文を書く聖女の遺書【完結】

藤沢はなび

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【聖女の遺書】

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 知らないはずの光を見つけてしまったのです。

 愛とは、孤独とは、生きるとは、
 私のこれまでの苦悩は、悲劇は、悲惨は、何故起こったのでしょうか。
 全てが光に繋がっていると信じれば良かったのでしょうか。

 ただひたすら、愛とエゴの狭間で悩み続けた私は聖女の皮を脱ぎ捨てることができませんでした。
 聖女の皮を無くした私を愛してくれる人など存在しないと思っていたのです。


 一輪の花のように立つあなたを見た時から私の人生は狂い始めました。

 眩しすぎるあなたを見て私は自分の人生を、過去を悔やんだのです。
 それはまるで幸せと不幸せを同時に与えられているかのような苦痛だったけれど、その苦痛さえ幸せだと感じました。
 誰かを愛するということ、優しくすること、見返りのない純粋なたった一つの想いを抱く事がこんなにも幸せなのだと知ることが出来ました。

 これから私がどんな選択をしても、その時の記憶だけは幸せな記憶として残り続けるのだと思います。
 あなたの笑顔と言葉と全てが私を救ったように、私もそう在りたかった。
 たった一人の為だけに想いを注げる人生で在りたかった。

 どうか私の愛する人たちがこれからもずっと幸せでありますように。


 

 本当はこんなことを綴りたいわけじゃない。

 助けてと、今すぐ助けてと、怖いと、一人は嫌だと、一番辛いのは私だと、誰か迎えに来てと、最期まで泣き叫ぶことが出来ませんでした。
 ただひたすら微笑んで許して、感謝して、飲み込んで、そんな私を神は愛したのです。
 だから、神が一番嫌がることを最期にしましょう。

 これからもずっと聖女の皮を被りながら愛されていくくらいなら、煌めいていた記憶だけを抱いて聖女のまま愛されて死にたい。

 恐怖に満ちた人生の中で、唯一最初から最後まで変わらなかった愛を抱いて。
 ありがとうと心の底から伝えて。
 そうして私は人生に終わりを告げます。


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