真梅雨怪奇譚 ー 梅雨の日に得た能力

七槻夏木

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不思議なお遣い

不思議なお遣い

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結局、私と江藤は、廣島市までお遣いに行くことになった。私たちが居た建物を出ると、周りには、木々が生い茂っており、本当に山の真ん中にあった。外から見たその建物は、何の装飾もなく、外壁は、黒っぽい灰色をした金属でできていた。大きさにして、小学校の体育館くらいだろうか。ただ、道路までは案外近く、これなら何とか、段ボールは運びこむことは出来るかと思ったが、道路から見上げてみても、その建物は一切見えないのが不思議だった。

「まったく、何であんな不便なところに建てたのよ」
 隣に座る江藤に尋ねる。時間の関係もあってか、私たちの乗った車両には、他に乗客はおらず、他の車両にも、ぽつぽつとしか、人影は見えなかった。

「ああ。俺たちは、割と中国、四国あたりを転々としているんだけど、普段はあんなところには、建てない。ただ、少し前に、マイさんの研究で大規模な実験をする必要があって、それで、音とかも酷くなるからって、組織に頼んであれを建ててもらったんだ」

 また、邪険にされるかと思ったが、江藤は、面倒くさがる素振りもなく教えてくれた。江藤は、遠くの景色を眺めているようだった。車窓からは、高度経済成長期に忘れられたみたいな村が見えた。木造の家々と田畑以外には何も無く、舗装もされていない川が、ゆったりと流れているだけだった。何も動いていなかった。動いているのは、私たちの乗っている電車だけだった。曇っていた。日は少し差すだけだった。これが、この村の日常なんだと思った。ここに住む人たちの血の流れが、何世代も、時の流れに寄り添ってできたのがこの村だと思った。土方や百姓の仕事を終えた男たちに、女が、ビールの瓶を一本開けてやるのが、この村だ。そう思った。
 
 不思議だった。この村の風景を眺めたことで、変な能力に憑依されてから、初めて安らいだ気がする。
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