真梅雨怪奇譚 ー 梅雨の日に得た能力

七槻夏木

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真梅雨

殺人世界 Ⅱ

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 雨音をバックサウンドに、一人きりの教室で読書をし、ちょうど一時間ほどが経っただろうか。日もだいぶ落ち、室内と外とのコントラストは、一層はっきりとしていた。完全下校まであと一時間半。このペースなら余裕で読み終えそう。私は、解説を読むのが好きだから、残り僅かになったページをペラペラと捲ってみたりする。あと何ページで本編が終わるかな、なんて考えて。こうなると、注意力散漫で話が頭に入ってこなくなる。
 何だか栞を挟むのも億劫で、途中のページを開けたまま、本を伏せる。幸い時間はたっぷりある。一息入れようという算段だ。といってもやることが無い。私は、肩にぴったりつくぐらいのおくれ毛を、人差し指でいじる。こうしていると、余計なことを考えてしまいそう。
 
 そうこうしていた矢先、教室前方のドアが、ガラリと音を立ててスライドされた。そこにいたのは、見たことも無い生徒。品の無い茶髪はウィッグのようで、ハリボテのつけまつげが残念だ。始めて終えるまでに、王朝が一つ滅亡しそうな厚化粧。あまり、かわいくない生徒と目が合った。

「電気の消し忘れかと思ったら人いたんだ。何してんの?」
 彼女は、初対面の私に忌憚なく話しかけてくる。
「読書をしていたのだけれど」
 
 正確には、休憩中だったけど。
私の返事を聞いて、彼女は、目を見開く。
「うっそ、マジ? こんな日に一人で読書⁈」
「ええ。こんな日って、こんな日だからこそ本でも読んでみようと思うの。あと、読書って一人でするものではないかしら」
 
 彼女の態度が何故か気に入らず、私は、意味のない反論をしてしまった。私と彼女は恐らく住む世界が違っていて、干渉しても、お互いに無生産だと知っていたのに。現に、彼女が今、腹を抱えて笑っている理由が私には分からない。

「私の言ったこと、何かおかしかったかしら?」
 私は、困惑気味に尋ねる。
「あははは、いや、そういうとこだよ。あはは、流石、上級国民の特進さんだ。言うことが違う」
 
 彼女は、なおもケラケラと笑う。済栄マリア学園は、お嬢様学校である。お嬢様学校とは、別に、皇族の血統だとか、王族の娘だとかいうのが入学条件ではない。特進以外は、勉強ができずとも、高い学費を払えば入学は可能。親が高い学費を払えれば、その子供はお嬢様なのだ。加えて、異性のいない環境だ。彼女みたいな不良っぽい子はたくさんいる。私はそれが劣っているとも思わないし、自分が優れているとも思わない。ただ、価値観が違うだけだ。
 
 用がないなら、そろそろ出て行ってもらえないかしら。そう、言おうとして。
 
     視界が、グラリとする。
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