136 / 142
第136話 仏心について。
しおりを挟む
ここは、次元回廊内。
土竜が闇商人から購入した掘削機器で掘り進めてきたトンネル内である。
幅が15m程度あり、壁天井は半円形になっていた。
表層は、綺麗に舗装され凹凸のようなものは見受けられない。
換気用にファンが動いており、新鮮な空気が流れている。
等間隔で配置されている照明が回廊内を明るく照らしており、閉鎖した空間であるが、息苦しさというものは感じない。
私の正面には赤色RARE種のイルカ擬きが申し訳なさそうにしている姿があった。
大規模な部隊をロジカルに展開させてきた司令塔で、指揮力が高い優秀な戦術家だ。
土竜からの情報によると、摩凛がいる無人島を中心にし、七武列島近海から魚が消えたという。
客観的に考えて、摩凛が従えているイルカ擬きの群れが、その原因であると予想がつく。
つまり、降りてきた神託を遂行するには、現れた赤色RARE種の魔物達を討伐すればいいことになる。
私に会いにきた話しを伺った後、問答無用で殺処分させてもらいましょう。
土竜は、来訪者のために4人掛けテーブルの椅子を引いてこちらへ座るように誘導し、少年神官はお茶を用意していた。
赤色のRARE種は、丁重な言葉で話しかけてきた。
<三華月様。まずは無人島での無礼を詫びさせて頂きます。>
「敵に対しては当然の行動でしょう。無礼とは思っておりません。」
<そう言って貰えますと助かります。>
「早速ですが、あたながここに来た用件を伺います。」
<その話しをする前に、土竜さんと少年神官さんへ、通訳を頼めないでしょうか。>
「はい。伺います。」
<私は椅子に座れないこと。そしてお茶は飲みないことをお伝えしてもらえないでしょうか。>
少年神官と土竜へ視線を送ると、意図を読み取ったのか、2人は無言で会釈をし、即座に対応を切り替えてきた。
普段はガラクタな2人が、優秀な執事に見えるのは何故なのかしら。
再び視線を正面に戻すと、赤色RARE種が落ち着いた口調でここへ来た用件を話し始めてきた。
<三華月様。結論から申し上げますと、私達一族を殺さないでもらえないでしょうか。>
「つまり命乞いをするために、私へ会いに来たという事ですか。」
<三華月様のために誠心誠意、尽力することを誓います。>
「残念ながら、そのお願いはお受けできません。」
<その理由をお聞かせ願えないでしょうか。>
「地上世界からすると外来種のような存在であるあなた達が、近海の魚を食べまくっているため、地上世界の生体系が崩れつつあるからです。」
<私たちは地上世界の魚は食べませんよ。>
なぬ。イルカ擬き達は魚を食べないのか。
摩凛が使役しているイルカ擬き達が近海の魚を食べまくっていると勝手に思いこんでいただけということか。
砂浜で視認しただけでも、300個体以上はいた。
奴等は一体何を食べているのかしら。
いや。そこは重要ではない。
その話しが本当だとしら、魚が消えてしまった原因が何であるかが大事なのだ。
更に赤色のRARE種が話を続けてきていた。
<そうは言うものの、私達の存在を恐れて、この海域で生活していた魚達がこの近海から逃げていったことは事実ではあります。私達の存在は、この海域において無害であるといずれ認識されるとは思いますが、現時点において地上世界の生態系を崩しているのが現実であり、この世界にいるべき存在ではないことも理解しております。>
言葉遣いも丁寧だし、無茶苦茶しっかりした奴だな。
|イルカ擬き達は、この地上世界にいるべき存在でないことを理解しているが、去ることが出来ない事情がある。
つまり、摩凛に使役されてしまったため、自由が利かない。
お友達であるはずの摩凛からの命令に逆らえないと言っているのかしら。
<三華月様。摩凛の『テイム』から私達を解放してもらえないでしょうか。>
「私が、ですか。」
<はい。よろしくお願いします。>
「摩凛へ話しをして、『テイム』を解除するように直接お願いすればいいではないですか。それとも、何か出来ない事情でもあるのでしょうか。」
