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変質者
しおりを挟むそれとももしかしてこの場に俺以外の傷付いた子が居るのか?そう思って辺りを見回してみたのだが、やはり此処には俺とこの人以外誰も居ない。……あれ?というよりも、いつもの校舎となんか違う気がするんだけど……。そう思ってポカンとしたまま余所見をしていると、急に脇の下に手を入れられて身体を持ち上げられた。
「……な、っ!?」
「大人しくしてろ」
「は、離せ……っ!」
校舎に居るものだからてっきり警備員かと思っていたのだが、もしかして新手の変質者なのだろうか。性別構わず人攫いをする類の極悪人なのかもしれない。なんで俺と出会う男はもれなく全員やばい奴なんだ。恐怖に怯えながらも痛む身体を無理やり動かして、せめてもの抵抗を試みる。しかし、暗闇の中でも分かるほど屈強な男の身体は俺のそんな些細な抵抗などビクともしてくれない。
……怖い、怖い、怖いっ。このまま何処に連れて行かれるのだろうか。連れて行かれた先で何をされるのだろうか。考えるだけでも怖くて仕方がない。……なんで、なんで俺だけこんな理不尽な目に遭うんだ。酷い、むかつく、許せない。
「お、下ろせ……!」
「…………、っ!?」
色々な感情が混ざり合ってそれを爆発させてしまった俺は、米俵のように俺のことを担いでいる男の耳たぶに思い切り噛み付いてやった。そうすれば流石の男も痛みに耐えきれなかったのか、言葉にならない低い声を出して、暴れる俺の身体を地面に落とした。
「(…………今だ!)」
散々痛めつけられた身体は今の衝撃で更にダメージを負ってしまったが、そんなものを気にしている暇なんて今は一切ない。今はすぐさま此処から、……この男から逃げなければ。そう思った俺は、身体を起こしてすぐさまこの場から走り去ろうとしたのだが…………、
「………………あ……」
…………それよりも先に、先程の男によって腕を掴まれてしまった。
……終わった。必死に抵抗をした結果がこれだ。このざまだ。きっと抵抗を見せた結果、この後俺は余計にこの男に酷いことをされるのだろう。色々なことがあり過ぎて恐怖メーターもぶっ壊れてしまった俺は、普通ならば怯えて震えるであろう場面で、力なく笑って見せた。だってどうせ今更怯えたところで結果は同じなんだ。希望など、助けなどない。……いつもそうだったように。
「……おい。大丈夫か?」
「…………、え……?」
「頭でも打たなかったか?」
「……な、なに……言って……?」
……そう悲観していたのだが、軍服を着た男は危害を加えてくるるどころか、俺の腕を掴んだまま表情を一切に変えずにそんな言葉を掛けて見下ろしてきた。
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