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30、母の行方
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リーダーはペナンの元締めの、ジーンに会いに行った。ヘレナが書いた住所は、ジーンの商会だったのだ。リーダーには、ヘレナという偽名は伝えてある。リーダーの傭兵団は、ジーンの依頼でペナンでも仕事をしていたので、ジーンとは顔なじみだ。ジーンの事務所では、仕事の紹介もしていた。ヘレナはここを頼って、仕事を紹介してもらったに違いない。ジーンの商会に行くと中に通された。
リーダーはガッチリした体の初老の男性で、白髪交じりの少し長めの髪を一つに束ねている。ジーンはリーダーより少し背が高く、体格もいい。日焼けした肌の中高年男性だ。無精ひげに、長い赤茶色のくせっ毛の髪をこちらも一つに束ねていた。二人は応接室のソファに向かい合って座った。後ろにはカインと、傭兵団の仲間が数人立っていた。ジーンは頭をかいた。
「なんだ、あいつらは味方だったのか。仕方がないが、悪いことをしたな」
「大丈夫だ」
リーダーは笑った。ジーンが言った。
「お前らが捜している女性は、カレンだ」
「カレン?」
リーダーはその名前に聞き覚えがあった。確かに、ヘレナの年齢と容姿が同じだった。
「そういえば、前紹介してくれたな。海鳥亭の給仕」(そういうことか。訳ありだからジーンは俺に紹介したのか)
以前リーダーがペナンに来た時に、ジーンの友人の店に連れて行ってもらったことがあった。そこでカレンを紹介されたのだ。こげ茶色の髪の美人な中年女性だった。リーダーはニッコリした。
「そうか、あの子の娘なんだな。そりゃ楽しみだ」
「カレンはすでにいない」
「なんだと!」
リーダーは驚いた。
「お前たちの仲間の捜索者が来たから、ここから出られなくなる前に、グリード商団に連れて行ってもらったんだ。行先はストラルトだ。護衛もいるし安全だ」
「そりゃあいい!」
商団は商売をしながら旅をするので、すぐに追いつける。リーダーは早速、仲間二人に馬を借りて追いかけるように指示を出した。二人がすぐに出て行く。カレンはリーダーの傭兵団を知っているので、話が早いだろう。リーダーたちが追いついたら、商団と別れてストラルトに向かうことにした。
傭兵団は普段歩きだが、馬はどこの馬屋でも借りられて、どの馬屋でも返せるようになっている。国が馬屋は組合に入るように義務づけて、旅がスムーズにできるようになっていた。
リーダーは捜索班あてに手紙を書いて、宿屋に預けると、自分たちも馬を借りてジョディを追いかけた。
子爵の捜索隊の半分は、「海鳥亭のカレンという給仕の中年女性をしばらく見かけない」という情報を店の客から得ていた。店の者の話では、「風邪をひいたと聞いた」と言っていた。住所を教えてもらい、家に行ってみると、50代ぐらいの女性が対応に出た。
「カレンなら風邪をひいていますよ。私は身の回りの世話で来ただけです」
「茶色い目の女性を捜している。顔を確認したい」
捜索対象は茶色い目の美人の中年女性ということだ。
「カレン、お客さんだよ」
「はい、どちらさま?」
捜索隊がベッドに横になる女性を確認する。熱で赤くなっている素朴な顔の女性が、額に濡らした布を当てて寝ていた。その女性は客に聞いた髪と目の色をしていたが、顔がジョディの器量とは当てはまらないようだった。
「失礼した」
捜索隊は違うなと思って出て行った。その後、世話をしに来た女性が家を出て、ジーンの商会に行った。中に入ると、ジーンに捜索隊が来たことを報告した。
