9 / 16
9
しおりを挟む「おい」
昼休みの時間にトイレに行き、教室に帰ろうとしていたらいきなり後ろから声を掛けられた。
「え?」
俺は反射的に振り返る。そこには薫と同じくらい背が高く、嫌味なほどにイケメンな男が居た。
…その男は最近編入してきた俺でも知っている程の超有名人。しかも薫がまず最初に教えてくれた人物でもある。
“俺様生徒会長”だ。
「………」
俺は辺りを見回す。
運が良いのか悪いのか分からないが、俺と俺様生徒会長様以外に他に誰も居ない。ということは、もしかしてもではなく生徒会長様は俺に話し掛けているということか?
「…えっと、お、俺ですか?」
「お前以外に誰が居る」
「そ、そうですよね」
うわ、超怖い。
なんだよ、一体俺に何の用だ?こんなところを親衛隊とやらに見られる前に、用件だけ聞いてさっさと教室に戻ろう。
「ご用件は何ですか?」
「………」
「あ、あの…?」
「…お前、相内柳だよな…?」
「は、はい」
「………」
「……?」
……本当に何なんだ。
というか何で生徒会長様なんかが、俺の名前知っているんだろうか。編入したときの書類に不備でもあったのかな?不思議に思っていると「…想像していたのと違うな」とボソリと呟かれた。
「…想像?」
「小型犬のようだと聞いていた」
「小型犬?俺が?」
俺が小型犬がどうこうという話は前に薫としたことがあるけど、薫と会長様って関わりないよな?…それにこう言ったら悪いけど、薫は会長様のこと嫌いだから近寄りたくもないって言ってたし。
「いったいそれは誰が…?」
「宮田だ」
「……宮田、ってワンコ会計さん?」
「ワンコって可愛い面じゃねえだろ、あいつは」
「あ、…いや、何で宮田さんが俺の名前を?」
すると会長様は面倒臭そうに話してくれた。
最近ワンコ会計さんが生徒会室に顔を出さないと。それに誠君(王道編入生の名前らしい。初めて知った)とやらにも素っ気ないと。
「…話は分かりましたが、そのことに俺が何か関係が?」
「関係も何も、全部お前のせいだろうが」
「…え?俺?な、何で?」
「お前のことで頭がいっぱいで、仕事も手に付かないってほざいてやがった」
「……は?」
俺のことで、頭がいっぱい…?
え、…ちょ、意味が分からないんだけど。何で俺?俺、ワンコ会計さんに何か悪いことでもしてしまったのだろうか。
「あいつはこんなのが好みなのか…」
困惑していると、会長様に鼻で笑われた。
…え?もしかしなくても今馬鹿にされたのか?
「可愛くねえし、無駄に身長もあるし」
「……はぁ、…ごめん、なさい?」
「それならあれか?余程あっちの具合がいいのか?」
「あっちってどっちですか?」
「とぼけんなよ。特別に一回くらい抱いてやってもいいぜ」
「……抱く?」
「グチャグチャしてやるよ」
「…グチャグチャ!?」
何を!?
顔面をか!?
「いや、いいです!遠慮します!」
「…あ゛?てめえに拒否権なんざねぇ」
「俺、痛いの嫌いだし、そんな趣味ないです」
「俺の手にかかれば、痛みさえも快感に変わる」
「……は?え、…あ、いや、まじで勘弁してくだい。殴られるのなんて、嫌ですよ」
何で初対面の人にグチャグチャになるまで殴られなくてはいけないんだ。そんなの嫌に決まっている。
必死で抵抗するものの、会長様は俺の抵抗する様を見て笑いながら何処かに連れて行こうとする。
ああ、もう!薫でも誰でもいいから助けてくれ!と願っていると、その救世主は突如現れた。
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた
谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。
就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。
お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中!
液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。
完結しました *・゚
2025.5.10 少し修正しました。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる