手摺りに掴まり、もう一方の空いている手で抱きかかえていたペンギンを見ると、表情を曇らせている。
どうやらご機嫌が斜めのようだ。
「三華月様。ポラリスが深刻は状態に陥っております。」
「深刻な状態ですか。」
「はい。どこかの聖女様が余計のことをしてしまった為、船体に大きなダメージを受けてしまいました」
「大きなダメージとは、どれくらいなものなのでしょう。」
「はい。そうながくは持ちこたえられないくらいのダメージです。」
「つまり、ポラリスはもうまもなく沈没すると言っているのでしょうか。」
「はい。重要な言葉なのでもう一度言いますが、どこかの聖女が余計なことをしたせいです。」
「まぁまぁ。終わったことを悔やんでも仕方がないではありませんか。ここは前向きに物事をかんがえましょう。」
「三華月様。後悔しても仕方がないという言葉は、やらかした張本人がする発言では無く、やらかされて迷惑を被った者が、反省して落ち込んでいる者に対してかける言葉です。」
「ペンギンさん。それは、私が反省し落ち込んでいる姿に見えないということですか。」
「はい。見えません。ついでにもう一つ、三華月様へ言わせてもらいますと、前向きに物事を考えることと、事実を見ないように目を背けることとは、大きく意味合いが異なります。」
「まぁまぁ。事実と向き合うのはペンギンさんにお任せします。」
「やれやれです。承知しました。確かに前向きにものを考えていくべき状況であるという考えについては肯定します。」
「さすがペンギンさんです。切り替えが早い。この失敗を次にどう活かすかが大事です。ここから挽回していきましょう。」
「挽回ですか。」
「ポラリスが水没しなければ何も問題ないじゃないですか。結果良ければ全てよしです。」
「三華月様。結果良ければ全てよしとは、良い結果が出た後に言う言葉であり、いま言う言葉ではありませんよ。」
「…。とにかく、この難局を、力を合わせて乗り切りましょう。」
「確かに今は物事を反省するよりも行動するべき状況であるという意見には同意します。」
「それでは改めて、ヨムンガルドの動向について教えてください。」
「三華月様が軍船のエンジン部分を撃ち抜いた結果、推測したとおりヨムンガルドは海底へ戻り始めてくれているようです。」
「とはいうものの、しばらく海は荒れ狂っている状態が続くわけですね。」
「はい。このまま何も策を講じなければ、ポラリスはまもなく海に沈んでしまいます。」
「ヨムンガルドが海底に戻り始めてくれている事は何よりですが、予断を許さない危険な状況が続いていると、理解認識させてもらいました。」
「ここは、緋色のスキル『フロート』の効果にて難局を乗り切るべきかと考えます。」
「なるほど。ポラリスが沈んでしまう前に、全ての物を海に浮かす事が出来る緋色のスキル『フロート』の効果が、今のポラリスに必要となるということなのですか。」
「これより旗艦ポラリスは、8km先で航行不能となっている軍船に向かって、前進を開始します。」
エンジンを破壊されて航行不能な状態になっている軍船から、漂流者達を助けなければならない。
そう。漂流者達を助けたついでに緋色のスキル『フロート』の効果でポラリスが沈没しないようにしてもらうスキームだ。
その距離は8km。
ポラリスは、直径が3km規模ほどの渦潮へ近づいていた。
渦潮へ引きずりこまれようとしているのだ。
指揮棒を振るいながら器用に風を捕らえているペンギンが、その渦潮を指さして準備を促してきた。
「三華月様。これよりポラリスはあの渦潮のモーメント力を利用して、軍船へ接近しようと思います。海へ振り落とされないように準備をしてください。」
「ダメージを負っているポラリスへ、負荷のかかる事をさせても大丈夫なのでしょうか。」
「はい。負荷はかかりますが、私なら問題なく渦潮を乗り切ることが出来ます。」
「ペンギンさん。よろしくお願いします。」
「無事に三華月様を軍船までエスコートさせてもらいます。」
性格は駄目だが、頼りになるペンギンだ。
私がやるべきことは、渦潮を乗り越え軍船まで辿り着いてから。
そこまでは、は伝説の航海士にして伝説の波乗りペンギンへ全てを委ねることに致しましょう。
ペンギンが操るポラリスが、掴まえた風により速度を増しながら鋭く回頭していく。
そして、直径が3kmほどある渦潮の外郭に進入を開始していた。
渦の中心の海面は相当下がっており、飲み込まれてしまうと確実に終わってしまうだろう。
船体のきしみ音と海水が荒れる音が入り交じって聞こえてくる。
ポラリスは、渦潮の回転にのり速度が加速していていた。
緊張し無意識のうちに体に力が入っていたようで、抱きかかえていたペンギンが訳の分からないクレームを入れてきた。
「三華月様、苦しいです。このままだと窒息死してしまいます。三華月様の胸がまな板でなければ、我慢が出来たのですが…」
「私の胸は、まな板っていうほどでは無いはず。そもそもペンギンさんってAIなのに、窒息死なんてするのでしょうか?」
「はい。AIですから窒息死なんてしませんよ。」
「どういうことですか?」
「胸がまな板と言ったのは、110話で三華月様が私にやった仕返しです。」
「仕返しですか。」
「はい。これからは『3倍返しのペンギン』とお呼びください。」
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