ブラックな聖女『終わっことは仕方がないという言葉を考えた者は天才ですね』

samishii kame

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第140話 7本の光

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空には月が暗黒の海を照らしていた。
見渡す限り水平線の景色だ。
風が微かに吹き始めており、遠くの空を見ると厚い雲が近づいてきていた。
この海域はまもなく嵐に見舞われるかもしれない。
海賊船に甲板では、付いてきていた魔導の精霊達がカラフルな光を発しながら飛び回っている。
少年神官と土竜に挟まれるように、伐折羅提督が強張った表情をしていた。
私を見つめる瞳は、可愛い女の子に釘付けになっているような感じではない。
何か得体の知れない生物を見つけ、恐怖しているように見える。
その伐折羅提督が、遠くから近づいてくる分厚い雲の存在に気がつき、嵐がくることを恐る恐る告げてきた。


「聖女さん。嵐が近づいてきています。」
「そのようですね。早くこの海域から離脱して、摩凛の元へ向かってもらえないでしょうか。」
「待って下さい。今からではあの嵐を回避することは無理ですよ。」
「無理ですか。」
「はい。とりあえず、やってくる嵐をやり過ごすしかありません。」


厚い雲の方を見ると、雷が走る光が見えている。
空気が湿り始めていた。
嵐が通り過ぎるのを待っていたら、確実に太陽が昇る時間になってしまうだろう。
今は、一刻も早く神託を遂行したい。
自然現象ではあるが、私の邪魔をするとは生意気だ。
こういう時は排除すればいい。
ここから積乱雲を粉砕して差し上げましょう。


「承知しました。あの積乱雲は私の方で対処させてもらいます。」
「積乱雲を対処するって、それはどういうことですか?」
「伐折羅提督は出航の準備をお願いします。」
「すいません。聖女さんが言っている言葉の意味が分かりません。」


文字通り、そのままの意味だ。
言葉で説明し、理解してもらう時間がもったいない。
ここはその目で確認してもらいましょう。
私は運命の弓をスナイパーモードで召喚します。
月の光が反射して白銀に輝く3mを超える弓が姿を現した。
続けて運命の矢を連続で召喚します。
運命の弓に続けて『7本の矢』が姿を現した。
―――――――――――――神々の戦いで使用されたという天空スキル『七星剣』にて、あの積乱雲を粉砕して差し上げましょう。
甲板の上を浮遊していた魔導の精霊達が集まり、リロードされた運命の矢を空中で固定し始めている。
『七星剣』を撃ち放つ補助を、魔導の精霊達がしてくれているのだ。
本来の『七聖剣』は、夜空に数千kmの大きさの魔法陣が描かれる。
北斗七星からの加護を受けて創られるその威力は、星をも串刺しにするほど絶大だ。
満月でない今夜については、その力に遠く及ばないものの、あの程度の雲ならば容易に粉砕できるだろう。
足を前後に広げ、背筋を伸ばし、現れた運命の矢を引き絞り始めた。
運命の矢を掴んでくれている精霊達が同じように照準を絞ってくれている。
7本の矢からは溜まった月の光が漏れ始めていた。
信仰心で最大限まで強化した身体で限界まで引き絞った運命の弓が、大きくしなっていく。
それでは、積乱雲を粉砕させてもらいます。
運命の弓に溜められた力を解放させた。
―――――――――SHOOT

箒星のような光の線が、夜空に真っすぐ走っていく。
ジャイロー回転がかけられていたその7本の走る光の線は、積乱雲を簡単に突き破ると、竜巻が発生したかのように分厚い雲を撒き散らかしていく。
断続的に海上へ落ちていた雷はとまり、散り散りになった雲の破片が夜空に拡散していった。
海は静かに揺れ、静寂の時が流れている。
星が輝く夜空が広がり、厚い雲が姿を消していた。
伐折羅の表情を見ると、言葉が出てこないような、呆れている感じに見える。
目の前で起きている視覚的情報に、理解が追い付いていないのだろうか。
口をあんぐりとしている伐折羅提督へ、少年神官と土竜がドヤ顔をしながら近づいてきた。


「マジか。積乱雲が消えったって、どういうことなんだ。」
「フラザー。言いただろ。これが聖女様の平常運転なんだぜ。」
「アミーゴ。この世界には逆らってはいけない人が存在するんです。」


伐折羅提督が緊張した面持ちで大きく息を吐いていた。
命拾いをしたような顔つきだ。
その伐折羅提督に対し、少年神官が低く通る声で真面目な顔をしながら質問を始めてきた。
そう。定番のあの件のことだ。


「ところで伐折羅君。話しは変わるのだけど、君に教えてもらいたい事があるんだ。」
「俺に聞きたいことか。何だ、深刻な顔をして。」
「そう。僕にはとても大事なことなんだ。」
「そうか。わかったから言ってみろよ。」
「僕が聞きたいのは、迷企羅姫の事なんだ。」
「ああ。迷企羅のことか。」
「彼女はこの船内で休み中なのかい。」
「いや。迷企羅なら七武列島へ帰してしまったよ。」
「なんだって!それじゃ、迷企羅姫はここにいないのかい?」


想定外の言葉に、少年神官の体が崩れ落ち、甲板に両手両ひざを付いた。
ガーンという効果音が聞こえてきそうな雰囲気だ。
落ち込んでいる少年神官の背中を土竜がポンポンと叩いている。
この景色って、いつも見る定型だな。
この後は土竜が訳の分からない法則を言いながら慰めるのがお決まりのルートだ。
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