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第118話 商業ギルドのもぐらさん
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教会の建物から外へ出ると、レンガ敷きの広場を熱していた強烈な陽射しが、厚い雲に遮られていた。
さきほどまで青かった空が黒色にかわり、乾燥していた空気が湿ったものに変化している。
海上の空にあった積乱雲が、七武列島首都の上空まで流れてきていた。
雷鳴が走り、空気が轟く。
教会から一緒に出てきた少年神官の廉廉がこちらに振り向き、まとまった雨が降ってくるとの予告をしてきた。
「三華月様。まもなくスコールがきます。」
スコールとは突然に激しい雨を伴った突風が吹いてくる気象状態のこと。
30分から60分間ほど続き、暖かい七武列島では日常的に起きる現象だ。
遠距離攻撃を行う弓士にとって、雨風は大敵であり、戦局においても大きな影響を与える。
スコールがくると忠告してきた少年神官であるが、私の方へ振り向きながら雨対策について心配をしてきた。
「三華月様。スコールは日常茶飯事的に降るものでして、この七武列島で暮らしている者なら当たり前のことなんですよ。」
「私が装備している聖衣は暗黒物質で造られた特別性でして、雨に濡れても直ぐに乾燥する代物です。スコールが降ってきたとしても心配にはおよびません。」
「え。マジですか。雨への備えが完璧なのですか。」
「加えて言いますと、自己再生というスキルも獲得しておりまして、全身がびしょ濡れになったとしても病気になることもありません。」
「信じられない。現住民でもないのに雨対策が完璧だなんて…」
廉廉の目を見開き、声が震えている。
なぬ。未確認物質である暗黒物質や、神スキルの自己再生を獲得していることに驚くわけでもなく、雨対策が出来ているところに驚愕するのか。
少年神官のその感性に驚かされるが、これは価値観の違いなのかしら。
とにかく先を急ぎだい。
食料不足を解決しなければならない神託が降りてきているからだ。
少年神官の価値観のことなど気にはしてられない。
そんな時、簾簾が舐めた言葉を言ってきた。
「三華月様。残念なお知らせがあります。」
「残念なお知らせですか。」
「はい。僕の方が、雨への対策が出来ておりません。」
「そうですか。現住民にもかかわらず、雨対策をしていなかったのでしょうか。」
「はい。現住民にもかかわらずです。」
「でもまぁ、かなり気温も高いようですし、雨に濡れたかといって風をひくこともないでしょう。」
「いやいやいや。風邪はひかなくても、濡れるのって嫌じゃないですか。急ぐ旅でもありませんし、ここは雨宿りをしていきませんか。」
「雨宿りですか。」
「はい。僕のお勧めスポットへご案内させてもらいます。」
スコールがくることを知っていながら、何故、雨対策の準備をしていないのだ。
そして、神託の遂行するこの旅は急ぐものなのだよ。
お勧めスポットとは、きっとふざけた場所に違いない。
少年神官》から出てくる提案は全て却下して問題ないだろう。
「三華月様。早速ですが、雨宿りのお勧めスポットとして、この都市にある商業ギルドへご案内させて頂きます。」
「商業ギルドですか。」
「はい。僕は、商業ギルドの迷宮主である土竜君とは親友なんです。」
商業ギルドとは、大都市に生まれてくる迷宮のこと。
特定の者にしか辿りつけない次元の狭間に存在し、都市の規模に応じてその成長していく。
迷宮主は魔物であるが、人を襲う行為をすることはない。
七武列島首都の規模を考えると、その迷宮主はA級程度の魔物だろう。
その時である。
少年神官が、思い出したように声を張り上げた。
「そうだ。三華月様にお願いがあります。」
「私にお願いですか。」
「はい。土竜君を助けてやってもらえませんか。」
「助けるとは、どういうことでしょう。」
「親友の土竜君から、三華月様が現れたら連れてきてほしいと頼まれていたことを思い出しました。」
おいおいおい。親友からの頼み事を忘れていたのかよ。
商業ギルドは、その都市に繁栄をもたらすもの。
つまり世界に影響があるおそれがある迷宮なのだ。
私には、精霊通りとは異なり守護する使命はないものの、放っておいてしまうと、信仰心に影響が出る可能性がある。
行くべきなのか決めかねるところだ。
ここは、簾簾から情報をもらい判断するべきところだろう。
「簾廉に質問です。迷宮主の土竜さんは、どうして私に会いたいのでしょうか。」
「三華月様へ何か頼みたい要件があるものと思います。」
「その要件について教えて下さい。」
「聞いていないので分かりません。」
「聞いていないのですか。」
「考えてみたら、最も神に近い存在である三華月様を呼ぶのなら、事前に用件くらいは言っておくべきですよね。」
いや。あまえが要件を聞いておけよ。
土竜から直接話を聞くしか選択肢は残されていないようだ。
気が付くと、レンガ敷きの広場の中央に木製扉が姿を現していた。
少年神官がスキルのようなものを発動させたのかしら。
話しのながれから察するに、商業ギルドへ繋がる扉なのだろう。
廉廉の手が木製扉の取手を掴むと、ゆっくり扉を開き始めた。
向こうは次元の狭間にある空間で、中へ入らないと様子は分からない。
少年神官から視線にて促され、商業ギルドへ繋がる扉をくぐっていった。
――――――世界が劇的に変わっていく。
迷宮内に瞬間移動をしたのだ。
半円型のドンネル形状で、天井が高くとられている。
床天井共に岩場で出来ており、カッターの刃で切り取られてように凹凸なく綺麗な仕上がりだ。
天井のいたるところには照明機器が嵌め込まれ、昼間のように明るい。
風に流れ、新鮮な空気が流れている。
トンネルの奥には、6m幅の通路を挟み店が軒を連ねている。
数にして100軒以上はありそうだ。
想像していたとおり、有数の大規模な商業ギルドではあるが、人の気配がない。
ゴーストタウンの状態になっている。
寂れているというよりは、既に死に体の状態だ。
足元には、土竜が2本足で立ってこちらを見上げてきていた。
私を呼び寄せた迷宮主だ。
背丈は私の膝泥土。
安全第一と書かれた黄色いヘルメットを被り、真っ黒なゴーグルで目を隠している。
自身の身長よりも長い先スコップを片手に持ち、地面に突き立てていた。
土竜が深く頭を下げて、挨拶をしてきた。
「私はこの商況ギルドを護る迷宮主の土竜です。」
さきほどまで青かった空が黒色にかわり、乾燥していた空気が湿ったものに変化している。
海上の空にあった積乱雲が、七武列島首都の上空まで流れてきていた。
雷鳴が走り、空気が轟く。
教会から一緒に出てきた少年神官の廉廉がこちらに振り向き、まとまった雨が降ってくるとの予告をしてきた。
「三華月様。まもなくスコールがきます。」
スコールとは突然に激しい雨を伴った突風が吹いてくる気象状態のこと。
30分から60分間ほど続き、暖かい七武列島では日常的に起きる現象だ。
遠距離攻撃を行う弓士にとって、雨風は大敵であり、戦局においても大きな影響を与える。
スコールがくると忠告してきた少年神官であるが、私の方へ振り向きながら雨対策について心配をしてきた。
「三華月様。スコールは日常茶飯事的に降るものでして、この七武列島で暮らしている者なら当たり前のことなんですよ。」
「私が装備している聖衣は暗黒物質で造られた特別性でして、雨に濡れても直ぐに乾燥する代物です。スコールが降ってきたとしても心配にはおよびません。」
「え。マジですか。雨への備えが完璧なのですか。」
「加えて言いますと、自己再生というスキルも獲得しておりまして、全身がびしょ濡れになったとしても病気になることもありません。」
「信じられない。現住民でもないのに雨対策が完璧だなんて…」
廉廉の目を見開き、声が震えている。
なぬ。未確認物質である暗黒物質や、神スキルの自己再生を獲得していることに驚くわけでもなく、雨対策が出来ているところに驚愕するのか。
少年神官のその感性に驚かされるが、これは価値観の違いなのかしら。
とにかく先を急ぎだい。
食料不足を解決しなければならない神託が降りてきているからだ。
少年神官の価値観のことなど気にはしてられない。
そんな時、簾簾が舐めた言葉を言ってきた。
「三華月様。残念なお知らせがあります。」
「残念なお知らせですか。」
「はい。僕の方が、雨への対策が出来ておりません。」
「そうですか。現住民にもかかわらず、雨対策をしていなかったのでしょうか。」
「はい。現住民にもかかわらずです。」
「でもまぁ、かなり気温も高いようですし、雨に濡れたかといって風をひくこともないでしょう。」
「いやいやいや。風邪はひかなくても、濡れるのって嫌じゃないですか。急ぐ旅でもありませんし、ここは雨宿りをしていきませんか。」
「雨宿りですか。」
「はい。僕のお勧めスポットへご案内させてもらいます。」
スコールがくることを知っていながら、何故、雨対策の準備をしていないのだ。
そして、神託の遂行するこの旅は急ぐものなのだよ。
お勧めスポットとは、きっとふざけた場所に違いない。
少年神官》から出てくる提案は全て却下して問題ないだろう。
「三華月様。早速ですが、雨宿りのお勧めスポットとして、この都市にある商業ギルドへご案内させて頂きます。」
「商業ギルドですか。」
「はい。僕は、商業ギルドの迷宮主である土竜君とは親友なんです。」
商業ギルドとは、大都市に生まれてくる迷宮のこと。
特定の者にしか辿りつけない次元の狭間に存在し、都市の規模に応じてその成長していく。
迷宮主は魔物であるが、人を襲う行為をすることはない。
七武列島首都の規模を考えると、その迷宮主はA級程度の魔物だろう。
その時である。
少年神官が、思い出したように声を張り上げた。
「そうだ。三華月様にお願いがあります。」
「私にお願いですか。」
「はい。土竜君を助けてやってもらえませんか。」
「助けるとは、どういうことでしょう。」
「親友の土竜君から、三華月様が現れたら連れてきてほしいと頼まれていたことを思い出しました。」
おいおいおい。親友からの頼み事を忘れていたのかよ。
商業ギルドは、その都市に繁栄をもたらすもの。
つまり世界に影響があるおそれがある迷宮なのだ。
私には、精霊通りとは異なり守護する使命はないものの、放っておいてしまうと、信仰心に影響が出る可能性がある。
行くべきなのか決めかねるところだ。
ここは、簾簾から情報をもらい判断するべきところだろう。
「簾廉に質問です。迷宮主の土竜さんは、どうして私に会いたいのでしょうか。」
「三華月様へ何か頼みたい要件があるものと思います。」
「その要件について教えて下さい。」
「聞いていないので分かりません。」
「聞いていないのですか。」
「考えてみたら、最も神に近い存在である三華月様を呼ぶのなら、事前に用件くらいは言っておくべきですよね。」
いや。あまえが要件を聞いておけよ。
土竜から直接話を聞くしか選択肢は残されていないようだ。
気が付くと、レンガ敷きの広場の中央に木製扉が姿を現していた。
少年神官がスキルのようなものを発動させたのかしら。
話しのながれから察するに、商業ギルドへ繋がる扉なのだろう。
廉廉の手が木製扉の取手を掴むと、ゆっくり扉を開き始めた。
向こうは次元の狭間にある空間で、中へ入らないと様子は分からない。
少年神官から視線にて促され、商業ギルドへ繋がる扉をくぐっていった。
――――――世界が劇的に変わっていく。
迷宮内に瞬間移動をしたのだ。
半円型のドンネル形状で、天井が高くとられている。
床天井共に岩場で出来ており、カッターの刃で切り取られてように凹凸なく綺麗な仕上がりだ。
天井のいたるところには照明機器が嵌め込まれ、昼間のように明るい。
風に流れ、新鮮な空気が流れている。
トンネルの奥には、6m幅の通路を挟み店が軒を連ねている。
数にして100軒以上はありそうだ。
想像していたとおり、有数の大規模な商業ギルドではあるが、人の気配がない。
ゴーストタウンの状態になっている。
寂れているというよりは、既に死に体の状態だ。
足元には、土竜が2本足で立ってこちらを見上げてきていた。
私を呼び寄せた迷宮主だ。
背丈は私の膝泥土。
安全第一と書かれた黄色いヘルメットを被り、真っ黒なゴーグルで目を隠している。
自身の身長よりも長い先スコップを片手に持ち、地面に突き立てていた。
土竜が深く頭を下げて、挨拶をしてきた。
「私はこの商況ギルドを護る迷宮主の土竜です。」
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