真梅雨怪奇譚 ー 梅雨の日に得た能力

七槻夏木

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不思議なお遣い

朝 Ⅲ

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と、まあこんなものだろうか。学校の課題でレポートを作成するみたいに事務的に、こんな超常現象について、まとめられたことに自分でも驚いた。
 
 でも、書いているうちに思い出したくないことを思い出してしまったのも確かだ。自分が、夜な夜な、生き物を殺して回っていたことや、殺人を犯してしまったことを再認識させられるのは、気持ちのいいことでは無い。
 
 大きく一つため息をつくと、いつの間にか、部屋の整理を大方終えていた峰子に声をかける。
「終わったわよ。あなたが、満足いくものになっているかどうかは分からないけれど」

「お、終わったか」
峰子は、私の背後にまわると、後ろからパソコンの画面を覗き込む。
「どれどれ……って、長い時間がかかっていると思ったら、もうこんなに自分の能力について理解しているのかい? 普通は、私たち組織の人間が立ちあって、能力についての理解を含めていくんだけどねぇ」

「私の方が驚いてるわよ。理科の実験をするみたいなテンションで、動物を殺して、ここまで調べ上げたんだもの。能力に憑依されたことで、おかしくなっちゃったのかもしれないとはいえ、ここまで自分が非情な人間だとは思わなかったわ」

「ああ、そのことか。それなら、真梅雨が気に病むことは無いよ。後天的憑依者には、たまにあることなんだ。自分の意識と反して、能力を使いたい衝動が抑えられなくなることが。一方で、意識的に能力を濫用するようなやつもいるんだけど。だから、君が自分のことを冷たい人間だと責める必要は無い」

 その言葉を聞いて、ほんの少しだけ救われたような気がした。
 峰子は、私のレポートをコピーしている。ガシャガシャ。ウイーン。と、白いコピー機が音を立てる。

「でだ、真梅雨。唐突だけど、お遣いを頼まれてくれないかい?」

 何の脈絡もなく、峰子はそんなことを口走る。
「はぁ? お遣い?」

「そう、お遣いだ。廣島市まで頼む。ここは、廣島県のド田舎の山中だからね、片道四十五分くらいかかってしまうけど」

「嫌よ、そんな都会まで。警察に捕まっちゃうじゃない。いや、別に、逃亡してやり過ごそうって心積もりなわけじゃないけど、その……なんていうの、心の準備もまだ出来てないっていうか……」

「捕まることは、無いと思うがね。ニュースでは、動物殺しの犯人の身元は、依然として分かっていません、っていっていたし」

「そっちはそうかもしれないけど……」
「まぁ、大丈夫だ。心配するな。一人で行けというわけでもない。海斗も一緒に行かせるから」

「は?俺もですか?コイツと一緒に?どうして」
 峰子の言葉に、黙々と片付けの仕上げをしていた江藤が手を止めて抗議する。

「そうよ! 最初から江藤に行かせたらいいじゃない」

「まあまあ、二人ともそう言うな。今回の仕事は人手がいるからね。頼まれてくれ。ほら、廣島市には駅をおりてすぐのとこに、大きなジュウク堂もあるぞ」

「それが、どうしたんですか?」

「その都道府県の一番発展してる駅前には、大きなジュウク堂があるって相場は決まってるだろ。それを再確認できるぞ、海斗」

 ますます意味が分からないといった様子で、江藤は、手の付け根みたいなところを、諦めたといったようにこめかみに当てる。
「はぁ……。分かりました。行きますよ。で、どんな仕事なんです?」
 江藤は、渋々といった感じを滲ませる声で尋ねる。

「段ボールを少し運んで来てもらいたいんだ。話は、もう既につけてある。向かってもらう場所はここだ」峰子は、地図のような冊子を広げて、オレンジの蛍光ペンでぐりぐりと塗られているのを指さす。「電車を乗り継げばすぐだ。頼んだよ。トラックを一台手配してもらえることになてるから、この前の道まで案内してくれ」

「それから、どうするのよ?」

「そこで、段ボール箱をすべて下ろしてもらって、後は何回かに分けて、ここまで運んでくる。オッケーかな?」

「何が、オッケーかな、よ! いいわけないでしょ! ここがどのくらいの高さにあるのか知らないけど、効率が悪すぎるわ。いちいち、こんなまどろっこしいことしなくたって業者にでも頼めばいいじゃない」

「ま、それもそうなんだけどね。ここ、登記に無いから。この山、本当は建物たてちゃダメなんだ」
 なんて、舞田峰子は笑う。
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