「分かった。ありがとう。パティは明日になったら帰っていいと伝えてくれ」
「はい」
パティはジーンに頼まれて、カレンが住んでいた家で、風邪をひいたカレンのふりをしていた。一人だと危険なので、世話人と二人にしていた。店の者も客もジーンの仕込みだった。
(少しはごまかせたかな)
ジーンはほくそ笑んだ。
カレンには初め、受付の者が仕事と住む場所を紹介した。その後、訪ねて来る者がいるかもしれないので、住所を貸してほしいと申し出てきたのだ。そこで、ジーンが対応することにした。顔を見る限り、お尋ね者としてではなく、困っているわけありのほうだろう。カレンほどの女性なら、貴族から逃げていてもおかしくない。ジーンは何も聞かずに了解した。聞けば面倒ごとに巻き込むことになるから、カレンも言わないのだ。
数年後の今、案の定やってきたのは、貴族の兵士二人だった。旅姿だったが、お揃いの剣をぶら下げているので分かる。若くて慣れてない口ぶりから、入って間もない新人だろう。
ジーンが困っている者に協力するのは、貴族が気に食わないからだ。平民の理由はそれで十分だった。貴族に一泡吹かせられればそれでいい。詳しい話は、全部片付いたらリーダーから聞けるだろうと思った。
侯爵の捜索人が、子爵の隊と合流した。捜索人も探すが、誰もそんな女性は知らないと言う。しばらく街を捜したが、まったくジョディの話は聞けなかった。捜索人は隊長に言った。
「街人は統制されている。この街には、もうジョディはいないだろう」
それを聞いて、隊長は悔しい顔をした。捜索人は首都に向かって北上することにした。次にジョディが行くとしたら、娘のいるストラルトだと思ったからだ。
隊は三手に分かれることにした。二人が捜索人に同行し、残りの一人は、二人組に付いて行った三人を待つことにした。捜索人は侯爵に手紙を書くと、翌日首都に向かって出発した。
捜索班の二人は、3日が経ったのでペナンの街に戻って来た。
「ワレントではもう雪が降ってるらしいぞ」
「ここは暑いな」
新聞には地方の天候も書いてある。ペナンの新聞にも、ニナリアの毒殺未遂事件の記事が書かれていた。
「ニナリア様、心配だな」
「ああ」
二人は話しながら指定の宿屋に行き、リーダーからの手紙を受け取った。
手紙には、
『対象はすでに街を出ていたので追いかける。お前たちは囮を続け、東に向かってペナン郊外を捜すふりをしながら遠回りしてストラルトに帰れ』
と書いてあった。二人は顔を見合わせた。それからため息をついて宿屋を出た。
「遠回りして帰るか」
「いつになったら帰れるのか」
二人は東に向かって歩き出した。
子爵の捜索隊は、合流したあと二人ずつ二手に分かれて、北上した捜索人たちを追う班と二人組に付いて行く班に分かれた。
ニナリアを乗せた馬車は首都に到着した。メイド二人のおかげで楽しい旅だった。二人はキミーと同じ年だが、キミーより落ち着いていて品があると思った。きっといいところの出なんだろう。
馬車は王宮の敷地に入った。王宮はストラルトの城と違って、横に長い建物だった。そして敷地が広い。舞踏会に来た時には前面だけ見ていたが、敷地は奥まで広がっていて、建物が点在していた。一番大きい建物を迂回すると、馬車は右側にある建物に向かった。馬車に乗って王宮の敷地内を移動するなんて、王女様にでもなったようだとニナリアは思った。
メイドたちは召喚については何も知らないようだ。アレンの話で、「王子が保護する」、「王宮の方が安全だ」と言っていたのを思い出す。
(……もしかして、ここに泊まるのかな?)
