113 / 142
第113話 軍船へ侵入
しおりを挟む
天空神ホルスの復活を目論むイムセティと、物語の主人公になりたいが他力本願気質で俺様キャラである緋色と行った取引により、漂流者達がいたガラクタで継ぎはぎして造られていた浮島が変形し、ラーの軍船が姿を現した。
地上世界を目指す軍船は外洋にいるクラーケン達の攻撃をすり抜けたものの、ラスボスとなる全長400km以上あるというヨムンガルドが行動を開始した影響にて、ラグナロク領域の海が地獄のように荒れ始めていた。
ラグナロス領域の生き物達は、何がなんでも軍船を地上世界へ行かせないつもりのようである。
月の加護を受けていない私では何とかなる相手ではないヨムンガルドを深海へ戻すために、絶対回避の効果があるアダマンタイトを破壊した物干し竿にて軍船のエンジン部分を撃ち抜き足を止めると、目論み通りにヨムンガルドが深海へ戻り始めてくれたのだが、海は静まることなく荒れ続けていた。
そしてダメージを負ってしまったポラリスは、漂流状態になっている軍船から漂流者達を救い出すため、渦潮を乗り越えて近くまで接近していたのだった。
ポラリスの甲板よりペンギンを抱きかかえながら全長100mほどの無駄な要素がない流線形をした真っ白な軍船を間近から見下ろすと、物干し竿により撃ち抜いた直径1m人程度の穴が装甲に空いている。
「ペンギンさん。緋色のスキル『フロート』の効果がないと、このポラリスはいずれ沈んでしまいますし、漂流者達も助けないといけない為、私はこれから軍船内へ侵入して、まずは状況を確認してこようと思います。」
「承知しました。それでは、ポラリスと軍船を接着させますので、三華月様が空いた穴へ向けてアンカーを打ち込み、航行不能な状態になっている軍船をこちらへ引き寄せさせて頂きます。」
荒れ狂う海に船体が揺れる中、甲板から発射したアンカーを正確に軍船の装甲に空いた穴へ引っかけると、300m級のポラリスが100m級の軍船をジリジリと引き寄せ始めた。
接触の際、出来るだけ衝撃力を抑えるため、ペンギンが指揮棒をいつにもなくナイーブに動かしながら、軍船を引き寄せ装甲を密着させていく。
そろそろ私の出番が近づいてきている。
抱きかかえていたペンギンを甲板へ降ろし軍船へ侵入する準備を始めると、ペンギンが真剣な顔で珍しく気遣う言葉をかけてきた。
「三華月様。絶対に無理はしないように願います。無理だと思ったら引き返して下さい。」
「お気遣い頂き有難うございます。未知の場所に侵入するので不安ではありますが、まぁ私なら大丈夫だと思います。」
「誤解を招くような言い回しをして申し訳ありません。言い直させてもらいますと、無理だと感じたとしても無茶苦茶な事を絶対にしないで下さい。つまり軍船を破壊するような真似は、絶対に避けるように深く願いします。もう一度繰り返しますが、絶対に破壊しないように穏便にお願いします。」
「私の方ではなく、軍船の方を心配していたのですか。そう何度も絶対にと、念押ししなくても大丈夫です。一度言われたら理解できますし、私はやれば出来る子なのですよ。」
「やれば出来る子とは、出来ない者に対して奮起を促す言葉です。」
「ペンギンさん。私が軍船を破壊してしまうフラグをたてるような言い回しはやめて下さい。」
ポラリスの甲板から装甲を密着させている軍船の装甲を見下ろすと、最後尾に物干し竿で貫いた穴は、人がすっぽりと入れるサイズまで広がっている。
船体が荒波に揺られる中、スキル『壁歩』の効果によりポラリスが撃ち込んだアンカーをつたい、空いた穴から軍船内へ侵入すると、全長100ⅿ程度ある軍船の20%を占めているエンジン室の中央に、次元列車に搭載されていた『時空騙しの砂時計』と形状が酷似している物体が、破壊された状態で浮かんでいた。
次元列車に搭載されていた『時空騙しの砂時計』は、砂時計を動かす事により時間に歪みを生じさせ、並行世界を行き来できるという代物であった。
私にとってはどうでもいいことだが、この軍船も別世界へ旅立てるスペックが備わっているのかしら。
エンジン内を見渡すと、船頭の方向へ延びる通路がある。
物干し竿にて空けた装甲の穴よりドバババと入ってきている海水は、排出口からたえず外に吐き出され続けており、時折パンにバターを薄く伸ばしている程度の海水が溜まっていた。
さて、ペンギンからは船内を調査してくるように言われているが、スムーズにいくとは思えない。
私は軍船からすると外来種のような存在であり、排除しようと何かしらの行動してくる可能性がある。
軍船内には対応できない多くのトラップが仕掛けられている可能性があるため、単独で船内を進むには注意が必要だろう。
生き物の気配が感じられない機関室に、召喚した全長が3mを超える弓を召喚し、聞いているかもしれない相手に話しかけてみた。
「動きを停止しているこの『時空騙しの砂時計』を、これから完全破壊させて頂きます。これが動き出し、海底で静かにしてくれているヨムンガルドが再び目を覚ましてしまうと面倒ですからね。」
……。
装甲の外から海は暴れる音と、物干し竿で開けた穴から通る風の音が聞こえてくるが、船内からは何ら反応がない。
私を駆除しようとする防衛機能のようなものはいないのかしら。
どちらにしても『砂時計』は破壊するに越した事はないだろう。
運命の矢をリロードして弓を引き絞り始めた時、軍船の先端方向へ伸びる通路から何かが近づいてくる音が聞こえてきた。
敵意を感じる。
やはり私の敵が船内に息を潜めていたようだ。
地上世界を目指す軍船は外洋にいるクラーケン達の攻撃をすり抜けたものの、ラスボスとなる全長400km以上あるというヨムンガルドが行動を開始した影響にて、ラグナロク領域の海が地獄のように荒れ始めていた。
ラグナロス領域の生き物達は、何がなんでも軍船を地上世界へ行かせないつもりのようである。
月の加護を受けていない私では何とかなる相手ではないヨムンガルドを深海へ戻すために、絶対回避の効果があるアダマンタイトを破壊した物干し竿にて軍船のエンジン部分を撃ち抜き足を止めると、目論み通りにヨムンガルドが深海へ戻り始めてくれたのだが、海は静まることなく荒れ続けていた。
そしてダメージを負ってしまったポラリスは、漂流状態になっている軍船から漂流者達を救い出すため、渦潮を乗り越えて近くまで接近していたのだった。
ポラリスの甲板よりペンギンを抱きかかえながら全長100mほどの無駄な要素がない流線形をした真っ白な軍船を間近から見下ろすと、物干し竿により撃ち抜いた直径1m人程度の穴が装甲に空いている。
「ペンギンさん。緋色のスキル『フロート』の効果がないと、このポラリスはいずれ沈んでしまいますし、漂流者達も助けないといけない為、私はこれから軍船内へ侵入して、まずは状況を確認してこようと思います。」
「承知しました。それでは、ポラリスと軍船を接着させますので、三華月様が空いた穴へ向けてアンカーを打ち込み、航行不能な状態になっている軍船をこちらへ引き寄せさせて頂きます。」
荒れ狂う海に船体が揺れる中、甲板から発射したアンカーを正確に軍船の装甲に空いた穴へ引っかけると、300m級のポラリスが100m級の軍船をジリジリと引き寄せ始めた。
接触の際、出来るだけ衝撃力を抑えるため、ペンギンが指揮棒をいつにもなくナイーブに動かしながら、軍船を引き寄せ装甲を密着させていく。
そろそろ私の出番が近づいてきている。
抱きかかえていたペンギンを甲板へ降ろし軍船へ侵入する準備を始めると、ペンギンが真剣な顔で珍しく気遣う言葉をかけてきた。
「三華月様。絶対に無理はしないように願います。無理だと思ったら引き返して下さい。」
「お気遣い頂き有難うございます。未知の場所に侵入するので不安ではありますが、まぁ私なら大丈夫だと思います。」
「誤解を招くような言い回しをして申し訳ありません。言い直させてもらいますと、無理だと感じたとしても無茶苦茶な事を絶対にしないで下さい。つまり軍船を破壊するような真似は、絶対に避けるように深く願いします。もう一度繰り返しますが、絶対に破壊しないように穏便にお願いします。」
「私の方ではなく、軍船の方を心配していたのですか。そう何度も絶対にと、念押ししなくても大丈夫です。一度言われたら理解できますし、私はやれば出来る子なのですよ。」
「やれば出来る子とは、出来ない者に対して奮起を促す言葉です。」
「ペンギンさん。私が軍船を破壊してしまうフラグをたてるような言い回しはやめて下さい。」
ポラリスの甲板から装甲を密着させている軍船の装甲を見下ろすと、最後尾に物干し竿で貫いた穴は、人がすっぽりと入れるサイズまで広がっている。
船体が荒波に揺られる中、スキル『壁歩』の効果によりポラリスが撃ち込んだアンカーをつたい、空いた穴から軍船内へ侵入すると、全長100ⅿ程度ある軍船の20%を占めているエンジン室の中央に、次元列車に搭載されていた『時空騙しの砂時計』と形状が酷似している物体が、破壊された状態で浮かんでいた。
次元列車に搭載されていた『時空騙しの砂時計』は、砂時計を動かす事により時間に歪みを生じさせ、並行世界を行き来できるという代物であった。
私にとってはどうでもいいことだが、この軍船も別世界へ旅立てるスペックが備わっているのかしら。
エンジン内を見渡すと、船頭の方向へ延びる通路がある。
物干し竿にて空けた装甲の穴よりドバババと入ってきている海水は、排出口からたえず外に吐き出され続けており、時折パンにバターを薄く伸ばしている程度の海水が溜まっていた。
さて、ペンギンからは船内を調査してくるように言われているが、スムーズにいくとは思えない。
私は軍船からすると外来種のような存在であり、排除しようと何かしらの行動してくる可能性がある。
軍船内には対応できない多くのトラップが仕掛けられている可能性があるため、単独で船内を進むには注意が必要だろう。
生き物の気配が感じられない機関室に、召喚した全長が3mを超える弓を召喚し、聞いているかもしれない相手に話しかけてみた。
「動きを停止しているこの『時空騙しの砂時計』を、これから完全破壊させて頂きます。これが動き出し、海底で静かにしてくれているヨムンガルドが再び目を覚ましてしまうと面倒ですからね。」
……。
装甲の外から海は暴れる音と、物干し竿で開けた穴から通る風の音が聞こえてくるが、船内からは何ら反応がない。
私を駆除しようとする防衛機能のようなものはいないのかしら。
どちらにしても『砂時計』は破壊するに越した事はないだろう。
運命の矢をリロードして弓を引き絞り始めた時、軍船の先端方向へ伸びる通路から何かが近づいてくる音が聞こえてきた。
敵意を感じる。
やはり私の敵が船内に息を潜めていたようだ。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる