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男は怖い
しおりを挟む「…………、い……おい…………、」
「…………ん……?」
……誰かの声が聞こえる。
親でも先生でも両親でも俺に暴行を働く奴等でもなく、聞き覚えがない声。
男らしく低い声をしているくせに、まるで透き通るような良い声。そんな心地良い声が耳元で聞こえてくるかと思えば、ペチペチと頬を叩かれる感覚がして、俺は重たい瞼をゆっくりと開いた。
そうすればまずは暗闇の中でキラリと綺麗に輝く星空が見えた。どうやら俺は与えられた暴力に耐えきれずそのまま長い時間気を失っていたようだ。ということは、つまりは体育館裏を見回りに来た警備員の人にでも叩き起こされたのだろう。このまま此処に居ると不審に思われるだけではなくて、警察沙汰になりそうな気がして、俺はすぐさま立ち上がろうとする。
「……痛……、っ」
しかし、気を失ってしまうほどに与え続けられた暴行のせいで、上手く立ち上がることができない。痛みに耐えきれず起こした身体を再び地面に預ければ、先程の声の主が俺の身体を支えてきた。
「大丈夫か?」
「…………え……?」
誰かに優しくされるのは久し振りだと感動して「ありがとうございます」と告げようとしたのだが、俺はそいつの姿を見て思わず声を失ってしまった。だって、ただの警備員にしては随分とおかしな恰好をしているのだ。まるで軍服のような衣服を身に付けており、更には黒いマントを付けて深く帽子を被っているこの男はどう見ても普通には見えない。
親切にしてくれた相手にも関わらず、『お前が大丈夫か?』と、つい言ってしまいそうになってしまったくらいだ。暗闇の中でも分かるほど随分と美形のようでそんなおかしな恰好も似合っているけど、それでも変な奴だということには間違いないだろう。やはり俺と関わる男は全員皆一様にどこか異常なようだ。得体の知れない未知の存在に密かに恐怖心を抱きながら、俺は痛む身体に鞭を打って距離を取ろうとする。
「……あ……、大丈夫です。今すぐに帰りますから」
自分でも驚くほど高い声が出てしまった。多分恐怖のあまり上擦った声が出てしまったのだろう。まるで女の人のような声を出してしまったことに妙な恥ずかしさを感じながら、俺は四つん這いの体勢を上手く使ってゆっくりと男から距離を取って行く。
「待て」
「……な、何か問題でも?」
「貴様は得体の知れない存在だが、それ以上に傷を負った女子を放っておくほど俺は腐ってはいない」
「…………“女子”?」
誰のことを言っているんだ。俺のことか?
確かに暗くてハッキリと見えないかもしれないが、男子用の学生服と俺の顔を見ればそんな間違いはしないはずだが、この男は何を言っているんだ。理解できない。……ふつーに、怖い。
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