そう思うと、豪華さと恐れ多さで、汗が出てきた。
リーダーはガッチリした体の初老の男性で、白髪交じりの少し長めの髪を一つに束ねている。ジーンはリーダーより少し背が高く、体格もいい。日焼けした肌の中高年男性だ。無精ひげに、長い赤茶色のくせっ毛の髪をこちらも一つに束ねていた。二人は応接室のソファに向かい合って座った。後ろにはカインと、傭兵団の仲間が数人立っていた。ジーンは頭をかいた。
「なんだ、あいつらは味方だったのか。仕方がないが、悪いことをしたな」
「大丈夫だ」
リーダーは笑った。ジーンが言った。
「お前らが捜している女性は、カレンだ」
「カレン?」
リーダーはその名前に聞き覚えがあった。確かに、ヘレナの年齢と容姿が同じだった。
「そういえば、前紹介してくれたな。海鳥亭の給仕」(そういうことか。訳ありだからジーンは俺に紹介したのか)
以前リーダーがペナンに来た時に、ジーンの友人の店に連れて行ってもらったことがあった。そこでカレンを紹介されたのだ。こげ茶色の髪の美人な中年女性だった。リーダーはニッコリした。
「そうか、あの子の娘なんだな。そりゃ楽しみだ」
「カレンはすでにいない」
「なんだと!」
リーダーは驚いた。
「お前たちの仲間の捜索者が来たから、ここから出られなくなる前に、グリード商団に連れて行ってもらったんだ。行先はストラルトだ。護衛もいるし安全だ」
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傭兵団は普段歩きだが、馬はどこの馬屋でも借りられて、どの馬屋でも返せるようになっている。国が馬屋は組合に入るように義務づけて、旅がスムーズにできるようになっていた。
リーダーは捜索班あてに手紙を書いて、宿屋に預けると、自分たちも馬を借りてジョディを追いかけた。
子爵の捜索隊の半分は、「海鳥亭のカレンという給仕の中年女性をしばらく見かけない」という情報を店の客から得ていた。店の者の話では、「風邪をひいたと聞いた」と言っていた。住所を教えてもらい、家に行ってみると、50代ぐらいの女性が対応に出た。
「カレンなら風邪をひいていますよ。私は身の回りの世話で来ただけです」
「茶色い目の女性を捜している。顔を確認したい」
捜索対象は茶色い目の美人の中年女性ということだ。
「カレン、お客さんだよ」
「はい、どちらさま?」
捜索隊がベッドに横になる女性を確認する。熱で赤くなっている素朴な顔の女性が、額に濡らした布を当てて寝ていた。その女性は客に聞いた髪と目の色をしていたが、顔がジョディの器量とは当てはまらないようだった。
「失礼した」
捜索隊は違うなと思って出て行った。その後、世話をしに来た女性が家を出て、ジーンの商会に行った。中に入ると、ジーンに捜索隊が来たことを報告した。
「分かった。ありがとう。パティは明日になったら帰っていいと伝えてくれ」
「はい」
パティはジーンに頼まれて、カレンが住んでいた家で、風邪をひいたカレンのふりをしていた。一人だと危険なので、世話人と二人にしていた。店の者も客もジーンの仕込みだった。
(少しはごまかせたかな)
ジーンはほくそ笑んだ。
カレンには初め、受付の者が仕事と住む場所を紹介した。その後、訪ねて来る者がいるかもしれないので、住所を貸してほしいと申し出てきたのだ。そこで、ジーンが対応することにした。顔を見る限り、お尋ね者としてではなく、困っているわけありのほうだろう。カレンほどの女性なら、貴族から逃げていてもおかしくない。ジーンは何も聞かずに了解した。聞けば面倒ごとに巻き込むことになるから、カレンも言わないのだ。
数年後の今、案の定やってきたのは、貴族の兵士二人だった。旅姿だったが、お揃いの剣をぶら下げているので分かる。若くて慣れてない口ぶりから、入って間もない新人だろう。
ジーンが困っている者に協力するのは、貴族が気に食わないからだ。平民の理由はそれで十分だった。貴族に一泡吹かせられればそれでいい。詳しい話は、全部片付いたらリーダーから聞けるだろうと思った。
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隊は三手に分かれることにした。二人が捜索人に同行し、残りの一人は、二人組に付いて行った三人を待つことにした。捜索人は侯爵に手紙を書くと、翌日首都に向かって出発した。
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「ああ」
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