この学園では個性的なキャラを演じてください、と言われたので「遅刻」ばっかしてみた。

七槻夏木

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厨二と作家とシャーロキアン

自動販売機の前で ②

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「おや、奇遇だね」

 そう言って軽く俺に微笑むと、小佐野は自販機と睨めっこし何にするか逡巡している。少し迷って、ブラックコーヒーを選んだようだ。

「隣、いいかな?」

 こちらの返事を待たずに、小佐野はベンチに腰をおろす。

「ブラックなんか飲んだら寝れなくなるぞ」

「いや、いいんだよ。いつも寝つきは良くないんだ」

 そう返事をして、小佐野はぼーっと窓の外の月の無い空を見てコーヒーをあおる。

 俺も適温になったココアをちびちびと口に含む。

 特段会話をするわけでも無く、二人で飲み物を啜る。

 こうしていると教室で見るいつもの小佐野とは別人のようだ。二年間一緒だが、小佐野は、たまにこういう時がある。別に教室で無理矢理にキャラを演じていて、本当は無口だとかいうわけじゃないと思う。

 教室でみせる、明るく頼り甲斐のあるみんなのリーダーである小佐野も、こうして隣で寂しそうな目で虚空を見つめ、何か思いつめているような男もどちらも本物なのだろう。

 何か困りごとがあるのなら相談にでも乗ってやりたいが、勉強に運動に容姿、人間関係と全てが完璧なコイツが悩むことなどあるのだろうか。

 まして、小佐野自身が解決出来ない問題を俺なんかがどうこうできるとは思えない。まあ、天才には天才の苦悩があるのだろう。

 そんなことを考えていると、全て飲み干したのか小佐野がベンチから腰をあげる。

 それと同時に、誰かに声が掛けられる。

「あ、小佐野丁度良かった。今、お前の部屋に行こうと思ってたんだよ。って、千川も居たのか」

 声をかけてきた男の名は伊達じゃ江南陽太えなみようただ。

 ちょうど自販機の陰になって、ベンチに座る俺の姿は見えなかったのだろう。

「居て悪かったな。都合が悪ければ席を外すが?」

 こんな時間に折り入って小佐野に用事とは、何か重要なことだろう。それなら、俺はお呼びでないはずだ。

「いや、別に大した相談じゃない。千川がよければ俺は全然ついてきてもらっていいよ。立ち話もなんだ、俺の部屋に来てくれ」

 江波の後について歩く小佐野の表情には、先程までの憂いのようなものは感じられない。

 あるのは、いつもの気取った柔和な笑顔だけ。
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