<摩凛は私達と会話をすることは出来ません。>
摩凛は、イルカちゃん達の国をつくるという夢をキラキラした目で語っていた。
だが、イルカ擬き達からは迷惑な存在だったということか。
さすが私の見込んだ女だ。
このまま放置しておけば、問題を重くみた近海の国と戦争を始めたり、邪神の異教徒の受け入れ皿のような存在になっていくだろう。
赤色RARE種には、貴重な情報を提供してくれて感謝だな。
同情する余地もあるものの、所詮魔物であることは変わりない。
ここで赤色RARE種の願いを聞く必要もないし、そもそも面倒くさいことは嫌いだ。
ここは奴等を殺処分して、少しでも問題を少なくする方が望ましいところだろう。
聖女であるが、私は仏心という邪魔なものを持ち合わせてはいないのだ。
赤色RARE種と交わしていた言葉を聞き、会話の内容を察した少年神官と土竜が話をしている声が聞こえてきた。
「土竜君。三華月様の行動をどう読む?」
「三華月様は、信仰心のためなら残虐非道な行為に一切の迷いがない聖女ですから。」
「やはり、赤色RARE種は、三華月様の餌食になってしまうのということなのか。」
「はい。それが妥当な線ではないかと思います。」
「何とかしてあげられないのか。」
「何とかですか。」
「土竜君。規定のテンプレだ。そこに打開策となるヒントがあるんじゃないのか。」
「そう言えば、人害の敵が、理由なく味方になるという必勝パターンがありました。」
「それだ。その方法を教えてくれ。」
「はい。人害は、主人公との戦闘に敗北し、何故かつるぺたヒロインへ姿を変えるのです。」
「つるぺたヒロインだと!」
「はい。理由は分かりませんが、何故か、人害のつるぺたヒロインは、主人公になついてしまい、膝の上でゴロニャンとするテンプレがあるのです。」
「土竜君。それだけは絶対に駄目だぞ!」
「駄目ですか。」
「つるぺたヒロインは、目の前にいるじゃないか。」
「やはり、三華月様とキャラがかぶってしまうということですか。」
土竜が闇商人から購入した掘削機器で掘り進めてきたトンネル内である。
幅が15m程度あり、壁天井は半円形になっていた。
表層は、綺麗に舗装され凹凸のようなものは見受けられない。
換気用にファンが動いており、新鮮な空気が流れている。
等間隔で配置されている照明が回廊内を明るく照らしており、閉鎖した空間であるが、息苦しさというものは感じない。
私の正面には赤色RARE種のイルカ擬きが申し訳なさそうにしている姿があった。
大規模な部隊をロジカルに展開させてきた司令塔で、指揮力が高い優秀な戦術家だ。
土竜からの情報によると、摩凛がいる無人島を中心にし、七武列島近海から魚が消えたという。
客観的に考えて、摩凛が従えているイルカ擬きの群れが、その原因であると予想がつく。
つまり、降りてきた神託を遂行するには、現れた赤色RARE種の魔物達を討伐すればいいことになる。
私に会いにきた話しを伺った後、問答無用で殺処分させてもらいましょう。
土竜は、来訪者のために4人掛けテーブルの椅子を引いてこちらへ座るように誘導し、少年神官はお茶を用意していた。
赤色のRARE種は、丁重な言葉で話しかけてきた。
<三華月様。まずは無人島での無礼を詫びさせて頂きます。>
「敵に対しては当然の行動でしょう。無礼とは思っておりません。」
<そう言って貰えますと助かります。>
「早速ですが、あたながここに来た用件を伺います。」
<その話しをする前に、土竜さんと少年神官さんへ、通訳を頼めないでしょうか。>
「はい。伺います。」
<私は椅子に座れないこと。そしてお茶は飲みないことをお伝えしてもらえないでしょうか。>
少年神官と土竜へ視線を送ると、意図を読み取ったのか、2人は無言で会釈をし、即座に対応を切り替えてきた。
普段はガラクタな2人が、優秀な執事に見えるのは何故なのかしら。
再び視線を正面に戻すと、赤色RARE種が落ち着いた口調でここへ来た用件を話し始めてきた。
<三華月様。結論から申し上げますと、私達一族を殺さないでもらえないでしょうか。>
