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ぬるあまい

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「…こいつに、汚い手で触るな」

それは先程まで話の中心だった…ワンコ会計、もとい宮田白雨さんだった。
宮田さんは俺を守るように前に立ってくれて、そして俺の腕を掴んでいる会長さんの手を乱暴に振り落した。

「……あ」
「大丈夫か?」
「はい…大丈夫、です」

な、何かよく分からないけど。
…か、かっけー。
無口なのに心配してくれているところとか、まじでクールで格好いいと思う。俺は助けてもらった礼を言い忘れるくらい、心底この人を尊敬していた。
暫くお互い無言で見つめ合っていると、生徒会長さんが居る方向から舌打ちが聞こえてきた。
俺と宮田さんは反射的にそちらを向く。

「…チッ、おい宮田」
「………」
「そんなに、…こいつにマジなのかよ?」
「…ああ」
「…それなら一人で悶々してねえで、はっきりとそいつに言っちまえ」
「………」
「言わねえとそいつ一生気付かねえぞ。…見るからに鈍そうだろうが」

二人の会話についていけず、ポカンと口を開けてただ傍観していると、「ったく、馬鹿面しやがって」と何故か会長様に怒られてしまった。

「ったく、後悔したくねえなら早く自分の物にしておけ」
「……そうだな」
「今度生徒会室で怠けた顔見せてみろ。…そいつは俺が奪うからな」
「肝に銘じておく」
「けっ」

そして話が終わったのか、俺様生徒会長様はそのままこの場を立ち去ろうと俺たちに背を向けた。

「…おい、」
「は、はい?」

しかし生徒会長はすぐにこちらに向き直り、俺のことを呼ぶ。…理由は分からないが何故だか怒られてしまう気がして内心ビクビクしていると、会長さんは俺を見て鼻で笑う。

「見てみろよ宮田の顔」
「…え?」

会長さんに言われるがまま宮田さんの顔を覗き見る。

「どう見たってワンコって可愛い面じゃねえだろ」
「……?」
「…お前を見る宮田はどうみても、欲に飢えた獣にしか見えねえよ」
「え?…それって、」

意味や理由を訊ねようとすれば、生徒会長さんと俺との間に再び宮田さんが入り込んできた。

「……用がないのなら、もう失せろ」
「はっ、…言われなくてもな」

そして宮田さんの言葉で会長さんはそのまま何処かへ行ってしまった。

「………」
「………」
「………」

そして二人きりとなった廊下では沈黙が続く。
…ここって人通りが少ない所なんだな。これからはあまり通らないことにしようかな。だけどそのお蔭で生徒会と話しているところを親衛隊の人達に見られなくて良かった。
ほっと安堵の溜息を吐けば、「…少し話せるか?」と意外にも宮田さんから声を掛けられた。
俺は断る理由もなく、頷く。

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