「つまり命乞いをするために、私へ会いに来たという事ですか。」
<三華月様のために誠心誠意、尽力することを誓います。>
「残念ながら、そのお願いはお受けできません。」
<その理由をお聞かせ願えないでしょうか。>
「地上世界からすると外来種のような存在であるあなた達が、近海の魚を食べまくっているため、地上世界の生体系が崩れつつあるからです。」
<私たちは地上世界の魚は食べませんよ。>
なぬ。イルカ擬き達は魚を食べないのか。
摩凛が使役しているイルカ擬き達が近海の魚を食べまくっていると勝手に思いこんでいただけということか。
砂浜で視認しただけでも、300個体以上はいた。
奴等は一体何を食べているのかしら。
いや。そこは重要ではない。
その話しが本当だとしら、魚が消えてしまった原因が何であるかが大事なのだ。
更に赤色のRARE種が話を続けてきていた。
<そうは言うものの、私達の存在を恐れて、この海域で生活していた魚達がこの近海から逃げていったことは事実ではあります。私達の存在は、この海域において無害であるといずれ認識されるとは思いますが、現時点において地上世界の生態系を崩しているのが現実であり、この世界にいるべき存在ではないことも理解しております。>
言葉遣いも丁寧だし、無茶苦茶しっかりした奴だな。
|イルカ擬き達は、この地上世界にいるべき存在でないことを理解しているが、去ることが出来ない事情がある。
つまり、摩凛に使役されてしまったため、自由が利かない。
お友達であるはずの摩凛からの命令に逆らえないと言っているのかしら。
<三華月様。摩凛の『テイム』から私達を解放してもらえないでしょうか。>
「私が、ですか。」
<はい。よろしくお願いします。>
「摩凛へ話しをして、『テイム』を解除するように直接お願いすればいいではないですか。それとも、何か出来ない事情でもあるのでしょうか。」
<摩凛は私達と会話をすることは出来ません。>
摩凛は、イルカちゃん達の国をつくるという夢をキラキラした目で語っていた。
だが、イルカ擬き達からは迷惑な存在だったということか。
さすが私の見込んだ女だ。
このまま放置しておけば、問題を重くみた近海の国と戦争を始めたり、邪神の異教徒の受け入れ皿のような存在になっていくだろう。
赤色RARE種には、貴重な情報を提供してくれて感謝だな。
同情する余地もあるものの、所詮魔物であることは変わりない。
ここで赤色RARE種の願いを聞く必要もないし、そもそも面倒くさいことは嫌いだ。
ここは奴等を殺処分して、少しでも問題を少なくする方が望ましいところだろう。
聖女であるが、私は仏心という邪魔なものを持ち合わせてはいないのだ。
赤色RARE種と交わしていた言葉を聞き、会話の内容を察した少年神官と土竜が話をしている声が聞こえてきた。
「土竜君。三華月様の行動をどう読む?」
「三華月様は、信仰心のためなら残虐非道な行為に一切の迷いがない聖女ですから。」
「やはり、赤色RARE種は、三華月様の餌食になってしまうのということなのか。」
「はい。それが妥当な線ではないかと思います。」
「何とかしてあげられないのか。」
「何とかですか。」
「土竜君。規定のテンプレだ。そこに打開策となるヒントがあるんじゃないのか。」
「そう言えば、人害の敵が、理由なく味方になるという必勝パターンがありました。」
「それだ。その方法を教えてくれ。」
「はい。人害は、主人公との戦闘に敗北し、何故かつるぺたヒロインへ姿を変えるのです。」
「つるぺたヒロインだと!」
「はい。理由は分かりませんが、何故か、人害のつるぺたヒロインは、主人公になついてしまい、膝の上でゴロニャンとするテンプレがあるのです。」
「土竜君。それだけは絶対に駄目だぞ!」
「駄目ですか。」
「つるぺたヒロインは、目の前にいるじゃないか。」
「やはり、三華月様とキャラがかぶってしまうということですか。」
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる